後悔なんてしない~ユノ編~ chap.1

(注意書)こちらは「後悔なんてしない」というお話のサイドストーリーになっております。宜しかったら、本編をお読みになってからユノ編をお楽しみ下さい♪














これはまだ、

俺がチャンミンに落ちる前の話。












「チョン課長。あんまりシム君、可愛がらない方がいいですよ。実は性格悪いって皆言ってるんですよ?」


チャンミンがSMTカンパニーに転職してきて1年経った頃。飲み会で初のチャンミンの昇進を祝って、俺から公開ベロチュウを授与(処刑…?)した(もちろん大盛り上がりだったらしい。酔ってあんまり覚えてないけど)後からだと思う、そんな噂が聞こえ出したのは。

始めに言ってきたのは経理部でも一段と頼りになる存在のハウン。茶髪のロングヘアをさらりと撫でて俺を覗きこんでくる大きな瞳と、細身の彼女によく似合うグレーのスーツが今日も印象的。


「へ?シム……あ、チャンミンのことか?って、えええ??」

「本当ですって!イケメンで三課にも昇進してチョン課長にも気に入られてるから天狗になってるって話ですよ。どうやら影で社員を小馬鹿にしては笑ってるみたいなんです」


信じられなくて。
だって俺がいつも見てるチャンミンはひたむきに勤勉に仕事と向き合ってとにかく真面目でその姿勢がいじらしいほど可愛くて。週末の暇な部下達を集めて楽しむバーベキューや映画観賞にも必ず参加してくれる。いつも集合時間より早く来て、皆の買い出しや下準備やタイムキーパーをしてくれる。何事にも手を抜けない不器用さも心をくすぐられる。
構ってやりたい、そんな風に思わせる可愛らしい男だ。


「ハウン、それ嘘だよ。あれじゃないか?少し前に結婚まで考えてた彼女と別れたって言ってたから、落ち込んだ姿が何か誤解されたんだろ」


俺の前では全くそんな姿見せなかったチャンミンだけど、ただ「こんな事になるとは思いませんでした…」って寂しそうに笑ってた。


「そんなの知らないですけど。チョン課長、本当に気を付けて下さいよ~?四課の課長席蹴って三課に上がったコですよ。もしかして一課長の席狙ってチョン課長に近付いてるんじゃないですか?」

「あはーはーっ!それはそれで燃えるなぁ♪いいじゃん。俺そういうハングリー精神のある奴、好きだよ。大歓迎♪」


課長職に上がれば給料も部下も格段に増えるのに、昇進時チャンミンはそれをしなかった。代わりに部の異動、四課から三課へ。それだけを申し入れてきた。
イレギュラーな要請だったけど別段珍しいことじゃない。だから俺は許可した。それ相応の働きをしてるとも判断したから。
もしかしたらチャンミンは、営業本部一課課長というポストを本気で目指してるのかもしれない。でも俺を抜こうとしてる社員はいくらでもいる。チャンミンに限ったことじゃない。


「もうっ、課長いい人過ぎるからっ。チョン課長に敵う人なんていないのに、シム君みたいにあざとくのしあがろうとする身の程知らずも実際いるんですから。私すごく心配してるんですよ?」

「心配してくれてありがとう。俺もチャンミンのことよく見とくから、大丈夫だよ。な?」


サラサラの小さな頭を撫でるとハウンは綻ぶように笑顔を見せてくれてその場は落ち着いた。

まあその時はあまり気にしてなかった。一時の流行り病のようなもので、同じ時を共に過ごせば嫌でも本来の人間性がお互い分かってくるから。
何より俺は始めからチャンミンが可愛くて仕方なかったし、事実いい奴だし仕事もできる。それは周りもすぐに認めざるを得なくなる。

そう思ってた。










「チョン課長、すまん…!あの、俺、シムの商談にこれから急遽後入りすることにしたから、申し訳ないけど社内にいる残りの三課の奴らを任せてもいいか?」


ある日、三課長のドンへとチャンミンがフロアのど真ん中にある俺のデスクの前で頭を下げてきた。見通しの良い俺の席はざっと沈黙の注目が集まる。


「お、良い勝負案件か?デカイやつか?いいよ、行ってこいよ♪チャンミン、ファイティン!」


意気揚々と送り出してやろうと思ったのに、二人は浮かない表情で頭を上げた。チャンミンなんてこの世の終わりみたいな顔で目線をさまよわせてる。
ドンへは罰が悪そうに話し出した。


「いや違うんだよ……。あんまり条件のいい案件じゃないしシム一人で行かせたいんだけど、提案資料をシムが紛失してさ。でも客を待たせる訳にはいかないし担当はシムだから。先にこいつだけ待ち合わせ場所に行かせて、俺が作り直して後から持って行ってやろうと思って」

「はあ?バックアップは?PC内に記録は?チャンミン」

「す、すいません…っ。何も……見当たらなくて……」

「……」

「本当に…すいません……」


唖然。
コピーした紙の束もパソコン内のメモリーも何もかも無くした人間なんて滅多にいない。
顧客の個人情報や会社の企業情報が流出する可能性だってある。でも今はそれを咎める時間はない。目前に迫る商談のことだけ正す。


「何やってんだお前、じゃあお前はこれから何しに行くの?不動産を売りに行くんだろ?お客様の貴重な時間をもらって大きな取引をするんだよな?ドンへ課長もフォローする前に部下の管理をしっかりしてくれよ。信用問題に関わるぞ」


青ざめて、でも下唇を思いっきり噛んで肩を震わせるチャンミン。静かな憤りが、ウェーブした前髪の隙間から垣間見える。


「すいません…!ドンへ課長には最後まで確認作業付き合って頂いてました。これは本当に僕の責任です…っ。申し訳ありませんでした!」


何かと闘うように、ひとつひとつ綺麗な顔のパーツを丁寧に全て歪ませて歯を食いしばって。悔しくてしょうがないって気持ちが溢れ出てて。


「……頼むぞ、チャンミン。俺はお前のこと期待してる。信じてるから」


心からそう思えた。
チャンミンは同じミスをするような奴じゃない。


「はい!」

「今日の商談、絶対契約取って帰ってこいよ。取れるまで帰って来るな」

「分かりましたっ。ユ…ユノヒョン!行って参ります!」

「はぁい、行ってらっしゃーい!」


背中をばしっと叩くと、ぐっと拳を作って勇みながら外出していくチャンミンを見送りながら、こういう失敗をバネに変えて頑張れよと心の中でエールを送った。


「ドンへ、チャンミンどうした?鞄まるごと無くしたのか?」

「いやいや、朝まではあったんだよ、全部。確認してた。なのに行く直前になって、いきなり資料関係のもの無くなったって言い出すからさ、俺も訳が分からなくて」

「ふーん……了解。ドンへ早く資料作り直して。俺はセキュリティ課に連絡してみる」

「すまんな、ユノ」

「いいよ。それよりチャンミンのことよく見といてやってくれる?仕事云々より社内の人間とうまくいってないのかもしれないから。なんか分かったら俺に報告して」

「了解」


それから闘い続けるチャンミンを、度々見かけるようになった。












お久しぶりです。久しぶり過ぎてごめんなさいっ。暫く「片割れ」と二足のワラジで進めていきます!
宜しかったらまた是非遊びに来て下さいっf(^_^)

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コメント

  • 2017/07/13 (Thu) 18:46
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  • 2017/07/16 (Sun) 10:46
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