片割れ chap.9 番外編#27 チャンミンの平行世界








焼酎が目の前の卓上に置かれても、僕たちは杯を合わせられずにいた。

『ユノ』とはきっと、これが最後になる。

『チャンミナはずっとユノの事が好きだったんですよ』、そう言うのが最も簡単なんだろうけれど言いたくないのは、まだ僕自身がユノに言えてない言葉だから。そして僕が『ユノ』に言うべき言葉じゃないから。

とにかく何か言わなきゃと『ユノ』へ目を向けると、『ユノ』は運ばれてきた二つのグラスを、口を尖らせて見入ってた。考え事してる時の癖。


「チャンドルは、……どこまで見えてた?」

「へ?」

「チャンミナは、体が乗っ取られたみたいにチャンドルを見てたって言ってたんだけど……」

「はあ……、」

「チャンドルも、、チャンミナの時のことは見えてたのか?」


気分悪い、が、気持ち悪い、になってきた。胃液が体内でもぞもぞし出してる。うまく頭が回らなくて、普段は解釈できる言葉足らずな『ユノ』の台詞が租借できない。


「何が言いたいの?はっきり言ってくれた方が助かります」

「その……チャンミナが……俺のこと、、好きって言ってくれたんだけど……見えてた……?」


だんだん小さくなって最後は消え入ってしまった『ユノ』の声が焦れったいけど、言わんとしてる事はようやく分かった。『自分たち』の恋愛相談を持ちかけられるなんて、誰もが経験できることじゃない。


「……チャンミナの気持ち、どうしても信じてあげられない…?」

「は?そこ?」

「え?どこ?」


……つもりだったけど違ったらしい。


「いや、チャンドルと『ユンホ』は仲良くやってても、さすがにそういう感情では繋がってないだろ?いや、それが普通なんだけど、……でもチャンドルには気持ち悪がらずにこういうチャンミナって自分もいるんだなって程度にでもいいから認めてあげて欲しい。俺のことは何て思われても構わないけど。もう1人の自分に、自分のこと嫌悪されたら、誰だってやっぱりショックだろ?…って、笑うなよ……。悪い、俺説明下手でさ……、何て言えばいいんだろう。つまり、、俺とチャンドルは……両想いなんだけどどうかこの気持ちを認めてね…って、だから笑うなっ!真剣に!!」


『ユノ』の長ったらしい説明に、僕は本当に笑えて抱えた腹が痛い。具合はますます悪くなるのに笑わせるから、体のタイミングが合わなくて意識飛ばなかったらどうすんだって頭で『ユノ』に毒づいた。声も出ない笑いなんてのも、なかなかない。


「おいチャンドル!……だめか?…………あり得ない?」

「ふふふふっ……はぁ、はぁ、苦しい…っ、つまり『ユノ』は、僕に2人の交際を認めろと?くくく…っ、、」

「チャンドル……」

「……。『それが普通』って、何と比べてるの?ユノらしくない」

「え…」

「言っとくけど僕のいる世界だって、いくら仲が良くてもふざけて男同士でキスなんてしないから。キスは恋人同士以上の行為ですよ」


『チャンミナ』にもだったけど、


「……は?いやだって…」

「僕、ユノと付き合ってます。キスして抱き合って……恋人だから『普通』でしょ?」


こうやって胸を張って宣言したことは初めてで、


「……そ、れって…」

「本気で愛し合ってる」


いつか僕のいる世界でも、こんな風に堂々と言いたい。


「え、ちょっと待て、抱きっ……っ」


『ユノ』の顔がみるみる赤くなってきて、何を想像されてるのか考えるとあまりの恥ずかしさについ怒るような口調になる。


「…っ、て、それよりあんただ!!あんたちゃんと信じろよ!『チャンミナ』ちゃんと告白したろ!?」


『ユノ』の妄想を終わらせたくて、机をどんと叩いて話を変える。焼酎がぴひゃっとこぼれて落ちた。


「何なの!?冗談で言えるわけないでしょ!?あんなことっ」

「う……いや、信じたいけど。。」


だって肉体関係を強要したいわけじゃないから。
僕たちには僕たちの流れがあって。抑えられない衝動があって。気持ちよくなって欲しいって願いがあって。捧げたいって想いがあって。
それが僕たちのカタチを形成した要素の一部であっただけで。

『ユノ』と『チャンミナ』にはまた別のカタチがあるはずだから。


「……『ユノ』聴いて。とても大事なことです。『チャンミナ』は貴方を庇うために兵役に出たんです」

「………………え……」

「非難されるためにわざと逃げたの。あのままだったら『ユノ』が非難される対象になったから。現に僕の世界のユノはグループのリーダーだからって理由で、僕なんか比じゃないほど物凄いバッシングにあいました…」


吐き気がする。猛烈な目眩がする。座っているのにバランスが取れなくて、体が左右に揺れる。

だけどそれだけじゃなくて、


「なんか『自分』の弁護で、、恥ずかしいんですけどね……っ、」

「おい大丈夫か!?」

「いいから聴いて!!!」


熱いものがこみ上げる。
足元から、胸の奥底から、目から。
沸き上がる。

自分の胸ぐらを掴んでどんどんと叩いて『チャンミナ』へノックした。
 


言ってあげるからね、僕が。



「この『自分』はね…っ!、……たとえ貴方本人から憎まれても、TOHOSINKIを離してでも…っ、それこそ世界中を敵に回しても!……『ユノ』をバッシングから守りたいって、ただそれだけの、そのためだけに……っ、、」

「……俺?」



辛かったでしょう。

恐かったでしょう。




「本当に全部投げ出しちゃったほど。…………『ユノ』からのキスが、、嬉しかったんだって……」







笑っちゃうよね、ほんと


馬鹿すぎて泣けちゃうほど








それほどの







「俺のため……?」





















  愛の、病  








もう頭を、上げることも出来ない。辛うじて右手でグラスに触れて、その横に頬から突っ伏した。


「……『ユノ』が言った通り、『チャンミナほど格好いい男はいない』……」


狂った守り方で。歪んだ愛し方で。
だけど見返りは求めなかった。
誇るべきもう1人の『自分』。


「まさか、そんな……お、俺…、?俺のせいで、チャンミナは…っ、、」

「止めて止めて…背、負うんじゃなくて、…ただ信じて欲しぃ。『ユノ』なら……『チャンミナ』の気持ち、受け入れてくれるでひょ…?」

「…っ。………。もちろん、安心しろ。チャンドル教えてくれて、ありがとう」


呂律が回らない。胃液が喉元まで競り上がってる。
いよいよ、さよなら。
あともう1つ。
あともう1つだけ、言えるか?

喉奥を締めて腹に落とし込むように発声する。朦朧とする中、そこだけに集中して。荒い呼吸は収まらない。唸るようにしか出ない声を出す、それだけ。


「だけど僕という人間は不器用だから……気持ちを態度や言葉で表せない。だから『僕』の歌を聴いて。ギュラインの歌、ソレに気持ちを詰めたから」


想いが伝わりますように


「……っ、ごめんもうダメだ……っ」

「分かった!チャンドルありがとう、絶対帰れよ、意地でも帰れよ!?」

「当然!!『ユノ』乾杯!!」


(ありがとう)


横倒しの景色が白ばんでもう見えない。手に添えてあるグラスにガチャンと震えが伝わって、『ユノ』が乾杯してくれたことを知る。指の感覚だけで唇に近付けて、後は仰け反る勢いで焼酎を飲み干した。毒薬のように体へ染み渡っていくアルコールの熱さを感じながら、後ろへ倒れたはずなのに。

そのままどこへ抜け落ちたのか、僕の体に衝撃はなかった。
























































































「……」


目を開けると、僕は停車している電車の座席に座ってた。ぽかぽかした日射しが温かい、日曜の午後のような穏やかさ。誰もいない車輌の扉は開け放たれていて、向かいのホームに、同じように開け放たれて停まる電車が在った。


「あっちだ……」


なぜこっちの電車に乗っていたんだろう。
僕の乗る電車はあっちだったのに。

立ち上がってゆっくりホームに降りると、その駅には格納庫でもあるのか、数え切れないレールが延びていた。何十?何百?向こうの風景が見えない程の数に感心する。そして走っていたり停まっていたり様々に存在する何台もの電車たち。


でも僕の乗る電車は決まってる。


足を進めて、何故だか無償に嬉しくなって、気恥ずかしくなって。
まるで好きな人に会いに行くみたいな、幸福な気持ちが満ちてきて。
クスクス1人で笑いながら、目的の電車に乗り込んだ。

車内に足を踏み入れた途端、『遅かったですね』と言われるように扉が閉まり、僕の電車は動き出した。


そう、これはあの人と僕の電車。


かなり古めかしい電車だからBOX席なんてのもある。どうせならと、旅行気分で通路側のそこへ座る。窓際の席はあの人のためにとっておきたい。

昔の設計で作られた空間は、僕が足を組むと前の座席に当たってしまう。

でもそれでいい。

僕は待ってる。僕の待ってる人は、きっと斜め向かいに座ってくれるから。あの人は前が好き。いつも前だけ見つめてる。進行方向に座るはず。僕の足は邪魔にならないはず。

外を見ればいつの間にか田園風景。日射しは変わらず温かく。柔らかい。


「おかえり」


耳朶の後ろから、降り落ちるように馴染む声。僕にぴたりとはまる声。振り向かなくたって分かる。自動的に嬉しくなる。もう仕方ないくらい笑みが溢れる。



そう、僕はこの人を待ってた。

















「ただいまっ、ユノ」










そして、消えた。すべて。







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コメント

  • 2017/02/03 (Fri) 08:09

    やっぱり平行世界
    好きです〜〜❤️
    もう終わっちゃいそうですね
    寂し〜〜

  • 2017/02/03 (Fri) 19:27
    No title

    聴かせて。ギュラインのうた。

  • 2017/02/09 (Thu) 21:59

    チ* 様

    うわー、好きでいてくれましたか!びっくり!嬉しいです。好き勝手進めさせてもらってたので、訳分かんない人かなり多いだろうなぁ…と思ってたので。(;´-`)
    ありがたいです。ありがとうございます!

    • ゆのっぽん(りょう) #NNZ72WTo
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  • 2017/02/09 (Thu) 21:59

    72******* 様

    リアルを引っ張ってきます。

    • ゆのっぽん(りょう) #NNZ72WTo
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