片割れ chap.10 #20








___ Young-Min.side______








そう

チャンミンはさすがとしか言いようがない


簡単に併合しない
考察する
思惑に感づく
時間を置けば必ず対策を練ってくる


もう少しチャンミンが成熟した頃
まともに言い合えば、
下手するとこちらが丸め込まれかねない










叩くべきは、ユノだ






強い光は強い信念から生まれている

説得でも諭すでもない

ただ信念を思い出させてやればいい



逃げ道を無くせば












恋は散る














______Y.side______






「ユノは本気なんだな?」

「当たり前です」「……」

「そうは言っても…恋人とは別れるもんだ。別れたらどうするんだユノ。活動が辛くなるだろう?」


やめろ、とか、気持ち悪いとかじゃなくて。親身に今後の建設的な話から打ち出してくれるヨンミンさんの計らいが嬉しかった。


「俺たちは絶対別れませんから。一生、大丈夫です。本気でチャンミナのこと想ってます、間違いじゃない!本当は結婚して、皆から祝福されたいくらいなんです」

「ユノヒョン止めて下さいよ!そんな話したことない…!」


強い意志がないと人の心は動かない。
いかに気持ちが強いか表すべきだろ?チャンミンの悲痛な押し殺す叫びが理解できない。


「俺は本気でそう想ってる」

「ヒョン…!」

「まあまあ、チャンミン。…そうか、結婚かぁ。韓国では難しいが……オランダ、ベルギー、スペイン…。近い将来アメリカでも認められるはずだ。永住権を取得すれば可能だからな。あり得るよ、ユノ」

「とんだ茶番だ!!」

「チャンミナ…」


できないことなんてない。
俺たちが結婚できないっていうなら、そもそも恋人になること自体できないことだったんだ。

ヨンミンさんはそれを証明するような可能性を示してくれたのに、ヨンミンさんを一喝して睨むチャンミンの方がまるで俺も守ってくれてるように見えた。自分自身、そんな妙な心地の中でチャンミンを制した。


「……」


俺は、ちゃんと落ち着いて話できてるよな……?


「ユノ」

「あ、はい」

「公表したいのか?」

「公表はしません。今まで通り、それでいいんです。ただ仲間内で理解してくれる人は広めていきたいと思ってます」


ヨンミンさんは、ふうっと一息吹くと、ぽそりと昔話を始めた。二人で話すといつもそうなる、馴染みの物語。


「お前達を見てると…私はいつも原点を思い出すよ。……TOHOSINKIがデビューする以前辺り。世界中の市場調査で飛び回って…事務所を世界規模まで大きくするんだって息巻いて…。なあ?ユノ、懐かしいな?」

「はい、アジアポップというジャンルを確立したいと」

「うん」


向かいの皮製ソファーで目を伏せてゆっくり頷くヨンミンさんは昔と変わらない野望を今も持ってる。隣のチャンミンは何故か急に背中を丸めておどおどしだして、手を組み替えたり俺を不安げに見上げたりして忙しない。背中をさすって「大丈夫」と呟くと、なぜか不安そうな表情は一層濃くなった。
心配しないで。大丈夫だよ、チャンミン。

だってこんなに愛してる


「ヨンミンさん、ところでチャンミンのことを…」

「ああ、うん。いいんだ。チャンミン早く宿舎に戻りなさい」

「!!ヨンミンさん、本当ですか!?」

「ああ、いいよ。あれはマネージャーが勝手な判断をしただけだ。二人の絆を知ったらあいつも納得するさ」

「チャンミナ!ほら!良かったろ!!」


子供みたいに飛び上がって喜びたい気持ちが溢れてチャンミンの方を振り向いたのに、チャンミンの様子はさっきからちっとも変わらない。


「チャンミナ?宿舎戻っていいって!聞いてたか?」

「……」

「おい…」


全然嬉しそうじゃない。それどころかどんどん青冷めてる感じがする。
どうした?
どうした?チャンミン


「ははっ。ユノ、本当に嬉しそうだなぁ。そんなお前を見てると私も嬉しいよ。マネージャーには私の方からも言っておくから、もう少し私の自慢話にも付き合ってくれよな?代表にもなると、なかなか簡単に高飛車なことが言えんでな♪」

「あはーはーはーっ。ヨンミンさん本当にありがとうございます!」

「……話が終わったんなら失礼させてもらいます…」

「チャンミナ、そんな事言うなよ。ご苦労おかけした分いくらでも聴かせてもらいます♪」


気持ちは晴れて、元通りに戻るだけなんだけどチャンミンがずっと傍に居てくれる有り難さに改めて感謝した。ヨンミンさんの砕けた話し方は、昔彼の家へ住まわせてもらった懐かしい日を思い起こさせる。
尊敬すべき夢追うヒョンだ。


「と言っても、お前達もよく知る仲間たちだがな?」


軽快に席を立ち、腕いっぱいに抱えた宣材写真や名簿をヨンミンさんが応接机に広げた。


「私の自慢の、宝物」

「ああ、はい…!」


そこにはBoA、カンタヒョン、スジュ、エクソ、シャイニー、少女時代、エフエックス、所属俳優や女優、タレント、まだ小さな写真だけの大量の練習生、名簿の事務所スタッフ、社員、傘下の小会社。外注や協賛会社。


「大きくなったろ。うちの事務所は」

「はい、間違いなく韓国一の芸能事務所です」

「本当に……お前達のおかげなんだ。二人がいてくれるから、TOHOSINKIのブランドと収益力でこれだけ多くの人間が輝いてる」

「ははっ。そんな。でも、ありがとうございますっ」

「ヒョン、笑い事じゃない……」

「え?」


さっきからチャンミンが本当におかしい。
だって嬉しい話ばかりなのに。
チャンミンはどんどん沈んで今はもう無表情の殻に閉じこもってしまっていた。


「……ふっ、そうだな。チャンミンの言う通り笑い事なんかじゃないんだ本当に。二人が支えてるんだ。韓国最大の芸能事務所員全員の誇りと生活を」

「……」


ひたすら走って、走って走って
走り続けて気付いたら

俺たちは、ずいぶん遠くまで来ていた


「……はい、プレッシャーもありますが、やっぱり嬉しいです。でも俺たちもペンの皆さんにずっと支えてきてもらったんです。最近は後輩も成長してきていますし、これからも鏡となるよう精進します」

「そうだなぁ、お前は本当にペンに愛されてきた」

「はい。辛い時も苦しい時も、待っててくれたペンの方がいるからここまで頑張って来れました」

「うん……そのペンを切り捨ててユノはチャンミンを選ぶんだ。絶対幸せになるんだぞ?」



「え?」





ヨンミンさんの寂しそうに微笑む顔の意味が、分からなかった。





「ああ、悪い。酷い言い方だったか…私は経営者だから、どうしても常に最悪の状況は想定するんだ。経営でなくとも本来の仕事というものはみな全てそうだ」

「解散、または契約解除ですか…?」

「何言ってるんだチャンミン。さっきも言ったろ?お前達はうちを支えてくれている、したくてもできないのが現状だよ。分かってるからチャンミンもこんな所までのこのこ来れたんだろう?」

「……そうですね」


二人の会話と、さっきまで和やかだったヨンミンさんと俺の会話の温度差があまりにもありすぎてついていけない。


「ヨンミンさん、どういうことか分からない……」

「一生チャンミンと一緒に居たいんだろ?一生と言うことはいつか必ず世間にバレる日が来る」

「……公表はしません」

「しないから安全という保障はどこにもない。それは記者に証拠をすっぱ抜かれるかサセンの盗聴器からか、または仲間内からの密告か、運良くお前達の死後になるかもしれない」

「……」


いつか、公になる日が来るんだろうか?
俺たちは本当に祝福されるんだろうか?


「仕事は激変するだろう。依頼内容も変わってくるだろう。同性愛のイメージが先行して普通のドラマや映画の出演はもうできないだろう。どれだけストイックに頑張ろうがアーティストという肩書きは外されゲイカップルデュオとして一瞬は見せ物のように世界中で話題になるだろう。でもそれだけだ。覚悟ができているなら、それでいい」

「……」


俺たち、アーティストじゃなくなるの……?


「事務所の規模も最小限になるだろう。でも私はそれでもお前達も事務所も守ってみせる。今まで礼儀を尽くして事務所に貢献してくれたお前達を絶対見捨てない。でもな、一番辛いのは…ペンだぞ?」

「……へ……、、、」

「お前達は愛されている。苦しい時期を幾度となく乗り越えて、ペンの信頼度は絶大だ。中には離れていくペンもいるだろう、だがそれでも応援してくれるペンが必ずいる。何物にも代え難い、本物のお前達のペンだ」

「…はい」



「その大事な人達が今度はお前達の身代わりになるだろう……。お前達のペンだと周りにバレた時、『あの人はあの有名なゲイカップルのペンなのよ』と笑われて見せ物にされてるんだ」


「……………」



































真っ黒だ
























触れたことない深さの黒に、


心の臓が震えてる
















「……それでもきっと応援してくれるだろう。チケットを勇気を振り絞りながら購入して、人目を避けながらライブ会場に来てくれるだろう。自分が辛くても悲しくても、もはやゲイの二人に自分は夢見ることもできないけど『ユノとチャンミン、頑張れ』とな」

「俺は……」





頭の中が真っ黒で

暗くて沈殿して

何も浮かび上がってこなくて





「責めてるわけじゃないんだ、ユノ…。人の心は自由なんだ。チャンミンを好きなままでいい。ただ、そういう愛を忘れないようにな」

「……俺、は、、」















チャンミンも見えなくなって














「…素直に思ったままを。なあ?チャンミン…」

「……」

「俺……、」












ただ素直に






思ったままを











ゆっくり



















声に出した




























「俺は、俺たちの音楽を、聴いてくれる人達に、希望を持って欲しいんだ……」





























___ Young-Min.side______















大正解だ、ユノ



信じていたよ









ありがとう















片割れ chap.10
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コメント

  • 2017/04/08 (Sat) 22:05
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