片割れ chap.11 #7









______Shim Jae Won.side______







僕は断言できる。
僕はスパルタだ。
自分でもそう思うし定評もある。僕のレッスンは大抵のグループぶっ倒れるし、練習生なんて男の子も女の子も容赦なく泣かせる。


「チャンミンいくよー、このテンポだからね」

「はい」


その僕をチャンミンは必要としてくれた。こっちにだって当然気合いが入る。
時間なんて気にしなくなるから、何時か分からない。カウントを取って叩く手の平がもうじんじん痛痒い。


「&1、&2、、ゴー!!」
「違うって!そこでタメて!」
「体流れちゃってるね。ちゃんととめて、一つ一つの動作を大切にして欲しい」
「チャンミン駄目。ポジション0からリスタート」


大きな鏡の前で1人、膝で腕を支えて今にもしゃがみこみそうなチャンミンにトニーと声を掛けていく。頬が真っ赤に上気して、顎先から汗が絶え間無く垂れ下がってかなり苦しそう。
本決まりになった曲のダンス構成がとにかくきつい。一回踊るだけでも大変だ。


「チャンミン、休まない。早く戻って」

「……っ、」


疲れたとかつらいとか、もう悪態をつく気力も無くなったチャンミンは、べろんとびしょびしょに濡れたTシャツで顔を拭うだけ。ふらふら起き直ってまたやり直し。


「もう一度」


やり直し。


「そんなんじゃ何踊ってるか分からない、もう一度」


やり直し。


「もう一度」




それを晩夏の蒸し暑い夜、練習室の空いてる日を全取りしてひたすら繰り返した。



「……熱い。足の裏が熱い…シューズ脱ぎたいです……」

「馬鹿か、捻挫したらどうするの。そのままやって」


1曲のために。
スパルタなんかじゃない、拷問に近い練習だった。


「チャンミン、もっと強弱つけて。前半は優しく、だんだん音の大きさにあわせて激しく、最後は吠え叫ぶように爆発して原点に還っていくイメージ」
「チャンミン、腰もっと落として!」
「強烈なダブステップと優しいピアノのメロディー、二種類のリズムがあるでしょ。どちらもがっちり掴んで体で表現して」
「腕で動かさない、肩から動かせ!」



でも一番常軌を逸してたのは、
チャンミンだったと思う。

やり続けるんだから、いつまでも


「1、&2…&!1、2、3、4、5、6、7!」


カウントする僕の手のひらは、最後の方には毎度感覚が残らなくなった。
でもただ練習すればユノと合わせられる訳じゃない。ユノのダンスが独特に見えるのは振り付けの解釈が独創的だから。自然と体がそう反応するよう細胞レベルにまで染み込ませてる。

3人でできる限りの話しあいもした。


「ユノを意識して」
「体の傾き合わせて。角度も」
「腕も同じくらいの長さだったからね♪だから合えばすごく綺麗に見えるよ!二人で1人だから、ユノと1人の人間になりきって」


でもそうすると、


「うん…だから真似じゃなくてね。。真似しちゃうと失敗して逆にヘンテコに見えるんだよ…」


チャンミンはユノを気にしずきてユノのコピーをしようとするようになった。
でもそれはチャンミンに限ったことじゃない。誰もが陥るスランプで、上達過程のひとつ。だから別に恥ずかしい事じゃないのに、そうトニーに指摘されてさっと耳まで赤くなったチャンミンが少し可哀想だ。


「…っ、どこ目指してやればいいのか分からなくなってき、ました……」

「うん、、」


やればやるほど迷走する。
でもやるしかない。
やらないとこの森は抜けられない。


「ユノが今でもたまに、振り付け逆に覚えちゃうことあるのは何でか知ってるよね?」

「マイケル・ジャクソンとかのビデオ観たままの、反転したままの踊りを覚えちゃった小さい時の癖です」




即答かよ。まあ、そうだよね…




「おー♪ユノは本当にマイケルが大好きなんだね♪彼は本当に素晴らしいアーティストだった!」

「ふふっ、うん……。本当に物凄くユノヒョンはマイケル・ジャクソンを尊敬してるよ」

「…ユノもさ、」







だって、

ユノと付き合ってたんだもんね……






「ユノもそうやって色んな人の影響を受けて、真似して、それこそ体に染み込ませるほど練習してきて今のユノのスタイルがあるんだよ。チャンミンは今のチャンミンにできる事をしよう、そこを目指そう」

「…………でも、、そんなんじゃユノヒョンと対に見えないんじゃないですか……」

「大丈夫、日本ツアー二人で大成功させたでしょ?その実績は本物なんだから自信持てるよね?」

「まあ、ちょっとおこがましいかもしれないですけど…ちょっとはあります」


チャンミンの顔が本当に嬉しそうに綻びるから、


「うん。自信持って、チャンミン……」


きっとチャンミンが
ユノに振られたんだろうなと思う。


2、3週間前に突如として事務所内で二人が付き合ってるという噂が流れだした。ユノがチャンミンにプロポーズしてるのを見たって阿呆なこと言ってる奴も中にはいた。
でもちょうどチャンミンが宿舎を出た時期で、その噂は付き合って「た」らしいという過去形に変わった。まあみんな酒の肴程度の笑い話として。
誰も信じてなかったけど、どのみちこんな面白い話題を冷やかさない手はない。


『チャ~ンミン♪ユノと付き合ってたんだってー?そうかそうかぁ~、分かるよぉー格好いいもんね、お前のヒョンはっ♪もうっ、何で別れちゃったんだよ、勿体ない♪♪』


「ふざけんなふざけんなふざけんな!マジで気持ち悪い、本当迷惑で気分悪いっ!!」って返事が返ってくると思ってたから。

なのに……、、


『……』

『ん?あれ?チャンミン?』

『……っ、、』


涙を目頭からぽろぽろ流しに流して泣くから、頭を鈍器で殴られたような衝撃が走った。


『…………チャンミン、、』


全然気付かなかった。
それまで完全に兄弟だと思ってた。
ってゆーか二人だけの大切なメンバーで何やってんだこいつら、とも思った。

絶対肉体関係まであると察したから。


『……ちょっと。ちょっと聞くけど、去年マディソンスクエアガーデンで公演した時、、っ、何あれ……痴話喧嘩してたの…?』


近すぎる距離までユノに詰め寄り色気を晒しながら謝罪して、ユノにパートナーだと言われて泣いて喜んでたチャンミン。
公演後打ち上げの中二人だけ抜けて帰った。

考えてみればおかしい。
兄弟にしてはおかしな二人だった、確かに。


『痴話喧嘩…じゃないですけど、あの時揉めてはいました……周りにバレないように、僕が距離を置きすぎて…、それにユノヒョンが怒っちゃって』

『……』


マジじゃん、これ……

疑いようのないチャンミンの独白に、頭が真っ白になって。


『……いやまあ、とりあえず良かった……元のヒョンとマンネに戻ったんだよね……?』

『…っ、…』




でも、






『……ぅぅ…っ、っ』

『……』




あの元気でいたずらっ子のチャンミンが

あんまり悲しそうに泣くから




『……チャンミン』


僕にとっては大切な弟だし、ユノもチャンミンも恩義や礼をきちんと人並み以上に尽くす真面目な人間だし、今までの二人を痛いほど知ってるから……どうしても責めることができない。


『チャンミン…泣かないで……』


僕には僕のできることをするしかない。





だからチャンミンも未練があってまだユノを追いかけたいなら、できることを最大限にすればいいと思う。

結果チャンミンはそれで
急速に成長していけるんだから






「今やりたいのはミスを無くしたいってことでしょ?チャンミンがダンスでこれだけは自信あるってところは何?」

「……正直自信ないです」

「はは…」「はは…」


TOHOSINKIの片方が言う台詞じゃない。


「…そうかぁ、、」


でも嘘のないチャンミンの本心なんだと思う。それにダンスで何か頂点を極めるつもりはありませんってついこの間まで言ってたチャンミンがここまで本気になってる。

これだから可愛くて仕方ないんだ、チャンミンって。


「自信がないならチャンミンは基本を完璧に体に染み込ませなよ。それがミスを防ぐことにもなるし、基本に自信がつけば精神的に余裕もできるから数年後には自分のスタイルだって踊りができるようになるよ」

「感嘆されるほど基本に忠実に!プロのダンサーでも最も尊敬されるスタイルの1つだよね♪」

「基本に忠実に……」


そうしてまたブツブツ何か確認するように考え込んだチャンミンの汗に濡れた丸い後頭部が可愛くて。

外見ももちろん要素としてあったのかもしれないけど昔から一緒に居た二人だし。じゃあ性別まで飛び越えてなんでそうなったのか考えると、チャンミンのこういう所をユノは好きになったんじゃないかなってふと感じる。それにしたって許されることじゃないけど…。




「……何やってんだ、あいつは……、」





ユノが正気に戻ったのか
新しい恋を見つけたのか






この時の僕は、若い二人の愛と背負うものがあまりに大きすぎて見えなくて





心の中で、ユノへ呼びかけた。









片割れ chap.11
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