片割れ chap.10 #12










___ Young-Min.side______






大丈夫



ユノは優しいから

夢があるから
























きっとチャンミンを捨てる














______Y.side______





「たぶん、近いうちに呼ばれるから…」とだけ報せてくれて、マネヒョンはもう俺たちの関係について何も言わなかったけど、代わりにチャンミンの周りに陣を張った。


「チャンミン、明日からしばらく自宅に帰れ。今日は俺も宿舎泊まるから、今夜中に軽く荷物整理しといて」

「……はい」

「え…ちょっと待って、マネヒョンなんで…」

「ユノが一番分かってるだろうが!チャンミンの送りは他のマネージャーに行かせる。美容院から遠くなるから行きはスタイリストとヘアメイクも一緒に付けるよ」

「すいません、お願いします……」

「なんならユノもそうするか?その分睡眠時間も確保できるしな」

「待てって!チャンミナ、本気?」

「……」

「ユノ、とにかくしばらく距離を置け。お互いのためだよ」

「……」「……」



チャンミンは何も言わない。


なんで?チャンミン……













______C.side______





休憩に入る度マネヒョンは、何気なく僕の背中を擦ってくれてた。


「大丈夫、か…?」


それは身体のことなのか、心のことなのか

どちらにせよ「そんなことない」と否定した時点でそれは、『男がヨくなった』と認めるってことで。


「チャンミン、…ユノは、あー言ってるが……チャンミンは本当のところ、……どうなんだ?」

「……」


毎日顔をあわせる身内にそう認識されるのも恐い。居たたまれない。
どう足掻いたところでユノは男で、実際男のユノが好きなんだからどうしようもない。


「辛い、よな……。チャンミンは男なんだから、当然だよ」

「……」


僕は何も答えられず、ただ為すがままにされた。













______Y.side______

 




「二人とも、ちょっといい?この曲なんだけどさ。ピアノの旋律も入れたらどうかなって思うんだけど」

「あー、どうかな?チャンミナ。俺はそっちの方がいいと思う」

「確かに僕もいいと思います。全体的にかける感じじゃなくて、例えばイントロだけ使って叙情的に始める感じを出したら面白いかも」

「なるほど。いいね、それ。一回入れて聴いてみようか」

「お願いします」「はい」


チャンミンはアルバム制作のスタッフとも雑誌インタビューでもきちんと受け答えできてたけど、顔だけは一日中伏し目がちで、撮影時だけは何度も注意される。


「下向かないで」

「もっと前見ようか」

「背筋伸ばして…そう、自信もって!チェガン・チャンミン!」

「もうちょっと笑ってくれる?美女にモテモテなところ想像しよう♪ニヤケちゃってもいいよ~♪」


カメラマンに声を掛けられる度、

吹き出して大笑いして前を向いて、
楽しそうに息を吸って息を吐くと、

またチャンミンは俯いた。



「チャンミナ、」

「マネヒョン見てるんで…話し掛けないで下さい……」

「……」



その繰り返しだった。
























______C.side______





「じゃあ、帰るか。お疲れさん」

「お疲れ」「お疲れ様です」


仕事が終わる瞬間は一気に気が抜けて、僕とっては大好きな一時だけど、


「……荷物…か…、、、」


今夜ほど終わりたくないと思ったことはない。

いつものバンに乗り込んで。ユノも隣に乗り込んで。
でもユノとはできる限り離れて座った。

今夜はユノと最後の夜になるかもしれない。
そう考えるのも恐いし、だけどマネヒョンの視線がどうしても気になる。

もう何もかも、いっぱいいっぱい…

マネヒョンが運転席に乗り込んで、車は発進した。


「……まあ、とりあえず。今日のスケジュールミス、本当に悪かったな。もうこんな事がないように管理を再度徹底するからな」

「うん」「ありがとうございます…」

「チャンミン、そう言えばさ。この前めちゃくちゃ美味いクラフトビール出す店行ったんだ。今度連れてってやるよ、俺の奢りで」

「え、本当です?」

「おう。今日でもいいぞ、軽く行くか?」

「あー、、、今日はいいです。またで」

「おっけー」


マネヒョンは僕には優しく、ユノには冷たく接してた。ほんの僅かな、吹き抜ける風ほどの雰囲気だったけど。


「……」


たぶん、同情されてるんだと思う。

僕がヤられる側だから


「今日はぁー、…五台かな。ユノのサセンかな、あれは」

「マネヒョンいつもありがとね」

「ある意味運転が一番恐いよ。サセンのタクシーは容赦ないからな」


今日はうなだれ過ぎて首の筋が痛い。
二人の会話を聞きながら顔を上げて、自然と車内のミラーから話題の車体を確認した。

抜いたり追い越したり車線変更しながらバンに張り付くタクシーの群れ。


「ぁ……」




その中の一台に、後部座席でニヤニヤ笑う女の子の顔を見た。




「……っ、っ、、」

「チャンミナ?」


スモークを張ったバンは外から見えるはずもないのに、


「見ないで…っ、、」

「チャンミナ?おい、大丈夫か?頭痛いのか?」

「?ユノ?チャンミン、どうした?」

「分かんない。頭抱え込んで辛そうなんだ」

「おい、チャンミン?大丈夫か?」


ユノの隣に座る僕を透かして見てる気がする。
笑われてる気がする。



『まだユノの隣に居るなんて』



「や…めて……」





『恥を知りなさいよ!』












もう見ないで







「……っひ…っ、っ、、、っ、」

「チャン……」














息もできない













「マネヒョン!!!過呼吸だ!!!」



息ができない



「は!?」

「マネヒョン紙袋!!」

「、、ない!それより息吐かせろ!!!」

「吐けばいい!!?」

「そう!落ち着かせて、とにかく息!チャンミン息吐け!!」



息できない

苦しい

吐いたらもっと苦しくなる



「ひっ…っ…、…、、っ、」

「チャンミナ、チャンミナ!吸うんじゃなくて吐くんだって!」


無理無理無理無理

頭を横に振ってユノに伝えたけど、どうにもならない。

誰も助けてくれない。
吸う事も吐く事もできない。


「チャンミナ!大丈夫だから落ち着けって!!」


ユノだって落ち着けてない
『大丈夫』も効くわけない


「ユノ、すぐ車停めるからっ。何とかしろ!」

「…、…、、ぅ……、、」



ヤバい
ヤバい
死ぬ
死ぬかもしれない
恐い
死ぬかもしれない

酸素が欲しい



「…、ひっ…、、、」


力任せに吸っても飴玉程度しか入ってこない。
もっと吸いたいのに。


「ひ…、、…、…、」




死ぬ

ヤバい

死ぬ

死ぬ



死にたいって思ったから
現実になった?


ユノを守らないから
バチが当たった?



「…、…っ、、……、」




だって仕方ないじゃないか

女性にはなれない






ユノの隣には居れない



「あった…車停めるぞ!ちょっと待ってろ!」


ハザードランプの音が遠い。


「…、っ、」

「よし停めた!いいか?落ち着いて聞けよ?まずは上を向いて…っ」


マネヒョンの必死な形相が僕の深刻さを物語ってる。



もうダメだ




できない






死ぬ



「……、、、」




助からない
































「チャンミン、おいで」

「ぁ、お前…!」










僕を助けてくれたのは


















「チャンミン」





僕を呼ぶ声





「俺見て」





頬にかかる強い力





触れるほど近い黒目と


触れる鼻と口





「……」





ユノ






「大丈夫だから。信じろ」

「……」


びっくりし過ぎて呼吸が止まる。
いやもう止まってるんだけど。


「ユノ、お前なぁ…っ。キスなんて…っ」

「でも落ち着いたよ…。なあ?チャンミン…」


そのまま目線を外さないユノが僕に奇妙な魔法をかける。


「ひとまず二回だけ吐いてみな?せーのっ…ふうううぅぅ…っ、、っっ、、、、っ」


瞬きもせず、真似してと言わんばかりに唇をすぼめて全力で息を押し出すユノの顔が面白くて、ヘンテコで、あまりにも一所懸命で、


「…ふ、うぅ…っぅ、、」






ユノに預けた

ユノに懸けた





うん

ずっと前から






「お、うまい…そうそう、その調子その調子!」


大声援が恥ずかしくて、ちょっと嬉しいので、もう一度やる。


「……あ…」


そしたら何だか、妙に視界が開けて、呼吸のバランスを思い出して、ユノのタイミングから離れて自分で調節できるようになった。
息ができるって素晴らしい。

生きるって、素晴らしい







「チャンミン……やっぱり、もう今から実家帰るか?お前色々疲れてるんだよ」

「マネヒョン、大丈夫です。僕も色々整理したいし、今日は宿舎に戻らせて」


一段落して、マネヒョンが水を買ってきてくれてる間、ユノと短い話をした。
二人だけの時間は暫くないかもしれない。
とても大事な時間だった。


「大丈夫か?」

「うん。でも本当に死ぬかと思ったんすよ。ユノ、ありがとね」

「あり……、」

「え?」

「いや…」

「……でも、」

「……チャンミナ?」 

「……」




僕の周りには相変わらず


女性達の亡霊と
男性達の蔑む瞳が

浮かんでる


ユノが居るからこうなる



「ふぅ……、……ヨンミン代表は…ユノのことを知り尽くしてるから……たぶん僕たちの心理的なところを突いてきますよ……」

「大丈夫。絶対守るから。真剣に気持ちを伝えれば、今すぐじゃなくても必ずいつか分かってくれると俺は思う」


肝心のユノは馬鹿の一つ覚えみたいにそれを繰り返す。まるで狂ってる。


「大丈夫だからな?」

「……僕は正直、、ちょっと、自分のことでいっぱいいっぱいになってて……、、今ユノの隣に居るだけで、精一杯……」

「うん、何も言わなくていいから。皆には俺から言う。ちゃんと分かるし、ちゃんと守る」

「……ふっ。本当ですか?……これから何が起こるか、、」

「チャンミナ……」







でも


それでいい




イヌ(侮辱の対象)のように

波乱万丈に生きていい






身も心もユノに預けてる






「でも……うん。信じます」






『ハングリーに馬鹿であれ』

この世は狂人が創ると


かのもスティーブ・ジョブズも言っている。




僕はユノに懸けてる









ユノは僕を捨てない









暗いお話なのに皆様ポチありがとうございます!そしてコメント返せてないんですが、本当に本当にありがとうございます!活力頂いてます!返せないのが申し訳なくて、ここで謝らせて頂きます。
ただ私は何度も読ませて頂いてます、本当に癒されて進む力を頂いてます。ありがとうございます。

片割れ chap.10
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コメント

  • 2017/03/27 (Mon) 22:41
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  • 2017/03/27 (Mon) 22:55
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  • 2017/03/28 (Tue) 10:39
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