片割れ chap.10 #6










「トニー・テスタぁ!!!」


信じられない!

あのマイケル・ジャクソンの!!
あの「THIS IS IT」の振付師が!!!


「うんうん、ですよねー。この前のシャイニーの振り付けも話題になりましたね、ミノも騒いでましたよ。ユノヒョン、頑張ばろう」


練習室の片隅から、チャンミンがガッツポーズをしてる。


「……っ、、トニー・テスタ……」

「…そこまで感動されると、、。ユノ、我らがSMPの振り付けはそんなに不満だったのか……」

「違う違う!いや、そういう訳じゃないんだけど…っ」

「ふっ。分かってるよ。っていうことで、秋のカムバック曲はトニーが振り付け担当するから僕たちは今回サポート役ね。頑張ってよーっ!頼むよーっ!」


ジェウォニヒョンの、背中をばんばん叩いて喝を入れてくれる手を握り締めると、「ありがとうございます」という言葉が心の底から無意識に出た。
ヒョンは優しい笑顔を浮かべてチャンミンも近くに呼ぶと、俺たちの首根っこを持って頭部を突き合わせた。

それを見て練習室にいる周りのダンサー達は笑ってるけど、チャンミンと額同士がくっついて思わず意識しそうになる。

さすがに照れちゃうな…

焦点が合わないほどに近い綺麗なバンビアイを見るとすっと目線を逸らされた。


「あ~やめて~どうせなら綺麗な女性とこうしたい~」

「……」


うん、チャンミンは全然大丈夫そう。
うん、良かった…


「いいかい。うちの事務所は今年から世界的に有名な振付師をどんどん迎えて他のK-POPと差別化を図っていく。今回の曲はトニーに、次の曲はナッピータブズにTOHOSINKIを託す。但しどのグループにも真似できないほど難易度の高い振り付けを要求した。うちにとってもお前達が世界に誇る花形なんだ」

「……」「……」


ジウォニヒョンのワントーン落とした声が、胸の芯に響く。
燃えるような高鳴りが起きる。


「まだざっくりとしたイメージしか言ってなかったけど、二人で『対』になるようなパフォーマンスなんだってさ。だから二人で、鏡を見てるように動きを合わせて。トニーも相当気合い入ってるから、もちろん全体的にかなりハードな振り付けになるはず。ミュージカルみたいな芸術的表現も細かく入るはず。でも物凄くインパクトのあるパフォーマンスに必ずなるよ。……できるよね?二人なら」

「はい」「はい」

「よしっ、じゃあ…チャンミン!!いつでも練習付き合うからね!基礎体力今からつけとこうか」

「あぁっ、ジェウォン『先生』!お願いしますぅ~」

「「「「あはは!チャンミン、ファイティーン♪」」」」


俺から離れたチャンミンが次にジェウォニヒョンの肩にうずまると、皆から笑顔と励ましを貰いながらずるずるとトレーニングルームへ連行されて行く。


「チャンミナ、ファイティン!」


去り際のチャンミンに声を掛ければ、ぴっと右手で作った裏ピースに意志の強い眼差しを添えて姿を消した。

普段のチャンミンは俺より余程オーラがある。余韻にすら魅入られて、閉じたドアをただ眺めた。


「……本当に格好良くなったなぁ……」


いつまで経っても。
何度だって感嘆させられる。


「いや可愛い!」
「いや綺麗になった!」
「色っぽさが増した!」
「チャンミン、サランヘ!」

「は?…は!?」


練習室のあちこちからぽんぽんダンサーさん達の声が飛んできて、妙な誉め言葉に笑えない。
俺とチャンミンの関係が常識外れなら、この賞賛だっておかしいと思う。
俺が思うのはいいけど他の男がそう思うはダメ。


「ちょっと止めろよ。チャンミナ男だぞ。おかしいだろっ!」

「へえ?恐ぇーよ、何キレてんだよユノ。別におかしくないっしょ?本当に色気あるし。ヒチョルとかテミンとか、うちの男の子は特に。格好良いってだけじゃないじゃん」

「あれ、、あ、そっか……」


意識し過ぎた?
皆に認められて祝福されたい気持ちと身を引き締めて隠さなきゃって気持ちとが入り混ざって敏感になってるのかもしれない。

そう分析すると牽制してしまった自分が大失敗だったことに気付いて、余計に意識してしまう。
取り繕おうと話題をさらに掘り下げてしまう。


「…いやー、最近ナムジャペンも増えてきてくれて嬉しくて♪俺たちのこと格好いいって憧れてくれる人達が多いだろ?だからうちはてっきりカッコイイ路線かなって…」

「それはユノペンのナムジャのことだろ?チャンミンペンもそうだろうけど、どっちかっていうと可愛いとか付き合いたいとか。同性でも恋愛感情的な対象として見てるペンが多いんじゃないかな?」

「えー…、」


妙な気分。とても妙な気分。
ぐるぐるする。

俺たちのような関係は常識外れで、でもそんな関係になりたいと思う人達もいて。
何が正しくて、何が間違ってるって言うんだろう。


自分の思う道を進むってこんな難しいことだったっけ?


また別のダンサーがニタニタ笑いながら近寄ってきて嫌な予感しかしない。


「そうだよぉ~、そういう奴がハアハア言いながらチャンミンの写真持って布団の中潜るんだぞ~?……で、…ねえ?」








頭の血液が

ぐがっと沸騰して、


怒りにさらわれる。






「てめ…っ!」


『熱くなり過ぎないで』


「…っ」


でも次の瞬間チャンミンの声を思い出して。

申し訳ないけどそいつの胸ぐらを掴んではり倒す光景を一生懸命頭に描いて気持ちを落ち着かせた。
めり込む爪の痛みが分からなくて、奥歯をぎゅっと噛み締めた。

男の想像力なんてだいたい下半身にいく。自分の恋人がソコに使われてると思うとぞっとする。

…いや、メンバーとしても弟としても嫌だよな?



どうなんだろう、

……この感情は正解?



「え、と……」

「……って、おい!早く『キモイこと言うな!』ってツッコめよ、ユノ!俺が本当に変態みたいになるじゃんかっ」

「あ、悪い……。ちょっと色々考えてて…」


今度は考え込み過ぎて失敗だったらしい。


「出たーっ、またユノ話聞いてないー」
「本当昔から変わらないよね。ぽやぽやユノ」
「「あははははは!」」

「はは…」


なんかもう苦笑いしかできない。だけど無理矢理でも笑えて良かったなと思う。
皆が笑う所は俺も笑っとかないと。


「でも僕、チャンミンに抱きつかれてちょっとドキッとしたりする♪」

「……」


折角話が一段落しそうだったのに、よりによってダンサー仲間の中でも特に親しいヒョジェまでが冗談か本気か分からないこと言い出すからショート寸前。

余裕のない俺を察しろよ!あ、でもまだヒョジェ知らなかった。

待て待て待て待て。
しっかりしろ、俺。
落ち着け。


「いたーっ、俺らの中にも変態いたーっ!」

「「ぎゃははははっ」」

「違う違う!僕はそんな事しないけどさっ。だってチャンミン完璧な顔立ちじゃん。綺麗で可愛いし。ちょっとは見惚れたりするだろ!……ん?何、ユノ?」


落ち着いて落ち着いて。

黙ってヒョジェを抱き締めて顔を背の低いヒョジェの肩に擦り付けてみる。


「ヒョジェ~♪」

「ふははっ♪ユノ、何~?」

「ドキドキする?」

「は?何で?」

「じゃあチャンミナにこうされたらドキドキする?」

「するかも♪」


聞き捨てならない。


「……お前ちょっと後で話あるから来い」

「お、いいよ!今日久しぶりにご飯食べてく?」

「それとこれからヒョジェはチャンミナにお触り禁止」

「えーーっ!何でぇ!?そりゃないよユノ~!」

「代わりに俺がいっぱい抱き締めてあげる♪」

「ぎゃー!ユノがセクハラする~っ!」

「「「ぎゃははははっ!パボだ、パボっ」」」


何だかんだで天真爛漫なヒョジェに助けられた気がする。



だから言ったんだ、ヒョジェにも。またチャンミンを不安にさせるかもしれないけど、言いたかった。
知って欲しかった、大切な仲間だから。


「そっ、かぁ……」

「うん。これ本当だから」

「……僕はさ、今聞いたからって何も変わることないから。変わらず二人の間でパフォーマンスしたりふざけたりしていきたい。二人に会えたことは僕の宿命だと思ってるから。今まで通り二人にお触りもするよーっ?それでもいい?」

「ははっ、もちろん。態度変えられる方が辛い。ヒョジェ、ありがとう」

「ユノも教えてくれてありがとう。言うの、勇気いったよな?」

「……本当にありがとう」


チャンミンは待てと言ったけど、俺は正直事務所にはもう報告したって良かった。
マネヒョンが言う通り、俺たちがスキャンダルを起こすことはないわけだし、案外事務所も歓迎してくれるかもしれない。


「ところでさ、マネヒョンにも言ったんだけど、全然信じてくれなかったんだ。何か俺たちの事分かって貰える方法ないか?」

「そういう話は追々で良いんじゃない?今はカムバックもツアーも控えてるし」

「だから逆にいいんじゃないか?この勢いで事務所に言えば認めてもらいやすいような気がしない?」

「ユノ~、何を焦ってるんだ、お前は」

「いや、別に焦ってないけど……結婚式の参列が続いて、、やっぱり皆に祝福されるのいいなって……」

「ユノは乙女だからなぁ~」

「は!?俺は男らしいだろ!」

「違うって、思考回路が。可愛いもの好きだし。考え方はチャンミンの方が男らしいな」

「……そうかも。いやもう男とか女とかじゃなくて、はぁ。。もう……とにかく……」


本当にもういいんじゃないかなって思うんだよ。
公開恋愛する訳じゃない。
ただ今まで女の子と付き合ってた時みたいに、交際してる事を内々は知ってるくらいの……。


「自慢したいんだろ?」

「……」


そんな小さな世界でいいから。


「あー言い方悪かった?」

「…いや、……合ってる」

「うん、誇りたいよね?あんないい男が自分の恋人だって」

「そう、俺……」




















胸を張りたいんだ



チャンミンと付き合ってること


















「ちょっと散歩してきまーす」

「え、また?どこまで?」

「さあ?どこでしょう?」

「は?ちゃんと言えよ、心配だろ」

「ふふふっ、キュヒョンとこっすよ」

「…ご飯作ってくれたばっかりだろ。のんびりすれば?」

「いーや、外出たいっ。外気持ちいいよ、すっきりする」


チャンミンはよく外出するようになったし。アルバム制作が段々形になってきて、ボイストレーニングやらダンスの練習やら俺もヘトヘトなのに、豆腐中心の手料理も作り続けてくれて夜は泥のように眠る。そしてそれが楽しいって笑う。
輝きはさらに増して、チャンミンがはしゃいだり微笑むだけで素っ気ないレコーディング場が和む。

驚くほど成長してきてる。
次々進化して、チャンミンは一体どこまで行くんだろう?








「ん……ぁ、」


数時間して待ちきれず眠りに落ちた俺の隣に寝転がる人を朝日で確認して安心した。
いつも通り気持ち良さそうに爆睡してるこめかみにキスを落とすと、新調されたコンディショナーの香りがふわりと香って、また新しいチャンミンの魅力を引き出してる。

今日も一日暑くなりそう。
差し込まれた午前の光にすでに汗が滲みそうだった。薄い掛け布団すら外したいけど、チャンミンが風邪を引いたら大変。

結局そのまま、まだ一眠りできそうだなとチャンミンの少し伸びた顎髭をしょりしょり触りながら目を閉じる。


「……何時……」

「あ、起きた?大丈夫、まだ三時間前。昼からだよな?」

「そ……」


朝が弱いチャンミン。起床時間よりこんなに早く目覚めるなんて珍しくて再び目を開けて確認すると、チャンミンは未だ瞼が上がってなかった。まだいいって言ってるのに、一生懸命目を開けようとしてる。


「……ぷっ!チャンミナ今めっちゃ面白い顔になってる…っ、、」

「わーらーうーなぁ……」


面白くて可愛いくて愛しくて。そんなチャンミンをずっと見てた。
漸くぱちんと開いた瞼から、少しぼさついた前髪を通して零れ落ちそうなほど綺麗で大きな瞳が微笑する。






「アンニョン、ユノ」


































最高にいい男だった







自分が生きてきた中で一番の









「…………」

「…ユノ?」

「見惚れてて……」

「ぶっ、くくく…っ」


何でもない朝に、とてつもない初めてを知る。

隠れてしまった布団を少しだけ剥ぐと、甘いほど赤い耳だけ見せた後頭部がすり寄ってきてくれる。


「……いい?今日のスケジュール辛くなるか?寝たい?」

「大丈夫っ」





嬉しくて




幸せで





大好きで






口づけして夢中になった。


「二度寝だけは、気をつけましょう?」

「寝ずにシャワーすぐ浴びたらいいっ」


上体をお互い起こしてキスしながら脱がせ合って。布団を床に落として現れたチャンミンの肌が汗でしっとり馴染む。
エアコンなんてつける余裕ない。
荒い呼吸は隠せない。
チャンミンが慣れた手つきでバスタオルを敷きながら笑ってる。「興奮し過ぎでしょ、ユノ」と。


「興奮しない方がおかしいだろ…!」


ぎゅっと目を瞑って笑いながら腕を引くチャンミンに翻弄されて溺れて快楽にまみれて。


チャンミンが俺の全部になった












































他の部屋で寝てる人間の気配なんて、
微塵も感じられないほどには。









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