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片割れ chap.11 #10








______Manager.side______






どうしていいのか分からない。


きっちり真摯に活動準備をこなしていくのに加えてさらに、うやむやにしたかったオトナタチノオドシにまで対応してくるチャンミンが迫ってきて俺に矛盾が生まれた。


『何でもうしなくていいんですか?』

『いや…もう性病検査はいいから。……ほら、精神的にもつらいだろうし、お前達が間違いに気付いてくれたらそれでいいんだよ…』

『一度決めたことはやりましょう、僕やります。陰性なら陰性の結果をちゃんと目に見える形で出した方が、事務所も安心ですよね?』

『……おう……まあ、、』

『噂を聞いて不安で気分悪くなったスタッフさん達もいるでしょうし、申し訳ないです…』

『いや、…そんなことは…。……』


俺はチャンミンの男としてのプライドを守ってやったはずのに、何故かチャンミンを傷付けてる。
二人の将来とチャンミンのことを思って対処してたはずなのに。

異常から正常へ。黒から白へ。何だか、違う。いや、間違ってない。……。分からない?いや違う、正義だ。なのに。どうして。


『それと僕のマンションの部屋、盗聴器とかで事務所から監視されてるってことはないですよね?もう事務所の宿舎じゃないんで、もしあったら止めて欲しいんですけど』

『!あるわけない。こっちも日本の宿舎も定期検査で確認してただろっ』

『ああ、そうでした。じゃあ宿泊先のホテルとかも予め確認してくれてるってことですか?』

『、』


ユノを騙して、根掘り葉掘り聞き捲ったホテル名の数々とユノのストーリーにぐわっと頭の中を埋め尽くされて、返答に一拍子遅れた。


『もちろん…。中には過激なサセンもいるから…』

『そうですか……。ユノヒョンと代表室へお邪魔した時、頻りにヨンミン代表がいつか世間にバレるぞと仰ってたんで不安だったんです…』


脅すよ、そりゃ。
脅してリスクが消えるならいくらでも言う。結果チャンミンはユノと別れた。正しい方向に戻った、それはつまり正義だ。


『うん、大丈夫だ。チャンミンはしっかりユノにケジメをつけてくれたし。今までもこれからも二人のことが明るみに出ることはない』

『でも改めて、よっぽど僕たちには個人の生活がないんだなぁと思いましたよ』

『…っ、何言ってるんだ。そうだ、一人暮らしも始めたんだし自由に彼女くらい作れよ。気を付けさえしてくれたら、大目に見れるぞ』


せめてプライベートくらいは自由に。
そう思ってたよな、俺

だけど口から出る俺の弁解がどれも罪滅ぼしの台詞に聞こえるのは何故なんだろう。

………。


このコ達のプライバシーって、

何だったっけ?


『そうですよね。事務所は僕たちのことちゃんと人として、守ってくれてるんですもんね。……疑ってすいませんでした…』

『……』


人(ヒト)としてって、何だっけ?


『もちろんマネヒョンからも。すごく僕たちのこと考えてくれてるのが伝わってますから。いつも本当にありがとうございます』

『……当たり前だ…、…』


でも実のところ俺は二人の関係を漏洩した元凶でしかなく、事態の収拾はチャンミンが背負ってくれてる。
それもこれもチャンミンがユノにおかしな感情まで抱いてなかったから。チャンミンはまともで、ユノはおかしかった。それが正解。大丈夫、俺は悪いことなんてしてない。

俺はそれだけが救いのように念じ続けてた。




なのにきっちり真摯に活動作業をこなしていく反面、どんどん食べれなくなってゆくユノの姿を見て罪悪感の膨張が止まらなくなった。


『ユノ…、もう少し食べれないか?体力無くなるぞ』

『あー…夏バテかな。。はは、大丈夫っ。体力には自信あるし。それよりスムージー飲みたいな♪』

『……また……?』

『うん。ごめんな、マネヒョン…』

『……』


俺が悪い事してる気分になっていく
俺が二人を痛め付けてる感覚に陥っていく


「俺は……俺の仕事をしてる……」


本当にこれで、……正しいか?


俺はユノとチャンミンのことを一番に考えてやってきて、これからもグループとしてやっていくなら絶対二人のためにこの禁断の関係は断ち切っておかなけばならない。もうプライバシーの侵害だとか悩んでる場合じゃない。仕事以外でユノをチャンミンに会わせちゃいけない。


そう決心したのに、チャンミンと電話してるユノが悪い。ユノの姿に動揺してしまって苦しい。
お前さっきまで冷静に会ってただろ?なんでそんな風になれるの?



「ほらっ。この前奢れって言ったろ…?」


ユノがあまりにもあたふた格好悪くて


「うん、すぐ行くからっ」


ユノがあまりにも嬉しそうに笑うから


「……っ」


心のどこか固めてた場所を、

ぎゅっと掴まれてしまった。


馬鹿で下手くそで、でも一生懸命で、形振りも構えないほど相手の挙動に一喜一憂する。
そんな燃え上がるような盲目的感情を何と言うのか、人は知ってる。


「忘れたくても、忘れられんぞ……」


だけど前代未聞の大騒動になるはずだった今回の事態がこんなに呆気なく終息したのは、チャンミンがユノに冷や水を浴びせたから。



火のようなユノに魂を揺さぶられて
水のようなチャンミンに窮地を救われて


どうしていいのか分からない。

















______Y.side______






指定された部屋の側のチャイムを押して、


「……あっ!」


このタワーマンション内にスジュの宿舎もあったことをやっと思い出した。

マズい。顔をあわせることはあったけどバタバタしてて、結局まだ奴らにちゃんと挨拶してない。手土産もないけど、一言だけでも「チャンミンをこれから宜しくな」って言っておかなくちゃ。

踵を返してスジュの階はどこだったか悩みながら小走りで来た廊下を戻っていると、突然肩口に圧迫を感じて驚いた。


「おわっ!」

「ちょ…ぇ、なんで…!?」


掴まれた肩から伸びた腕の先に、焦ったチャンミンの顔があって、よく知ってるその正体にほっとする。


「はぁ、脅かすなよー」

「いや、こっちがびっくりしますよっ。え、何ですか…え、、帰っちゃうんですか……?」

「は?」

「え?」


俺はチャンミンに会いに来たのにチャンミンがおかしなこと言うから、訳が分からない。でもとにかく必死な感じが伝わってきて、あーなるほどこれはと思った。


「出た?」

「……はい?」

「ゴキ●リ。あ、幽霊の方?」

「……。はああ!?」


口をぱくぱくさせて目を見開く姿にあながち間違ってないんじゃないかなと思いながら、できるだけチャンミンを優しく落ち着かせてみる。
男のくせにチャンミンはゴキ●リと幽霊が大嫌い。あと、戦争も。
でもチャンミンらしくてそれがいい。


「ヒョンが後で見てやるから。ちょっとスジュの所に一声挨拶だけ行かせて」

「…あ、それで……」


ピンときたらしいチャンミンから肩の力が抜ける感じが伝わってきて、一安心。さあ、目的を果たしに行こうと歩き直したところでまたチャンミンに止められた。


「ちょっと、いいですって。ユノヒョンが歩き回ると目立って色々面倒だから、早く部屋入って」

「いや、でもチャンミナがこれから世話になるだろうし…」

「いやだから…っ、もういいから入って下さいっ。僕だってもう子供じゃないんだら。ヒョンより一人でちゃんとやってけてます!」

「ぁ……そうだよな…」


別に子供扱いしてる訳じゃないんだけど、チャンミンのこと守りたいって気持ちが今も必ず俺の中にあって。それが迷惑なんだって事に今さらながら気付く。
チャンミンにはチャンミンの世界が在る。


「とにかく入って下さい。ね?」


抱え込むように背中をやんわり押されてチャンミンの部屋の方へ誘導されたら従うしかない。


「……」


でも元々気の強い俺は何だか悔しくて。
やっぱり一言スジュにはヒョンとして挨拶しといた方がいいだろとか、お前の方が俺を子ども扱いしてるだろとか、俺がまだ好きなの分かってるはずなのに気安く触るなとか。


「チャンミナっ」

「はいはい」


前へ進みながら、靴紐が解けて汚れてる俺のシューズと練習ダコの潰れた指を絆創膏で巻いたチャンミンの素足を見ながらそんなことを抗議しようと思った。



「……。ははっ。お前、なんで裸足なの?」



思ったんだけど、



「いやだって、、チャイム鳴ってドア開けたら、ヒョンが帰ろうとしてたんで……」

「…違うって。チャイムボタン押した瞬間にスジュもこのマンション住んでるの思い出してな?あ、チャンミナのこと宜しく言っとかなきゃって」

「はいはい分かりました分かりました、まあ。……とにかく良かった」


普段は絶対嫌がるはずの汚れた足裏を気にする様子もなく、ただほっとしたように1回だけぎゅっと目を閉じたチャンミンに、見事胸を鷲掴みにされてしまって。


「……、、」


ものすごく嬉しい

こんなチャンミンを側で見たら、誰だって心を奪われるよな。


「モテるわけだよなぁ…」

「え?いきなり自慢ですか?」

「いや、チャンミナのこと」

「なんだ、皮肉か」

「いや本当のことだろ。その髪型もすごい似合ってる」

「あ、これは…。色々悩んだんですけど、」

「すごい格好いいよ」

「ふふふっ、どうも。……今回のカムバック、久しぶりに韓国で本腰入れるんで。…少しでも見てくれる人に新しい姿を見せれたらなと思って」


やるなら前のカムバックより良くしたい
できなければ痛手を負う

チャンミンにはそれがよく分かってる


「…」


これが、





俺が恋をした人


同じ夢をみて、同じ夢で繋がってる人



「それにちょっとは印象に残りやすいかなって。たかが髪型ですけど」

「それだけじゃない、チャンミナはちゃんとやってるって」

「でもユノヒョンの言う通り努力だけじゃ確かに足りない。どうぞ、入って…」

「あ、うん…」




何もかもあげたい


何でもしてあげたい




この気持ちが変わらないのは


チャンミンが好きだから








すごく単純な理由






部屋へ招かれて俄然気合いが入る。新鮮なチャンミンの空間に少し緊張してる自分は置いておくことにする。


「よしっ!チャンミナ、どこだ!?」

「ん、へ?あー、すいません。タオルはそこの洗面所にあるんで濡らして持ってきてもらったら足拭け…」

「違うだろっ。ゴキ●リっ。あ、幽霊?まあ、どっちでもいいや。どこ?俺が退治してやるから!」

「………」


チャンミンはそっとそっと玄関の扉を閉めると、そこから怒涛の小言(大言…?)を寄越してきた。

僕の部屋にゴキ●リなんて出るわけないでしょ!?とか、そもそもあんたの思考回路はどうなってんの!?とか、ってゆーかおぞましい固有名詞を何回も何回も口にするな!とか、本当に幽霊出てきたらあんたのせいだからね!?とか、とにかくチャンミンが怖かったけど。


でも幸福だった時の二人に少し戻ったような感じがして、


(俺より気の強い所もいいんだよなぁ、)


なんて感慨深い気持ちで部屋の中に入った俺は分かっていたけど、もう一生チャンミンの虜。










片割れ chap.11
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コメント

  • 2017/05/20 (Sat) 14:36
    No title

    うん。ヒョンも。なんだけどね。

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