片割れ chap.10 #4











ユノが「あ」と言えば、
チャンミンが「うん」と言う

そんな感じ。







休憩中、お台場の楽屋で不意にこれから一年のスケジュールを思い出して、くらりと軽い立ち眩みを起こした。思わず当の本人達を見ると、ユノは腕立て伏せ、チャンミンは料理本を捲って過ごしてる。

何の気負いもない。まるで家に居るみたい。
そんな二人の姿だけが救いのような気がした。


「お前達、いい感じだなぁ……」

「あはは!マネヒョン、ありがとう♪で、何が?」

「……」


俺の独り言に筋トレを止めて問い返してくるユノと、すっとユノに水を差し出してまた無言で本に意識を戻すチャンミン。


「なんかその感じが」


お互い別々のことをやってるのに穏やかに繋がっている感じ。二人が同じ空間に居るだけでとてもリラックスしてるのが分かった。
あんなドデカい日本ツアーをたった二人でやってのけたんだから、絆も信頼も深くなるのは当然かもしれない。

夫婦みたいとはよく言ったものだ。


「休みもそんなに取らせてられないのに、本当によくやってくれてるよ。今日夜何食べて帰ろうか?日本だからぁ…、天ぷらとか寿司とか焼き肉とかラーメンとか……何でも好きなもの食べに行こう」

「僕いつもの定食屋さんでいいです」

「俺も。今体絞ってるし」

「そうか?本当、何でも言ってくれていいんだぞ?」


二人のTOHOSINKIが成功した。
次は規模の限界を駆け上がる。

秋に韓国でリリース予定のアルバム制作が動き出して、選曲の段階からユノとチャンミンも参加するようになった。そのアルバムを軸に冬から約八ヶ月間かけたワールドツアーに入る。まだ決定するまで二人には知らせてないが、さらにそのツアーと今年の日本ツアーなどの実績で交渉中の来年の日本五大ドームツアーと単独スタジアム公演が予定されてる。

どれもこれもTOHOSINKI史上初。
合間には各国から取ってきたフェスやメディア出演を詰め込んでいく。
滅茶苦茶を超える一年。

規模が膨らめば批評も膨らみ、その中を突き進まなければならない。
ゆっくり休んでる暇もない。
まともな人間ならメンタルが崩壊したっておかしくないんだ。

少しくらい胸が痛むのは、俺がまだ人の子だって証だろう。













だけど宿舎に帰ってきたらきたで、


「ヒミコサマーっ!」

「ふふふっ」

「……いや、もういいから。お前ら宿舎にいる時くらい、ちゃんと休めよ」


ずっとリビングでユノは懲りずにダンベルのトレーニング、チャンミンはイベントで披露中のギターの練習をした。
だけどユノがダンベルを使って数日前収録で教えてもらった芸人ネタでふざけるから、チャンミンがいちいち反応しながらギターを弾いてる。チャンミンが笑うからまたユノが笑わせようとタイミングを図る。

帰ってきたらもうお互い自室で休めばいいのに、こっちが辟易するほど休まない。


「いや、ユノヒョン見てると面白いですし。リラックスできるから逆に上達しますよ」

「もう寝ろよ~」

「あーおなか空いたぁー。マネヒョン、豆腐そうめんもうない?」

「ないから!だからもう寝ろって~」

「じゃあ僕がコンビニ行きます。ビールもなくなったし」

「はあ~……」


重い腰を上げて、ベランダの窓越しに上空の天気を確認した。帰宅した頃に降っていた雨は、すでに梅雨の作業を終えている。


「傘なくていいな。じゃあ行くか」

「あ、マネヒョン大丈夫。僕一人で行けます」

「いや何があるか分からないから。俺もついていく」

「マネヒョン、チャンミナだけで大丈夫だよ。日本だし」


二人の妙な連携プレイであれよあれよと言う間に、キャップとフードとマスクを身につけたチャンミンが出て行った。なんだか怪しい。
一人で外出したい理由があるとか?


「……彼女に電話?


ユノなら知ってるはずだし協力するはず。でも俺が聴いたところでまた前みたいに凄んでしらばっくれるんだろうな。と、逡巡した。


「ユノ、筋トレよく頑張ってるな」

「だろー♪」

「最近チャンミンも調子いいな。なんか柔らかくなったっていうか、心境の変化でもあったのかな?」

「…………そうかな?」
 
「あ、いや。プライベートが充実してるなら良かったと思って。ストレス感じやすいタイプなのにうまくコントロールして、チャンミンも本当成長したもんだ」


あからさまに間の空いた返事となぜかにへらと笑って自分のことのように照れるユノに、思わずこちらも本音の個人的感想が漏れてしまった。
立場上、本来なら問い詰めるべきで、女性関係があるなら厳重に注意すべきところなのに。

俺はやっぱりこの純粋な二人が可愛くて大好きで、せめてプライベートくらいは目を瞑ってやりたい。(それで上から怒られたことも何度かあるけども)


「マネヒョン」

「んー?」

「もしさ、俺とチャンミナが男同士で付き合ってたらどうする?」

「はあ?気持ち悪いこと言うなよ、中高生の時からの兄弟だろ」

「でも実際そういう人達もいるわけだろ?分かんないよ~?あるかもよ~?」


ユノがいたずらっ子なトーンで聞いてくるから、このジョークに乗っかってやることにした。窓側を向いて表情は見えないけど、今夜はとことんおふざけモードらしい。


「ふははっ。まあそうだな、お前等がくっついてくれたらスキャンダルですっぱ抜かれる心配もなくなるし。俺としては有り難いね」

「あはは!そっかー。じゃあ、俺達が付き合うことは認めてくれる?」

「ふふっ。ああ、大歓迎だな♪そう祈ってるよ」

「あはー!はーはーっ」


ユノの大笑いで一息ついたところで、寝酒を飲もうと冷蔵庫を探りにキッチンへ入った。


「あーそうだった。ビールなかったんだな、チャンミンに電話して俺の分も買ってきてもらおうかな」

「マネヒョン」

「ん?」

「……」


返事した声が届かなかったのか、ユノから次の言葉が出てこない。


「ユノ?どうした?」

「……チャンミナには、マネヒョンに迷惑がかかるから言わない方がいいって言われてるんだけど、、」

「何?どした」


淡々と、あまり響かない、呟く程度の声に引き寄せられるようにリビングへ戻った。ユノは俺の気配に振り向いて、俺を見つめながら、そのまま二つのダンベルを渡す。両腕にずっしりかかる重さが取り巻く空気の深刻さと連鎖する。


「何だよ、恐いな。いいから言えよ。何かまずいことがあるなら対処するから」

「あのさ、」

「……おう」


身構えるれば身構えるほど、何かとんでもない告白が返ってきそうで、


「…」

「何、何だよ。かなりまずい事なのか?急ぎか?」


ユノを急かした。


「いや。まずいと俺は思ってないし、ゆっくり。ゆっくり理解してくれれば嬉しいんだけど……」

「……何」








一番に思い付いたのは、交際相手の妊娠。







ユノか?

チャンミンか?


どちらにしても相当まずい。大スキャンダルになる。極秘?海外出産?籍なんて入れさせられない。鬼の心が沸き上がって、絶たせることすら脳裏にちらついた。




今はまずい。この一年だけはまずいんだ。


「ユノ……」


絞り出す自分の声が震える。











ガチャガチャッ


バンっ



「おーっ、緊張したぁーっ」



張りつめた空気をチャンミンに消された。



「……お疲れさん。早かったな……」

「誰にも気付かれませんでしたよ~。僕って実は人気ないんですかね?」

「……違うだろう、映画の撮影の時なんて大混乱にさせたくせに。こんな時間にチャンミンがコンビニで買い物してるなんて誰も予想できないだろ。例えペンでも見逃すさ」

「あー、緊張したぁー。あー、でもなんか意外と一人で外出ても大丈夫なもんですね」


ちょっと興奮ぎみに目をギラギラさせて緊張したと連発するチャンミンが幼い子供に見えて、カワイソウだと思ってしまう。


「何だよ、緊張するくらいなら俺かスタッフに言えば何時でも代わりに行くぞ?」

「いや。最近一人でちゃんと何でもやれるようになりたくて。買い物とか料理とか、一人でちゃんと生活できるくらい自立しとかないと、男として恥ずかしいかなと!」

「……掃除は人一倍やってると思うから気にする事ないぞ?」

「ですよねー♪そこは僕も自信あるんですけど!」

「あれ…俺なんか耳が痛い……」

「お前のことだ。現実を見ろ、ユノ」


気が抜けてなだらかで和やかな空間へ戻ったけれど。

いつも一緒に居ていつも一緒に仕事をするけど。

俺と、ユノやチャンミンは全然違う。
普通の人間はコンビニ一人で行くくらい何でもない。行くのさえ怠い時だってある。


「はい、ユノヒョン」

「おう、ありがとう♪」

「一人けっこう面白いですよっ、皆で行くのと全然違う。ほら去年、仮面とマントつけて僕らの正体がバレないようにカプセル探すゲームやったでしょ、『ランニングマン』の収録で。本当あんな感じ。バレたらどうしようって怯えたら余計怪しいでしょ?だから大胆さが大事なんですよっ」

「あはははは!そっかー♪」


まくし立てるチャンミンの腰をぽんぽん撫でて、ユノが優しく笑ってる。頷く茶髪がふわふわ揺れる。

こんな二人の小さな世界を、カワイソウって思ってしまうのはお門違いだと理解してる。それに見合った名声や愛や恩恵をきちんと享受してるんだから。
だけどたまに、一体このコ達と逃亡者の暮らしのどこに違いがあるのかと、どうしようもなく憤りを感じることもあるよ。

二人の告白の一つや二つ、どうにでもなる。何とかしてやりたい。


「マネヒョンにも。はい、ビール」

「お、ありがとう」


気の利くチャンミンから缶を受け取って中の液体を流し飲むと、喉に爽快感が広がる。
数杯飲み交わした後深酒することなくチャンミンは漢方薬をばりばり頬張って幾重ものスキンケアをしに洗面室へ立てこもった。


「で、ユノなんだ。さっきの続き」

「あー……、」

「いいよ。何でも。ちゃんと聴くから」


そうさ。
軌道に乗って、成功したんだ。
立ち上がったんだ。どん底から。
何とかなる。


「実は俺とチャンミナ、本当に付き合ってるんだ」

「……ん!?」

「始めは俺が好きになって振られたりしたんだけど…でも結局チャンミナは応えてくれて。恋人同士になった、一年前から」



「…………」

























俺がこの時、どうしたかって?








































「……ぷっ♪」














「……」

「あははははははは!!!ユノ最高だっ!!!っはははははは!」

「マネヒョン……」













笑ったさ

そりゃ笑うだろ?












「何だよお前~!俺の緊張返せよ!っあー、もう本当にドキドキさせやがってぇ~。でも面白い!日本のお笑いの『テンドン』ってやつだろ!?一体いつ覚えたんだっ。あ~っ、最高に笑えるなぁー、はははは!」

「いや、マネヒョン。本当に…」

「あはははは!もういいからっ!本当に腹痛い!もう勘弁してくれ、頼むっ!ふふふふ…っ!」


それも盛大に。構えてた心が一気に弛緩して、本気で腹が捩れたんじゃないかってくらい爆笑した。
リビングに戻ってきた、つるぴかでぽかんとしてるチャンミンに問い直すのもアホらし過ぎて、そのまま二人に就寝の合図をして今度は俺が洗面所に入った。


「ふふ…っ、」


鏡に映る笑いが収まらない自分の顔を見てまた大笑い。


「ぶっ、ないわぁー。。だははははは!」


だって二人は歴としたノーマルだし。
歴代の彼女も確認してきたし。
芸能人という仮面を取れば、二人ともどこにでもいる綺麗で可愛い女性にうはうは言ってるただの成人男子だし。
何よりいつも一緒に居る兄弟で戦友でメンバーだし。
夫婦みたいっていうのはそういう意味で繋がってる大事なパートナー同士だし。

汚くてだらしない所も散々見てきた二人だ。


「くくくっ!!あるわけないわ、本当ユノ笑わすなぁ~♪『ヒミコサマ』よりこっちの方が笑えるなっ」























笑うさ

そりゃ笑うよ























「一年前から……とか、ストーリーいきなり作り出すから、もうっ。ふはは!ユノらしいな♪」




だけどな、



















俺は今も後悔してるよ。

















あの時、真剣に聴いてさえいれば





もっと違う道だってあったのかもしれないのに

ちゃんと聴くって約束したのに








そう思うと、今でも

二人の目を見れない時がある。


















本当に悪かった。
















ごめんな、ユノとチャンミン














片割れ chap.10
にほんブログ村 BL・GL・TLブログ 二次BL小説へ
にほんブログ村
Fc2


スポンサーサイト

コメント

  • 2017/03/13 (Mon) 23:25
    管理人のみ閲覧できます

    このコメントは管理人のみ閲覧できます

  • 2017/03/19 (Sun) 09:18

    tan*** 様

    こんにちはー♪
    ありがとうございます、良かった良かった。
    もし二人の関係を告白されたら、きっと、十人十色の反応があるんだろうと思いまして、こうなりました!
    二人に近ければ近い存在の人ほど、信じられないかなぁと。
    あと仰る通り、実際に二人の関係がもし公表されたら……。そこをこの片割れ10で進めていこうと、思ってます!!書きたいポイントの一つだったんです、ここ。リアルホミンホならではの場面ですね♪楽しんでいって下さいっ。

    チャンミンのおすすめの本!知りませんでした!ちょっと私も読んできます!←
    萌えるぅ~~っ。もう、チャンミンって、チャンミンって!(。>д<)
    あからさまに公言するわけじゃなく仄めかすのが、もう、、こちらとしては身を乗り出して萌えちゃうんですよね!ああ、いい…❤←

    • りょう(ゆのっぽん) #-
    • URL
    • 編集

コメントの投稿


管理者にだけ表示を許可する