片割れ chap.12 #3







______C.side______





キュヒョナが何でも、何か聴いて欲しいことが出てきたら電話しろと言ってきてくれてから、僕は遠慮することなくイタズラ電話並みに連絡しまくった。
その方がキュヒョナも安心する、そんな気がしたから。


「ユノヒョン、……傷付いたよね……」

『そうだな』

「でも僕も本当に悩んで苦しくて…」

『うん』

「最近めっきり距離が遠くなった感じがする…」

『まあ、そうだよな……』

「あ、でも今日ヒョンが前向いて歩いてるのに思いっきり目の前から来る人とぶつかってさ、あれは面白かったっ」

『あははっ、ユノヒョンらしいな』

「ははっ、ね」


これからどうすればいいのかとか、何をするべきだとか。きっとキュヒョナの言いたいことはあったはずだろうにひたすら僕の無駄話に付き合ってくれて、傷心の僕でもさすがに悪いなと思うほど。


「キュヒョナは?今誰か気になる人いないのか?僕協力するよ?」

『俺練習生で可愛いなってコいる』

「まじかっ!ごめん僕練習生は知らないかも」

『でもデビューして有名人になっちゃうときっと冷めるんだよなぁ。メジャーじゃない感じがベストっ』

「マニア臭全開…っ、ぶふふふふっ」

『TOHOSINKIクラスとかもう絶対ダメ、ユノヒョンでもチャンミニでも俺だけのもの感全然出ないから恋人になっても心萎える』

「だははははははっ!!安心しろ!キュヒョナは僕の男だっ!」

「ははは、俺もそう思ってるよっ!サランヘ」

「サランヘ」


心から笑えて、心から感謝して、心からチングだと思える人とのサランは、ユノヒョンとは違う。

似てるのに違う。
不思議なロジック。

けどまた明日を僕なりにできる限り楽しもうと意気込むプラスの念になる。
なかなか力は出ないけれど。
ユノヒョンは遠いままだけど。

それに耐えられそう。















______Y.side______






体が、熱い。


「ユノ、昨日もしかして深酒でもした?」

「いや友達といたけどお酒は飲んでないですよ」


雑誌の撮影現場でたまたま昨日と同じカメラマンに注意された。


「でも顔むくんでるよぉ?」

「え~?」


備え付けの鏡で自分の顔を確かめると頬が全体的にぽってり下へ落ちてる。ほうれい線のような影が目立つし、輪郭もシャープじゃない。


「本当にむくんでるっ。俺じゃない、これ!」

「「「あはははは」」」


燻(くすぶ)ってた微熱が溜まってしまったのかもしれない。
とにかく外へ逃がさなきゃいけない。


「ちょっと、5分。5分だけっ」


クスクス笑うスタッフ達の返事を待たずに撮影ルームから飛び出した。まだ暑い初秋の陽射しを浴びながら、腕立て伏せをしたりスタジオの外周をぐるぐる走り回って汗を浮かばせると、やっと少しすっきりできたような気がした。


「ごめんなさい、お待たせしました!」


セットへ戻ると、次にピン撮影するためのヘアメイクを終えたチャンミンが仄暗(ほのぐら)い控えスペースですでに待機していた。


「どうしたんですか?」


首を揺すって『大丈夫』とだけジェスチャーしてチャンミンの前を通りすぎ、メイクさんに汗を押し拭いてもらいながら周りに冗談を飛ばして俺の分の撮影を始めた。

チャンミンを無視してるわけじゃない。ただレコーディングも編集も、冬に日本で発売予定のシングルまで録り終わって最近は撮影ばかりだし。そんなに話す必要もないかなって。


それだけ。













「あ~、なんか運動した方がいいかなぁ」

「心配しなくても来月からカムバックラッシュで毎日パフォーマンスすることになるぞ。聴くか~??スケジュール」


ミーティングルームでチャンミンが帰った後、マネヒョンから言い渡された殺人スケジュールの暗唱を聞いても何だかパッとしない。


「うーん、、なんかもっとできそうな気がする」

「え?、あははっ、再来月からライブも始まるしやる気満々なんだなぁ♪」


マネヒョンの声が向かいの席から俺のとこに落ちてきて、明るい音符の固まりがぱらぱらと転がっていく。
これに応えたいと思う。マネヒョンにもたくさん心配と我が儘をかけたから。


「何だか力がみなぎってきてるんだよなぁ」

「……やっぱりあれだよ、お前。チャンミンとはっきりさせて良かったんだよ。本当に吹っ切れたんだな」

「……」


その言葉は受け入れないことにした。
だってチャンミンとは何もないんだから。
心の真ん中からホウキで掃いて端っこに寄せれば気にならない。
そんなことより動きたい。もっと。


「なあ、他にも予定入れられない?」

「音楽番組か?うーん…本当、過密に入れてしまってるからなぁ。。インタビューくらいならいけるかな」

「そういうのじゃなくて……」


チャンミンのいない所。


「そう!思いついた!ミュージカル!!!」

「はあ!?」


いいアイデアを思いついた。


「トニーが今回の曲をミュージカルチックな振り付けにしてくれたろ?それですごく興味湧いた、前にもやったしっ。俺今、演技の勉強がしたい!」

「、、いやいや待て待て。そんなのやる時間ないだろ」

「練習する時間は何とか作るから。ミュージカルなら決まった公演日でこなせるしまだ今年のスケジュールに組めるだろ?」

「いや待てよ、練習はどうするんだよ。去年やったスケートとは違うんだよ。舞台の練習は1人じゃできないんだぞ」

「1人で練習やれるって約束したらいい?」

「無理だ、ユノっ」

「オファー来てないの?舞台の、ちょい役でも?」

「……それは、山のように、、。だけどどう考えても無理なんだ。今月だって撮影と収録まみれで10月いっぱいまでは1日も空いてない。11月に入ったらワールドツアーが始まるし、諸々の出演とリハーサルと仕上げでいっぱいいっぱいだ。12月は年末番組ラッシュと日本で次に出すアルバム制作、それに来年の日本ツアーの構成だって始まる。これのどこに入れろって?」

「マネヒョンなら入れられるだろ?」

「、、、やっぱり年明けにしよう。ミュージカルかドラマのオファーを精査しておくから」

「この一年は、何もかも限界に挑戦する。今までのTOHOSINKIを越える。そうだよな?」

「…そうだ」

「チャンミナは今年日本で映画もやったし。俺だってやれることはすぐやりたいんだよ」

「うーん、、」

「チャンミナに負けたくない」


チャンミンを避けるのは、そう。
きっとこの気持ち。
どこまでも伸びてくるチャンミンに嫉妬してる、俺。焦ってるからなんだ。

負けたくない。負けられない。
チャンミンに俺が負けるはずがない。

マイナスの念がどんどん体を奮い立たせてゆくけど、まずいことだなんて思わない。だって現に、食べなくても熱が続いても弱らない。
力が有り余る。


「……待ってろ。ユノの条件と合う舞台のオファーをすぐ確認する」

「ありがとう」

「倒れるなよ。もし倒れたら一生恨んでやるからなっ」

「あはーはーはーっ♪約束する♪」


悪魔と契約したような、異様に無理がきく体を手に入れてじっとしていられない。
寝るのがもったいない。
ずっと何かで動いてたい。
チャンミンと違う場所で。


「ユノ、ずっと考えてたことなんだが……来年からはチャンミンと別々の活動してみるか?ドラマだったり芸能番組だったりレギュラー的なもの。やっぱりうちは今、決定的に韓国での認知度が足りない」


チャンミンと違う風で。


「うん、やりたい!チャンミナも賛成してくれると思うわっ」


自分の希望がすべて叶ってわくわくする。ノートパソコンと手帳を生き生きと交互に確認してるマネヒョンを見ては心は跳ねて。これから何でも自由にできそうな気がする。
前に座る恩人に心から感謝すると、ふいに声がそのままついて出た。


「マネヒョン、本っ当に色々ありがとう…!!」

「あははっ!」


なのに俺を見上げたマネヒョンは顔を見るなり眉を潜めるから、はてなマークが浮かぶ。


「?何?」

「…いや、、声からしててっきりユノ笑ってると思ってたから、」









そんな目付きで睨んでるなんて思わなくて……




なんて、俺の心情にそぐわない印象を最後にぽんと言い放って怯えるように目を反らすから、俺は何が何だか本当に分からなくて。



コンピュータースクリーンと紙上に向き直ったマネヒョンの頭頂部をぼんやり、

ただ見つめ続けた。



 
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コメント

  • 2017/06/27 (Tue) 18:39
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  • 2017/06/27 (Tue) 22:07
    No title

    自分の心まで引き千切ろうとするユノ…
    自己防衛
    無意識な自虐
    どこまで 孤独なの
    どこまで 闇が深くなるの
    そこに 届く光は あるの?

    また コメント しちゃいました、りょうさん 泣きながらこれを
    書いてるんだよね…

    • ゆうちゃんみん22 #-
    • URL
    • 編集
  • 2017/06/27 (Tue) 23:24
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