片割れ chap.12 #5







暗い部屋の中…

満たされぬ想い窓から溢れ 夢が募る


月明かりの下…

がむしゃらに希望のリズムを刻む









______C.side______






部屋に戻るとまた蝉の声とビール漬けになりそうで、キュヒョンとの約束をぶち壊してしまいそうで、帰れない。マンションまで送迎してもらうとそのままの足でドライブに出た。運転だけに集中して、車で2時間、月尾島へ。


「っ、はあ、は、はあ、、」


海岸へ着いた途端、張りつめたものが解けて全力疾走した後みたいな息が上がった。


「はあ、はあ、…来るべきじゃ、なかったかな…っ、」


ハンドルに頭を埋(うず)めて波の音と荒い呼吸だけ感じていると、来るべきだろうとなかろうと僕が居れる場所はここしかない。そんな大雑把過ぎる消去法で導き出した答えが妙にしっくりきて、ようやくそこで落ち着けた。


「、、、ふう~……」


デートらしいデートもしなかった。遊びに行こうって言われても趣味は違うし周りの視線は気になるだろうし、何より恥ずかしかったし。
ぱっと思いつくのはこの月尾島くらい。

何するわけでもない、顔を上げて仁川空港の点灯光と暗い海のシルエットをぼーっと眺める。


「……話したいことって何だろ、……今頃……2人……」


楽しそうに色んな店名を呟きながら、歩幅を合わせて去ってゆくユノヒョンとアラはあまりにも鮮やかで、お似合いだった。




『はあ、絵になるねー。あの2人っ』

『つき合ってるんでしょ?今年の年明けから。噂ありましたもん』

『ええ!?あ、そうなの!?どうりでっ』


2人が見えなくなった後のスタジオ内で、数人の小さな輪が色めき立った。
ユノヒョンは僕からしたら、はっきり言って思わせぶりな人だと思う。無自覚に他人を褒めたり触れたり優しくするから、そりゃされた相手はその気になっちゃうよって何度もはらはらした。
でもそれを凌駕するものがいくつもあったから。そしてそれがユノという人間だから。
だからヒョンに忍び寄る恋の噂なんてあちこちに香り立ってたけどそんなもの強気で蹴散らせてた。

悪気のない賑やかに沸いてる群れが僕に近付いて来て嫌な予感。僕は常識では、ヒョンの弟でしかないから。


『チャンミン本当?あの2人付き合ってるの?』


好奇心剥き出しの、肯定のみを期待するあなた方に是非教えてあげたい


『違いますよ』



ユノは僕と付き合ってたんだから

キスだってセックスだっていっぱいしてた



いっぱいしてたんだ



『……でもユノヒョンから聞いてないだけでそうなのかも。今年の年始は僕、映画の撮影で日本にいたし。本当に僕は分からないんですよ』


でもそんな心の叫びは自分でも虚しいことだって分かってるから。自分を自分の鼻で笑う。
性別を切り拓いて確かめ合った僕たちの行為は別に、愛の大きさや真理を見極める物差しではない。


『ひゃー、やっぱり!絶対そうだよっ』

『美男美女カップルだわ~』


そうなるかもしれない。


今目の前に広がる夜の海岸のように暗い絶望が押し寄せる。闇の奥までよく見える。
仮にも恋人だった僕の前で、女性らしいって感嘆してアラを賞賛するユノヒョンに叩きのめされた。


「あんな細い腰には、さすがに僕なれな…」


そこまで言いかけて、





「違う違う!っ、そうじゃなくて!…いいじゃんっ、アラすごく良い子だ。美人だし。いいよ、うん。ユノヒョン付き合ったら絶対幸せだって」

   




またユノヒョンを諦められない自分に







気付く





「あ~もしかしたら電撃結婚とかあるかも?ヒョン27で結婚したいって昔言ってたし。すごい!そしたらユノヒョンの願望通りになるじゃんっ!」


車内にまで人目はさすがに入ってこないから、声高らかに一人芝居を演じる。思い込む。
思ってない事でも声に出して言い続ければいつか心の底から思えるようになるかもしれない。


「いやあぁ~♪素晴らしいなあっ!」


手を叩いて首を横に振って、参りましたと言わんばかりに感嘆する。


「羨ましいっ!本っ当に羨ましい!僕も美人で可愛い奥さんが欲しいっ」


男だから当然だと思う。僕だって今も変わらず女の子に興味をそそられる。
タイプの子を見つけては眺めて、セクシーな体つきには思わず目で追って、妄想するのが楽しくて。


「朝ごはんとか準備してくれて瞼にキスされながら起こされたいっ」


でも、

それだけ。


そんな程度で僕の女の子に対する欲求は完結するようになった。


「ホントにあの2人くっついたら……いいのに……」




ユノに好きだと言われて



ユノを好きだったんだと気付いて





僕の中の、

本当の自分に目覚めた





本当のカタチを知った





でもそれは封印すべきことだから。
普通の弟になりたい。普通のメンバーになりたい。そうすれば今日みたいにグループの出来だけを単純に笑って喜べる。


「……幸せになるよ……ヒョンは……」


アラにしても他の誰かにしても、ユノヒョンを幸せにするのは絶対的に女の子で、僕じゃない。


「良かった良かった……」


拍手する手は重くて叩くのを止めた。張った声はいつの間にか萎(しぼ)んだ。

気の済むまで海を眺めてマンションに戻ると、次はベッドに入って気の済むまで窓から照らす三日月を追った。


「良かった良かった……」



いつまで経てば、気は済むのか。


















______Y.side______






毎日の1日1日を大切に過ごして気持ちは前のめりに威力溢れている。今日も体は恐いくらいよく動く。

なのに心どこか、空っぽに寒い場所がちらつく。

そのせいで見える景色が色褪せる、感動は起こらない。凍えてそこに立ち尽くしてる。冷たい風が吹き抜けてる。まだ涼しくて過ごしやすい9月のはずなのに、

胸の中に、11月の景色で止まったままの自分がいる。


「オッパ食べないの?ユノオッパ?」

「お、うん。アラ食べなよ、好きなだけ」


差し出されてた大皿をアラへ戻して烏龍茶を啜った。寒い箇所が温まるような気がしてホットを注文したけど、効果はなさそう。


「こんなに1人じゃ食べきれないよ~。オッパ少しは食べてぇ~」

「いや、俺はもうお腹いっぱいかも」

「えーっ、でもオッパ全然食べてないよ?」


潜水艦を模した店内の小さな丸型窓から、月が見えて惹かれる。壁に寄り掛かって欠けた月のカーブを観察した。
鋭利なナイフみたいに冷たそうな三日月だけど、翳す銀光は柔らかくて綺麗。


「チャンミンオッパと喧嘩でもしてるの?」


チャンミン……


「何で?相変わらずだよ」


心配そうなアラの顔に誓って言える。
チャンミンと喧嘩してるわけじゃない。ただ最近どうしようもなく苦手なだけで、仕事に支障もきたしてない。


「なんだ、良かった。オッパ達の雰囲気があまり良くなかったから、話っててっきりその相談かと思ってた」

「話?」

「私に話あるからって。ユノオッパが言ってたんじゃない」

「……あー、そうだった…。えっと、」


俺そんなこと言ったっけ?
さっさと帰りたくて色々現場で言ったけど忘れてしまった。また小さなミス。でもそれじゃあアラに失礼だから頭をフル回転させてふいに出した台詞が、


「捜してるんだ」


だった。


「ん?何を?」

「あ、と…物っていうか……人かな?」

「んー?誰?」

「……理想の女性。ほら、長く彼女もいないからアラに紹介でもして欲しいなぁ、なんて。あははははっ」

「何言ってるの。ユノオッパならその気になればすぐできるでしょう?」

「難しいよ。忙しくてなかなか会えないだろうし。それに誰でもいいってわけじゃないだろ?」

「じゃあ、ユノオッパのタイプの女の子は?具体的に」

「……そうだなぁ……」





誰を捜してるんだろう





「こう…皆の前では俺を立ててくれて、でも二人の時にはリードしてくれて。俺が間違ってる時はちゃんと正してくれる感じで、」


どこに居るんだろう 


「でも俺も負けず嫌いだからたまに喧嘩もしちゃうんだけど、拗ねてもお互いステージに立てば自然と仲直りできて、」

「ステージ?歌手のコがいいの?」

「あ、いや違う、例えばっ。そういう…二人の共有できる場所を持ちたいなぁって。な?ははは!」

「ああ…?うん?」


気が立ったり落ち込んだりした時には、なんとなく傍に居て。
さりげない優しさをそっと開いてくれる。


「俺の好きな苺で文字を作ってくれたりするのもすごく嬉しいし、突飛なこと思い付いたりするのも面白くて飽きないし、」


隣に居るというただそれだけで、自信と安心に満たされて。
互いの足りない形をぴたりと埋め合える。


「居るだけでこっちも明るくなるような、」


心が綺麗で美しい


「無邪気で、目の綺麗な人……」











虹のような人










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コメント

  • 2017/07/21 (Fri) 20:29
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  • 2017/07/21 (Fri) 21:49
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  • 2017/07/21 (Fri) 21:50
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