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片割れ chap.12 #14










______ある男の告白______






自分でも不甲斐ない人生なのは認めてる。

学生の頃は勉強もそこそこ、部活もそこそこ。やる気はあるけど努力が続かない。やりたくても、やれない。何かを懸命して成し遂げたってことがない。そんな人間。


「はい、もしもし?あははっ、うぇ~い♪お疲れいっ。昨日のオール、楽しかったね~?二日酔いになってない?笑」


でも昔からコミュニケーション能力だけは異常に高かったから、友人や知人は多い。ちょくちょく頼み事をしても、借りた金を返さなくも、なんだかんだ許されてきた。バイトしなくてもそれなりに遊んで過ごせたし、だから僕はこのままでいいんだって思ってきた。


「うん、うん。だよね、昨日はごちそうさま。今日まとまった金が入ると思うからさ、今夜は僕がご馳走するわ。あはは!ホントだって!じゃあ、いつものところで。おう、じゃ~ね~い♪」


それが今年、知り合いの伝手で就職した個人経営のIT会社を一ヶ月でクビになって、生まれて初めての窮地に立たされている。社長には最後まで、『 何でやらねーんだ!なんでサボるんだ!てめーに誇り持てよ!』と怒られたけど全然響かなかった。
プライドなんてなくても世の中生きていける。


「はあ…最後の切り札だからなぁ…。惜しいよなぁ…。……でもマジでヤバいし。どうせなら…盛って、5000万ウォンって言ってみるか!ちょっと生活の余裕も欲しいし!駄目でも2000万ウォンだけは絶対借りないと、マジ死ぬわ。笑」


ここ数ヶ月、あらゆる知人に連絡を取って金を借りて生活してきた。でも人間、プライドなくとも生きてるだけでそれなりの金は必要だから。
消費者金融にも両親と一緒に借入してそれが合計2000万ウォン。返済するって概念のない僕はもちろん支払いが遅れて、ちょっと本気でマズいことになってる。家は勘当寸前。


「2000万…できたら5000万…2000万…いややっぱ5000万…」


だから今日は、僕的に大勝負。
前回借りた100万ウォンなんて目じゃない額。
でもあいつにとっては、はした金だよな?


「Excuse me? oh-…,please,.where is…this ,this place …」


気合いを入れて約束の場所へ向かう途中、狎鴎亭の大通りで。明らかにカタコトの英語で、同じアジア圏だろう顔面の女性が声を掛けてきた。
きっと僕がきちんとした装いだから、道を聞く現地の代表者として選ばれたんだ。幸先がいい。
この国のホスト役を喜んで仰せつかることにする。


「おぅー、、、ニホン、デスカ?」

「!あ、そうです!私、日本人です。日本語分かりますか!?」

「チョト、分かる。笑」

「わあ!すごい!良かったあ!涙」


普段から身なりには気をつけている。今日も空色のストライプシャツに白いパンツを合わせて、清潔感を演出した。時計も靴も、安物だけど傷はない。


「ここ、どう行けばいいですか?歩いていけますかね?それともタクシーの方がいいですか?」


何を言ってるかなんてほぼ聞き取れない。ただ差し出されたガイドブックに描かれた地図の一点を赤丸が囲んであった。かなり使い込んでるのか、譲り受けたものなのか、どちらにせよ古い。ページの端が綻びている。
確かに前はこの近くにあったけど、今はもう少し先へ引っ越したはずの会社の名前がはっきりそこへ掲載されていた。


「…SM ENTERTAINMANT?」

「そうです!そうです!Yes!」

「あー、今、これ、ちが…。no。これは、江南区。今、漢江の…今、清潭洞デス」

「え、そうなんですか?遠いですか?」

「歩く、チョト」


ジェスチャーで彼女から書くものを借りて、新しい事務所付近にマークを付けてあげた。この辺りでこの事務所を知らない者はいない。
僕なら尚更そうだ。だってこれから、まさにその会社の所属アーティストと会うんだから。


「あー、聞いて良かったですっ。本当にありがとうございます。カムサハムニダ。。笑」

「おぅー♪…ワタシ、ハ。アリ、アリガトゴジャイマ…?笑」

「すごい。本当に日本語上手いですよ!」

「あはは!감사합니다~♪」


高校時代、日本語を語学の選択授業で勉強したことがあった。

学校を休みがちな同じクラスの同級生が、日本語を勉強してるっていうから。結局大学も日本語専攻にしたくらいには興味が沸いて。
からかうつもりで、ちょっと横からあいつの練習してる言葉の真似をしてみた。ら、こっちがビックリするくらいのオーバーリアクションで褒められたのがきっかけ。


『 ヨロシクオネガイシマス、だって。笑』

『! おおおおお!発音すごいいい!!日本の人みたい!!』

『 へ、え…そんなに?ホント?てか、そっちが下手すぎなんじゃない?笑』

『僕はただ…… 始めは中国語を勉強しろって言われてて。だから日本語は本当に初めてで…』

『 いや、僕も今初めて日本語なんて喋ってみたから。全然知らないし。てか、ヨロシクオネガイシマスって、どういう意味?笑』

『 …マジ?はあぁぁぁ…、初めからそんなに上手く発音できて羨ましい……』


頭を抱えて悶絶してるくせっ毛の茶髪が、入学当初は皆と同じ黒髪だったことを覚えてる。登校拒否児かと思ってたクラスメイトは、


ある日突然、アイドルになった。


『 ……。昨日、出てる歌番組観たけど。やっぱりお前って、今でも信じられないわ。笑』

『 ……内緒にしててごめん……。実は中学の時から事務所は入ってて、前からデビューも決まってたんだけど…言えなかった……』


ダサい眼鏡が邪魔だったけど顔は本当にイケメンで、授業も受けてないのにテストの点は常にめっちゃ良くて、秀才。でも全然、 有名人になった後も威張るとかない、普通の物静かな感じの奴で。調子だけいい僕とは違うそのスタンスがちょっと、カッコイイなって思った。

だから僕も変わらず強引に話しかけてたけど、今まで話したこともない奴らまで、『 芸能人じゃん、すげー!』って、まるで動物園のパンダを見るみたいに同じ台詞であいつに群がろうとした。それでもあいつはただ笑うだけで、皆を飽きさせた。


『久しぶりに来たから芸能界の裏ネタとか仕入れてるんだろうと思ったのにさ、何も知らないんだって。期待外れー』
『 てか、あれは暗すぎだって。笑』
『 芸能人ってもっと派手なイメージじゃん?思ってたのと違うーっ。マジつまんねー。笑』


勝手なイメージ押し付けて、ダサいコト言ってるお前らの方がつまんねーだろ?てか、態度変わんないあいつの方がカッコよくない?

僕は元々ろくでなしだから、素直に認められる。


『 ……。そんなことないんじゃん?僕はけっこう、あいつといると居心地いいけどね?』


そう言ってあいつの方へ振り返ると、だいたい一人でぽつんと座ってた。

クラスの華やかな中心的グループにいる僕達とは全然違う、教室の隅にいたあいつ。だけどそれから、




韓国中の、凶暴なほど猛烈な名声の頂点に立った。








「あー……、Who。スキ?」


移り変わりの激しい韓国芸能で、
今はどうか?


「ん?すいません、もう一度お願いします」

「Which group do you like the most?」

「あ、Me?私の好きなグループですか?」

「네」


自分を指差した女性の目が最っ高に輝いて。
それがめちゃくちゃ綺麗で。


やっぱり、




「もちろんっ、私は東方神…トンバンシンギ!」

「、ふふっ…。TVXQ?」

「Yeah~♡」


誇らしい気分


友達だって言ってもらえるほどの思い出はない。そんな青春を共有する時間なんてあいつにはなかったんだから。

それでもあいつの同級生で、良かったなって。今でも。

打算無くとも。


「メンバー知ってます?男の人でもアイドルの名前、分かるのかな。……Do you know?チェガン・チャンミン?」

「ワタシハチャンミンデス」

「笑。あー、お兄さんは違うけど。そう、チャンミン!私はチャンミンが好きです。でもユノも大好きです♪」

「習た、チャンミンに。笑」

「え??あー、言葉伝わってないのか~。笑」

「ワタシハチャンミンデス。ヨロシクオネガイシマス」

「あははっ!お兄さん、やっぱ上手い!笑」


だから裏切るには、ちょっと。
この気持ちがあまりにも誇らしくて。




ちょっと惜しいね。









片割れ chap.12
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コメント

  • 2018/07/29 (Sun) 12:16
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  • 2018/07/29 (Sun) 23:31
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