片割れ chap.10 #19










______C.side______








上昇する箱の中で、後ろ姿のユノに聞くことは一つだけ。


「どこ行くの?」

「ヨンミンさんとこ。昨日からずっと電話してるのに出ないし何回代表室行っても席外してるって言われて話できない」

「え…」


てっきり昨日何かしらの話し合いを二人でしたんだと思ってたのに。

ユノからヨンミン代表と連絡できないなんて話はこれまで聞いたことない。代表は昔からユノに一目も二目も置いてる。どんなに多忙でもユノの話を聞く時間は取る人だ。
重大な話なら。
尚更そうだろう。


「ねえ、……わざとなんじゃない?それ…」


なぜ話す機会が、いつまで経っても来ないのか?


「そんなのどうでもいい。早く話をつけてお前を宿舎に戻さなきゃ」


僕たちは待ち伏せされていないか?
やきもきしていきり立って、火のように熱い感情を持ったところで打ち砕かれる何かに。


「……話なんてつくわけないですよ。よく考えよう、ユノ。それよりひとまず僕は宿舎を…」

「大丈夫、絶対戻してもらうから。早く帰っておいで」


振り返って顔を近付けてくるユノはやっぱりどこかおかしいけど格好良くて。目を逸らしても頬を捕まれて舌を絡めるよう促す口付けまでは拒めない。


「ん…ふ、っ」


喰われるように被さる唇からぬるぬるで力強い舌まで。気持ち良くて。気持ち良すぎて。ユノ全部が気持ち良すぎて。脳天が痺れて溜め息が漏れる。


「はぁ…んっ、」

「ん…」


その漏れた息すら飲み込まれてまたユノに浸されるから頭がぼぉーっとしてしまう。

兄弟だなんて思えない

こんな時でさえ久しぶりのキスに浮上する僕が恨めしい。
ポーンとまた明るい到着音が鳴って、離れた唇がまた「大丈夫」と囁きながら、ユノはもう歩き出して僕を見てなかった。


「ユノ!」


僕は開ボタンに手が伸びてエレベーターから降りられない。ユノと入れ替わりで乗り込んできた社員の二人がドアの開閉を急かすような顔で僕たちを見てる。


「……あ、僕着替えないと!そろそろ練習始まりますから。後にしましょう、ユノヒョン」

「……」


何だかとても恐い。
僕はもうユノの中で生きてる。
そのユノが僕より大事なもの。それにこれからぶち当たりそうで。


「ほら。もうすぐトニー・テスタが来韓するんですよね?振り付けすごく楽しみですし、柔軟もよくしとかないとっ」


降りたら最期、さっきのキスがさよならの儀式になる気がしたから。
方向を変えて戻ってくるユノに抱きつきたいほど安心した。


「……ヒョン、行きましょう」

「結婚しよう?」

「え?」

「俺たち結婚しよ…結婚して下さい、チャンミン」

「え!!?」「え!!?」


びっくり声と共に息を飲む社員達の方をちらりと見てまた僕を見つめるユノの瞳は静かに狂ってた。

もう誤魔化せない。けど、知ったことか。内部の人間に知られるなんてどうせ時間の問題だ。


「……。落ち着いて……僕たちは、結婚、できません……」


この人は、


「そんなのやってみないと分からないだろ?もしできたら俺たち離れる必要なんてないだろ?」


今、自分が言っている事を理解して言っていない……。


「ユノヒョン……」

「ついて来て、大丈夫だから」


何を言っても聞こえないユノに落胆して俯いた足下しか見えなくなった視界に、ユノの左手が僕の手首を掴んで前へ促す光景が見えたから。


僕はそれ以上見たくなくて、

右手で目を覆って、


「冷静になって…お願いします、ヒョン…」

「おいで。絶対守るからな」

「……っ、、」



我を忘れたユノに従った。



馬っ鹿だよなぁ……っ


あんなやっつけの『結婚して下さい』、ユノはもう覚えてさえないと思う。



それでも嬉しいって

それでもついていくって



信じてるんだ、僕は


ユノを



















だからお願い、僕を捨てないで














だってほら。おかしいって。


「失礼します!」「失礼します……」

「おう、悪いなユノ。チャンミンも。最近ずっと忙しくてな。やっと今時間が取れて、ちょうど呼ぼうと思ってたんだぁ」


全然連絡つかなかったんでしょ?やっぱりおかしい。僕たちは翻弄されている。

レッスンの休憩の度にジェウォニヒョンとダンサーさん達の不思議そうな目に見送られながらマネヒョンの制止も振り切ってユノに連れられて代表室へ向かっても秘書に断られて。
なのにユノが「だから何時でも待つからヨンミンさんに会いたいって言ってるでしょうが!!!」って声を荒げた途端、


「ヨンミンさん、チャンミンを宿舎に戻して欲しい。お願いします!!」

「あぁ、そうだったな!?マネージャーから話は聞いてるよ。ま、とにかく座りなさい。ほら」


心配そうにまるで親身に寄り添うように応接セットへ通されて。


「ヨンミンさん。黙ってて申し訳なかったけど、俺たち…」

「ユノ、私はな、何となくお前の気持ちが分かるよ。チャンミンは本当に善い人間だ。正直私は…うん、二人を応援したいと思ってる」

「…っ、ありがとうございます!!」

「……」

「……チャンミンは、さすがだな…」


頭を下げるユノと対照的に何もしない僕の何が「さすが」なのか分からないけども。

おかしいよ、ユノ。
自分で自分を追い詰めないで。追い込まないで。




これはきっと、


心理戦なんだ





「すいません、お騒がせして……。でもユノヒョンともう一度よく話し合って…」

「チャンミナ、大丈夫だから」

「ユノヒョン、まず代表と顔をあわせて謝れました。あとレッスンも残ってますし…」

「いいよ、チャンミン。久しぶりに三人で会えたんだ。今日はもう夕方だし終わりにさせよう。いいよな?ユノ」

「はい」

「たまには息抜きしないとな?折角だからゆっくり色んな話をしよう」


柔らかに微笑んで内線をかけに席を離れたヨンミン代表に、僕は彼の凄まじい本気を感じてぞっとした。

代表はこんな甘い人間じゃない。
パフォーマンス時ユノと比べてどうしても息の切れる僕に、幾度となく喧嘩腰の低い声で「客にそんな辛そうな姿を見せるな」と忠告されてきた。


「ユノ…っ、」

「良かった…チャンミン、これで戻って来れるな」

「本当に……」


僕を捨てない???


「ヨンミンさん、話して良かったな?もっと早く言えば良かったかな…?」


駄目だよ、そんなすぐほっとした顔を見せて人を信じちゃ。
あんたは本当、昔からちっとも変わらない。


「待たせたな、今ジェウォンに今日は解散させるよう伝えた。…チャンミンは嬉しいだろ?いつも厳しい事ばかり言ってしまうからな、私は。ははっ」

「……」


笑う代表の後ろに、笑う男と女達の影が忍び寄って来る。
何も言えない。恐い。
隣のソファーに前のめりで腰掛けるユノが僕を突き放したら、僕はどこに行けばいいんだろう。


「ヨンミンさん、チャンミナのことは全部俺が分かってるから。俺が全部話す」

「…そうだな。分かった」


僕言ったよね?







お願いだからちゃんと縛ってて



一寸でも解けたら、



僕の魂は






どこかに飛んで行ってしまう






片割れ chap.10
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コメント

  • 2017/04/07 (Fri) 23:47
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