片割れ chap.11 #14









______Y.side______ 






痛みに蝕まれて

錯乱していく色彩の中で




「だからその時は、僕も一緒にいってあげる」




樹氷の月明かりが

俺たちのカタチだけを照らし集めた









戯れ男(たわれお)らしい口先だけの慰めと言えばそれまでだけど。
だけどそれは我を見失った今の俺の姿を晒す、鏡のような冷たい力強さを持っていた。


「ゃ…」


おいおい、俺今確実にヤバい奴だろ。何考えてたんだ、俺っ!こら!!
急速に頭が冷えて寒いくらい。さっきまで熱かった手も、指先に冷たさを感じるほどに落ち着いてる。まるで何かが悪い熱だけ奪ってくれたように。

やっと正気に戻れて前を見ると、赤く色付いた顔で目だけキョロキョロさせてるチャンミンが居た。口はすでに硬く閉じてさっきの言葉の真意も弁解も何も言う気はないみたい。
自然と口の両端が上がる。


そういう所も、大好きだったよ


探りたくて堪らない。
チャンミンを追い込んで本質を裸にしたい。
だけど勇気と慰めをくれた君に、俺ができることは現実のチャンミンを認めることだから。

しっかりチャンミンの料理を食べて、
しっかりチャンミンを遠くから見つめよう




「ねぇねぇ、このゲーム知ってます?面白いっすよ♪」

「ん?そうなの?」

「そう、連鎖で消すやつ。ユノ、一緒にやろう?」

「いいよ。アプリ落としてよ」


食事が終わって座り直した白い革製ソファー。こんなの買ったんだなって思いながら、その隣に腰を落としてきたチャンミンにスマホを預けて、嬉しそうに画面を操作する横顔を見ると嬉しい。
無意識に真新しい金色の髪を撫でる自分の手は、時間が掛かりそうだけど離していかなくちゃいけない。


チャンミンは俺を好きにならない






チャンミンは俺の片割れじゃない




「え、何これ、けっこ難し…っ、」

「僕が確実に勝てるゲームをお薦めしてあげました。やるって言ったよね?」

「……。があーーっ!絶対勝つ!」

「課金してアイテムゲットする手もありますけど」

「いや地道にやって強くする。そんな卑怯なことするかっ」

「はあ!?別に卑怯じゃないでしょ!?」

「……」

「何すかそれ、いつも課金してる僕に対する嫌味ですか!?」

「……」

「聞いてるか!?」

「チャンミナうるさい、集中できない。静かにして」

「…イラッ」



楽しい



チャンミンは知らないだろうけど、俺は見てた。

騒ぎ立てる社員たちに囲まれて、真ん中でぽつんと萎縮してる大物練習生。もっと喜べばいいのに、もっと自分をアピールすればいいのに。まるで他人事みたいに、早くこの輪から解放されたいって顔の後輩。
何であんな態度取れるんだ?って。まるでドラマのような展開とシーンの連続なのに。
腹が立って腹が立って。
……羨ましかった。

だけど俺にそんな奇跡は用意されていなかったから。高層マンションや高級車を見てはいつかここに住んでこれに乗るんだって、ひたすら夢や希望を仲間と語りあってた休憩スペースで。俺はやる気を口に出して頑張るタイプだし、そういう奴らとばっかりつるんでた。辞める心配がないから。
そこにふわりと、軽やかに。
俺たちの横を涼しげに通り過ぎていく小綺麗ななで肩の男の子。
理屈じゃない、何か話すきっかけがない限り近付けない。オーラ。そういう星の元に生まれた人間。ラッキーなんかじゃない、スカウトの目って本当に凄いんだなって感心した。

チャンミンは自分を主張しないのに辞めない。可愛がってた後輩の方が辞めていく。
理解できなくて。苦手で。裏を返せば。

俺はずっと憧れてた。



「イエーイ!また僕の勝ちですね~い♪次の勝負でタブルスコアになるなぁ~♪」

「あれ、、何か…聞こえないか?誰かのすすり泣きみたいな…まさか本当に幽…」

「うおわああああ!!?」

「はい、スタート!次は勝つ!」


突進してきたチャンミンの体を背中で守ってやる振りしながら、チャンミンの鼓動を聞いた。



憧れは、憧れのままに終わる。





また蝕まれても








また、熱に狂っても























______C.side______







ぎゃーぎゃー言いながらユノとスマホゲームをしてて、僕は時間のことなんて忘れてた。


「お、もうこんな時間?そろそろ帰るわ」

「え……、、」


適当に買った掛け時計を反射的に見て、気分が音を鳴らすほど落ちる。「ユノが帰る」って初めてで、落ち着けない。


「この前江原道に行った時、小学生くらいの子たちが遊んでてな?」

「あ、うんっ」


ユノの話が突然始まってすごくほっとした。ユノは一度話し出すと長い。同じ話を何度も繰り返したりするけど、その話は初耳だ。


「俺はマスクをしてたから遊び心で、『TOHOSINKIって知ってる?』って聞いてみたら、皆知らないって言うんだ」


僕は何もしない。ただ頷いて、ここに居るだけでいい。
この人はすでに、答えを持っている人だから。


「じゃあ好きなグループは?って聞くと、『ビーストだ』って」

「ふふ。ビーストは人気ありますからね」

「うん。俺たちずっと何かをやり続けてきたはずなのに、韓国では俺たちのこともう知らない子がいるんだよ」


前のカムバックから1年8ヶ月ぶりのアルバムリリースになる。アイドルとしては異例の空白期間。移り変わりの早い韓国で、海外活動の多い僕たちのことをまた待ち望んでいてくれる人達はどのくらいいるのか。


「ブランクがあった期間、色んな後輩たちが出てきてるもんな」


ユノの言葉にまた頷いて。昔その『後輩たち』だった自分を思い浮かべる。
まだ目的も分からず無我夢中で試行錯誤してた。
あの時の僕が今の僕を見たら、何て思うんだろう?教えてやったらどう反応するんだろう?
僕の目的は、ユノだよって。


「でも俺たちのことデビューからずっと好きでいてくれるペンは、俺たちと一緒に年齢を重ねてて…。それってすごいよな?小学生だった子達がもう20代になってるんだから。そういう意味ではただのペンっていうより、ペンはもう一人の俺たちのメンバーだよ」


だけどユノが一番大切にしてるのは、
ペンなんだ。

何もかもユノは、夢で生きてる。


「そのメンバーに誇ってもらえるような俺たちでいれば、また広い層のペンが増えて、今の小学生の子達にも認知されるようになるよ。カムバックでテレビやラジオに露出する頻度が多くなるし、頑張ろうな?」

「…はい」


僕はユノに生かされていて、ユノは夢に生かされていて、夢は僕を必要としている。
このロジックは、絶対。


「よし、じゃあまた明日なっ」


勢いよくソファーから身をのりだし玄関へ颯爽と足を進めるユノの後を付いていく僕の行動は、礼儀でも何でもない。帰って欲しくないから。


「たまには僕も…宿舎行っていい?」

「うーん…、いや。ちょっと勘弁して。たぶん、またこっち来るわ」


待つのはもう嫌だ。
そう思って何となく甘えるような、そんないい感じで聞けたお願いごとをばっさり切られた。


「…っ、そう言ってユノは色んな集まりがあるから、なかなか忙しくて来てくれないでしょ?」

「あはーはーはぁ♪」


流された。焦る。
とにかく。どうにかしないと。
自分のハーフパンツを掴んでる場合じゃない。
目の前で揺れる広い肩をさっきみたいに掴まないと。掴まないと。





ユノはもうここに来ないつもりだ。











片割れ chap.11
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コメント

  • 2017/05/29 (Mon) 19:18
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