片割れ chap.11 #8











_____C.side_____



 



引き剥がしてしまった半分を



遺伝子が取り戻したいとうねる













ユノって、不思議























僕たち個々の人間なのにね

 




















______Y.side______







初めて会った時



ズルいなこいつ、って思った。




スカウトされたほどの素質

エリートだの、甘いルックスだの、
原石と持てはやされる注目度

高速のグループ決定とデビュー

誰もが羨望する大強運のラッキーボーイ



反する本人のお気楽さ









録音スタジオや練習室へ入るといつも寝てた。


『チャンミナ何寝てんだよ。こんな所で寝るなよっ』

『……、、いいえぇ~…寝て…はない……』

『いや寝てるだろ!横になって何言ってんだよ。やる気ねーのか、お前』


片隅で機材に紛れるように横たわらせた体をのんびり起こして、瞼をしぱしぱ瞬かしながらチャンミンは言い続けた。


『…いいえ、寝てません。……ちょっと…考え事してただけで…、』

『…はああ!!?嘘つけよ!寝てただろう!?』

『寝、てません……』


デビューして間もない頃まで、よくチャンミンとそんなやり取りをしてた。

何故チャンミンは嘘をついたのか。
本当に考え事してただけなのか。


10年近くたっても、未だに理解できない謎













あの時と同じ場所の録音スタジオで、今ミキサーを調節してる音楽スタッフ達はもしかしたらそんなチャンミンしか知らないのかもしれない。


「やっぱり凄いな、チャンミンは……」
「よくハイトーンボイスとかロングトーンボイスとかシャウティング中心に注目されるけど、できたら彼の歌声を全体で感じて欲しいね」
「3オクターブ…楽曲がないだけで4オクターブは出せるんじゃないのか?」


会話に思わず口を挟みたくなるのは、それが才能だけじゃないから。チャンミンは周囲の期待や自分の人生に葛藤しながら飛び越え応え続けてきた。俺が証言できる。

チャンミンの歌声は、努力の結晶


「いえ、レンジだけじゃなく…チャンミンは緩急の付け方も発声方法も、ブビラートの使い分けも…あと表現力とか共鳴感っ、キラキラ光って突き抜けてやっぱりキメてくる感じ。どんどん進化して広がってますよっ。それに…」


それに眼に見えてダンス面が発展してきた。

負けられない、やるしかない
俺も歌でさらに表現したい

より強く思う。


「うん、ユノもよくやったしな。曲ごとに色んな歌い方に挑戦して二人の意見も沢山入れて…次のアルバムはこだわり抜いたもんな」

「もちろんですっ!」


そうせざるを得なかったのは、チャンミンが居てくれるから。俺がどうこう言わなくてもやるんだから、俺はさらにもっと頑張らなきゃ。


「ってか何回目だっ、マンネ自慢。俺たちも長い付き合いなんだし……くくっ、分かってるから♪」

「あー…はは、そうですよね…」

「でも確かにユノの言う通り。歌謡界の最強に相応しくなってきたよ。MAXって、元々そういう意味で付けられたんだろ?」

「!あはーはーは~っ♪はい、俺は自分で自分の芸名を決めましたけど、チャンミンはスマン先生に提案されて為すがままで……」







もしかしたら初めて会った時にはもう、



憧れてたのかもしれない








頭脳明晰

漂う高貴な雰囲気

都会の風






神格化したくなる優しい微笑み

 
どこから覗いても面白く美しい心




それを如実に反映する


不変の、





綺麗な瞳


  






「……だと、、」


今でさえ



顔面をべろんと手で拭っても痛みは消えない。千切り取られて残った傷は瘡蓋(かさぶた)さえ作らない。


「ところでユノは、ちょっと急激に痩せすぎじゃない?」

「マネージャーも食が細くなったって心配してたけど大丈夫なの?」

「あー…、カムバックを控えてるからダイエット頑張ったんです♪どうです?昔の俺の体型に戻ってきたでしょ♪」


痛くて痛くて。痛みに感覚を蝕まれて。


「はぁ~、さすがプロだねーユノは。磨きが掛かって格好いいよっ」

「あはーはー♪」








ご飯が、喉を通らない。


料理が目の前に出てくると、チャンミンが彼女と食べる練習用に作ってた『ついで』の手料理と、幸福を全身に浴びたと勝手に一人で盛り上がってた俺とのちぐはぐさ加減がよみがえってしまって、嘔吐感がせり上がる。

食べ始めてもすぐに胃が悲鳴を上げる。甘いもので凌いで誤魔化してまた食べられない。
筋肉トレーニングとチャンミンの料理でいい具合に減量できた体が加速して削れていく。

前はチャンミンが足りないから食事で満たしてた。だけどチャンミン自体が居なくなると、ユノ・ユノを脱いだ俺はこんなにも弱い。


「痩せても痩せてなくても格好いいわっ!いいよな、イケメンの奴はっ!」

「あははっ、ありがとうございます♪」




今までの恋愛が何だったんだろうと思うくらい、過去の経験も役に立たない。苦しい時だって何でも乗り越えてきたはずなのに。

こんな格好悪い自分知らない
本当に参る


「あー……、本当……、、」




好きだな

なんでこんなに惹かれるのかな




色々考えてみたんだ。
圧倒的に同じ時間と仕事を共有したせいなのか、男への恋だったから逆にムキになってるのか、それともメンバーだから気まずくなるのが嫌?周りに言いふらした分、体裁悪いから?
だけど何を考えてみても、どれも当てはまらない気がする。




なんでこんなに好きなんだろう


あんな恋愛にどうしようもない男





「でもユノとチャンミンって、高音の声が似てるよね」

「そうだな、骨格も咽頭のポジションも違うのに」


「……」


答えは見つからないまま、プライベートのチャンミンに会える口実を探してる。チャンミンと同じ部分を探してる。全く想いの違う二人だけど。

俺たち、どこかは繋がってるんじゃないか?




「普段の声も全然違うのに、不思議だね?」

「……ははっ。よく言われるんですけど、…実は俺もそう思います。何ででしょうね…?」




言うなればそれすら口実で、俺のこと好きにならなかったチャンミンに会う自信がほんの少しでも欲しいだけ。




「ちょっと……、お腹…空いてきたかな……」

「おー、食べたい時はちゃんと食べなよ。そろそろアガろう。今日はたくさん食べて、また明日からよろしくね」

「はい、こちらこそ。よろしくお願いします。お疲れ様です」




録音スタジオを出て合流したマネヒョンが今日も晩飯用の店を提案してくれる。でもあんまり聞こえない。


「久しぶりにイタリアン行くか?それともユノの地元の友達がやってる全羅道の店行ってみようか?」

「えっと、、どうしようかな…」


俺は電話派だけど、やっぱりコールに出るチャンミン側の反応が怖い。使い慣れてきたカトクを開いてメールで要件を伝えた。


『ご飯、もう食べた?』


一文を何回も間違ってないか確認して、さっきまで事務所に居たチャンミンに聞いてみる。


「どうかな……」


落ち着かなくて後ろ髪を意味なくいじる。
もう誰かと一緒に食べてるのか。それなら他の日でもいい。また誘えばいい。明日も明後日も会う。帰りがてら何気なく声を掛けて…チャンミンの言う通りメンバーなんだから、たまには晩ご飯くらい…。


「…ノ、ユノっ」

「え!?」

「だから。鳴ってるって、携帯」


マネヒョンに言われて慌ててスマホを見ると『チャンドリ』からの着信通知。昔から変えてない登録名に、マンネとメンバーと親友と家族と恋人としての。色んなチャンミンの顔が浮かんだ。


「もしもし?」

『ユノヒョン?』


一分一秒だって、
俺にとっては必要なチャンミン


「うん、カトクみた?」

『はい』

「……」

『……』


でも何て言っていいか。


「……ほらっ。この前奢れって言ってたろ?今それ、ふと思い出して…。チャンミナの行きたいとこどこでもいいんだけど、、あ、焼肉屋行くか?何でもいいよっ」

『あー、、』


声音の僅かな高低にドキドキする。
必要なものが、失いたくない怖さをつくる。


『もう食べたから奢ってくれなくていいですよ』

「あ、そっか……」


落胆と、


『なんで、軽く一杯やりません?』


有頂天を誘う。


「お、うん、いいよっ。どこの居酒屋にしようか?」

『僕もう帰ってきちゃったんで、僕の部屋でもいいですか?焼酎もワインもありますし』


すごく嬉しい


「うん、すぐ行くから」

『はーい』


少し上がり気味のチャンミンの返事にも嬉しくて、終話ボタンも気持ちそっと大事に切った。


「おい、ユノ…!!」

「……マネヒョン、」


マネヒョンの険しい目も気にならない。
未練と言えば、それまでの。こんな恋は初めてで、自分だって驚いてる。


「いいだろ?別に」

「社内でのお前達の噂がやっと納まってきたとこなんだぞ。どこ行くか知らんが控えろよっ」

「大丈夫、店じゃなくてチャンミナのマンションに行くから。それにあそこセキュリティ凄いんだろ?」

「ユノ、プライベートは距離を置けよ。編集作業やカムバックのミーティングで仕事中はべったり一緒に居るだろ。忘れたくても忘れられんぞ」


何が何でも会いたくて。


「でもチャンミナは俺に気を使って気まずくならないようにしてくれてるんだから。ヒョンとしてたまには会ったっていいだろ?」

「………何もするなよ」

「知ってるだろ。俺、振られたんだよ?もちろんまだ好きって気持ちはあるけど、たった一人のメンバーでもあるんだ」

「……明日の迎えは……宿舎か、チャンミンのマンションか。どっち…」

「後で連絡するっ!」




俺はまさに飛び出した。






何かに引っ張られるように


何かに呼ばれるように








片割れ chap.11
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すいません、ちょっと考えこんじゃってお休み頂いてました。すいません~っ。
Fc2


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