後悔なんてしない~ユノ編~ chap.3






【ハジマリは、ココカラ……???】












ドンへとヒョジェに誘われて、就業時間後すぐに会社近くのサムギョプサル屋に入った。普段飲まない俺はコーラで二人と乾杯。アルコールのない爽快感を通して肉に舌鼓を打っていると、ドンへが先日の一件を謝ってきた。


「ユノ、この前は三課みてもらって悪かったな。本当に助かったよ」

「全然いいって。三課の奴らも、俺がドンへの席でしっかり監督しようとしたら皆アポイント取って外出しちゃったもん。俺結局何もしてない。あはは♪」

「そりゃあ、憧れの一課長が目の前に座ったら皆ビビるからっ。『何が何でも案件出してアピールしなきゃいけないって、必死こいて頑張りました!』って後から自慢気に部下が言ってきたけどな、じゃあ普段から俺の前でもそれをやれよって話だよな。笑」

「ドンへは優しいんだよ。でも仕事なんだから部下が駄目な所はちゃんと絞めて成果を出させてやる、それが本当の上司の優しさじゃないか?」

「確かに。ちょっと気が弱いからなぁ、俺。笑」


コクのある肉汁を噛み締めれば、ぽんとチャンミンの顔が思い浮かんで、あいつも誘ってやれば良かったなと思う。


「ここ、酒もけっこう種類あるな?ヒョジェ、そのワインどう?焼酎とかも美味いのかな?」

「これはかなり美味しいよ。焼酎もいいの揃えてあるね♪何か注文する?」

「俺は別に飲まないよ」

「へ?ははっ、じゃあ何で感想聞くの?ユノって本当オフの時、不思議ちゃんだよね!笑」


肉も酒も美味いならチャンミンは絶対喜ぶから。ぎゅっと瞼を閉じた後にくる、あのキラキラな瞳とピカピカ光る頬に大きく綻ぶ口元が見たい。
明日誘ってみよう。


「そうだ、ユノ。チャンミンのことなんだけどね」

「おっ、今俺もチャンミンのこと考えてた!」

「え、…あー、そんなに心配してやってたのか。。俺は全然気付かなかったから…本当に駄目な上司だ……」

「へ??」


ドンへと気持ちが通じあうようにチャンミンの名前が出てきて嬉しかったのに、俯くドンへはそうじゃないようだ。


「ユノに三課を任せた時、チャンミンが急に資料無くしたろ?」

「あー、でも結局後で見つかったんだろ?デスクの下に置いてたのうっかり忘れてたって、チャンミンが」


「自分で恥ずかしいです」って申し訳なさそうに、でも悔しがるように謝ってきた。一通り迷惑をかけた部署にも謝りに回らせて今後の対策を聞けば、


『必要なものはこれから全て肌身離さず持ち歩きます』


と、真剣な眼差しでジョークが返ってきて、そのちぐはぐな可愛さに思わず笑ってしまった。マジメに答えろよ、なんてかろうじて言えたけど笑いが止まらなくて。
まあ約束した契約もしっかり取ってきたし一件落着だとその場を終えたのに、チャンミンは本当に次の日から登山家張りの大きなナップサックで通勤してきた。15階のフロアの、ちょっとした笑いのネタになった。
俺もビックリして感心して、そして思いっきり抱き締めた。
あまりに真っ直ぐ過ぎるチャンミン。


「でもそれ実はイジメだったんじゃないかって。ヒョジェに言われてそうかもと思えてさ」

「はあ?」

「うん、俺はそう思う。資料は隠されて、それから使えなくなった後チャンミンの凡ミスだと判断されるようにデスクの下へまた戻されたんだと思う。チャンミンを恨んでる誰かの手によって」

「……」


ヒョジェの、シャーロック・ホームズでも気取った謎解き?が飛び出してきて、ふとハウンが言ってた噂と繋がったような気がした。咄嗟に言葉が出てこない。


「……なんでそう思うんだ…」

「チャンミンがまだ四課にいた時からたまにあったんだよ。自腹で奮発して買ったって言ってた契約用の万年筆とか、作成を頼んでた会議の議事録とか無くなったり…」

「お前それ俺に報告上げてこいよ!!!」


知らなくて。そんなことあったなんて俺は全然知らなくて、チャンミンからも一度だって聞いたことなくて。
四課の問題を一課に上げる義務なんてないのに、お門違いの怒りをヒョジェにぶつけてしまった。


「悪い…。勘弁してくれよ、ユノ。証拠はないんだ。もしかしたらチャンミンがただの物忘れ激しい奴ってだけかもしれないだろ…。それにチャンミン自分で無くしたって言い張ってたんだから、どうしようもない」

「でもヒョジェの言う、恨みを買ってるっていうのは一理あると思う。あいつ指示も聞かずにひたすら売上上げようとするよね?」

「あ、ドンへの課でもそうなの?そうなんだよ。いくら帰れって言っても毎日とことん残業するし休日出勤までして成果を上積みするから、タコ(成績ゼロ、全く売上に貢献していない事)打ってる奴らにとっては立場ないよな。それで本当に成果出すもんだから、周りが休み辛くなってちゃって。俺も結局1年で抜かされちゃったしなぁ」

「ヒョジェ良かったねー、チャンミンの申し入れのおかげで四課長のままでいれて♪ま、今度は三課の俺が危ないんだけど。笑」

「入社してきた時はそんな仕事人間じゃなかったんだけどなー。もちろん真摯に頑張ってたけど、周りとちゃんと打ち解けようって協調性もあったしうまくやってたよ。でも今は形振り構わず仕事に没頭してさ、かと言って金が欲しい訳でもなさそうだし。何考えてるか分かんない」

「折角格好いいのにもったいないよね。もっとスマートにやれば角も立たないし、いっぱい女の子も寄ってくるだろうに」

「ユノは?そんな風に感じない?」


俺は仕事のことで頭がオンになるとけっこう冷徹で我が儘で、それは自分でも分かってて。
俺の信念についてこれる人間じゃないと正直うちの営業部は難しいと思う。


「仕事のやり方や目的なんて他人が口出すことじゃない。泥臭くったって格好悪くったって大いに結構、営業は売ったもん勝ちだ。『勝者だけが正義だ』。ノルマも達成できないような奴らと協調する必要なんてない。俺は頑張ってない奴は外す、頑張ってる奴は守る。海賊船に乗れる定員数には限りがあるんだからそれが全てだ。以上」


でもドンへは笑って、


「出たあー、ユノ節っ!お得意の『ワンピース』もじり☆笑」

「でも本当、一課って海賊船みたいだよなぁ
。オタクにマニアにギャルにヤリチンに思想家、潔癖症…その他諸々の変わり者しかいないのに、またの名を億売上の超絶エリート集団☆纏め上げるのも大変だろ、ユノ。笑」


ヒョジェも笑ってくれる。
皆が助けてくれるから俺は自由にできてる。有難いことだと思う。


「一課の奴らは皆、本当に可愛い。あいつらが強いのは、1度ドン底を味わったことがあるからなんだよ。痛みを知ってるから強いんだ。俺の方が一緒に仕事できて幸せだ」
















じゃあチャンミンの強さは



一体どこから来てるんだろう?







「……チャンミンってさ、」







どんな痛みを抱えてる?







「何が欲しくなったんだろうな……」






目の前の、焼けてとりどり煌めく肉の整列を見つめながら、本物の謎はソコにあるような気がした。




チャンミンにとっての宝物って、

何なんだろう





「……まあ、それは置いといて…。とにかく、もしそれが本当なら、」


俺の決意の呼び声にドンへとヒョジェが頷いてくれた。


「「ふふふ…」」


……悪い顔の含み笑いを持たせながら。笑


「「ヤルしかないなっ♪♪♪」」

「いや何を!?って、お前ら何か楽しんでるだろ!?笑」

「いやいやっ、お、お、俺はただ純粋にチャンミンの上司としてけしからん奴らに正しい制裁を……。笑」

「制裁!?普段優しさしかないドンへの制裁って逆に怖い!やだ怖い!やめろっ!笑」

「俺実は昔から日本ドラマの『必殺仕置人』ってのに憧れてて、、テヘ♪」

「ヒョジェ何それ!?全然分かんない!!涙
とにかく抹殺しちゃう系の話だろ!?ヒョジェだめ!息の根止めちゃだめ!笑」


7つの海を股にかけるように大胆に仕事をやってのける。勝ち鬨(どき)は大笑いしてふざけあう。でも心も粋もない輩は許さない。
それが俺の海賊船だから。








そこから始まったんだよ



俺の闘いも







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コメント

  • 2017/08/02 (Wed) 17:55
    No title

    その海賊船に乗りにいくじぇ〜!

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