片割れ chap.10 #3










______Y.side______







記念日の夜、



無防備なチャンミンから

ありったけの信頼を



感じた







「チャンミナ、麺!」

「……。ん!?」


愛を感じる。
チャンミンにも俺の気持ちを感じて欲しい。


「麺作るから!お前好きだろ、ちょっと食べてみろっ」

「え、麺って何麺?ファンクラブイベントで披露する料理でしょ?結局何作ることにしたの?」

「一個以上作ることにした。俺、味覚にはけっこう自信あるし」

「イッコ、イジョウ??……ミカク、ニハ、ネ、、」

「こらっ、マネヒョンも美味いって褒めてくれたんだぞ?」


からかってカタコトに言うチャンミンを連れて、指導を受けたクッキングスタジオから余った材料をとりあえずキッチンに全部取り出して並べる。何から手に取ればいいか忘れてしまって、両手を擦りながら転がった食材を見渡した。


「えー…っと……」


忘れた……。何だっけ……。


「手は?手は洗いました?」

「あ、そうそう。手な、、いやさっき洗ったし」

「えー、疑わしいなぁ……」

「いいからっ。出来たら呼ぶからちょっと待ってて。本当すぐ出来るから」

「ぶくくく…っ。はーい♪」




不思議なもので、結婚式への参加は続いていて。最近は事務所の理事の式で、チャンミンや他グループのメンバー達と参加した。
ほぼ事務所関係者で埋め尽くされた会場に、だんだん未来の俺たちの結婚式を見てるような心地がして胸いっぱい。チャンミンに「結婚式っていいよな?」「式ってなんか凄いっ」「こんな風に皆からお祝いされたらいいよな?俺たちも」って、耳打ちした。ら、未知との遭遇並みのスゴイ顔で見られた。




「……あ、そうだ。もやしだ、もやし。鍋、あ、沸騰させなきゃ……」




でも俺の本音だったから。チャンミンの顔見て、あーこれ鼻で笑われたらちょっと凹むなぁ…って思った瞬間、


『静かな方がいいんじゃないっすか?』


という捨て台詞を残して、チャンミンはキュヒョン達の所へ逃げて行った。




「ぇ、と。次は~…カボチャ!切る」










こんなに嬉しいことって、ない










思い出したらにやけて止まらなくなった顔を掌で押し拭ってかぼちゃに包丁を入れていく。
初めてサムゲタンを作った時からかなり時間が空いていて、刃物への力の入れ方なんてすでに忘れてしまった。五分前の事でも忘れたりしてしまうから自分で自分の忘れっぽさに困る。


「ふ、ふ…っ」

「んあ?あ、チャンミナ?」

「あ、危ないって…ふ、くぐっ」


気がつくと後ろからチャンミンがまな板を覗いてた。必死で口を抑えてるから、頬が盛り上がってぷくぷくしてる。


「危なくないから!シェフ並みだろ?」

「ぶーっ!!!あははははっ!」

「ユノシェフ、ユノシェフ♪」

「ぶーっ!!!」


ジョークを飛ばしたらついに吹き出してしまって、チャンミンの重みが額から乗っかってきた。背中に笑って震える俺の人。


「ちょ、こっちが危ないだろ~っ」

「すいません…っ、だって……切るっていうかこれ押し潰し…てっ、くくく、……っ」

「……ぶっ、ふ…っ、」

「ユノ、ユノ、ちょっと待って。落ち着いて…、ふふふ…っ、ふ」

「あははははは!ダメだぁ、笑って手が震える…っ、あはーはーはー!」


天井を仰いで大笑いすると、後頭部に、俯いて爆笑してるチャンミンの後頭部が当たった。


なんだか俺たち、ぴったりだ


「丁寧にっ。丁寧にいこう、ユノ!」


だから笑い泣きでずっと目が潤んだままのチャンミンとぎゃーぎゃー騒ぎながら完成させた海鮮インスタントラーメンのレシピだけは、絶対忘れないようにしようと思った。まあアレンジで豚肉も入れたから、海鮮と呼べるかは分からないけれど。


「麺が、伸びてるね。あと味がやっぱりちょっと薄い。味みながら、茹でる時間ちゃんと図れば?」

「うーん……」

「でも悪くはない」

「うん、だろ!?」



「うん、美味い」



「……ふはっ!だろ!?」

「まあね」





チャンミンが初めて、


美味しいって言ってくれたから












「明日も作ろうか?」

「いやいやいやいや、僕がイベントで試食する係なのに何回食べなきゃいけないんですかっ。いいっすよ、今日だけで」

「そうか?」

「うん、次はまた僕が作るから」


最近のチャンミンは甘くて格好良くて、最高の男になりつつあるから、こっちが参る。


「!チャンミナ~~っ♪」

「うるさいっ。こんなんばっか食べてたら、僕はいいけどあんた確実に太り続けるから仕方ない」


だけど、それだけじゃなくてな?


俺だって人間だから、自分の抜けてる所に不甲斐なさを感じたり、ボケることで皆から喜ばれる時に疲れることもあって。

俺だって男だから、格好良く決めたいとか、鋭い時だってあるのにって、人へ反発したい時があるけど。


「俺そんなに太ってないわ、そこまで俺が太るの嫌かっ」

「太ってないのくらい分かってるって。僕は何でもいいと思ってるのに、ユノが太ると胸が目立つって気にするから」

「え」

「え、そうでしょ……?」


チャンミンだけは分かってくれる。
だったら俺、何時間でも笑われていいや。
天然だって喜ばれるなら、それでいいや。


「……チャンミナ」

「や、あの、コンプレックスはやっぱり僕もあるから分かるし……髪の毛多いとか手が小さいとか…何とかなるなら、何とかしたいって思うけど僕のはどうにもならないし。でもユノは運動さえしっかりすれば全然気にしなくて良くなるから……羨ましい……」


チャンミンはきついこと言う時も、酷いこと言ってるようで本当は的確に物事見て改善しようとしてくれてるだけ。


優しいよね


きっと誰かが深い傷を負ったら、それを舐めるんじゃなくて、痛いって叫ばれてもちゃんと針で縫って治してあげれる人だと思うんだ。

慰めるんじゃなくて、立ち上がる力をくれる人。
チャンミンこそ、信頼できる。

何度だって、そう気付かされる。



「すいません…ちょっと言い過ぎましたよね……」

「……俺ってそんな魅力的?」

「はい?」

「何でもいいって、俺が何しても格好良くて何しても好きって思っちゃうってことだろ?」

「お…っ、おおおお、お!?」

「いや大丈夫!!言わなくても分かるから!!!そっかぁ、チャンミナそんなに俺のこと……あーーっ、幸せだなぁ!」


仰々しい手振りをつけて、こんなもろからかってるだけのわざとらしい俺の演技に、もはや痛くないの?ってくらい耳を真っ赤に燃やすチャンミンが新鮮で。何か返してこないのかなぁ、なんて、そのままニヤニヤ見てたら「一回死んでこい!」って今日は暴言が飛んできて、自室にまた逃げられた。


甘くなったり
恐くなったり
格好良くなったり
真っ赤になったり
おかしくなったり

毎日いつも色んなチャンミンに会えて面白い
どんなチャンミンの心も綺麗で美しい




使い終わった食器やコップをざっとだけどシンクに追いやってから、チャンミンの自室をノックしてドアノブを回す。
鍵は掛かってなくて、期待通りのチャンミンの気遣いにやっぱりにやける。
俺今相当気持ち悪い顔してると思う。こんな自分、格好悪くて誰にも見せられない。


「チャンミナ~♪チャンミ~ナ~♪」


チャンミンだけ。
チャンミンだけに晒す。

てっきりゲームでも始めてるかと思ったのに、目に止まった物体はベットの上で頭を抱え、うずくまった身体をゆさゆさ大きく揺らしてた。地鳴りのような声が低く伸びてる。


「あ″ーーーーー……」

「……」


チャンミンって、本当飽きない。


「おい、そろそろ寝るか?歯磨きする?」

「……」


ぴたりと止まったチャンミンが、次の瞬間リスのような素早さで布団の中に潜り込むからもう面白くなって。こんもり膨れた布の山に飛び乗った。


「こんなので逃げれるわけないだろ!パーボヤ~♪」


中を探って縮こまった足首を引っ張り出すと足掻いてまた中へ隠れようとするから、夏用で軽い掛け布団を思いっきり上に浮かせて俺もその中に入った。
ばたばた暴れて。じゃれて。はしゃいで。当たったパンチがちょっと痛い。


だけど、


「た!」

「あっ、ごめんね?大丈夫?」


このベットの中には可愛いしかない。
今度は俺の肩を本気で心配するチャンミンが現れて、呼吸を整える息遣いだけが残った。


「次はいつ作ってくれる?」

「ん?…。あー、料理?日本から帰ってきたら、かな?」

「すっごい楽しみしてる♪」

「…ぶふっ。いやその前に、僕がユノの同じ料理を何度も食べなきゃだからぁ」


困ってるのか笑ってるのか分からない大輪の笑顔を目の前に。
無理して言わなくったっていいし、言わなくても分かるだろうけど。


言いたい時には言わせてな?


「チャンミン、サラン…」





























チャンミンだけに捧ぐ。










片割れ chap.10
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