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片割れ chap.10 #26









この感情は煩い。

ドラムとシンバルとピアノとエレキギター、低音から高音まで行ったり来たり。
渦でも波でも何も、形成しない。
ぐちゃぐちゃに鳴り響いてる。


当たり散らした宿舎。数日後には新しい家具を適当に配置してもらえて。

うん、良かった。
また暴れ出さないように抑えなきゃ。

そんなこと考えた自分を鼻で笑った。
だって敵なんていない、自分のことだから自分が何もしなきゃ何も起こらないんだから。

キッチンにある物は処分した。新しく買わないようにと、マネヒョンにお願いした。お手伝いさんにも食事の用意は断った。
ご飯なら外へ行けば食べられるから。飲み物ならペットボトルからそのまま飲めばいいから。
これからは部屋のあらゆるドアをいくらでも閉め忘れたっていい。


チャンミンはもう居ないから







『ぁっ…!』


リビングのソファーから振り向いたキッチンにはチャンミンが居て、まな板と料理本を真剣に眺めてる。なんかちょっと可愛い。
そのままじっと見てると、みるみる悔しそうな顔が実った。
何か失敗したのかなって、でも俺全然気にしないんだけどな、辛過ぎなければって思ってると、こっちを見上げたチャンミンが口を真一文字にして睨んできた。


『……何笑ってるの…お?』

『…。は!?』

『めっちゃヘラヘラしてるけど、そんなに僕のミスが嬉しいんすか……?』

『え、うそうそ、ないない、違う違う!全然笑ってない!』

『ふふっ…いやでもごめんユノ、やっぱり今日ラーメンでもいい?野菜炒め作るつもりだったんだけど、コチュジャン切らしてたっ』

『いや、いいよなくて。てか今日はもうピザでも取ればいいって、チャンミナも疲れてるだろ』

『んー、でもまあ折角作る準備したし。いいです、このままラーメン作っちゃう』

『そうか?』

『うん』


ピザ大好きなのに。チャンミンはそんなに悩まず、また顔を下へ戻してすぱんと玉ねぎを切り出す。
インスタントラーメンの袋をべりりと開ける。


『……』


何てことないチャンミンのその姿に

身体の裏側からふうわり引っ掻かれる、

そんな言い様のない甘い痺れに身悶えた。
 

幸福って、目には見えない。
ある瞬間ふと発見できる感じ。
説明は難しい。他の人にとっては何でもない事の断片でしかないから。

やっと見つけた宝物をそのままずっと見ていたい気持ちと、俺の隣にすぐにでも来て欲しい気持ちとが同じ場所に存在して、何だろう…。
とにかくこっちを向いて、チャンミン。


『ああー~~~~っ♪』


喉を丸めて高らかにビブラートを効かせると、チャンミンはまたこっちを見てくれる。


『……明日のフェス、の発声練習?』

『そう。おおおおお~~~~~♪』


笑いを堪えるチャンミンの口元に嬉しくなって、ちょっと格好つけて腕の振りと一緒にまた低い声を流すとチャンミンはもうダメで。


『ぶっ!!!うふふふふふ、っ、そんな振りないじゃん…っ、くくくくくっ』

『明日これでやってみようかな、ミュージカル風に。チャンミィ~ナァ~~~~♪』

『ぶぅーっ!だっはっはっはっ!!パボだ!この人パボだ!』


倒れて笑いこむのか、ひーひー言いながらチャンミンの姿が消えていったから。
見えないチャンミンに、


『おい、やっぱ今日はもうのんびりしよう?ピザ頼むから一緒にDVD観よう』


隣においでよ、そう思うのに。


『そうだったそうだった、作んなきゃ』

『もういいじゃん、こっち来いよ』


浮上してきた人は目尻をエプロンで抑えて、綺麗なまんまる瞳が埋まるほど大笑いしてた。大きな厚い唇から白い歯と歯茎までずらっと見える。

太陽の光いっぱいの、ひまわり




『いやっ♪なんかもう、楽しくてっ!』


  































今でも信じられない。


本当に全部、嘘だったの……?








「……駄目だ……っ、、ちゃんと、受け入れないと……」


チャンミンにはチャンミンの人生があって。我慢させるより、俺に付き合ってくれた裏でも何でも、自分のしたい恋愛をしっかりしてくれてたならそれでいい。
女の子や男と出会って、色んな経験を積んで。それで可愛い彼女ができたんならヒョンとして応援する。

しなきゃ正義じゃない。


チャンミンのことを一番に考えて…
考えて……ちゃんとチャンミンの幸せを、


一番に……




自分の気持ちを圧し殺して必死で納得して、どうして何故、うなされる夜は続いて。
納得して納得して。
次の日会って隣に座るチャンミンの手を見ると、どんな人達に触れて嬉しくなったんだろうとか、この大きな瞳には俺の知らない輝きで見つめる相手がいるんだ…とか、そんなのばかり考えてしまう。
ひたすら目の前の仕事だけに集中してこなして横に居るチャンミンは仕事仲間と割り切って。女々しい想いを振り切って。

そしてまた納得する。すがってそれでも駄目だった、それが現実なんだって。





「ヒョンも来てくれないですか?今日は、荷物の整理が大変そうで…」

「悪い。俺今日約束あるから」


チャンミンは気まずくならないように今まで通り接してくれるのに、ごめん…。
もうつらいとか苦しいとかじゃなくて、痛くて仕方ないんだよ。


チャンミンを先に新しい住居へ帰らせて、十分時間を空けてから約束のレストランへ向かう。ミーティングルームを出たところで今夜約束した仲間達にスマホで連絡して、やっぱり今日はちょっと具合が悪いから…と口から溢れる台詞が歩く足とあべこべだ。


『ユノ大丈夫?今日はゆっくり休みなよ』

「あ、おう。。…悪い、また…日を改めて会おうな……」


心と身体はバラバラで、


「やっぱり、、…今からでも、チャンミナの手伝い……行こうかな……俺も車で来たし、行けるしな…」


他に相手がいるって散々自分に言い聞かせても、傍に居たくて。隣に居て欲しくて。


「…っ。すっ…げー格好悪い…っ、俺……」


チャンミンは俺を見ないのに。

惨めだ、面倒くさがられる、止めろって思うのに手の中のスマホはチャンミンのダイヤルナンバーを探し始める。頭はチャンミンのマンションへ行く道順を確認してる。
足は軽快に動いて、駐車場へすでに着いてしまった。


「へ……」


そこにはとっくに帰ったはずのチャンミンが何故かまだいて、


「うん、やる。いつでも相手になるよ」


誰かとスマホで通話してた。
俺のことなんて全く気付いてない。夜の空を見上げて柔らかに微笑んでる。


「……」


今までずっとここで電話してたの?その相手と。


「ふふっ、今日っすか?いいですよ、でもさすがに少しは寝かせて下さいよぉ」

「……チャ…、」


お前今日引っ越した荷物片付けるんだよな?
チャンミンの返事が妙に甘ったるい猫なで声に聞こえて、胸の黒い霧が一面に濃く出てくる。
ざわざわと。

鳴る。


「……」


何をヤルって言ってる?
少しは寝かせてって………何、それ……


「もちろん受けますって、楽しみにしてます♪」

「…………」






ナニ、ソレ






毎夜必死で押し込めてる性に淫らなチャンミンの現実や自分のおぞましい感情が芽吹いて、




「…っっ、」




車に乗り込もうとしているチャンミンの肩を勢いのまま突き飛ばした。
至極簡単に助手席まで倒れこんだチャンミンの隣に座り込んだけど収まらない。怒り。


「…、っつー…、、」


衝撃で痛がるチャンミンを上の空にぼんやりハンドルを見つめて考えた。


「……」


こいつは、マンネだけど、メンバーだけど、優しいけど。
本当はどうしようもないヤリチン野郎で、俺がいても彼女がいても男女構わず他の人間と快楽を共有できる頭がイカれた奴なんだ。


「何なの、お前…っ」


全然分からんわ、俺。
チャンミンの思考回路が理解できんし分かりとうもない。


「え……」


ゆっくり振り向いて俺を確認するチャンミンの瞳はただ、突然の暴力に怯えて見上げるだけ。
やっぱり俺たちは、繋がってない。


「お前今彼女いるんだよな?幸せなんだよな?今の誰だよ!!?遊んでる男だろ!?」

「え…っ、」


思わず声が張り上がって、チャンミンはさらに怯えてしまう。でも止まらない。


「…っ、大切にしろよ…!!!バレなきゃいいとか…考えずに……その子一人だけ、じゃ駄目なのか?好きなら、、ちゃんと……っ、」





俺ではできなかったことを


せめて、


見せて、






納得させて








解き放って、俺を









「俺も諦めつかないから…!、、頼む。。彼女さん、大事にしてあげて……」



どうして、何故…

どうしてなんだろう



「……ユノ、ヒョンなら…誰でも好きになってくれるでしょう?僕のことなんて、すぐ忘れるでしょ?」

「毎日顔合わせてて忘れる訳ないだろ!!!それよりさっきの奴と縁切れ、早く」



「…………嫌です。これからその人のとこ行くんですから」

「……」







最低






今まで出会った中で最悪の、人間



なのに、どうして






「…行かせない」


いつもそこに閉まってあるチャンミンのカバンを奪い取って見つけたキーを刺してエンジンをかけた。シートベルトを乱雑に引っ張りながら睨み見たチャンミンの目は、どうして……


「行かせないって、どうするつもりですか?」

「……」




なんでこんなに













綺麗なの?





「……車出すぞ」

「…ユノヒョンも約束あったんじゃないですか?」

「もういい。お前のこと、放っとけない」

「……」


ギアをPレンジからDレンジへ。
それ以上チャンミンを見ないように、ひたすら前を向いて。周りの景色と道路に気を配りながらチャンミンの車を発進させた。





きっと俺の目は腐ってしまった










チャンミンの目が


今も変わらず















この世界で最も美しく見えるんだから






片割れ chap.10
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コメント

  • 2017/04/26 (Wed) 13:53
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