片割れ chap.12 #8









______Manager.side______









飛行機の中で問われた時から


まさかと思いながらも


限りなく確信に近い衝撃が走ってた



だから











決定的な涙だった












「チャンミンさん、スゴい!よくあそこで涙が出ましたね!」

「凄く良い演技だった。悲しいだけじゃない、鬼気迫る感じもあって。リップの撮影はこの一発撮りでオッケーじゃない?」


満場一致で撮影の終わりを決める称賛の明るい拍手の中。
チャンミンはまだ、笑ってた。


「なんか、自然に出てきたんです。歌詞に感情が入り過ぎて……結果早く終わりになったんで、ラッキーですねぇ~ぃ♪」


ぶはははは、といかにも男性的な発声で照れを隠すチャンミンに、もう一ミリの気配りも使わせたくないと思った。
聞かなければならないことがあったから。
聞いてやらなくちゃいけない。俺はチャンミンに、全部背負い込ませてしまってる。
きっと。


「チャンミン……」

「皆に褒められた。良かったです」


ボソッと独りごちて早々とスタジオを後にする背中を追いかける。横目で確認したユノはどこかぎこちなく捕まったスタッフと談笑してるけど、目は完全にチャンミンを追ってた。

ユノは勘づいただろうか。
……勘づいたよな。さすがに。

でもこれからのし掛かってくる事実を聞いたところで何もできない。できたら気付かない振りを続けたい。
そんな往生際の悪い俺がだめ押しの意地悪をチャンミンにぶつけた。


「チャンミン…お前涙出た時、咄嗟に右向いて隠したろ。右目の目頭から流れたのに、あれじゃ見えにくいだろ」

「、、つい…」


つい。咄嗟に。思わず。

不測の涙。
本物の雫。


「……せっかく迫真の演技だったのに。タイミングもベストだったろ?『どんなにただ君のことを愛したくても~』って歌詞の流れが変わる一番いいところだ。演出的にあそこは左を向いて涙を強調しないと」

「別にいいじゃないですか。オッケー出たし。拭いたかったのに我慢したくらいですよ」




本当の、心。




「…っ、チャンミン!」

「何ですか。。ちょっと、マネヒョン正直うるさいです。ディレクターさんからも涙を流すリクエストなんて元々なかったじゃないですか…」


今までごめんな。

俺が誤魔化したから。
そんな事あり得ないって高を括って。チャンミンは被害者なんだ助けなきゃ。ユノを正常に戻さなきゃってグループの保身のための偽善な正義感を振りかざして。チャンミンに事務所のことも世間の目もユノの気持ちも全部背負わせた。

心がすり減って爆発したんだろ?

歩幅を広げてさらに足取りを早めようとするチャンミンの腕を掴むのに一苦労した。そのまま予備に取ってもらっておいた第2控え室へ押し込んだ。何本か飲料水が机に用意されただけの、椅子もない小さなスペース。
本控え室はユノが帰ってくるかもしれない、今はチャンミンと2人きりになりたかった。

不貞腐れて俯く姿を改めて観察する。

あの可愛らしい気弱な少年が。
今や長くてすらりとした足、節度良い筋肉がついた腕、うちの事務所好みの理想的な顔。アイドルでも歌手でもモデルでも俳優でも、どのように出しても申し分ない。気が利いて思いやりがあって、でも自我は葛藤しながらも強く保って流されない。いつも正直に。異性への興味も隠さない。

そんな男らしい青年が同情なんかでユノに股を開く訳がない。そうだろ?



チャンミンはチャンミンのままで


「何ですか、本当に」

「演技で流した涙を拭う奴がいるか…!!お前今言ってること、…、おかしいぞ…っ、」

「ぇ、あ…嘘。すいません……そっか、、」


とても綺麗な気持ちで


「チャンミン……、話をしよう。聞かなきゃいけない事が、あったよな……?ごめんな、はっきり聞いてやらなくて」

「え、何です?」


そうだったんだな


「お前、彼女いるんだよな?」

「…ぁ………まあ…?、、」

「まあって何だ。イエスかノーしかないだろ。で、どんな子だ?…いや、そんなことは今いい」

「……」



いっぱい傷付けたよな?

チャンミンの心は、今日破壊した部屋のセットよりも壊れてる。


俺は決めつけてたから。
ユノが狂ってチャンミンが振り回されてるって。チャンミンが何も答えないことをいい事に。

見ない振りをしてたから。








「チャンミン、ユノのことが好きなのか?」








はっきり聞きもしなかった。
 





チャンミンの気持ちなんて






「………も、もぅ、嘘は懲り懲りなんで……終わったことですし。、正直言っちゃってもぃぃですか……っ」

「いいよ。何も変わらないし変えてやれないから。個人的に聞いてるだけだ」


蚊の鳴くような呟きの中に怒気が混じってる。
叫べない怒り。思慮深くて思考回路の複雑なお前はどれだけ抱えてた?こんな一言すらここまでこないと言えないなんて。

腹立つよな?

悲しいよな?

憎いよな?



本気だったなら












「はい、とても……」







何だろ、ごめんな。

チャンミンはただほっそり愛しさを抱くように綻んだだけなのに、







俺の方が「ごめんな」って、泣いてしまった。







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コメント

  • 2017/08/12 (Sat) 21:39
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  • 2017/08/12 (Sat) 22:36
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  • 2017/08/13 (Sun) 00:00
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  • 2017/08/13 (Sun) 00:47
    No title

    しみる・・・
    静けさの中に、いろいろな想いがしみていくね。
    これはたまらない。

  • 2017/08/14 (Mon) 00:08
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  • 2017/08/17 (Thu) 12:10
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  • 2017/08/17 (Thu) 23:31
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  • 2017/10/04 (Wed) 12:43
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