片割れ chap.10 #15








______C.side______






小さい頃から泣き虫だった。

悲しいという感情を、
人より多く持って生まれたのかもしれない。




幼稚園児だったある日

教室の隅で積み木遊びをしていると、近くで遊んでた女の子が突然泣き出した。訳も分からず見つめていると、その子が突然走り出して先生のところへ駆けつけた。


『どうしたの?なぜ泣いてるの?』


心配そうに聞く先生に向かって、その子は言い放った。


『チャンミン君にぶたれた!!』


僕を指指し、睨みつけて、その子はまたさらにわざとらしく泣き出した。

悲しくて、悔しくて


『……』


二度と幼稚園へ行きたくないと思った。







小学校はクリスマスの時

スヨンの幼稚園のクリスマス会に行って小学生の僕だけプレゼントを貰えなかった。

悲しくて、悔しくて

それからサンタクロースを信じなくなった。




運動会の時は

靴を脱いで思いきり走ってると、一生懸命頑張ってるのに皆から大笑いされた。その時履いてた靴下がたまたま緑色だったから。

悲しくて、悔しくて

緑色の靴下は自分で絶対選ばなくなった。




それは一種の病気のようなもので、

悲しくて悔しい感情は常に僕を蝕むように支配していく。



僕はただ泣きじゃくって、白旗を挙げ続けるしかなかった。







自分を全否定されてるネットの書き込み欄。
空港で聞こえてくる野次。
ステージ上から見えるボードの中傷。
アンチの言い分。

二人の活動になってから、さらにあからさまに襲ってくるそれらに傷付かないわけがなくて。

悲しくて、悔しくて

心はズタズタで、












でも辞めようなんて一度も考えたことない



スヨンの言う通りだ






















何が何でも欲しかった















______Y.side______






「マネヒョン」

「何だ?」

「チャンミナ、いつ返してくれるの?」

「……ほぼ毎日事務所で会ってるだろ…」

「…………」


キャップとバックを適当にその辺へ置いて、帰ってきて早々ソファに身を沈めるともう駄目で。
腰がソファと同化してしまったようにそこから動けない。

目の前の真っ黒なテレビ画面も、静まりかえったミュージックステレオも点けなくていい。尻ポケットのスマホが振動するけど取り出す煩わしさに諦める。誰かと会う約束をしてたかもしれない。でも思い出せない。

投げ出した足だけはやっと組んで、その上に肘を付いて顎を乗せた。


「……」


そこで俺の動作は終わった。


「、、、何の興味も湧かないな……」


こんなの俺じゃないって分かってるんだけど

動けない
特に動きたくない


「……何してんのかな……」


さっき分かれたチャンミンは、きっと自宅に帰ったんだろうけど。

もう過呼吸は大丈夫なのか?
チャンミンのお父さんもお母さんも善い方だから、チャンミンも落ち着いて過ごせるんだろうな。俺もまた挨拶くらいしたい。日本ツアー以来だ。スヨンちゃんやヒヨンちゃんにも会いたい。
マンドゥンイも元気かな。明日聞いてみようか。家族団欒で食事して…ちょっと想像するだけで笑いあってる姿が浮かんでくる。チャンミンはマンドゥンイを撫でながら、皆を暖かい目で見つめてる。


「おい、ユノ」

「え」


マネヒョンの声と肩に置かれた手に俺の妄想は覚めた。


「お前、まさか帰ってきた時からずっとここに居たのか?」

「え?」

「今日は俺も泊まるけど一旦事務所戻ってくるって言ったろ、三時間前」

「……そうだっけ?」

「……」





これほどまでに大きな存在だったのかと





「ユノ……、ちょっと話をしよう……」





愛さずにはいられないんだよ















「儒教とキリスト教の教えが強いこの国で、同性愛がいかに非難される対象か、分かってるよな?実際そうでも公表している芸能人なんてほぼいない、制裁される危険性があるからな」

「……公表なんて考えてない。俺たちは本当にうまくやってたんだ。だからチャンミナを早くここに戻して欲しい」

「…そうだな、まずはチャンミンの話からだな……ほら、とりあえず糖分を吸収しろ」


いつものカフェで買ってきてくれたアイスチョコを手渡されて、自分の意志とは関係なく自動的に喉へ流し込んだ。
今日のアイスチョコは何だか甘さが足りない。味気ない感じがした。


「俺は、ユノを蹴ったこと、謝るつもりはない。ユノはそれほど酷いことをチャンミンにしてるんだ」


右側にマネヒョンが座ってきて、そこはチャンミンの場所なのにって思う。


「ユノだって男なんだから分かるだろ?……お前は、、征服感や快楽で満たされて満足だったろうけどな、チャンミンにとっては屈辱以外の何物でもないぞ。……いつからあんな事させるようになったんだ…?」


俺たちには、俺たちだけのストーリーがあるのにって思う。
だけどこんな風に言われるから心は激しく揺さぶられて、思わず怒りそうになる。
だって俺たちのストーリーと全然違う。


「…っ、俺たち、付き合ってるんだよ…?恋人同士の行為だ、お互い想い合ってしてた」

「ユノ一人だけ熱くなって、チャンミンは言いたいことも言えなかったんじゃないか?」

「違う!俺たちは…言わなくても分かるよな?って、」

「それは傲慢だよ、ユノ」

「だから違うって!!言いたいことはちゃんと言ってた!!分かり合ってた!!!」

「チャンミンの過呼吸はお前のせいだぞ!そりゃそうだよ、ノーマルだったのにユノに変えられてあんな姿、人に知られてな…平気でいられる男なんていないんだよ」

「……」




なあ、チャンミン

つらいか?俺と居るの




「まさか宿舎以外でやってないだろうな?」

「……どういう意味か分からない…」

「…そんな目で威嚇するなよ、事実確認してるだけだ……盗聴器や盗撮の問題があるだろ…。これ以上チャンミンを傷つけるわけにはいかない。宿舎以外で覚えがあるなら時と場所、全部教えてくれ。設置された痕跡がないか確認する。ネットでも流出情報が上がってないか確認してるんだ」




こんな事まで人に晒してさ

耐えられないよな?チャンミン




「マネヒョン……」

「…、、何だよ……憎いか、俺が……」

「覚えてる限りはちゃんと正直に言うから…チャンミナには聞かないであげて……」

「……。おう、分かった…」


息を吸って、息を吐いて。


「………ふうぅ、、、」


頭をクリアにして、考えてみても。


チャンミンを


「……」














この世の果てまでも連れて行く



俺はそう決めてる






「プライベートでホテル行ったり、野外とかはない」

「そうか…」

「日本の宿舎もない、マネヒョンも居るし」

「うん…」

「新しい宿舎に入る前、再始動の新曲の宣伝活動で泊まった、東京のホテルからだと思う」

「そうなのか……ホテルの名前と部屋、は…経理の記録を確認すれば分かるな…、、」

「うん、俺も地図見れば分かると思うから。あの時はまだ…俺の片想いで振られたままだったんだけど、その日は確かチャンミンの様子がおかしくて…」

「ユノ、世界中のホテルを洗い出すから時と場所だけで教えてくれ。それにそんな話まで俺は聞きたくない」

「でも言った方が全部思い出せるから。独り言だと思って聞き流してくれていい」

「……そうか、」

「うん、それで…」


拷問のような尋問が嫌で、すべて自分から喋った。




俺は鬼だな

ごめんな、チャンミン






俺たちのストーリーは言葉にするとあっけないほど単純で、でも俺にとってはとてつもなく濃厚な物語だった。

マネヒョンが知りたい情報よりも、気が付くとどんな気持ちでとか、どんな言い合いをしてとかの話になって脱線に脱線を重ねたけど、マネヒョンはただひたすら聞いてくれて、たまにしか出ない時と場所を黙ってメモしてた。


「ユノ、ストップ。もう出る時間だ」

「あ、もうそんな時間?でもまだ全部じゃなくて…」

「いいよ。また時間作って聞くから。ひとまずここまでの確認ができればいい。悪いな、寝ずに付き合わせて……。マネージャー失格だ、ほんと…」

「なあ…、」




地獄の果てまでも連れて行くからな







俺はチャンミンが居れば


どこでもいいよ







「マネヒョン」

「何だ?」

「プラトニックならいいのか?俺たち。それを約束したらチャンミナを戻してくれる?」

「……プラトニックなんてもうできるわけないだろ。それだけ深く関係持って…将来はどうするんだ?かわいい彼女作って結婚して子供ができて、そういう未来を夢みてたろ?二人とも」


「未来に連れていくのは、チャンミンだ」





そこで笑い合えば


どこでも楽園に変えてみせるから

 



「……ユノヤ、とにかく聴いてくれよ?今はさ、お互い大変な時期を二人で乗り越えて、絆が深すぎて少し頭が混乱してるんだよ。でもお前達はまだ若いから大丈夫、お互いの幸せをしっかり別々に見つけて年を重ねて、『ああ、そう言えば。お互い恋愛と勘違いしてた時があったよな』って、懐かしめる時がきっとくるさ」

「俺、チャンミナが居れば幸せなんだよ」

「だから…っ!!……大丈夫だよ、ユノ。絶対次の恋が見つかる。今はムキになってそう思い込みたいのかもしれないけど、また新しい女性に必ず巡り会えるもんなんだ。今までだってそうだったろ?」

「俺、チャンミナしかいらないんだ」

「……もう行こう。忘れもの、ないか俺も手伝うから…」













大丈夫だから



ついてきて









すいません!なんで…なんでか分かりませんが#15#16の順序が逆になって直してたら…!涙
頂いたぽち消滅し…(´;ω;`)本当に申し訳ございません!ただお気持ちはちゃんと受け取ってます!!

片割れ chap.10
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