片割れ chap.11 #2










僕は一人きりで

事務室の搭乗側の扉を開いて

歩き始めた。


だけど数歩行ったところでやっぱりユノをもう一度見たくて振り返ったのに、僕を吐き出した扉は冷たくパタンと閉まったところだった。


「ぁ……」




僕は一人きりで

たった一人で




「シム・チャンミンさん、KE2725便の関西行きですか!?」

「……はい」

「お急ぎ下さい!出発時刻です」


ガラス張りの向こうの空に、何万人もの僕たちを待ち構える赤い海の光景が重なる。


ユノが居ないから嫌だ、行きたくない
乗りたくない、帰って寝たい
何でユノも乗せてくれないの?
ユノが居ないとやれない、できない


話しかけてくれる小綺麗なグランドスタッフの女性にでも誰でもいいから、正直駄々を捏ねたくて仕方なかった。地団駄を踏んで転げ回って、ユノと一緒じゃないとヤだ!!!って叫びたい。
搭乗ロビーで待ち構えてたペンの子達が僕しかいないことに「何で?」って顔で呆然と立ち尽くしてる。



「……すいません」


だけどユノは

絶対来るって言うから











「走ります」


メンバーとしての信頼まで失いたくない。
その一心で前へ進んだ。




必要以上に息は上がって、


「…っ、なんで僕だけこんな目に…っ、」


頑張っても成長しても、努力しても、
幸福は奪われてゆく。


「はあ、はあ、はあ、はあっ」


サングラス越しに自分の息遣いを聞きながら、僕についてくる頭上の太陽を睨んで呪った。

機内の指定座席に着くと間もなく飛行機は動き出し、離陸後ベルト着用サインが消えてすぐに鞄からiPodと歌詞カード、今日のフェスの詳細書類を僕の両側の二つの空席に広げた。
分かっていたけど、スタートはユノの格好いいインパクトあるダンスとソロパートから始まる。


「MAXIMUM……」


集中したくても初っぱなから心が折れそう。
凍えそうなほど心細くて、頭を抱えて掻きむしるしかない。
こんなの無理だよ、ユノ


「………大丈夫っ。約束した…」


再び目線をプリントに落として、セットリスト順に曲を流し呟きながら二人の立ち位置をした。


大丈夫、来るさ
魅せてやるさ、TOHOSINKIを

もし僕一人だったら……
ハモる部分は主旋律を取って…
踊りは…ユノの見せ場はどうしたら…
……盛り上がる訳ない…


行ったり来たりを繰り返しながら、どちらかと言えばユノが居ない時の構想を練りながら時を刻む。それはもう僕がどうとかより、ユノが命に変えても大切なTOHOSINKIのプライドを守るため。


守らなきゃ

守らなきゃ


もうこれ以上ユノの信頼を失いたくない

絶対守らなきゃいけない。




着陸して空港で待ってくれていた現地のスタッフさん達と合流して、


「チャンミン、向こうから連絡あったぞ!ユノは1時の飛行機に乗れるって!たぶん4時間くらいの遅れで会場入りだから。本番には十分間に合うから安心してな!?」

「そうですか。じゃあ、行きましょう」


安心していいと言われたのに全然気が抜けない。移動中のバンの中でも資料を漁って、「神経質になり過ぎだよ」って笑われて。僕はあんた等の方がおかしいんじゃないかと思う。

長居スタジアムに着いて関係者に謝りながら挨拶を回って、リハーサルで先の先まであるステージに立った。


「……ふうう、、」













ひとり










しつこく付いてきた太陽とそれだけしかないのかってくらいの青空。


「……。皆さん今日は宜しくお願いします!!!」


バンドメンバーのたかおさんがドラムとシンバルと弾(はじ)いてくれて数人の拍手が返ってきた。今日は出演者でもあるSAMさんがマイクを通して声を掛けてくれる。少しの反響音を耳障りに感じながらスピーカーから出る大音量でしっかり会話していく。


「よし、じゃあチャンミン始めようか。ユノのパートのとこは抜かしても大丈夫だよ」

「僕が全部歌います。お願いします」




半分が足りないまま



全曲通しでできる訳じゃない。移動が多い曲をセレクトして限られたリハーサル時間の中で中央、サイド、3番1番1番、またサイド。ユノの位置も確認しながら位置を確認して。絶対忘れないように。発声の調子も掴みながら。喉の伸びを試して。トロッコの具合もみて。ユノの方も乗ってみて。確認。移動するタイミングはイントロが終わったら。この位置に来るのはサビに入るまでに。


「あの、SAMさんもう一度。ここのポジション僕が2番で、ユノヒョンも2番でオッケーですよね?」

「そう。この前のツアーとは違うから気を付けて」

「分かりました」

「チャンミン、そんな心配しなくても大丈夫だから。ユノは来るから。もっとリラックスして。楽しもう」



「………」



だけど皆そう言うんだ。

僕には理解できない。



「でも今は居ないじゃないですか」


周りから微かな苦笑いと失笑と。ユノがいないとそんなに不安なのかって皆思ってるんだと思う。























冗談じゃない、当たり前だ







「そっかそっか、うん。分かった。よし、じゃあハケて。もうすぐ開場時間だ」




















ユノのプライドを守るため



僕は必死だった。








片割れ chap.11
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コメント

  • 2017/05/03 (Wed) 21:51
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