片割れ chap.11 #11








奢って欲しいとか暇してるなんてただの口実で、


あの幸福を感じた宿舎で過ごしてたように会いたかった。会うならどうにかして部屋に来て欲しい、そう思ってた。

でもズタズタにユノを裏切った体裁の僕にそんな贅沢な注文を出せる権利はないから。
自分にできることを精一杯やって過ごしながら。


ユノからの連絡を、1日1日待ってた。


「へー、やっぱ綺麗にしてるなぁ」

「適当に座って」


まだ必要最低限しか置けてない簡素な部屋のあちこちから小物を取っては置いて取っては置いてを繰り返すユノに4人掛けのダイニングテーブルを勧めて、僕はさっきやっと包み終わった餃子と即席スープに火を通す。ご飯は炊けた。
僕は食べた体(てい)にしちゃったけどユノはまだ食べてないはず。


「ヒョン、まだ食べてないですよね?」

「あー、うん。でもいいや、チャンミナも食べたんだろ?」


食べてません。超絶腹ペコです。


「いや、適当に用意したんで食べちゃって。僕もまだ食べれるし」

「うーん」


歯切れの悪いユノを背中で受け流しながらフライパンにこんもり並べ焼いてる餃子の火加減をみながら蓋をして蒸らして。その間に温め直したスープの火を切って、赤ワインとキュヒョンから授かった焼酎をテーブルに並べた。一本だけ缶ビールも僕用に添えた。


「……料理の手際かなり良くなったよなぁ、」

「そう?どっち飲みます?」

「焼酎かな」


やっぱりユノは焼酎もいるよね。キュヒョナよ、ありがとう。愛してる!お前のおかげで今日という日が気持ち良く終わりそう。
ユノと乾杯して一口だけビールを飲んでまたコンロの前に立つ。美味すぎる黄金の液体。


「俺もビール一口もらっていい?」

「どうぞ」


僕のビールに手を伸ばしたユノがこくんと喉を鳴らして、持った缶をそのままじっと眺めた。


「そう言えば、今日スタジオでチャンミナの芸名の話になったわ」

「へー」


ちょうどそれがMAXという名前のビールだから思い出したのか。いや、そうだろう。そうに違いない。
ユノの思考回路がぶっ飛び過ぎてて些細なことも疑問になる。

さっきのだって何なの、あれは。ドア開けたら走り去ってゆくユノに愕然とさせられて。靴も忘れて飛び出して追いかけたのに、なんでいきなりゴキ●リと幽霊の話になるの?おかしいでしょ、完全に。しかも勝手に出たと勘違いして退治するとか言っちゃって……笑いそうになる反面、怒鳴り倒さずにはいられない。


「お前言われるままに決まっちゃったよな、チェガンって」

「ねー。今も笑われますもん、『何、最強チャンミンって?』って」

「あははっ」


あの頃は苦手だったユノとやっと少し打ち解けてきたところで、ユノの夢への熱さを目の当たりに感じてた。本気の人間の熱量を浴びた。
それは今も何ひとつ変わってない。


「あの頃、録音スタジオとか練習室でよく寝てたのにお前『寝てない』って言い張ってたろ?」

「あー、、ありましたねぇ。懐かしいぃぃ」


僕はと言えば、学校と事務所と二つの塾を毎日目まぐるしく駆け回ってた。何もかも頭と体に詰め込まなければいけない日々で、歩行中何度か意識が飛んだ。空いた少しの時間でも寝なければ危なかった。


「なんで?」

「はい?」

「なんで寝てるのに寝てないって言ってたんだ?」

「……」


それは……。


「なんで一生ものの自分の芸名を人に任せられたの?だってTOHOSINKIなんてダサい名前つけちゃう先生達だぞ?」

「ぶっ、くくくくっ、確かに。ですよね…っ、ふふ」

「チャンミナなんで?教えて?」

「……嫌です」

「えーーー」

「はい、できた。食べましょう」


ユノがこてんと首を傾けて柔らかく微笑んでくれるから、僕は急に恥ずかしくなってしまってお得意の天の邪鬼で自分を覆った。

ご飯をついでスープをついで、多めに作ってしまった餃子も順々運ぶ。
実はユノが最近あんまり食べないのが気になってて、僕の作った料理なら食べてくれるんじゃないかと内心思案してた。上出来でも不出来でも僕が作ったものを、ユノは残したことがない。
密やかなる自慢。

大事なことはいつも言えない。
大嘘はあんなにすらすら紡げたのに。


「おー、美味しそうっ。なんか、、すごいいっぱいあるけど…、、」

「僕も食べるから大丈夫」

「?さっき食べ足りなかったのか?」

「…ええ、まあ」




本当のことは言えない。昔から。




「もう一回、乾杯しましょ」

「おう、お疲れさま」

「お疲れ様です」





ユノ











僕が寝てたと



素直に認められなかったのはね







「おっ、美味しい」

「イエース」




いつも本気なユノに










落胆されたくなかったから

ユノに迷惑がられたくなかったから




芸名がいいとか悪いとか問題じゃない。

早くグループに適応しないとって、
僕の大部分はそれで埋め尽くされてた。




きっとあの頃から、ずっと



「ラー油どこ?」

「そこあるでしょ」

「あ、ほんとだ」



ユノの隣に居たかった。














僕の人生の中で最も強烈に思い出せる人は変わらない。
僕の中の不変の人。





『あの、チャンミン君』

『はい?』


裾の擦り切れた使い古しのジャージに大量の汗を染み込ませ、貫くほどに鋭い真剣な眼差しの先輩。





『ここで練習生を少しやって辞めるんだったら、早く辞めて下さい』



『え…』

























僕はユノに恋をした。





片割れ chap.11
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コメント

  • 2017/05/21 (Sun) 20:12
    No title

    私はそんなチャンミン君にハート鷲掴みだよ。

  • 2017/05/21 (Sun) 20:59
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  • 2017/05/21 (Sun) 21:40
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