片割れ chap.10 #28








______Hana.side______201X年






「ハナせんせーいっ!」
「ハナ先生、今日もお話よんでっ」
「おひるねのジカンになっちゃう。早く早く!」


軽やかな子ども達の声が、今日もころころ足元にじゃれてくる。


「いいよぉ♪今日は何がいいかな??」


木漏れ日の射す、真夏の昼下がり。蝉の鳴き声と暑い陽気に負けない、生命の集合体のような素直な心の持ち主たち。


「あたし、シンデレラがいい!」
「えー、オレそんな女っぽいのヤだ」
「猫がりょこうするお話ききたい」
「ぼく何でもいい…」


それでも一人一人が違う性格を持ち、違う考えを持ち、違う魂を一つずつ胸に持っている。


「あ、じゃあまたハナ先生が考えたお話!」
「それがいいっ♪」
「ハナ先生、お話考えてよ」

「あははっ。また先生のお話でいいの?」

「「「「うんっ!」」」」


保育園のお昼寝タイムの前の少し空いた時間、子ども達に本の読み聞かせをする。
皆の要望の本が揉めた時たまたま作った創作の話がうけて、それから子ども達は揉める度私の話を請うようになった。


「う~ん、じゃあ今日はどうしよかなぁ…」


子ども達から教室の外へと目線を移し、炎天下の園庭をぼんやり眺める。陽炎(かげろう)が揺らめく向こうの先に、自分の信念を見た。


「そうね、、」






ちょうどこの時期だった


あの地獄の季節は






「……みんな、サランって…分かる?」


「分かるかも。うちのパパがいつもママにサランヘって言ってる」
「好きってことだよね、大好きってこと?」
「サラン♪サラン♪」


「そう♪じゃあ人が昔、どんなカタチをしてたか知ってる?」


「赤ちゃん!」
「すっごいちっちゃかった!」
「僕しってるよ!?サルだった!」
「虫みたいなかたちっ」


「じゃあもっともっと!昔の昔はどうだったと思う?人もゾウも恐竜もクジラも、海も山も土もみんな一緒に暮らしてて、その上で神様達が見守ってくれながら生きていた頃のお話」


「「えーー!」」
「そんなに昔はわかんかいっ」


「ふふっ、あくまでも先生の作った物語だからね?昔は人ってね、……二人で一つにくっついていたの」


「「えーーーー」」
「「すごぉい!」」


園児を二人、背中合わせにしてそれを見せた。疑ったり感心したり想像がつかなかったり、皆それぞれの反応を見せてくれる。
この寓話を、無垢な魂はどう受け取るんだろう?


「…だから人間は、今の人間よりもっともっと色んなことができたの。前も後ろも見えたし、どちらにも歩けたし。誰かとお話をしながらもう片方で絵本だって読めたのよ」


「何でもできるんだ…」


「そうよ?片方が面白いことを考えたらもう片方がまた一つ面白いことを考えて。片方が悪いことを考えてしまったら、もう片方が良いことを考えて叱って。いつも一つに暮らしてたの」


「たのしそう♪」
「そっちの方がいいじゃん!」
「むてきってこと?」
「あたしピアノひきながらテレビみたいっ」


「うん、何でもできるからね。すごいの。でもするとね、何でもできる神様達が嫌な気持ちになっちゃったの」


「なんで?どうして?」
「悲しいことがあったの?」


「ううん、何も。何も悪いことはしてない。だけど…人があまりにも何でもできてしまうから、いつか抜かされるんじゃないかって神様達が怖がっちゃったの。一番は俺たちなのにって。だから神様達はこうやって……」


くっつけた園児の二人を離して……。
なんだかもうそれだけであの時のことが蘇ってしまう。


「…真ん中で切り裂いて人間を二人にして……今の私たちの体にしたんだって…」


「ええ?痛いよぉぉ~」
「ひどい…」
「ハナ先生、そんな悲しいおはなし嫌だ」
「あー、まじイタそうっ」
「ひどくない?だってめいわくなことしてないんでしょ?」


「……だよね。しかもね、二人に分かれた後、嵐を起こして波でさらって、どの二人が元々くっついてたか分からなくしちゃったの」


「「「「えぇ………」」」」


「…!」


思わず感傷的になってしまって、園児の暗い顔でやっと我に返った。


「いやいや、でもね!そこから、『じゃあ旅をして、もう片方だった自分の人間を見つけよう!』ってみんな立ち上がって探しだしたの」


咳払いをして、本題に入る。


「さて、ではここで問題♪旅に出た人たちは、どうやってその自分の片方を見つけたでしょうか??」

 
「うーん…、、」
「えー」
「かお!」


「顔は頭が後ろでくっついてたからお互い見たことないの」


「あ、そっか…」
「じゃあ声!」
「せ、いかく???」


「おっ、声も性格もあるかもしれない。でもまだ方法があるわよ?」


「え、なに?」
「えー、えー?」
「なんだ…?」


「……それはね、」


私という小さな存在にできることは少ない。

でもできることはやろうと、伝えたいことは伝え続けようと決めたの。








いつか



あの二人が認められる世界を








「…出会った人達の中の一人が、特別に好きだと想う気持ち。それが自分の片方を探す、ヒントになったの」


「きもちでさがせたの?」
「あたしいっぱい好きなこいる!!」
「すきなこが僕のかたっぽなの?」
「すきかぁー…、ふふふっ」


「そうよ、サランで探せるの。だから人を好きになる気持ちをみんな大切にしてね。そのこが……自分と同じ男の子や女の子でも…、何があっても必ず大切に……。だって本当に自分の片方と出会えたら、色んなことができるムテキになれるんだからねっ♪」


「おーたしかに…!」
「あたし男の子も女の子もみんなだいすきだよっ」
「ムテキ、カッコいい!」
「サランってすごいんだね」


「うん…。よしっ、じゃあお昼寝の時間だよ、みんな。電気消すよう♪」


「ハナ先生はもうムテキになったの?」
「ハナ先生の片方はどこ?」


「……いやそれが…、まだ見つからなくて…、、先生は探し中なのっ。先生はまだ探検中です!」


「「「あはははは!!ハナ先生、ファイティン!」」」


「あ、ありがとう…。。でも……」



言ってもいいかな…



「…無敵の二人を、先生の目で見たことはあるのよ?……凄いんだから、本当…。その二人はね………て、あら、、」


今までずっと閉まってた名前を、無邪気な子ども達にならどうか聞いて欲しい。
そう思って切り出そうとしたのに、私の園児たちはすでにあちこちバラけてさっさと大好きな小さい布団へ入っていってしまった。





「……もう。ふふっ、まあいっか」

「そのふたりは、本当にくっついてたの?」

「え」


背後の純潔な声に振り向いて見ると、クラスの男の子が一人。一人だけ立って、無垢な瞳で見上げてきた。大きな二重の栗色の、


「……チャ、…」

「ハナ先生が見た二人は、どんなかたちをしてたの?」

「……」


片方のあの人の瞳にぴったり似てる男の子。


「……私の作った、お話だから…」

「でも先生は見たんでしょ?」

「……まだ誰も信じてくれないの……、」


「何を見たの?」



「…………私が……見たのはね、まあるい…」








今でも覚えてる


神々の怒りをも買うほど















恐ろしいまでに美しい







発光













「…っ、……本当に一つの…っ、完璧な生物だったの…っ、、」



















蘇る熱い何かが、涙へ還って


あの日と同じくまた落ちた。






































______Assistant(Hana).side______地獄の季節










「……な、…んですか…っ、、これ……っ」


発する声が、震える。


「いいから…ちょっと酷すぎて他の奴らには頼めないんだ……。とりあえずユノが日本から帰って来るまでに割れ物だけは全部処理しろ。あと綿とか羽とかは…入れられるだけゴミ袋に納めて。新調する家具はカタログから適当に選んで業者に注文しといてくれ、後でユノがキャッシュで払うって言ってるから領収書はいら…」

「マ、スター……」

「……うん」

「…………ユノさんとチャンミンさんに、、」



血痕なき白い惨殺現場

そんな表現がしっくり似合う



「…っ、何したんですか…!!?」




世にも悲しい宿舎の成り果てだった。




「っ、人聞き悪いこと言うな」


竜の爪で抉ったような、何段もの切り傷が波を成している。カバーの下から飛び出して死んだ、白い羽根と白いクッションスポンジ。



「じゃあ何で部屋がこんな事になってるんですか!!」


マスターに意見する私は間違ってる。責めるべきは彼じゃない。
きっと私はクビになる。




「おかしいじゃないですか!!!」


 


でもね、私はもう



世界の真理に触れられたから





思うがままに動くの





「……別れさせたんですか…!!そうなんですか!!?」


マスターに一歩詰め寄ると散蓄するフェザーの羽根らが朧気に舞い上がった。スリッパの下でジャリリと、陶器製の欠片が砕ける。
マスターが溜め息混じりに話し始めた。


「俺は、その場にいなかったから分からない……。ユノとチャンミンが代表の所へ直談判しに行って……でも実のところ入れ揚げてたのはユノだけでチャンミンはそうでもなかったんだ。良かったよ本当…」

「……そんな訳…っ、ないじゃないですか…っ…!何ですか良かったって……、あんな…二人をっ…引き裂いて……っ、っ」


許せないと思った。
自分のことでもないのに。

なぜ皆見えないんだろう
あの二人の一体感

握り締める拳の内に爪がめり込んで、でも全然痛くなんかない。
目には見えないところが、ただ痛い。


「この前から何言ってんだ?お前。男同士でメンバーなんだぞ!?気持ち悪いだろ」

「だからって何が悪いんですか!?好き合って何が悪いんですか!?利益が下がるとかペンが減るとか…だったら事務所総出で守ってあげればいいじゃないですか!!」


もどかしくて

苦しい


「馬鹿かお前は、現実見ろ!ユノがおかしくなってチャンミンは断り切れなかっただけだ!元は二人共ノーマルで正常な人間なんだよ、間違った方向を正すのは善意だ。……どうしたんだ、本当。しっかりしろよ、全然お前らしくない。普段のお前ならきちんと指示に従って、プライベートもちゃんと現実的に考えてるだろ?」

「ご心配には及びません、教師の彼とはお別れさせて頂きました」

「…。はあ?」

「あんな美しい二人を見たら…、もう利己的な恋愛なんて阿呆臭くてできませんよ」

「……馬鹿だな。もういい、黙って部屋片付けろ」





美しいものを美しいと言って



何が悪いの?





「掃除はやります。ただ辞職と引き換えに口答えはさせて頂きます。マスターの言う通り、私はどうも自分の考えを主張したい、まだ人間らしい人間でいれたみたいです」

「……そうか、受理するよ。冷静さがなければこの仕事はできない。少ないが退職金はできるだけ気持ちを入れる。二人のことは絶対口外するな、念書を書いてくれ」

「分かりました。でも退職金は放棄はします。口外も必ず致しません。ですから聴いて下さい、」



パンドラの匣を開けてしまった。こんなことになってしまって、二人に申し訳なく思う。



でも伝えたい。



きっと二人なら、大丈夫




だって匣の中には一つだけ残った。






常識や利益や悪意に麻痺した
この世界に残ったモノ













それは、希望











「どうか二人に、自由を」





私という小さな存在にできることは少ない。
私が動いたところで何も変わりはしない。


















でも認めます
















私はユノさんとチャンミンさんのことを



認めます














貴方たちの愛は正しい






chap.10終わりです。読んで頂いて本当にありがとうございました。次はコメントのお返事をアップさせて頂いて(やっと…涙)、晩夏からまた始めます。
片割れ chap.10
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コメント

  • 2017/04/29 (Sat) 17:07
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