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片割れ chap.12 #10









______Y.side______






呪文をかけたんだ、自分に








気が狂わないように


夢を追いかけ続けられるように







強く


















二度と解けないように




















「……。チャンミナ?」


自室を出てリビングにざっと目を走らせてもチャンミンはいない。人の気配はあるような、ないような。よく分からない。潜んでる。しんとしてる。窓の外を眺めると、今日の日本は平和な青空が広がっている。


「おい、どこだ?」


チャンミンの寝室を覗く前に誰もいない空間に向かって問い掛けると、キッチンから望み通りの声と姿が返ってきた。


「はい、ヒョン……」

「お。ちょっとおいで」


チャンミンはグレーのパーカーとスウェットの格好で、水を注いだグラスを持ったまま言い付け通りにやってくる。短い金色の髪の毛にぼわっと、寝癖をとばした幼い印象の目元に日に日に濃くなるくまが可哀想。人からしたらメイクスタッフでもない限り僅かな影だと感じるかもしれないけど、俺だからよく見える。


「また寝れなかったのか?」

「…さあ……自分でも。。寝てるのか寝てないのか分からなくて……」


その顔に手を近付けても何の抵抗もしなくて、スキンシップが苦手なチャンミンにしては珍しい。くまの刻まれた涙袋を人差し指でそっと押すと、柔らかなチャンミンの皮膚は負荷なく変形した。でも斜め下を見つめる眼球は反応しない。彩りのない光だけを吸収して単純に反射する、大きなガラス玉みたい。


「おい……しっかりしろよ。…どうした?」


俺の声だけがやけに室内で響く。
何か悩みがあるの?だったら相談してほしい。
俺はチャンミンが心配で呼びかけたのに、チャンミンは憐れむように黒目を持ち上げて俺に焦点を合わせた。
違うよ、ソウじゃないだろ。チャンミンが何を考えてるか見ただけで分かるから、先回りして答える。


「俺は大丈夫だよ。言ったろ?寝れないって言っても、これからの活動にワクワクして寝れないだけだし。微熱が続いてたり食欲ないのもそれと同じ原因なんだと思う。なんか、じっとしてられなくて。遠足の前の日の子供みたいだな、俺。笑」


ずっと昔から一緒に居たんだ。
チャンミンの気持ちは、見ただけで……


「ソウじゃなくて…ほんとに僕たち…何もなかったですっけ?」

「は?何が?」

「…………いいえ、…キモチワルイコトイッテスイマセン……ヒョンが楽しそうで、良かった……」

「……」


薄く微笑むチャンミンの気持ちが、分かるようで分からない。目の前に居るのに分からない。危険な。違和感。胸がざわつく。ソウじゃないと。音のない静寂が警鐘を鳴らす。


「なぁ……俺たち……」


でも、

























呪文をかけたんだ、自分に。











「……。そうだっ、午前中は久しぶりに俺たち二人だけでカムバックの相談しよう!マネヒョンも打ち合わせでいないし」


何もなかった。俺たちは今まで通りだ。


「僕は、、帰国する前にもう一回ジム行ってきます…」

「今日も?今日はもう昼過ぎに出発するんだから。帰ったらすぐ忙しくなってゆっくり話もできなくなるぞ」

「でも…」

「ワールドツアーのリハも始まるだろ?舞台監督から色々参考になりそうなライブDVD借りてるから一緒に観よう?良いところは取り入れたいし、チャンミナの意見も聞きたいし。な?」

「……はい」


いつも眠たいって、十分な睡眠が取れないと体調に不安を訴えるチャンミンだから。今はかなりテンションが下がってるはず。俺が上げてやらなきゃ。だって俺は事実絶好調だし。弟を純粋に守りたい。


「大丈夫だよ。大丈夫、チャンミナ。うまくいく。お前はすごく頑張ってるから。ヒョンが保証する。何かあっても必ず良くなる」


そう言いながらDVDプレイヤーを起動させてテレビをつけた。日本の爽やかで賑やかな朝の情報番組が始まってリビングは急に活気を取り戻した。振り返って何気なくチャンミンに聞く。


「悩みがあるなら言ってみな?」


すると大きな瞳はみるみる涙に濡れてきらり、それはとても綺麗な光彩を放ったけど。チャンミンがまるで俺をあやすように見当違いなことをまた言い出すから、そこで輝きは霞んでまた消えた。


「ヒョンも苦しまないで良かった……」


良かったって何だろう。
俺は何も苦しんでない。底なしのやる気に燃え上がっているっていうのに。よく分からない。
最近ずっとこうだ。チャンミンのことが分からなくなって、だから苦手意識が芽生えてしまってたんだ。
もっと分かり合わないと、俺たち。


「そんな風には感じてないけど、俺は…今、正直怖い。今回の活動は去年の再始動のブランドイメージをもう一度直球でアピールしていくしかないし、もしそれが抵評価されたらって考えると、、怖い…。でもその時は真摯に受け止めて、さらに練習してまた新しいアプローチの仕方を見つけなきゃって思ってる。俺に他のことを考えてる暇はない」

「あんたは本当…そればっかりだ。…でもだから。だから僕は……」


チャンミンがついに溢れてしまった涙を笑いながら流すから、急いで駆け寄って掬い取った。とてつもなく胸が締め付けられて。見てられなくて。


「……何?『だから僕は』……?」




今まさに、苦しくて。







「“今のユノヒョン”についていきます」

「…」


そんなこと言われたら、もう苦しいなんて言えない。なんで苦しいのかも、うまく説明できないのに。格好悪い。兄として。


「…おう!信じて。チャンミナと二人で名前だけだけど、それでも一応俺はリーダーだから」


これが正解。迷いを拭い去るように少し強引にチャンミンの手を引いてDVD観賞を勧める。


「TOHOSINKIをより輝かせようっ」

「ですよね」


反動のせいか。


グラスの水がボダッと、溢れた。





























______C.side______







これが













僕の罰か








「チャンミン。ユ…、ユノの様子……」

「……分かってます」

「…っ。あいつ絶対おかしいぞ…っ…危ない、アレは……」


金浦空港から帰る車の中で、マネヒョンは困り果ててた。でも何が困るっていうんだろう。


「記憶喪失、の一種、なのか…?」

「……知りませんよ。でも僕とのことは綺麗さっぱり抜けてるみたいでしたね……」

「とにかく、、ユノにはうまく言っておくから日本の宿舎は別にしよう。お前が辛いだろ!?次に来日するまで時間もあるから用意させておく…!」

「…。いえ、このままで。ユノヒョンがそうしろと言うなら僕はヒョンに従います。変に刺激してユノヒョンの夢の邪魔になることまで思い出すような変化をつけないで下さい。僕も活動に集中します。どうせ彼女もいませんし」


これが最良だ。全ての都合が良い。


「やっぱりお前……。はぁ、っ、、……しかし、、ユノも、いつまで経っても食べないし寝ないし……顔つきはどんどん悪くなってるし……、、でも…っ………お前達を…」

「元サヤに戻ろうなんて思ってません、安心して下さい。マネヒョン、大丈夫です。どんなコンディションでもユノヒョンは魅せてくれます。何があっても必ずステージに真摯に向き合います。それは僕も同じです。このまま突き進みます」


もうちょっと。

もうちょっと頑張れ、僕。


「っ、大丈夫なのか本当に…!?」

「ユノヒョン、疲れてそうだけど楽しそうですよ。ただ連絡を取って欲しい方々がいます。その方達に何気ないサポートをお願いして下さい。いいですか、あくまで然り気無くと念押しして。ユノヒョンは心配されるのを嫌がります。力を抜いてと言っても抜かない人です。いつも全力投球で夢追う姿が格好良くて、だから僕は男だけど恋しました」


矢継ぎ早に言えることを言い切る。



また、





過呼吸になりそう





「チャンミン、すまん…っ!!」

「謝って欲しいんじゃないんです。ユノヒョンが俺を信じてって言ってました。だから僕たち信じましょう、そういう事です」


呼吸が浅い。うまく息できない。ヤバい。
夕焼けの空はこんなにも清々しいのに。闇の気配。ぐんぐんと。視界が狭くなる。
足掻かなければ。今度こそ溺れ死ぬ。
死ぬ訳にはいかない。TOHOSINKIがある。


「、っ、僕もさらに頑張ります…!すいません、家帰る前にジム寄っていきたいです、、。体動かしたい…!」






































そこからどう到着して、しっかりウェアに着替えて運動してたのか。





「……ミン、おい!チャンミン!!」

「………ん…」

「何時間バイク乗るつもりだ?物凄い汗だぞ、せめて水は飲んで。俺が心配だから」


額に冷たくて気持ちいいキラキラしたものが当たってた。ペットボトルだった。透明な。青いキャップの。


「チャンミン、色々大変だったみたいだな?」

「…………シウォニ…ヒョン……」


ミネラルウォーターを差し出して傍らに立っているのはシウォニヒョンだった。笑顔で満ちた穏やかな、ユノヒョンによく似た優しさの灯るその慈愛で。


「でも大丈夫。俺が居るよ」

「シウォ…、っ、、、」




僕はもういっぱいいっぱいで。






一人ではもうとても立てなくて。







もう無理。







もう駄目。誰か居ないと、












「おいで、チャンミン」






誰か居ないと、
 

ユノヒョンと同じ夢をみれない。













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