片割れ chap.12 #2








「会いたかったー!お久しぶり、チャンミン君っ!!!…っ、お願い!ハグさせてっ」

「ふふっ、はい。ありがとうございます♪」

「きゃーっ♪あ、ありがとう…っ。はあ、チェガン・チャンミンって本当に格好いいわね…!」


キュヒョナのお母さんに盛大な歓迎を受けて、ちょっと気恥ずかしいけど軽い抱擁を交わした。でも自分の母親がキュヒョナのことをこんな風に絶賛したら複雑な気持ちになるかもしれないと振り返れば、予想に反してキュヒョナは嬉し気に笑ってた。いつもの憎まれ口を叩きながら。


「はあ、、実の息子より息子の親友の方が好きってどういうこと……」

「ギュヒョンうるさいっ、めっ!」

「、、、俺知ってるんだからな……母さん、チャンミニの顔付き靴下履いてるだろ……。止めて、本当に恥ずかしい…」

「ギュヒョンーっ!もお!!!」


チョ親子の賑やかなコントをミノと大笑いしながら見てキュヒョナの部屋へ向かった。とりどりのお酒やつまみを大量に持ってきてくれたお母さんに感謝すると、こちらこそと返してくれる。


「ギュヒョンが事務所に入った時もチャンミン君はとっくに超スーパースターだったのに、垣根なく新入りの息子によくしてくれて本当にありがとう。一生忘れないわ」

「いえいえいえいえ…っ、そんなそんなそんなっ。だってキュヒョナは同じ学校で同じ年でしたし!それに僕の周りはヒョンばかりだったので、キュヒョナがいてくれて僕の方が救われましたよ、はは」


それからもキュヒョナのお母さんは、なんでこんなにいいコなの!?とか、心も外見も綺麗過ぎて胸が苦しい!とか散々に褒めちぎってくれて、キュヒョナが「でもこいつら豚みたいにめちゃくちゃ食べるよ」なんて台詞さえ嬉々としてどんどん食べ物を運んでくれるから、甘やかされるようで恥ずかしい。暖かくってくすぐったくて、小さく縮んでしまいたい。
照れ隠しの苦笑いしかできない自分が歯痒かったけど、本当は胸いっぱいに嬉しかった。
でも僕の心を最も動かしたものは、これ。


「チャンミン君の歌が本当に大好きなの!聴くといつも頑張ろうって気持ちになるの。これからもずっと聴かせてね。応援してるわ♪」

「……。はい、一生懸命頑張ります。ありがとうございます」


もっとうまく、もっといい曲を、
もっと聴いてくれる人に届いて欲しい。
そう素直に思えるのは嘘じゃない。

本物の、僕の意志



「で!!!」「で…?」

「……」


賑やかな花を咲かせてくれたお母さんがキュヒョナに閉め出されて、部屋は一気に色を変えた。
寄ってくる。ヒタヒタと。
暗くて寒い足音が聞こえる。
今は聞きたくない音。


「でっ、て……言われても。。ユノヒョンと別れた。それだけ」


胸のざわつきに飲まれないように、あくまで客観的に、事の顛末だけ簡潔に。


「それだけって…、俺別にユノヒョンのことは?なんて言ってないし。すぐユノヒョンの名前が出るってことはチャンミニが一番気にしてるってことだろうが」

「だからそれは……お前がこの前話せってしつこかったから…」


ミノの注いでくれたワインを飲めばビールとはまた違う華やかな香りが僕を包んで離さない。タンニンの美味しいこの束縛に漂っていたい。


「んー、これ美味しいねっ」

「チャンミニ逃げるな、マジで。お前今本当にヤバいって気付けよ。このままだと本気で鬱病かアル中になるぞ」

「なるわけないだろ、体も動かしてるし漢方も飲んでるしゲームもしてる。普通に生活してるじゃん」

「ミノ、聞けよ。こいつん家今ビールだらけだから。缶の残骸だらけの中で蝉の鳴き声録音したやつずっと聞いてるんだぞ、ヤバくない?」

「……。へ!!?」

「もういいって…っ、ほっとけよ!」


イライラする。本当にイライラする。
気休めに額を掌で冷やした。髪を掻き上げて引っ張れば頭皮が悲鳴を上げる。そんな痛みじゃ治まらない。


「チャンミニヒョン……あの、、ユノヒョンに……ふ、振られたんですか……?」


だけどあまりにミノが可哀想なくらい顔を歪ませて覗きこんでくるから無碍(むげ)にできなくて、つらい。
首を横に振って返事をした。


「違う……。。……僕が振った……」

「はああ!?」「は!?」

「一緒に寝てるところを見つかって。マネヒョンにバレてヨンミン代表と話し合いになった、、」

「は…?」「え……」


思い出したくない。記憶を消し去りたい。
抑揚のない言葉に乗せても瞼の裏へ焼き付いた代表室の光景と臥せったユノの震える肩が見える。


「……もうどうしようもなかった。ユノヒョンは息巻いて結婚しようとか有り得ないこと言い出すし。代表は代表でヒョンの痛いところついて揺さぶりをかけてくるし……、、」





とてもとてもつらい

僕の傷





「……そうなったらもうお終いだよ。僕が振らなかったらユノヒョンが振ってた。どっちにしても別れてた。どうしようもない……」


呆然としてる2人が可愛いらしくさえ感じる。僕はもっとずっと深いところで呆然ともできなかったから。
もしかしたら人から聞けば笑い話のような出来事なのかもしれない。そう思うと、僕も鼻で笑えた。ワインも進む。
空いたグラスを自分で満タンにして、贅沢な赤い果実酒を口の中で転がしてただ遊ぶ。
美味しい。なんかもう何でもいい。
恋とか愛とか幸福とか。
馬鹿らしい。


「振るってお前……、じゃあ…別れようって話を切り出したのがチャンミニなだけで、ちゃんとユノヒョンとは話し合って決めたんだろ?でもチャンミニがこんな風になってるってことは、お前は納得できてないんじゃん。別れるなら別れるで、もっとユノヒョンと話し合えよ…」

「本命の彼女がいるってことにした」

「は?」「ん?え、誰にですか?」



どうでもいい

全部

 

「僕に。今までもヒョンと付き合ってたのは単なる成り行きで、影で女の子とも男とも遊びまくってたってことにした。そうユノヒョンに言ったら、簡単に別れることになった」

「……」「……え、あのそれは、、」



どうでもいい、本当
消えればいい、全部



「なあ、、…なんで?なんでそんな嘘ついた……?」


「話し合いなんかしてもどうせいつかは別れたんだから。そっちの方が手っ取り早い」










ただユノを好きだった




それだけ

 







「お前……、表出ろ……」

「……」


キュヒョナの恐い顔が近づいてきて、


「お前マジでくそだわ。出ろ。お前が来るってはしゃいでた母さんが泣くから表出ろ」


無理矢理立たされて歩を促すように背中を何度も突かれて、


「ちょ、キュヒョニヒョン…!!」






庭の隅でボコボコにされた。

ボッコボコ


キュヒョナはそんなに力が強い訳じゃないからへなちょこな張り手も腹パンチも味気ない。でも精一杯の不恰好な蹴りまで飛んできて、何故か必死で止めようとしてくれるミノの方が邪魔な気がした。キュヒョナと話したかった。いや、言いたかった。僕が。誰でもいいから。聞きたかった。
どうしようもない僕たちの現実を。


「お前さぁ、何?好きだからこそ嘘までついて身を引いた僕の美談、だとか思ってんの?」

「思ってない」

「じゃあそれ言われた時のユノヒョンの気持ち考えたか!?」

「僕がユノなら逆上して殺してたよ!!」

「だよなあ?結婚まで考える相手にさ、そんなこと告白されてさ。ぶっ殺してやりたいって思うよなあ?ふざけんなって思うよな!?お前は罪の意識で飲んだくれてればいいだろうけどな、傷付けられた人間の方がよっぽどつらいぞ!?」

「だったら教えてよ」






ねえ、誰か



教えてくれませんか?







「事務所が暗黙の了解で僕たちのことを認めることってある!?世間にバレたら事務所まるごと潰れてキュヒョナもミノも社員全員韓国中から火炙りにされるだろうけど大丈夫かなあ!?そもそも兄弟同士の同性愛を気持ち悪いって誰も思わない!?」







どこまでゆけば



ユノと僕は赦されたんですか?






「TOHOSINKIも絶対辞めたくないしブランドも落としたくない!キュヒョナのお母さんみたいにあうやって応援してくれるペンの皆を見るともっと歌いたいって思う!僕みたいな奴でも夢を持てる!歌って踊って、ユノと一緒に同じ夢をみれる…!!」





何かを得るためには

何かを捨てなればいけないって、



それが現実というものですか?









自分の半身のような存在でも


駄目なんですか?















……そうですよね、


ユノと僕だけは駄目ですよね






それさえ無ければ







みんなうまくいきますもんね









「あの、僕はチャンミニヒョンに賛成ですよ!!ユノヒョンにはそれくらい言わないと決着が付かなかったでしょうし、チャンミニヒョンだって十分苦しかったと思います。それに僕たちにはやっぱり一番ステージが大事じゃないですか、キュヒョニヒョンだって分かりますよね!?」

「分かるけど……」

「僕も分かります!チャンミニヒョンの気持ち分かります。ね、ヒョン。頑張りましたよ、今日は飲みましょうっ」


ミノに手を引かれて部屋へ戻る途中、後ろからついてくるキュヒョナがごめんと言ってきた。でも僕はキュヒョナこそ真の友達だなと思えて肩を抱き寄せてありがとうと言った。

『ごめん』があって、『ありがとう』がある。
これもユノに教えてもらったこと。


とことん3人宴会を楽しんだ後、キュヒョナがユノヒョンに申し訳ないって寝る場所をそれぞれ別々にした。ミノはグズったし僕もそこまでしなくてもと思ったけど、「俺はまだ死にたくない。雑魚寝で何もなかったって言われても俺がユノヒョンだったら逆上して殺すよ」って僕の言ったことをもじるから面白くて、笑って。

有り難かった。

キュヒョナは自室、僕は留学中らしいお姉さんの部屋、ミノはリビングのソファであかした夜、一人決心したのは1日に飲むビールの数を減らすこと。本気で僕たちのことを考えてくれてるキュヒョナへの『ありがとう』の姿勢になればいい。
でもごめんね。








蝉の声は、消せない。







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コメント

  • 2017/06/25 (Sun) 18:47
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  • 2017/06/25 (Sun) 19:44
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  • 2017/06/25 (Sun) 19:47
    No title

    ギュライン、、、、

  • 2017/06/25 (Sun) 22:41
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