片割れ chap.10 #16

(注意)性に関する病名等が一部出ます。気分を害される可能性があります。閲覧には十分ご注意下さい。









______Manager.side______







韓国芸能人で史上初めて同性愛者とカミングアウトしたのは男性俳優。西暦2000年のこと。
日本やアメリカに比べると非常に若い歴史だ。

所属事務所は不当解雇と分かりつつ公表した彼を切った。社会的弾圧が恐かったから。






保守的なこの国の芸能事務所に、
同性愛の容認は存在しない。

何故なら、当事者だけの問題ではないから



バレたら終わり

事務所自体も国家規模の批判と社会的制裁を受ける。
グループ分裂時の騒ぎどころじゃない。

事務所の前にはデモと暴動の嵐が起こり、石を投げられて人糞を撒かれ、火を放たれる。







それほどの大罪なんだ


ユノの恋は













______C.side______






困難な障害で引き裂かれた運命の恋人達すべてが、会えた途端込み上げる熱い想いを胸にきつく抱き締め合う…わけではない。

毎日会ってるユノに、そんな映画のワンシーンみたいな挨拶をやるわけにはない。


「チャンミナ、アンニョン」

「ヒョン、遅かったっすね」

「また忘れ物して、車引き返してもらってた」

「またぁ?ちょっと、お願いしますよ」


事務所の練習室や控え室でユノを待つ日が続いてる。
遅刻をしないユノが少し遅れるようになってきた。それは数分の誤差で特に支障はないんだけど、知らないユノだから心配になる。

朝の支度はちゃんと準備しないのか
部屋の片付けはちゃんとしてるのか
ご飯はちゃんとしたもの食べてるのか

カトクでユノは『やってる』と言うけれど、そこだけはやっぱり信用できない。


「ねえ、本当お願いしますよ?」

「なあ、いつ?」


僕たちの話題で「いつ」とは僕が宿舎に戻れる時で、ユノは分かってるくせに何度も聞いてくる。


「まだ何とも…」


ユノは不安なのかもしれない。でも僕だって不安の色が隠せない。

宿舎を一旦出て自宅から通いだし、事務所から何の連絡もないまま何日も過ぎた。
このまま待たされて“あやふやに何となく”の状況に慣らして僕を宿舎に戻させない可能性だってある。


「誰かに何か言われたか?」

「まだ何も。ヒョンは?」

「…俺も」

「……」


はっきり言ってその可能性の方が高い。
そうじゃないにしろ、事務所が僕たちの関係を容認するという事はおそらくないだろう。

もしかしたら、もう戻れないんじゃ……?
ユノのところに……


「チャンミナ、眉間に皺」

「あ、、すいません……」


ユノの声が柔らかく僕の鼓膜へ響いてきたけど、ユノの指は僕の額に触れてきてくれない。


「……」


前のユノなら意識せず僕に触れて猫の額を撫でるように揉んでくれてた。
ユノは決して言わないけど、相当マネヒョンに責められて僕との接触を自制してるのかもしれない。


「……どうしよ、」

「あははっ、チャンミナまた皺できてる♪」

「……はあ~、、僕、駄目ですね。何か色々考えこんでしまって」


すぐに事務所から何かしら追及されると思ってたのに何日経っても何もないし。こうやって警戒してるだけで疲れる。

周りのスタッフさん達がなるべく遠のいた頃合いで、それでも気にしてあくまでヒョンとしてユノと敬語で会話する、こんな気遣いさえストレス。


「大丈夫。俺も居るし、何か言われたら俺が答える。毎日会ってるんだから何かあったらすぐ言えよ?」

「……はい」


こういう時のユノは強い。
僕も守らなきゃって思うのに、結局いざという時はユノに頼ってしまう。
成長って難しい。


「あんまり…寂しくはないです?」

「ん?」

「いえ、ほら今、ユノヒョン一人ですから」

「あー。なんだかんだマネヒョンがよく泊まってくれてるから。あんまり一人とは感じないかな」

「そうっすか…、、じゃあ、まあ、良かったです…」

「うん」


僕はものすごく寂しくて。
僕の大部分だったユノが仕事場でしか会えなくなって、激しい変化に頭がついていけない。
家族の誰と話してても、何を食べて何のテレビを観て笑ってても、それは僕じゃない僕が動いているだけの毎日で。ベットに入ると必ず、何で僕一人で寝なきゃいけないんだ?って不思議でたまらなくなる。


「チャンミナは?過呼吸とかもう出ない?」

「…あー、」


でもこうして顔を合わせて一緒に仕事できてるだけ幸せか。。
何があっても僕たちを離して活動させることはできない、その最大の強みに安心する。

僕たちは二人でTOHOSINKIなんだから


「あんまり苦しかったんで、またなったらどうしようって怖い気持ちは正直ありますね」

「そうか……」

「でも、もうならないと思います」


ユノが居るなら大丈夫


「またなりそうになったら何時でもすぐ言えよ?」

「イエスっ」

「マネヒョンとか、誰かに何か言われたらすぐ言えよ?」

「それさっき聞きましたね」

「本当何でも言えよ?」

「分ーかったからっもうっ。ほらもう打合せ行かないと!」


僕はこの人を欲しいのは

居るだけで、



幸せで


楽し過ぎて






悲しい気持ちばかりの僕に


光を射してくれるから





「ユノヒョンは何か僕に言うことないんですか?」

「ごめん、実は部屋荒れてる……」

「……戻ったら掃除、絶対手伝ってもらいますからね!?」

「はい…」






光は手離せない












______Manager.side______






「え……」


そのように思い知らせていくのかと、そんな形で無駄に傷付けて、残酷だと思う。
でも確かに危惧するべき点だった。

予め知識を身に付けて置いて良かった、知りたくも使いたくもないものだけど。


「ユノとチャンミンに受けさせといてくれ。頼んだぞ」


寒いほどクーラーの効いた代表室で、芸能事務所らしい華やかなインテリアが飾られた書斎机の書類を整えながらヨンミン代表はさも何でもない事のように言う。


「……次は…性病検査、ですか……」


酷い話だろ?ユノ
だがな、こういう事なんだ

お前のやってることは


「あの……、今まで症状のようなものは何も出ていませんし…現在は別々に暮らさせてます。特に必要はないかと思います」

「これから発症する可能性だってある。潜伏期間の長いHIVの感染は否定できない」

「HIVなんて、そんな…」

「エイズだよ」

「……」


代表は、本当に冷酷だ。
その単語だけで、恐れおののく者だっていると言うのに。


「……実は私個人で徹底的に調べましたが、それは不特定多数の人間と性行為を行った者の場合で、二人の状況からは極めて低い可能性です。むしろ女性の方が感染率の高い病気ですので、検査等につきましては必要ないと思います。それよりユノがかなり本気のようで、てこでも考えを改めようとしません」

「じゃあチャンミンから受けさせろ」

「お待ち下さい。ここは個々に説得して、今後恋愛感情を持たないよう導いてやらないと繰り返してしまいます。これから一年二人にとって飛躍の年になりますので、どうかこれ以上下手に二人の心を乱さないようカウンセリング等で対応をお願い致します。でないとツアーも何もかも滅茶苦茶になってしまいます」


早口で言いくるめられる相手ではないと分かっているけれども。
それだけはやらせたくない。本気なら尚更、心はぼろぼろに傷付いてしまう。


「そうだろ?ただ『二人にとって』じゃない、事務所にとっての飛躍の年だ。今や二人がうちの事務所の純粋利益の約三十五パーセントを支えている。海外収益の約九十パーセントを占める日本に関して言えば半数近くにもなる。二人の身体を案じるのは当然。検査も必然だ。渋ったら今までやってきた行為そのものの内容まで聞け。それからやはり性病の可能性があると言えば応じるだろ」

「しかし……わざとプライベートな所まで粗探しのように聞けと仰られたり…っ、、」


プレイまで晒させるなんてな
そんな馬鹿な話あるか??


「お言葉ですが、それは代表がただ悪戯に二人へショックを与えたいだけではないでしょうか?」

「そう思うか?ショックを与えれば今自分たちがどれほど愚かしい事をしているのか再確認できる。自ずと二人で結論づけれるさ」

「いえ、代表の指示はやり過ぎです。必要以上のことです、現時点で外部に漏れた情報もありません。元々ネットワークの警備は常時しているはずです。それに盗聴器やカメラの有無など、不測の事態に備えて各グループの宿舎はもちろん宿泊部屋さえ予め確認されてますよね?フェイクの問答を本人達に確認してわざと心を乱しても、全く意味もありません」


血気盛んな若い人間を束ねる芸能事務所は、自分たちの管轄下では一寸の綻びもないよう管理してる。恐いのはサセンの奇襲のような突発的侵入で、スキャンダルなんてだいたいSNSや本人の自己管理ミスだ。


ユノに一晩かけて聞いた時も場所も、実は全く意味がなかった。「聞け」と指示されたから聞いた、それだけだ。

ユノの話を聞いた限りでは、確かに、


「…これ以上は法に触れてしまいます」


ユノがどれだけチャンミンを大切に、必要としてるのかまで感じてしまったけども。
そして、たぶん…チャンミンも……。


「同性愛は現在の憲法では違法とはされていません。軍刑法も同姓間の性行為は個人の問題であると、セクシャルハラスメントの無効化を決定しています」

「決定などしていない。未だ最高裁判所の裁判止まりのはずだ。決定は下されていない。あやふやな事を言うな」

「しかし代表の指示は告訴されてもおかしくないレベルだと判断します。義理堅い二人だから何でも受け入れると見られてませんか?」

「……」

「勝手な意見を申し訳ありません、…私にとっても、、」



愛してるんだよ

二人の誇るべき弟達



「二人が弟のように可愛いものでして!!……さすがに我慢なりません……大声を出して失礼しました…」


全く謝る気もなかったが、相手が最高幹部責任者だからそうする他ない。
もがいている二人と冷静なヨンミン代表の狭間でついに爆発した。
俺だって苦しいんだよ。いつも熱くなり過ぎるユノのことを何も言えない。


「……ユノの夢をな…

「はい?」

「…いや、何でもない。じゃあ、SME『帝王』の看板外すか?今年はエクソを本格的に中国進出もさせた。スジュもシャイニーもエクソもTOHOSINKIを呼び水にして鰻登りに認知度を高めてるからな」

「うちの二人はどのグループにも代替できません!後続する練習生達も高い目標を失って迷走してしまいます」

「じゃあ、二人の精神をエグれ。自分達の存在価値と危機的状況を再認識させろ。言っとくがな、TOHOSINKIが崩れたら事務所も共倒れだ。今やあの二人が事務所も金も支えてるんだよ、契約解除はあり得ない。ヒョン気取りは止めて早く血も涙も捨てろ」

「あのコ達は、、まだほんの二十代の青年なんですよ……」

「知ってるよ、幼い時から私も見てきた。私にとっても大切な弟達だ。お前ができないから他の者にやらせる、二人の事情を必然的にその者にも伝える事になるが…いいんだな?」

「……」

「いいか、チャンミンから受けさせるんだぞ。ユノは怒ると恐いからな、はは」


こんなの、拷問だ


「……まずは、カウンセリングを…」

「私達には二人がどこまでの想いなのか知り得ないし、知る必要もない。遊びが興じてそうなったのかもしれない。だが関係ないんだよ、そんな事。私達が必要とするのは、情報漏洩の徹底的排除、危険因子の回避、事務所設立史上最大の収益見込みの達成、以上」

「……了解しました」








酷い話だろ?





だがな















それほどの大罪なんだ



二人の恋は








すいません!なんで…なんでか分かりませんが#15#16の順序がブログの不具合か逆になり、直してたら…!涙
頂いたぽち消滅し…(´;ω;`)本当に申し訳ございません!でもお気持ちは頂いてます、ありがとうございます!

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