片割れ chap.9 番外編#26 チャンミンの平行世界










『ユノ』の電話が予想通り長くなって、ようやく終わった時にはマネヒョンが運転してくれてるバンがすでに走り出した後だった。目的地まで、半分は過ぎてるかもしれない。


「ちょっと聞いて!ここの店長、俺の友達の知り合いだった!」

「そこはいらんっ。で!?」

「準備中だけど昨日の俺たちの影響で記念写真撮りに来てる人がかなりいるらしい。だから裏の勝手口から入ってくれたらすぐ案内してくれるってさ」

「オッケー、裏ね!」

「よくお店の人いましたね…!」


まだ夕方に差し掛かった時間帯に、居酒屋の店員がもう出勤してるなんて幸運あるんだろうかと思わず溢すと、『ユノ』に「飲食店はだいたい仕込みとか前作業があって、店員は営業時間よりかなり早く来てるんだぞ?」と教えられた。

僕はバイトというものをした事が無くて、精々父さんの靴磨きくらいだからそんな事知らない。逆に若い頃焼肉屋とか栗屋とかバイトを幾つも掛け持ってたユノのことは尊敬してるし、その話を武勇伝みたいにユノは語るけど、この度に僕の心の真ん中がいつもきゅっと音をたてた。

そのような人が、僕に愛を注いでくれてる。


「……ユノ……」


絶対戻りたい。早く会いたい。
『ユノ』も最高に格好いいけど。


けれど……


「どした?」

「あ…『ユノ』を呼んだわけじゃないんだけど……その、何で僕が今チャンドルって分かったんです?」

「んー……、勘?」

「……」


でしょうね…

肩の力が抜けて、自分が何か神秘的なものを期待していたことを知る。

 
「っていうしかないかな。……よくよく思い出してみたら、ユノヒョンとユノで呼び方も違うんだけど、そこで分かったんじゃなくて…。例えばステージで歌って踊ってる時、チャンミナがちょっと体調悪そうだなとか、なんかおかしいなとか分かる時みたいな、そんな感じ」

「……」

「分かるだろ?」

「うん、それですそれです」


そう、そんな感じ。
決して人知を越えるなんて厳かなものではないかもしれないけど。

似てるからはめ込もうとすると違うパズルのピースみたいな。

『ユノ』もユノで、『チャンミナ』も僕だけど、『ユノ』と僕では合わないし、きっとユノと『チャンミナ』では合わないと思う。

僕の“ユノ”は、ユノだけ。


「だから実は、昨日宿舎でお前が倒れて気が付いた時から、何となくチャンドルじゃないなとは思ってた」

「……へ!?」


舌をペロッと出して肩をすくめる『ユノ』は正にいたずらっ子。とても勘のいい、可愛らしい男。


「何でだか分かんないけど、、チャンミナずっとチャンドルの真似してるから、俺も乗っかっちゃった♪」

「そ…そんなに確信してたの!?」

「一緒に遊んだり曲聴いたりあまりに今までと違うから、俺もちょっと自信なくなってたんだけど。わざとチャンドルのカルボナーラが食べたい!って強調したら眉間に皺寄せて困ってるような顔したから。あぁ、やっぱこいつチャンミナだわって」

「……スゴい」


ユノも、こんな風に僕のこと分かってくれる?
きっとそうだって決めつけると、とても誇らしい気分と恥ずかしい気分。


「チャンドルはカルボナーラが好きなのか?」

「へ?」

「さっきチャンドルの腕にもカルボナーラって書いてあったから」

「……」


僕、カルボナーラ、好きだったっけ?
  

「……。さあ…?」


素直に答えたのに、『ユノ』がピタリと止まるから、僕はどこか間違った答え方をしたのかもしれない。


「…………急いだ方がいいな。マネヒョン!裏道でも何でもいいからとにかく急いで!」

「もうずっと急いでるわ!!皆さん笑って会議室から送り出して下さったけどな、俺のクビ飛んだらユノ覚悟しとけよ!」


捲ったままの腕には確かに『カルボナーラ』って書いてあって、これはユノと一緒に食べに行ったとか、そういう思い出だろうか。


「………」 


ユノって、何のバイトしてたっけ……


「………」


あれ…………、






「チャンドル、チャンドル!ぼおっとするな!とにかく俺と話をしてよう!」

「あ、うん…」


大きく肩を揺さぶられて、『ユノ』が何故だかすごく必死で男らしい。すごくセクシーだ。


「でも…っ、チャンミナとすごくいい形で会えたのはチャンドルのおかげだ!ありがとう。俺チャンミナに、あまり良く思われてないと思ってたから……嬉し過ぎて正直信じられないくらい……」

「あ……」


『チャンミナ』はたぶん、自分からは言わないと思う。いや、絶対言わない。

でも少しくらい、お前の苦しみが報われたっていいんじゃない?って僕は思うよ。それが歪んだ愛し方だったとしても、愛の深さは伝わるよ。


「『ユノ』聞いて。『チャンミナ』が1人で兵役に行った理由」

「それは……」

「キスがショックで、『ユノ』から離れたいって思ったからじゃないんですよ」

「え?」


せめて、勘違いを解いてあげたい。


「あれはね…」

「おい、着くぞ!!どのくらい時間かかるんだ!?」

「分かんない!チャンミナの目が覚めるまで!」

「……はあ?…ダメだ、、全然分からんからとりあえず急げよ。車そんなに停めてなれないからな」

「了解、行くぞ」


僕が言い切れないまま、横にあるドアは開け放たれ、『ユノ』の勢いと共にリュックを背負って外へ飛び出た。居酒屋の裏口までの数歩の距離をがっちりSPに両側を固められたのは、そこにもすでに緩やかな人の波ができてたから。僕たちを認識した波が、一気に密集率を跳ね上げた。

さすがに怯む。


「きゃあああぁぁーー!!!」
「き、来たあ!!!」
「ウソ!?ウソ!?本物!!?」
「ぎゃああああああ!!!」
「何で今日も!?嘘でしょ!?」


物を投げられ、蔑まれる恐怖。

僕に、あの「黒い嵐」は耐えられる……?



「……っ」








数歩が、地平線の彼方に感じる。



















「チャンミン!サランヘヨ!!」

「……ぇ……」
 












白い、一吹きの風








「信じるよ!!大丈夫だからね!」


「2人のTOHOSINKIずっと待ってるー!!」

「昨日の動画見たよ!感動した!!!」

「チャンミン、ファイティン!」
「ユノ昨日、最っ高!!!ホント格好いい!」
「チャンミンもう泣かないで!」
「笑顔が見たい!ずっと待ってるよ!」
「ユノーー!!!チャンミンを守ってくれてありがとう!」

  

「……」

「チャンミンさん、早く」

「あ、すいません…」


右手の警備員さんに促されて、後の声は背中で受けた。


「…………、、」


この世界に来て、思い出せたのは、



「チャンミン、また歌って!」

「チャンミンの歌がまた聴きたい!」

「ずっと待ってたよ!!」
「信じてたよ!チャンミンありがとう!」
「2人で絶対最強!!!」
「早く見せて!!もう見れるよね!?」
「チャンミぃーーーン!!!」



この声が、当たり前のものではないということ。



「な?俺とチャンミナはもう大丈夫だから。安心して帰ってな?」


お店の勝手口に入ったところで、『ユノ』の笑って差し伸べてくれてる手が、当然のものではないということ。


ペンだから
ヒョンだから
メンバーだから
TOHOSINKIだから
好きだから


そうして与えられてきた愛に、当たり前なんて1つもなくて、1人1人が、それぞれのひとつひとつの想いで、僕を見ていてくれるということ。


それに僕は、最大の表現方法で返したい






『ユノ』の手を掴もうとしたところで、中から店員さんが言葉通りに飛び出してきた。『ユノ』は電話にすら威圧を掛けられるらしい。おかげで僕の伸ばした腕はびっくりしたまま固まった。


「ユノさん、チャンミンさん、お待ちしてました!店長から聞いております!とにかく協力させて頂きます!お伺いした部屋に案内させてもらいますから、何かいるものはありますか!?」

「ありがとうございます、感謝します。チャンドル、ここにいた時何飲んで何食べてた?」

「へ?」

「できるだけ同じ状況にした方がいいだろ?あ、誰と一緒だったっけ?キュヒョンとミノか?今からでも呼ぼう!で、何出してもらってた?」


さすがユノ。いろんなアイデアが飛び出してくる。

でも……、、


「……何でしたっけ…」






僕、何を再現しようとしてた?












「……っ、すいません!とりあえずビールと焼酎とワインと!…出して頂けるなら飲み物と料理出来るものすべて運んで下さい!」

「か、かしこまりま…」

「とにかくその個室行かせて下さい!!!」 

「はいっ!!」


宙をさ迷ってた腕をユノに引っ張られて痛い。痛い。握力が半端ない。手首が鬱血する。体が引き摺られて足が縺れる。





なんでそんなに焦ってるの?ユノ…




……。



ユノ、って…




僕なんてこと。












年上に向かって呼び捨てなんて











「ユノ、ヒョン…っ、すいませんけど痛いです…」

「違うだろ!お前はチャンドル!!俺はお前のヒョンじゃない!!」

「…あれ……」

「チャンドルだろ!絶対返すからな!早く『ユンホ』の所へ帰れ!!頼むよ、チャンドルの世界の俺を1人にさせないでやってくれよ!!」

「ヒョン、…今から飲むんですか……?」

「…っ、いいから入れ!!!!!」


ユノヒョンに案内された個室の奥へ突き飛ばされて、ぶっ飛んだ。受け身なんて分からないから、肩から床に落ちて腕は低い机に激突した。


「……っつー…っ!何すんだ!!」


見上げた先の、行為とは裏腹に心配そうなユノヒョンの顔が霞む。胸が一段下がったような気だるさ。それと引き換えに、





戻ってくる記憶。常識。






僕の居るべき場所










「あ……なん…か、、」





















































ココだ



















「……チャンドル、どうだ…!?あとは、えっと…そうだ!キュヒョン達を呼ぶからな!」

「……『ユノ』待って。たぶん……呼ばなくて大丈夫です……」

「怪我してないか!?」


ぐりんと、内臓がまた一段下がった感じがする。明らかに体が重い。
『ユノ』が上体だけ起こしてた僕をまるごと抱き起こして今度は「痛くしてごめん」っていっぱい謝る。店員さんが個室の入り口で呆然と僕たちを見てる。

そりゃそうだよね、
端から見たら狂った茶番劇だ。


『ユノ』だけ。

『ユノ』だけが、
この茶番劇に付き合ってくれる。

僕を理解しようとしてくれる。








『ありがとう』を、伝えないと





「……すいませんお騒がせしました。ユノ・ユノとちょっとドッキリものの撮影練習をしてまして…。こちらのお店を急遽使わせて頂きました。無事終わりましたので、ご迷惑じゃなければ焼酎を二杯だけ頂けますか?」

「チャンドル……」

「あ……、そうなんですねっ!!あ~びっくりしましたぁ~!ふははっ、僕すっかり騙されましたよ。どうぞ、時間の許す限りいらっしゃって下さいね♪」


店員さんに下がってもらって、個室の扉を閉めた。

僕に残された時間は、あとどのくらいだろう。

『ユノ』を落ち着かせて、向かい合って座った。
こんなに慌ててくれたのは、僕のためだからって思いたい。


「あのね、カルボナーラはね、……ユノの、ためにすごく練習した…僕の初めての手料理なんです……」


まるでユノに愛の告白をしてるような。


……隠れてしまいたい……。


「そうなんだな。。思い出せた…?」

「うん、ココに来たら蘇ってきた……『ユノ』、せっかくだから乾杯しない?たぶん、あまり時間はないけれど」


目眩がしだす。平衡感覚が怪しくて落ち着けない。溢れた記憶が戻るほど僕の時空が歪みだす。


「……どう、なの?意識は、飛びそう…?」

「めちゃくちゃ気分悪くなってきました」


青ざめてるであろう顔の僕がぐっと親指を立てたから、そのちぐはぐさに『ユノ』はケタケタ笑った。



一時の、優しい時間。


『ユノ』と僕が、向き合う時間。














さあ、お別れの時だ。











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片割れ chap.9 番外編#25 チャンミンの平行世界










「……あの、でも…っ」


改めて見つめたユノの額には、5月に相応しくない汗が浮かんでる。


「ん?」

「……今日は、」

「うん」

「……っ」


今日は、

一体この人は何時に起きて『チャンミナ』とTOHOSINKIをやる旨を事務所に報告したんだろう。どれだけ急いで押してる仕事をこなしたんだろう。どれほど頼んで、話を聴いてくれる会社の人間をこんな短時間に集めたんだんだろう。いくらユノでもそんな権限はないはずで。


「………」


この日のために、この人はどれくらいの準備をしてきたんだろう。

自分の場所へ戻りたい焦燥感に頭がいっぱいで、でもちゃんと見てみれば『ユノ』にとって今日こそ勝負の日だった。


「……言ったように、、確実じゃないんです…。お店もまだ開いてないだろうし、行って帰ってくるだけでも時間かかるし……もし意識が本当に飛んで……『チャンミナ』が起きるのに何分かかるのかも分からないし……」

「でも行かなきゃ帰れなくなるんだろ?行ってみないと分かんないなら、まず行こう」

「おい、何の話してるんだ!?大会議室だ行くぞ、スマン会長にも来て頂いてるんだっ」


苛立ったマネヒョンの火に、『ユノ』が油を注ぐ。


「マネヒョンごめん、今すぐ行きたい所があるから、申し訳ないけど皆さんに待っててもらえるかな?」

「は?」

「昨日チャンミナと行った店に行って確かめたいことがあるんだ。悪いんだけど場所案内するから車回してもらえる?」

「ユノ……お前何言ってるんだ…?」


馬鹿げた話だ。
本当、馬鹿げた話だ。


「ゆ、『ユノ』…、やっぱりミーティングの後でいいです…っ、それでもきっと間に合うから。まずこっちを優先しましょう?」

「何で?チャンミナに守るって約束したんだ。だからチャンドルのことも守って当然だろ?」

「いやでも…っ!」


あんたはいつもそうやって笑うけど、


「俺がそうしたいの」

「…っ、『ユノ』!ちゃんと考えて!!」








『ユノ』の苦労が、水の泡になる









「ちょ、ちょっと待てお前ら…っ。なに?何がどうなってるんだ…?説明しろ……」

「マネヒョン、すぐには説明できないけど、本当に大事な用事なんだ。それは、分かってくれるよな?」


「…………まあ、、ユノが……こんな悪ふざけ言うわけない、けどな…でも…っ」




「信じて。必ず待っててもらえる。待たせたからって聴いてもらえなくなるような、そんな説得してきてない。俺とチャンミナのTOHOSINKIは絶対成功するから任せて」























ねぇ、チャンミナ


聞こえてる?



















「大丈夫。俺に任せろ」




















ユノの言葉ってさ、

たまに



光が貫く感覚がしない?








「……っ、ああーくそっ!どこだその店!昨日ネットで騒がれてた所か!?」

「そう!」

「…行ったばかりの場所なんて下手したら外野に揉みくちゃにされるぞ、常駐の警備員をSPに付けるからな。あと店に確認は!?できてないなら交渉の電話はユノお前やれ!俺は会議室に詫びと…」

「……」





言い回しや理屈じゃなくて





「でも急げよ!?本っ当に任せるからな!!?とりあえず地下に停めてるバンにいろ!」

「チャンドル行くぞ!!」

「……」





誰も逆らえない

信じてみたくなる、光






「……チャンドル、おいで」





あーまた『チャンミナ』は怒るだろうなって思ったけど。仕方ない、逆らえないんだから。
僕は『ユノ』に初めて会った日のように思いっきり飛びついて。


「『ユノ』ごめん!お願いします!!」

「謝んなくていいって。チャンドルだし♪」


『ユノ』は僕を初めて会った日のように抱き上げたまま、大笑いで運んでくれたものだから。

僕たちはすれ違うスタッフ達の度肝を、残さず抜いていった。















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片割れ chap.9 番外編#24 チャンミンの平行世界










僕だって、そうだ
ダメだよね、上手にできなくて……

正反対のカタチだからこそ完璧で、僕はその強靭な形の力に甘んじてて。
いつも言葉で伝えられない。
好きだからこそ離れた『チャンミナ』みたいに、好きが満ちすぎて言葉にならない。


だから僕は歌を歌おう


それは永遠に途切れることのない、
僕にとって最大の表現方法






「チャンミナお待たせ!」

「あ…」

「お!キュヒョンの曲だな?」

「ユノ……ギュラインの歌、出していい?」


練習室のドアが開いて、軽やかに入ってきた『ユノ』の顔から笑顔が消えた。かけっぱなしのキュヒョンの優しい曲が、所在なく流れ続ける。


「……え?」

「ちょっと!ちょっと落ち着いて聞いて下さいよ!?僕はユノとTOHOSINKIをやる。いや、やりたいんだけど、今の状況でいきなり僕が戻るのは納得できない人も多いでしょ?だからっ、予定通りギュラインで一曲出してそれから…」


ユノは燃え上がるとすぐ聞く耳が無くなってしまうから。それはそれは急いで『ユノ』に説明しなければいけない。
ユノも『ユノ』も、同じ性質で、元は火のような人間だから。


と、思っていたんだけど。














「……お前、、チャンドル?」

「…………」







もしかしたらユノは、僕なんかよりずっと上手(うわて)なのかもしれない。








「チャンドルだろ?」

「………はい」








僕なんかよりずっと、僕のこと分かってくれてるのかもしれない。




「あはっ、どうしたの?また遊びに来たの?」

「…っ、違うって!まだ戻れてないの!」

「は!?」

「で…申し訳ないんだけど、昨日ユノと行った居酒屋にミーティング終わったら行かせてもらいたい。できるだけ早く、帰れなくなっちゃうから!」

「え、は?え?」


焦る。焦る。
今度は自分のために早口になる。腕を捲って、ざっと書いた単語を確かめた。


「どうした、それ…」

「僕の場所で起こった記憶が無くなってきてるんです……早く、戻らないと。ここ!ここに行けば戻れるかもしれないからっ」

「どれ」


手の甲を『ユノ』に差し出して、店内の行きたい個室の位置を馬鹿みたいに必死で説明した。こんな夢物語を真面目に聴いてくれるなんて、ユノくらいだなと、ふと思った。


「だから、あの、何て言うのかな…っ、ユノの、倒れた場所に行ってみようって発想は本当ナイスアイデアだったんです!昨日行った時はチャンミナだったからどこに行けばいいか知らなかったけど、僕は今チャンドルで。だから今の状態で行って、その場で意識が飛べば戻れるはずで!」


全然冷静に説明できてない。こんなんじゃ意味分かんない。
泣きたくなった。

でも泣きたくなったのは、うまく説明できなくて歯痒いって思ったんじゃなくて、呪詛のようにびっしり書いてる腕の文字がいくつか、


何の意味か分からなくなっていたから……。

背中に戦慄が走る。


「……っ、とにかく!ミーティングが終わったらここに行きたい!!その時僕が忘れてても無理やりでいいからこの個室に押し込んで!!」


“その時”はもう間に合わないかもしれないけど。僕もチャンミナの一部になってしまってるのかもしれないけど。

だけど頭の半分で、今日の緊急ミーティングが最後のチャンスだときっちり理解してるからこっちも絶対に外せない。

スペクトラムがTOHOSINKIを兼任するところをまたユノと僕に戻すわけだから、投げられた賽(さい)をまた持ち直そうと昨日の今日で集まってくれた幹部や関係者を反故にできない。

練習室の扉がまた開けられて、焦ったマネヒョンが入ってきたところでこの話は終了した。


「何してるんだ早く!行くぞ、もう皆集まってる」


リュックのベビーミッキーとベビーミニーがゆうるりと眠ってる。僕もユノの隣で微睡(まどろ)みたい。


「よし!!!絶対2人のTOHOSINKIで通すからな!プレゼンテーションは後日改めてするから、今日は興味を持って頂いた上層部に意思表示!しっかり頼むぞ!!」


マネヒョンがキュヒョンの曲を止めて、深呼吸を始めて。体をバンバン叩いて気合いを入れる姿に、僕の奇妙な嘆願を言うことはできない。


「ユノ……、必ずお願いします…!!」

「チャンドル……」












だけど『ユノ』は、やっぱり言うんだ。























「今から行こう?」






















誰にも真似できない




『ユノ』という名の、













ヒーローみたいにね










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ホミンホは我々を見捨てなかった…!(ある意味置いてきぼり、サンキュでぇぇす!!!)








すいません、物語はお休みします。書けません。_φ(TдT )←

だって、


わっしょいわっしょい♪└(゚∀゚└) (┘゚∀゚)┘わっしょいわっしょい♪└(゚∀゚└) (┘゚∀゚)┘そぉ~れそれそれお祭りだあ~♪






タウンページも来ました!

うへへって笑いながら見つめてます!

2人が楽しそうでいい!

そしてやっぱりお祭りだ!








わっしょいわっしょい♪└(゚∀゚└) (┘゚∀゚)┘わっしょいわっしょい♪└(゚∀゚└) (┘゚∀゚)┘







「「イチイチうるさい!」」










すいませんでした…( ´;゚;∀;゚;)
だって、嬉しいんだもん( ´;゚;∀;゚;)











昨日も一応ポチポチやってはやってたんです。韓国語ちこちこ翻訳機にかけて意訳して。(←何してるんだ)
(^_^;)











そ、し、た、ら……
(いや、すでに皆さん知ってる)
















「Smt! チェガンチャンミン様いらっしゃった..ガクブル」


















え!ふ、ふーん…っ(;´-`)
で、で…どこに来たって…?

ご飯食べてるとこにわざわざ来てくれたのかな。。い、い、いいなぁぁぁ、、でも行けないもん…いいもん…(やさぐれ)























ここ!!!←違う






じゃなくて、、
























ここっ!!!




























………! ゚ ゚ ( Д  )



















ココ!!!


























………((( ;゚Д゚)))ガクガクブルブル
そりゃ震えるわ!
そりゃお祭りしますよ!
妄想列車走りますよ!涙









しゅっぱーつ☆しんこう!


シュッ、シュッ、シュッ、シュッ、シュッ……























「おぅ、チャンミナぁ!待てた、待てた♪みんな紹介するな♪これ俺のこいび…相方のチャンミン♡(どやぁ!!!)」


「(もう!またユノ恋人って…デュフッ)アンニョン。ヒョンがお世話になってますううぅ♪じゃ、恥ずかしいんですけど、自己紹介からしますね…」

























「いえええぇーーい!!!(まずは威嚇から)
空前絶後のぉ~!超絶イケメンアーティスト…ユノを愛し、ユノに愛された男。TONE、CATCH ME、TIME、TREE、T1STORY、WITH。すぅべてのツアーをユノと共に歩んできた。そう!!!わぁ~れこそはぁーっ!!!」






























「東方神起のチャンミンです♪ニコッ(極上愛されスマイル発動)」





































 
「「「……っ!!ガクブル(麗人現る)」」」


















「チャンミンもっと近付いて!(←最大の自慢)今日はね、俺と一緒に頑張ってくれてる部隊の仲間達を連れて来たよ」
「ぶふーっ////← (でもくっつく)
あ~皆さん、今日はユノヒョンから招待されたんですね。いいですね~、僕も奢って貰いたい~っ(←世界一ユノに奢られてる)これからあと少し、ユノヒョンが転役するまで宜しくお願いしますね!(あえて言おう、君たちの役目はその日までだと…)」































「「「……(固)」」」

























「あはーはーはーっ!何で皆固まってるのぉ(←チャンミンに見惚れてるって分かってる)、せっかくのコース料理が冷めるよ?ぽかんとしてないで食え食え♪」
(部隊の人)「す、すいません💦だって…」




















「お?(ユノに触られたからって惚れても無駄ですよ、分かってますよね?ヒヨッコ…)」


























「あ、あまりにもお綺麗…いや格好良くて…(女神なの?大天使なの?…チェガンチャンミン様…)」




























「…♡(この子できる子←)」



























「2人揃うとお似合…いや最高に格好いいですね…」






























「いやーっ!くうっ、そっかなぁ!?(♪)」
「そんなことないです…(照)」

d=(^o^)=bただのバカップル!!


















なぜでしょう、、(*゚Д゚*)

いつの間にかまたホミンホになってしまいます……( ゚ェ゚)←別に反省してない。


メンバーだから会ったって不思議でも何でもないのに、心の中はお祭り騒ぎですっ!

(*ノ゚Д゚)八(*゚Д゚*)八(゚Д゚*)ノィェーィ!(*ノ゚Д゚)八(*゚Д゚*)八(゚Д゚*)ノィェーィ!


















ごちそうさまでした。涙



















偶然とかですか!?

チャンミンが事務所でボイトレとかやってて、スタッフさんが教えてくれたとか?チャンミン自ら行くのも考えにくいような…(賑やかな場所あまり好きではない&人見知りだったよね!?)

























絶対呼んだろ・゚・(●´Д`●)・゚・


「シーン…(だって会いたかたし自慢したかた…)」
















もちろん皆で写真取ったはずよね?

東方神起に挟まれて写真取ってインスタあげたら注目されるよね?

遠慮するチャンミンを強引に隣に座らせました。



この真ん中に何とか入って写真を…っ!!
(私は無理です。鼻血出ちゃう)




















ああ、なぜだ

なぜ出てこない

その写真……

何で隠しますか?お?撮るだけ撮って「広めないで」って逆に怪しくなりませんか?広めていいでしょ別に。それとも確信犯か?お?





りょう、心の俳句

















なんてミステリアス!!!

ホミンホって、やっぱり
謎のベールに包まれている!











ゆえに目が離せないって、それだけのお話をここまで広げました。

騒ぎすぎて失礼しました~。( ´;゚;∀;゚;)








(画像お借りしました)
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片割れ chap.9 番外編#23 チャンミンの平行世界









「マネヒョン!お願いします!」

「チャンミン…っ!、」


運ぶ足が速すぎて、縺れそうなほど軽い。

後部座席のドアを開けて待っていてくれたマネヒョンに礼を言ってバンに乗り込もうとすると、肩から体当たりで抱き締められた。


「お帰り!俺もユノも絶対守るからな!もう辞めるなんて言うなよ!!」

「…。はい」


マネヒョンの腕の力強さが、苦しくて痛くて。
嬉しい。
目を閉じて『チャンミナ』に笑い掛けた。





こんなに愛されてる。大丈夫。

僕がいなくても皆いる。

分かってくれる人は、必ずいるからね。





「……行きましょう」

「よし!今ユノがドタキャンした仕事の埋め合わせしてて時間が押してるんだ。ミーティングまで事務所でゆっくりしてていいぞ」

「いや、急ぎたいんです!」


時を刻むごとに僕の常識と意識は溶けていく。

この場所に同化しちゃいけない。チェさんからもらったキーホルダーを手離しちゃいけない。
車に乗り込んで、リュックに2連を着ける。
それからマネヒョンに油性ペンを貰って手に直接『必ず行け!』と書いた。紙なんかに書いてたら、それすら忘れてしまいそうだから。


「マネヒョン僕は?今日撮影ないですよね!?」

「お、おう。今週はほとんど仕事入れてないだろ?」


思わず語気が荒くなるのは仕方ない。
まずは手の甲いっぱいに。
マジックペンのキャップを抜いて、一番忘れちゃいけない場所と個室の位置を書いた。


「あー、何してんだお前~」

「チャンミナがね、教えてくれたんです」

「は?」

「ふふっ」


夢の中で、最後に。





『チャンドルは…分かった?僕ユノヒョンと行った居酒屋で、一瞬気分が悪くなった場所があるんだけど』

『……いや?そこまでの感覚は拾えなかったけど?』

『トイレに行く途中で通った個室の前なんだけど…。今考えると、そこがチャンドルの倒れた個室だったんじゃない?入った場所は分かる?』

『分、かる……。もしかして、、そこに行けば戻れる……?』

『時空の歪みってよくオカルトなんかでいうでしょ?ある場所で限られた人が行方不明になったり。でも分かんないよ、そこに行ったからって戻れる保証はない。何か条件や時期も関係するのかもしれないし。第一チャンドルは本当に僕の別人格かもしれない』

『それはないから。僕には僕の場所がちゃんと存在してるんだ。いいから教えて。そこが僕の覚えてる個室ならビンゴだ』

『じゃあ僕が次に目覚めた時その個室にいたらチャンドルは戻れたっことになるのか……ふふっ。……ちょっと、僕のこと分かってくれて助かったから。寂しいような気もするけど……』

『チャンミナ……』

『まあ、ほとんどイライラしたけどね!ユノヒョンに軽々しくキスしやがって!!プロポーズの行為なんだぞ!?一生根に持つからな!』

『ごめん……僕もあの時は夢から覚めたと思ってぼーっとしてた……でも別にいいじゃん、チャンミナも僕も同じ人間だろどうせ……僕って本当しつこい性格してるな…めんどくせ

『……プチン。。てかさ…、、自分の気持ちに気付いてなかったとかあり得ねー!好きって言われて気付いたの!?嘘でしょ!?僕ずっと前からユノヒョン好きでしたけど?童貞ナメるなよ!』

『……イラッ。。てかさ…、、』






「……ぶーっ!くくくっ…最後は、喧嘩別れだったな」

「チャ、チャンミン?……まあ、なんか楽しそうだな。良かった、本当……元気になって」

「……はい、もう大丈夫ですよ」




大丈夫だよ。

僕がいなくても、皆がいる。

お前のユノヒョンがいる。





「さあ!次は……、」


TV2XQ
済州島
Why?
TONEツアー
東京ドーム
スペイン、写真集
カルボナーラ
アルマヴィーヴァ……


いつかの映画で観た、記憶を失っていく主人公のように。カーディガンを捲って、思い付く限りの単語を腕に書き流した。
忘れないように。ユノと僕の歴史。


「マネヒョン、今日は何時ごろ終わりますかね?」

「うーん……。TOHOSINKIとスペクトラムとギュラインに関わることだから、、正直時間がみえない。賛成されれば早いけど、それだけじゃない意見もあるだろうからな……」

「ギュラインは予定通り一曲出します。事務所の人間や待っててくれた人達にまずは一曲聴いて欲しい。僕の想いを伝えたい。それからTOHOSINKIに戻ります」


チャンミナと話し合った活動予定。
選択やタイミングは違っても、辿り着く先はきっと同じだから。


「……アリかもな、それ!」

「はい。皆に納得してもらえる自信があります」

「うお……、チャンミンがそんなにはっきり言うなんて珍しいな…」


仮にまだ他のパラレルワールドが無数に存在していて、そこにはまたそれぞれの『僕』がいたとしても。 

ユノとTOHOSINKIをやる。




僕はきっと、

そういう星の元に生まれてる。







「……ふう、、」


だから僕も帰りたい。
1分1秒がひどく怖い。

走行中空を見上げれば、青空じゃない緑色。スマホを開けば、宿舎ですらすらメッセージしてたキュヒョンとのカトクもまた配列がおかしく読めた。


「……」


だけど気持ち悪いという違和感は……すでにない。。


「急がないと……」


事務所に着いて『ユノ』が到着するまで居てもたってもいられなくて、僕は練習室を借りてひたすら歌った。











片割れ#チャンミンのパラレルワールド
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片割れ chap.9 番外編#22 チャンミンの平行世界










アラームをセットしない朝は、とことん起床が遅い。


「……、」


すでに太陽の射光が燦々とベッドに振り撒かれていて眩しい。寝た気が全くしない体が重い。目を綴じて視覚以外の感覚を研ぎ澄ませる。リビングの方から人の動く気配とベッドから主の残り香を掬えた。

ユノヒョンの香り。僕の源。


「さぁ……」


なんとか歩み寄りたい、ユノヒョンと。

起き上がって手にしたスマホと共に部屋を出ると、見覚えのない年配の男性がキッチンを使ってた。ベーコンの焼ける香ばしい香りに腹の虫が反応する。


「ああ、チャンミンさん。おはようございます」

「……おはようございます。あの、、どちら様ですか…?」

「……。失礼しました、私家政夫のチェと申します。ユノさんから聞きました、チャンミンさんはよく食べる方なんですね。朝食を用意してますから、座ってお待ち下さい」

「すいません、どうも…」


ユノヒョンはすでに居なくて、ソファーに畳んだ毛布だけ残ってる。寝間着のまま失礼かなと思ったけど、どうにも体がだるくてそのままダイニングテーブルで朝食を待った。よく寝たはずなのに、まるで徹夜したような倦怠感。

気晴らしにスマホのゲームでもやるか、あ、その前にキュヒョンに連絡を、と思い付いて、カトクのアプリを開くと、キュヒョンから何件も僕を心配するメッセージに加えて、昨日居酒屋にユノヒョンと僕が行ったことがネットで騒がれていると教えてくれていた。謝りと感謝の返事、そしてユノヒョンに告白した顛末を入れて、また返信を待つ。

僕たちはこれから、TOHOSINKIを再始動させる。

不安だらけなのに鮮明にうまくやれるイメージが浮かぶ。
2人でステージに立って、歌って踊って歓声を浴びて。そしてソロで僕は「Rusty Nail」を歌う。きっとうまく歌える。


「……」


なんで、「Rusty Nail」?
いや大好きな曲だけど……


「お待たせしました」

「あ、頂きます」


目の前に並べられたベーコンとスクランブルエッグとサラダとマフィン。後にはコーヒーも付いてきて、優雅な午前。
これからは忙しくなって、こんな悠長に過ごせないかもしれない。


「んー!このコーヒーすごく美味しいですっ!!」

「ありがとうございます。昨日とても褒めて頂いたので、今日はつい張り切ってうちで豆を挽いてきてしまいました」

「え、昨日?」

「あ…いえ、失礼しました。それより午後にマネージャーさんが迎えに来るそうです。ユノさんとは事務所で合流して、それから責任者の方々とミーティングだそうですよ。いよいよですか、再始動」

「……はい」


何だろう。これからの活動に胸が高鳴るはずなのに、全然集中できない。誰か他の人間のスケジュールを聴いてるみたい。


「お帰りなさい、記憶のあるチャンミンさん」

「…………」


何だろう。すごく変だ。
ふうわり笑ってウインクするこのおじいさんの姿を知っているような気がする。初めて会った人なのに、見たことあるような気がする。


「……昨日って、、仰いましたね?変な質問なんですが、僕チェさんと昨日お会いしましたか?何だか…初めてお会いする気がしないんです」

「いえ、きっとアナタとはお会いしてないと思います」

「本当ですか?」


すごく奇妙だ。言葉がそのまま飲み込めない。
嘘だって分かる自分が奇妙だ。


「私がお会いしたのは、記憶のないチャンミンさんです」

「……」


そういえば昨日、どうやってユノヒョンと会ったんだっけ?


「……あれ?」


部屋でユノヒョンと懐かしいCDを聴いた。でもどうやって宿舎に来た?


「え?」


その前になんで突然ユノヒョンと笑い合えてた?
何がきっかけだった?


「……」


僕何か、大事なこと忘れてない?

どこに行きたかったんだっけ?


「……よく、思い出せないんです。絶対忘れちゃいけないことだったのに」

「それは、困りましたね。それは何だったんでしょう。まさか……コーヒーの美味しい煎れ方のコツじゃありませんよね?」


こっちは真剣な話をしているのに冗談めかされて。恨めしいはずなのに釣られて笑ってしまう。確かにあった、こういう事が。


「……。僕は昨日もチェさんのコーヒーを飲みましたか?」

「はい。今日とは違う、普通のインスタントものでしたけど。煎れ方で美味しさが変わるお話をさせて頂きました」

「……」





『こつがあるんですよ』





「………あ!確かに!確かに僕聞きました!!」

「はい♪」

「他には?僕たち何の話をしましたか?」


チェさんのバーを開く夢、ユノヒョンの好きな飲み物。時間をかけて記憶を手繰り寄せると、餌に食らいついた魚のように浮かび上がってきた。








絶対何か、やらなきゃいけないことがあった。







「あのっ、コーヒーをもう一杯いいですか!?これも美味しかったんですが、できれば昨日僕が飲んだやつを」

「かしこまりました。ではお時間頂きますので、その間に外出の支度をされてはいかがです?そろそろお迎えの時間ですよ」

「はい、そうします」




窓の外を確認すると、雲1つない爽快なエメラルドグリーンの空が広がっている。


「……」


何度も空を確認するように見てた気がする。
何を見てた?僕は。

ユノヒョンに借りてたジャージを脱いで、僕の1着しかない服に着替えて春物のロングカーディガンを羽織った。触り心地が抜群良い、僕のお気に入り。


「……」


どこで買った?誰と買った?

タグを見ると日本製のもの。

うんうん唸って考えても、さっきのチェさんの話のようには思い出せない。痺れるまで脳の中枢に意識を集中させても思い出せない。でも絶対思い出さなきゃいけないことがある。

僕がユノヒョンやグループより大切なことって?


「……あるわけない」


そう、あるわけないのに何かある。

チェさんが用意してくれた2杯目のコーヒーは、1杯目より薄かったけどそれでもとても美味しかった。そして飲んだことがあった。


「あの……、あまり無理されずに。そんなに首をもたげて悩まれていると私も苦しいです。ゆっくりでいいんじゃないですか?」

「すいません…」


でもとても急がなきゃいけないと思うのはなぜだろう。時間が進むほど取り返しのつかない事になりそうで、こんな状態で今日の大切な打ち合わせはできるんだろうか。



「何か私にもお手伝いできることがあればいいんですが……」

「いえ……」


こんな時、ユノヒョンならどうするかな
    

「…………」




信じるものを、想う




「……形だけ、まねっこ……」


ユノヒョンのその姿を見る度、この世界で最も美しいと感じた。表現し難い清潔さ。何人たりとも汚されない高尚さ。
それを守りたかった。何がなんでも。
 
両の手の指を組んで、額を傾ける。


「お願い……」


僕が祈るのはユノヒョンだ。
ユノヒョンを想う。ユノヒョンのこと。

今までまともに接することもできなかった。いつも背中を追って。……背中?

横顔。隣。隣に立ってるユノヒョン。


「……」


思い浮かぶユノヒョンの姿はすぐ隣で笑う横顔。これはいつかの記憶?それとも妄想?

振り向くユノヒョンは僕の頭を撫でたり腕や太股に触れたてきたりして。思いっきり抱き締められて声を上げて無邪気に笑う。人前ではクールに見せたいくせに2人きりだと甘えてきたり、何もない所でずっこけたり。言っとくけど皆あんたが抜けてるって気付いてますよ。食べ物溢したらすぐ拾わないと。後でまとめて拾うっていつも忘れちゃうじゃん。ちゃんとしてよ、結局僕がやる羽目になる。


「……ユノヒョン……?」







これは、ユノヒョン?







「チャンミンさん、マネージャーさんいらっしゃったみたいですよ」

「へ!?」

「今インターフォン鳴りましたよね?」

「あ、そうですか…すいません、気付かなかったです」

「……」


もう少しだったけど仕方ない。
最小限しか入ってないリュックを背負って玄関へ。久しぶりにどっしり座ってスニーカーの紐をしっかり結ぶ。結び方が気に入らなくて結び直すのに、またそれが気に入らない。


「……ちっ」

「チャンミンさん……体が行きたくなさそうですね……」

「あ、違うんです。行きたくないとかじゃなくて、ちょっと紐の結びが気になって……っ」


後ろを付いてきてくれたチェさんの心配声が申し訳ない。図星を言われて居たたまれない。


「そうだ、ちょっとお待ち下さい」

「はい……」


どうしよう。全然身が入ってない。こんな事じゃあ、ユノヒョンにも呆れられる。


「チャンミンさんくらいのお若い方なら、こういうのお好きですかね?」

「はい?」
 



振り返ったチェさんの指の先に、二筋の光を見た。




「男性の方にも人気だと聞いたんですが」

「…………」

「私の孫が日本に行ってお土産に買って来てくれたのですが、私にはよく分からなくて。ペアのキーホルダーなんて使い道もないですし」

「…………」

「こんなものしかないですがもらって頂けませんか?元気出して下さい。ね?」

「チェさん、ありがとうございます。チェさんのおかげで大事なことを思い出しました」

「おや、そうですか。それはそれは良かったです♪」




「僕は……」 








 
チャンミナ、ありがとう

ちょっと借りるね







「『記憶のない』方のチャンミンです」


「そうでしたか…。先ほどお会いしたことがないと言ってしまって失礼しました」

「とんでもない、僕も忘れそうだったんです。これ…本当に頂いていいですか?」

「もちろんです。やはりチャンミンさんもお好きですか?」

 


「……はい、大好きなんです。ベビーミッキーとベビーミニー」








大好きな人のところへ、早く戻らなきゃ















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片割れ chap.9 番外編#21 チャンミンの平行世界









それは夢を夢と自覚してて、思った通りに喋ったり動いたりできる夢だった。




鏡とは違う、隣に座る『自分』を改めて観察してみる。


「……ふーん。こうして見ると、僕けっこう恰好いいな」

「ちっ!」


盛大な舌打ちして髪を掻き毟ろうとする『僕』はかなりイライラしてる。っていうか、相当機嫌が悪い。自分なんだから当然分かる。


「あー、もう!!!とにかく戻せ!」

「……あのね、落ち着いて聞いて欲しいんだけど。お前は僕が作り出した別人格なの。チャンドルの世界なんて実際はないの。お前の居る場所はここ。分かる?」

「はああ!??そんな馬鹿なことあるか!!!」


腹の底から叫び倒す『僕』の声がうるさい。態度も最高に悪い。何がチャンドルだ、全然可愛くない。やんわり説得して、あわよくばユノヒョンとどう打ち解ければいいのか話してみたかったのに、こっちまでイライラしてくる。


「うるっさいなあ…。お前は僕の理想像だろ。お前のおかしな出現のおかげでユノヒョンと僕のTOHOSINKIはこれから始まるんだよ。どうも。感謝してるから、僕と人格統一するなり消滅するなりしてくれない?」

「……ふざけんなよ…っ!」


あーあ。

折角懐かしい昔の宿舎なのに、『僕』がクッションを投げ飛ばしたり前に置かれたローテーブルを勢いよく踵で蹴るから、それらが棚やテレビ台に直撃して一気にリビングが荒れ果てた。二次被害で倒れたトロフィーや写真立てが、無惨に転がる。


「ユノと僕のTOHOSINKIはずっと前からある!ずっとユノの隣でユノとうまくやってきた!!お前僕が羨ましいんだろ?自分と違う道に進んでユノに愛されてる僕が認められないんだろ!?」

「……っ!」


堪に障る。よりによって相手の一番癪に障ることを突いてくる所は間違いなく僕っぽくて。
ぷちんと糸が切れた音がして気が付くと、位置のずれたローテーブルを僕も踵で蹴り飛ばしてた。


「なんでお前みたいな奴がヒョンに好かれるんだよ!あるわけないだろ!!」

「僕はしっかり努力してきた!お前みたいに悲劇のヒロインぶって何もしなかった奴とは違う!!」

「…っ、お前なああ!!!」


『僕』の胸ぐらを掴んで。そしたら『僕』も僕の胸ぐらを掴んできて。お互い服が引き千切れそうなほど揺さぶって。同じ人間同士で喧嘩する滑稽さなんて見たくもない。でも引けない。引けるほどの余裕なんてない。


「どれだけ僕が辛い思いをしてきたと!!?どれだけ辛かったかお前に分かるか!!?」


『僕』に向かって叫んでるのに、何だか僕を責めてきた不特定多数の誰かに訴えかけてるような心持ちになってきて。
今まで言いたかったものが、今まで何も言わずに我慢してきたものが、ただ、溢れてきた。


「物を投げられ、罵倒され、すべて僕の責任にされて、、全部失ったんだ!!!全部だぞ!!?」


まるで荒野に立って、一人立ち向かった恐怖。


「……黒い嵐だろ。どれだけ恐かったのかも知ってる……。でも僕は全部持ってる」

「僕にはこのソファーでの思い出だけなんだ!!!」

「それも知ってる。目の前で見てるように夢で見た。誰よりも特別で、プロポーズなんかよりももっと深い気持ちで守るって誓ってくれたよね?お前の『ユノヒョン』は」

「……っ、、そうっ、…その通り……っ、、」

「……確かに。あの時そんなこと言われたら……前から自分の気持ちに気付いてたら……。確かに、、そんな選択も……あったかもしれないね…」


顔を背けて、「あの人は純粋だから……」と静かに微笑む『僕』は、自分で言うのもなんだけど聖母みたいに清らかで。ぶわっと柔らかな空気を放って。


「やっぱ『チャンミン』ってすごいなぁ。僕、最強」

「……」


その柔らかさに、チャンドルという『僕』がいかに『ユンホ』と愛し合っているのか、分かるような気がした。ぴしっと裏ピースをかまして恰好つけるものだから、自分相手に何やってんだって笑えて。その軽快さにも、愛の陰を感じた。





僕にはまだ、ないものだから。





「……う、歌は?歌は歌えてるの……?」

「もちろん」


その後、『僕』がアカペラで歌い出した「Rusty Nail」は僕も大好きな日本のバンドの名曲で。原曲キーから半音上げて歌いきる声量と声域に感動すらした。


「どう?」

「……すっげ」

「でしょ?日本ツアーで歌うためにめちゃくちゃ練習した」

「へぇ……」


『僕』ができるということは、僕もまたできる可能性があるということ。
『僕』が『ユンホ』と愛し合えてるなら、僕にもできるということ。


「……『チャンドル』、僕どうしたらいい?どうしたら、……ユノヒョンに本気なんだって、伝わるかな…?できたら、、ずっと前から好きだったっていうことも伝えたいんだけど……」

「そんなん知るか。僕なんてまだユノに好きって言えてない」


寝耳に水。青天の霹靂。


「…………。はあああ!!?」

「でも付き合ってる」

「はあああ!!?」

「エッチもしてる」

「ひぇ…っ!?」

「いいだろ♪」

「……イラッ」


いや訳分かんないから!

なのにチャンドルの得意顔、というか自慢と鼻高々に緩んだ顔が憎たらしいんだけども、嬉しくもなってくる。
だって、チャンドルも僕だから。僕もチャンドルみたいに、ユノヒョンの傍を離れなかったら、もしかしたらそうなってたのかもしれない。


「だからさ、僕も想いを伝えたい。でもどうしても恥ずかしくて、天の邪鬼になっちゃって。未だに言えてないんだよね……。それは『チャンミナ』と似てる悩みかも。。」

「……『伝える』って、、難しいか……」

「そこで僕は妙案を思いついた!ユノ風に言うとナイスアイデアを思いついた!」

「は?」

「僕はね、一度やると決めたら必ずやりきる。この場所でやるって決めちゃったことがある。それで『伝えたい』。手伝えよ、これはきっと、…2人でできる」

「……分かった」

「あとさ、、これができたら……僕にまた体を貸して欲しい。本当にまずいんだ、、感覚がチャンミナと同化してきてる。僕の場所の常識も忘れかけてるみたいで……もしかしたらチャンミナに吸収、されてるのかも…っ、」

「チャンドル……」


急に小さくなったチャンドルがなんだか捨てられた子犬みたいに見えた。
誰も捨ててないのに。むしろ僕に必要だったからここに来てくれたのかもしれないのに。

悪いなと、素直に思った。


「ユノに、会いたい……僕は僕のTOHOSINKIを守りたい。操られるのは二度とごめんだろうけど、、助けてよ……」


僕がそうであるように、チャンドルも「好き」って伝えたいよね。


「ふふっ……どうやればいいか分かんないけど、、……考えとく」


そうして僕たちは顎に手をついたり、時には歩き回ってみたりして考えながらソレをやり切った。思考も感覚も同じ。ほとんど同じように編んでいった。


ユノヒョンから離れた僕と、隣に並び続けた『僕』。


僕は僕だ。







「……あと言っとくけどさ、僕本当に片想いが長かったから」

「ん?」

「僕童貞」


寝耳に水。青天の霹靂、でしょ?


「…………。はあああ!!?」









懐かしい思い出の宿舎から見上げた月は、




白銀の満月。



















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片割れ chap.9 番外編#20 チャンミンの平行世界









そのひらひら揺れる綺麗な手に触れてみたいのだけど。それは叶わずに、ユノヒョンの手は舞うようにソファーへ降りた。


「……まあ僕は、またチャンドルに操られるなんて二度とごめんですけどね。別人に体を取られたようで、奇妙な感じがすごく気味悪いんですよ」

「あ、そっか。じゃあチャンドルの世界の俺……『ユンホ』が来てくれたらいいのかっ。そしたら俺の体を貸してあげれるな♪」

「えー、ユノヒョン戻れなくなっちゃったらどうするんですかぁ」

「だって楽しそうだろ?お前だって戻れたんだし大丈夫だよ」


無造作に放り出されたユノヒョンの右手と僕の左手が、もう少しで触れそう。意識しないようにすればするほど肩から指先までざっと固まっていく。体の支点が左腕にできそう。


「……ユノ、ヒョン……」

「ん?」


首を傾けて。ガチガチの手先に目線を落として。ゆっくり。ぎこちこなくだけど。
ユノヒョンの手の上に僕の手を重ねた。だけど触れた瞬間にびくっと身震いしたユノヒョンは、その条件反射のまま指を丸めて引っ込めた。


「ぁ……」

「あ悪い…!嫌とかじゃなくて……なんか、頭がついていかなくて……」

「あ、いえ……っ」


置き去りにされた僕の左手が惨めで。今度こそ動けなくなってしまった。
拒絶って、どこかの底に突き落とされたように胸を抉られる。
つまり僕は、こんな事を今まで何度もユノヒョンにしてきたということ。

何度も。何度も。星の数ほど、無慈悲に。


「……今まで、……本当にごめんなさい……」

「なんか、なんかさ……。夢みたいで。……これホントに夢だったら俺立ち直れないわ……」

「……大丈夫です。夢じゃないです」


一つ大きく深呼吸したユノヒョンの右手が、今度は僕の手の甲に帰ってきてくれて。その掌がふっと触れる程度に覆い被さるものだから、そこから熱と優しさと怯えが伝わる。連動するように胸が締め付けられる。

ほらまた。胸が痛い。

例えば僕たちが男と女で。このまま引き寄せて抱き合えば、ベットに沈んで愛し合えば。この深いわだかまりも、ドラマのワンシーンみたいに一瞬で溶け合ってしまえるんだろうか。


「……本当に、嫌じゃない?無理してないか?」

「…全然。ちょっと、あの、恥ずかしいですけど……」

「でも、、苦手だったよな?俺のこと……」

「いや、えっと……それも、誤解というか……僕が悪いんですけど」

「え、あ、そう、なんだ。。ずっと……そうだと思ってた……」

「すいません……」


だけど何だか、それじゃユノヒョンに不誠実だと思う。もっとなんていうか、ちゃんと伝えたい。
こんなに待ってくれてた人なんだから。


「謝らなくていいから。……ちょっと待ってて」

「?はい」


そう言って離れていく手を目で追うと、自分が今どれだけこの人に触れていたいのか改めて思い知らされる。僕は欲深い。

ユノヒョンは尻ポケットからキーチェーンを取り出すと、鍵の一つを外しながら「俺はさ……」と語りだした。


「今この状況がちょっと訳分かんないくらいパニックになってて……それは嬉しいってことなんだけど、その分すごく自分が怖い気もして。俺昔から熱くなるとすぐ周り見えなくなるだろ?」

「……まあ、たまにですけど」

「勝手なんだけど、今もうチャンミナを離したくない気持ちが強すぎて……。もし、チャンミナの目が覚めて……俺のことが嫌になってまた宿舎から出て行こうとされたら、今度こそ俺閉じこめちゃうかもしれない。だからその時は……」


きっと、そうはしないだろうけど。
あり得ないけどもし僕が嫌になって、もし僕が出て行こうとして、もしユノヒョンがそう思ったとしても、この人は寂しそうに笑って送り出してくれるんだ。好きな所へ、自由にって。

今、目の前で作ってる、そんな笑顔で。


「ちゃんと俺から逃げるんだよ」


逃げられるわけがない。僕の方がユノヒョンを逃がせない。
まだ全然。まだ全然僕の想いは伝わってない。

取り外された鍵をカチリと手の内に落とされて、そのままぶん投げてしまおうかと思った。
だって、まったく、僕には必要ない。


「でもそれは置いておいて……メンバーとしては絶対逃がさないからな。やるぞ、TOHOSINKI」

「はい、やりましょう」


結局、俺も好きとか付き合おうとかいう言葉を貰えないまま、ユノヒョンは僕にベットを貸して、リビングのソファーで寝入った。それは今までの僕のせいだっていうことは確実で。ユノヒョンからしたら信じきれないことばかりで、二の足を踏まざるを得ないんだと思う。

どうしよう。どうしたら……




チャンドル、どうしたらいい?



 









僕は、あの5人部屋のリビングでソファーに座ってる。

隣に並んで座る影に気付いて、ユノヒョンだと直感した。だけど振り向いて確認すると、ヒョンじゃなかった。

僕だった。



そう言えば同じ顔の相手に、不思議にも違和感はなくて。


「良かったじゃん。もういいだろ……もういい加減僕を戻せよ。僕を元の場所へ返せ」



逆にまた会えて安心感すら覚えてる自分に驚く。




「……あぁ、お前。……チャンドルだね?」






話をしよう。





たぶん、僕のことを完全に把握してる、この睨みを効かせた『僕』と。















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片割れ chap.9 番外編#19 チャンミンの平行世界










「……ぇ…」とだけ小さく発したユノヒョンは、僅かに目を見開いて固まった。そのまま僕の次の言葉を待ってるようだった。


「…………」

「…………」


無音の時間が流れて、伝った熱い滴の道筋がひんやりしてくる。ユノヒョンの右目と左目を交互に見ながら、僕もユノヒョンからの言葉を待った。

前ならきっと、こんな沈黙は耐えられなくて自分で勝手に結論付けて逃げてた。でも今は、ヒョンの気持ちを何より考えてあげたい。


「……好きって?」

「……ユノヒョンのことが……」
 
「……」

「……」


いろんな思い出が走馬灯の早さで駆け抜ける中で、想いを隠したいが故に僕がヒョンと笑い合えた記憶はほぼない。ヒョンの頭の中にも、不機嫌だったり逃げ回ったり無視する僕でいっぱいのはず。どれも告白と結び付かないものばかり。

どんな気持ちで、僕を見てくれてたの?

どんな気持ちで、今僕を見てくれてる?

どれくらい僕は貴方を傷付けてきた?


「と、りあえず…っ、座るか…、あっ、と……今日は、ここに居る?」

「……今日から、……ここで暮らしていいんですよね?」

「あ、うんっ。……そう」



きっと、僕が憎いでしょう




途切れ途切れに僕の様子を伺ってくる声が、年上なのにやっぱり可愛いくて。さっきまで据わってた目が振り子みたいに揺れてる。
すごく色々考えてくれてるんだと思う。僕がそうだったように、きっとユノヒョンにとっても信じられない話なんだろうから。


「あ、何か……何か飲むか?あの、ビールは、買ってきてるんだけど……」

「あぁ、じゃあ…。はい、飲みます」

「持ってくるから。座っといて」

「はい……」


ドキドキする。まるで小学生の幼い初恋みたい。
感情が直接心臓を揺さぶって、これから何を話そうか考えるだけでパンク寸前。明日のスケジュールとか、明日の朝ご飯とか。そんな話題さえ手に汗握りそう。

大きく息を吐きながら、前のソファーに身を沈めたところで、後ろからガンっという衝撃音とユノヒョンの呻き声が聞こえて飛び上がった。


「ユノヒョン!?大丈夫ですか!?」

「……っつー。大丈夫……、ちょっとぶつかっただけっ」


ダイニングテーブルに強打したらしいユノヒョンが右の太股をさすって引きずりながら無理して冷蔵庫へ向かう姿にキュンとして。
もうまずい。
何でもかんでもドギマギしてしまう。






どうしよう


どうしよう




夢が











現実に






「はい、ビール」

「どうも…っ。あの、、足大丈夫です?」

「大丈夫大丈夫」


ビールと飲みかけのスプライトを持って、困ったようにへらっと笑ってくれる。僕の左側に腰掛けてくれたユノヒョンは、今夜、最も僕を甘やかしてくれてる。


「えっと……」

「あ、はい……」

「……」

「……」


時計の針が進む。
でも焦らないで。気にしないで。
静寂の長さが想いの深さと比例する。
そんな気がする。


「あ、、マックスだからこれにした」

「……はい?」

「あ、いや…。このビール『MAX』だから……」

「ああ、、なるほど……っ」


缶ビールの背表紙に青文字ででかでかと僕の芸名と同じ英字の商品名が表記されていて、言いようのない恥ずかしさがこみ上げてきた。
耳が熱い。こんなところまで考えてくれなくていいのに。いや嬉しいけど。
僕の名に気が付いて缶を取ったユノヒョンの姿を想像して、さらに熱くなった気がする。


「……」

「……」

「あ、と……。そうだ!これ覚えてるか?」

「へ、え?」


ローテーブルの引き出しを外れるほど抜き出してがさがさ中を真剣に漁るユノヒョン。


「…………」


これからは背中だけじゃなくて、こうして横顔も見ていいんだよね?振り向いた眼差しに、もう気持ちを隠す必要はないんだから。言ってしまったんだから、僕のすべてを。


「これ!」

「ん?…何です?この石」

「昔番組企画で化石発掘する仕事あったろ?俺がなかなか見つけられなくて、そしたらチャンミナが隠れてこれくれたじゃん。ほらここ、なんか葉っぱっぽい模様ついてるだろ?」

「うーん、でしたっけ?仕事に慣れるので精一杯で、…あんまり覚えてないかも……よくまだありましたね」

「うん、まあ、嬉しかったからな」

「……すいません。覚えてなくて……」


いつの仕事かまったく思い出せない。それほど特徴もない平凡な石ころを、宝石のように両手で包んで見せてくれる。


「いや、そういう所が、いいなと思ってたから。損得関係なく自然と皆をフォローしてくれるとことか」

「そ、ですか……」

「うん。すごく心が綺麗なんだなって、、って……俺気持ち悪いか。こんなの見せるべきじゃなかったな……」

「え!?いやそんな事思ってないですよ!」


僕の反応がぎこちないせいなのか、苦笑いで、でもそっと大切に石を戻していくユノヒョンに焦る。
そうじゃなくて、そうじゃなくて。恥ずかしくって。照れくさくって。




『すごく心が綺麗なんだなって』


「……っ、」





嬉し過ぎるでしょ










「……気持ち悪いのは僕の方ですよ。『チャンドル』なんて人格が出てきて……自分でもびっくりしました。意識はあるのに操られてるみたいに勝手に行動しちゃうし」

「人格?」

「その……、『チャンドル』は僕の二重人格の人物で、本当にパラレルワールドから来たわけじゃないと思うんです。僕の……理想の、自分、というか……っ」


ユノヒョンにちゃんと伝わってるだろうか。
これも僕の告白なんだけど。


「そうかな?俺はチャンドルって本当に居たと思うけどな」

「へ?」

「他の世界で、俺とお前のTOHOSINKIがあってもおかしくないような気がする。そのほうがしっくりくる感じ。チャンドル元気かな?おーい、良かったらまた来てなー♪」


ユノヒョンはあっけらかんと僕の目の前で、陽気に手を振る。『僕』じゃなく、『チャンドル』を本当に見てるように。







純粋で単純で美しい。




こんな人、僕の人生の中で、最初で最後だ。
















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ホミホミHOLIC(中毒)2017

(完全に腐ったブログです。ホミンホ教に抵抗のある方はご遠慮下さい。後戻りできませんので。)










こんちには、りょう(ゆのっぽん)です。


皆様の温かい応援のおかげで、うちのトラ☆シカ号、ブログ設立から10カ月経ちました。

本当にありがとうございます!!




ひよっこ新参者でございますが良ろしければ、是非今年2017年も宜しくお願いします。( T∀T)














ところで、(さっそく)














どこいるの~っ!我らがホミンホぉぉ!!!涙( ゚д゚)















「ん?チャンミン何か聞こえない?」

「……。いや何も聞こえません。戻ってくるまでに貯金しとくとか綺麗に磨きをかけるとか言ってた割に全然やってない人の声なんて聞こえません。え?再販購入で先月泣いて喜んでポチったタウンページがまだ来ない?簡単に見せるわけねーだろ!僕たちの婚前旅行写真集でっすよー!?悔しかったら新羅免税店で2万円以上購入して限定カレンダーゲットしてみろっ!うひゃひゃひゃひゃ!!」

「チャ、チャミナ…?落ち着いて……?ポクの可愛いミンはどこ行っちゃったのぉ?」

「………ミン❤ユノったら❤」(←)























「……くうっ!!!彼氏の前でだけ可愛い子ぶりっ子炸裂する乙メンめ!!!そしてそこが無性に可愛い…っ!」(確かに金なし容姿なし…)



















いいから見せろっ♡
ホミンホ中毒。゚(゚^∀^゚)゚。




















だ、誰か助けて下さい。。

2人がくっついてる姿が見たくて禁断症状でちゃってます!!!別に見たところで自分にメリットないし、堪らずない金はたいてマウスのクリックボタン押しちゃうだけだけどな!!!(ポチっとな!)涙



















見るだけで幸せ感じる❤自分のことなんてどうでもよくなる❤(腐)















今年は王の帰還までもう少しですね。「もう少し」って、厄介です。

ジョギングしてても、大盛丼食べてても、

「あともう少し」が苦しい!
















どうか迷える信者に僅かばかりでも2人のラブラブっぷりを施して頂きたいのです!( T∀T)涙






















「じゃあね、少しだけ!チャンミンが恥ずかしがるからちょっとだけだよ?ほら皆思い出して?ってゆーか、ポクがチャンミニに愛されてる(長年)って自慢だけなんだけどね❤あはーはーはーっ!!!」(←)











ぎゃあーー!!さすがウリユノ❤❤❤
ありがてーでやんす!(もはやキャラ崩壊)
( *´д)/(´д`、)


目がキラキラよお~!
天使よ天使ぃ~~!!!(*ToT)
















「…………お?ウリユノ?」
















威嚇すら嬉しいと思う。
ぜひください。爆




















【2015】夜を歩く士グループトーク

そうだった!チャンミンのカトクのアイコン……。右下の黒い物体は……。。













別アングルのこれですね!!( ; ロ)゚ ゚


って、、





ユノの頭じゃねーか。笑
これ見た人全員気になったと思うけど芸能関係公認なんですか!?













【2014】ギュライングループトーク

( ; ゚Д゚)KO・RE・HA……(震)
右横から左へあなたを包み込むように伸びる肌は……













あはははは((ノ∀`)・゚・。 アヒャヒャヒャ


おい、、





ユノの腕じゃねーか。震
ティアモならぬあなたのアモーレですね!?
























これは……、、アレですよね…?
リア充のカップルが自慢したいんだけど、がっつりツーショットの写真はさすがに気が引けて、自分の所だけフィーチャー(でも自慢したくて、相手の一部分をわざと写り込ませてアピール)したやつですよね…?






















(ってゆーか、私はいくらラブラブでもこんな事しないけど……親愛なるヒョンならTVXQのアイコンでいいだろ、なぜ抜き取るんだ……)










【2015年11月】個人トーク

で、ない時は潔いくらい何もないのな。笑
(1人で格好いいのいっぱいあるじゃん!)
























思うことは、1つだけ……






















ウリチャンミン最強……。涙

今年のアイコンはどうなっているんだい??












「だっから簡単には教えませんよぉ~♪」









「芸術やモアナで心も(身体は至極当然ですよ)磨きまくってる僕に勝てるのなら教えてあげていいですけど…?貴方どうなんですか?僕に勝てますか?(ツーン)」













……。( ゚д゚)ハッ!




















大人しく待ちます。。
























もう少しですね。

もうちょっとです♡











大丈夫ですよね?

すぐ会えますもんね!(○´∀`人´∀`○)
















王たちの帰還を待ちましょう!












今年もよろしくお願い致します!



りょう(ゆのっぽん)




(画像お借りしました)
今年もよろしくしてやっていいよのポスっ!
Let's HOMINHO Holic♡
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片割れ chap.9 番外編#18 チャンミンの平行世界










「ヒョン!ちょっと!」

「……」


財布やスマホをソファーに落としてキッチンに進むユノヒョンを追い込んだ。奥の冷蔵庫からスプライトを取ってこくこく流し込む姿さえ端正。喉仏のない滑らかな喉の隆起に見惚れると、改めて実感する。ひとつも変わらない想いと、2年越しに話しかけてる喜び。ただ内容は頂けないものだけど。


「何突然キレてるんですか、あれはないでしょ?わざわざ心配して来てくれたのに酷いじゃないですか!」

「……キュヒョンがそんなに大切?」

「当たり前でしょ!今までずっと支えてくれた大親友なのに…どうするんですか!キュヒョナ完全にビビってましたよ!?僕の友達無くす気か!」

「無くしちゃえば?」

「……え?」

「これからは俺がチャンミナのこと支えるし守るから。キュヒョンなんていらないだろ」

「………ヒョン?」


まるで異国の言葉を聞いてるように、ユノヒョンの言葉の意味が分からなくて。


「チャンミナが言えないなら俺からキュヒョンに言ってやろうか?」

「……………」


仲間や友達を心から大事にするユノヒョンの言葉とは到底思えなくて、脳が拒否反応を起こして理解できない。


「俺のスマホどこだっけ?」

「……さっき、ソファー、に」

「あ、そっか」

「ユノヒョン、なんか……怖いですよ……」

「…………」


僕を置いてソファーのある場所に戻ったユノヒョンが、スマホを弄って耳に当てる。


「すいません、あの。。どこにかけてるんですか……?」


溜め息を吐いて、「俺ってホント駄目だな…」と呟きながら背中を向けたユノヒョンは僕の疑問に答えない。

今ユノヒョンは何て言ったんだろう。
僕が言えないならヒョンが言うと言った。
何を?
キュヒョンはいらないだろと、これからは俺が支えるからと。

『僕の友達無くす気か!』
『無くしちゃえば?』


「……あ、」

「もしもし、キュヒョン?」

「ヒョンやめろ!!!」


ユノヒョンの背中が、何だかユノヒョンじゃないおぞましい物体に見えて、不思議。殴るか蹴るか、躊躇いなくできる。なのに足がびくとも動かなくて。

そのおぞましい背中が怖くて。


ユノヒョンが恐い。


「あのさ、チャンミナのことなんだけど」

「やめて!お願いします!!」




こんな人知らない。
こんなのユノヒョンじゃない。





「ヒョン!!!」






「まだ近くにいる?できたら……チャンミナ、連れて帰ってあげてくれない?」

「……」





「うん、…うん、そう。実家かキュヒョンとこか……他に会いたい人の所でも。……。いや俺のとこは怖がらせるだけだから…。チャンミナの好きな所行かせてあげて」

「……」







僕は、


「あとさっき、、本当に悪かった。……。いや本当に俺が悪いから気にするな。うん…、キュヒョンが羨ましくて……本当にごめんな?」


一瞬でもユノヒョンを疑った自分が

恥ずかしい


「とにかくチャンミナの好きにさせてあげて。……。うん、じゃあ待ってるわ。ありがとな。ん?」


この人の気持ちがどれだけのものだったのか

気付かなかった自分が憎らしい


「チャンミナ、キュヒョンが代われって」


男とか女とか関係なく


「……はい」







この人は美しい








動かす足は重くて、でもさっきまでの恐怖からじゃなく。どうしても言わなきゃ伝わないことがあるから。

胸が痛くて、痛くて涙が出る。

今日の僕は泣いてばかりで、格好悪くて、全然ロマンチックになんか決まらない。
でもそれが僕だから。最後まで下手くそで、このままでいいんだと思う。


「チャンミナ泣かないで……もう、大丈夫だから……」


たぶん、解放されて安心したんだろうなと勘違いしてるユノヒョンの手からスマホを受け取って、キュヒョンの声に耳を澄ます。


「キュヒョナ、悪いけど……」

『俺行かなくていいよな?』

「うん、そう…っ、」


ここでまた逃げたら、今度こそ終わる。


『チャンミニ、ファイティーン♪じゃあな』

「ぶっ…ありがと。じゃあね」


胸が、痛む。


「な?キュヒョンすぐ来るって」

「来ませんよ」

「……。は!?いやさっき来るって言ってたぞ、あいつ!もう一回かけるからちょっと待っ…」

「もういいんですって」

「いやでも、お前が……」





胸が痛くて、涙が流れて、





でもこれは
















「ヒョン好きなんです。僕がここに居たいんです」










世界で一番、甘い痛み













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片割れ chap.9 番外編#17 チャンミンの平行世界












「…………っ、、」




『僕も貴方が好きです』


その言葉が出てこない。


好きな人に「好き」と言うことが、世界で一番困難だと思う。

「僕も~」にしたらいいのか、「僕は~」にしたらいいのか、とても困る。「前からずっと」を入れていいのか、「愛してる」にした方がいいのか。

僕の気持ちを網羅した完璧な一言を。
ロマンチックにと考えれば考える程頭がこんがらがって、くらくら目眩がする。あと一歩が踏めない感じ。


「はい、着いたぞー」

「……っ。はぁ…」


第一そんな事、突然言えるわけない。僕はこれまで、隠すことしか頭になかったんだから。


「また俺のベッド使えよ~。新しいの、すぐ頼んでおくから」


さも何もなかったように運転席からひらりと抜け出されて、どっと脱力した。
疲れた。弛緩した筋肉が気持ちいい。
どれだけ肩に力入ってたんだ。
僕も助手席から出て大きく伸びをすると、頭が少しすっきりする。


「……新しいの?ユノヒョン、ベッド新調するんですか?」

「何言ってんの?チャンミナのだろ?今日からここで一緒に暮らすんだから」

「……へ…。でも僕実家に…」

「メンバーなんだから当然だろ?連絡はちゃんとしてな?必要なものはまとめて送ってもらったらいいよ。あ、帰る時は俺に教えて。またチャンミナとTOHOSINKIやらせて下さいって挨拶させてもらいたいから一緒に行くわ。あと再始動で相当忙しくなると思うから、これからプライベートは暫く控えて。外出禁止、出たい時は俺に相談してから行って」

「……」

「大丈夫、俺が守るから。安心してついてこい」

「……」


心配がないと言ったら危ういけど、ユノヒョンに賭けてみたい。プライベートも侵害されてきた僕には、もう何も残ってないけど。ないものさえ投げ出して、さらに得るものがあるなら。



「チャンミナ、分かった?返事は?」

「……はい」

「よし」


あれよあれよと捲し立てられて、ユノヒョンの見えない強引さに引っ張られた。思わず返事をした途端ほっとしたように笑ってくれるからズルい。その笑顔をずっと正面から見たかった。

ずっとずっと。ずーっと前から。


「一応スペアキー持っとけよ。えっと~…、部屋のどこかにあったんだけどな。すぐ探してみよ?」

「……はい」

「うん♪」


ほらまたいっぱいに笑うから。
僕はそれ見たさにユノヒョンから繰り出される共同生活の提案を、ひたすら頷いて聞いた。そしたらどんどんヒョンのテンションが上がっていって、子どもみたいにはしゃぐ姿におかしくなる。


格好いいけど可愛いんだ、この人は


「ふふっ」

「な?なんだったら、家具とか好きなように替えていいから。俺全然そういうの疎いし」    

「僕もあんまりこだわりないですよ、いいなと思えば長く使いたいですけど」

「じゃあ気に入るものを探しに行けばいいっ!明日は?明日一緒に行こうか?」

「ぷ……。ですね」


楽しくて。心がぽかぽか、嬉しくて。

部屋までの短い道のりを二人で歩く。途中、踊り場にあった鏡に、あまりにニヤケた自分の顔が映ってて、びっくりした。そこでようやく、浮かれ過ぎてエレベーターも使わずに歩いて登ってたんだと気付いて、さらにびっくりする。


「……ふっ…」


僕の方が子どもだ。なんて単純。








「あれ……?」

「はい?」

「チャンミニ!!」

「あ…」


宿舎の玄関前に座りこんでる不審者が立ち上がってこちらへ駆け寄ってきた。


「お前なんで連絡返してくれないんだよ!めちゃくちゃ心配したんだぞ!?ユノヒョンも!なんで連絡くれないんですか!2人共連絡つかなくて俺本当に心配したんですよ!?」

「キュヒョナ……」

「キュヒョン悪い……忘れてた」

「もう~、勘弁して下さいよ~っ」


今までも散々甘えて頼りきってきた親友。自分でも嫌になるほどぐちぐちユノヒョンのことを聞いてもらった。ギュラインの打ち合わせも、「最後の歌詞なんか書けない!本当は辞めたくない!」ってキュヒョンに当たり散らすところだった。


「キュヒョナ、本当にごめん……。あのね、実はさっき、記憶が戻ったんだ」

「……へ、、本当に?全部?」

「うん、心配かけて本当にごめんね。あと……本当に、ありがとう」


確か『チャンドル』は記憶喪失だと、嘘をついてた。嘘だけど一理ある。パラレルワールドから来たとか二重人格とか言ったら皆こぞって僕を精神分裂症か何かで病院送りにしただろう。


「え?でもチャンドルは本当は違う世界から来てたんだろ?」

「……は!?」

「っ!いやまあ、いいですから!皆混乱するし、僕はとにかく戻ってきたんだからいいじゃないですか!」

「……まあ」「……まあ」

「ふう……」


変な冷や汗が出る。だって『チャンドル』は僕の本性だったから。夢を具現化したい僕が『チャンドル』を生んだ。どんだけユノヒョンが好きなんだよって、よくよく考えると狂ってる。


「でも……じゃあ良かった、よな?俺はひとまず、安心した……」

「うん……」

「そうだキュヒョン、俺たち2人でまたTOHOSINKIやってみようって話になったんだ」

「え!!?」

「な!チャンミナ?」


強引。無理やり。
僕は頷いただけでやりましょうなんて同意してない。でもすぐ隣でキラキラ目を輝かせて首を傾けてくるユノヒョンに参る。


「……ふふっ、はい」

「……。……チャンミニぃ~っ、やっぱそれがいいよ!!良かった!本当に良かった!俺は本当、それがいいと思う!」

「キュヒョナ……」


キュヒョンはずっと、ユノヒョンがあーしたこーしたと兵役中も教えてくれてた。ユノヒョンがヨンミン代表に頼んで、TOHOSINKIを誰も代行させずに眠らせてくれてるって知ったのもキュヒョンからの情報だった。

皆待っててくれてた。でも悪者の僕が戻ってきたら、絶対非難される。ユノヒョンやTOHOSINKIに傷がつく。それがとても怖かった。

ギュラインだったらできるだろうって、SMTで仲良く出れば怖くないぞって支えてくれたのはキュヒョンとミノと事務所の仲間たち。ここまでまだ居れたのは皆のおかげ。
キュヒョンのおかげ。
汲み上げるものがある、どうにもできない。

TOHOSINKIを、またユノヒョンとできる。


「キュヒョナ今まで…、ありがとう……っ」

「チャンミニ……っ!」


慣れ親しんだキュヒョンの手が伸びてきて、熱い抱擁で友情を分かちあおうとした。ら、隣から分厚い腕がキュヒョンを掴んで阻止された。


「触るな、チャンミナに」

「……」「……」


とても感動的な場面になるはずだったのに、ユノヒョンに阻止された。


「お前、前から思ってたんだけどさ。気安く触り過ぎ。チャンミナはそういうのもともと苦手なんだから友達なら気ぃ使えよ」

「え……、、」

「……ヒョン?」

「それになんでこんな所まで入って来れてんのお前。エントランスどうやって抜けたの?」

「あ、いや、、どうしても心配になって…ユノヒョンのマネヒョンに暗証番号聞きました……」

「心配させたのは悪かったけどな、ここ俺の宿舎だぞ……」

「す、……すいませんでした……」

「ちょ、ちょっとちょっと!なな何を怒ってるんですか!?キュヒョナは僕の大親友で……知ってるでしょう!?」


とてつもなく静かで不穏な空気がユノヒョンから流れてきて、緊張感がびりびり走る。

『ユノ・ユノを本気で怒らせたら恐い』

これこそユノヒョンが魔王と呼ばれる由縁。


「とにかく今日は帰って…」

「……はい、本当にすいませんでした……」

「ユノヒョン!!」


キュヒョンを通り過ごして玄関の鍵を開けるユノヒョンの後を追うと、そのまま部屋の中に押し込めらて何が何だか分からない。


「じゃあね♪」

「ユノヒョン!本当にすいませんで…」


外に向かって明るく手を振る仕草とは裏腹にキュヒョンの声を遮って扉をがしゃんと閉めるユノヒョンが信じられない。あまりにも傲慢過ぎる。


「ちょっと!!!」

「……」


僕の声を無視するように靴を脱ぎ捨ててリビングに向かうユノヒョンの後をまた追った。











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片割れ chap.9 番外編#16 チャンミンの平行世界






キスは、一生に1人、この人こそはと求婚する時用いる特別なものだけど。それはあくまで本来の意味で。


「え?」


感情の高ぶったユノヒョンの、突発的な親愛表現だと思ってた。そう思いたくなくてもそれが現実だと、認めざる得ないほど僕たちはあの時、追い込まれた状況だったから。


「本当、俺のことは気にしなくていいからな?好きな人とか彼女とかできても、逆に教えてくれた方が嬉しいし、応援したいから」

「え?」


心臓の鼓動が

痛いくらいの脈を打つ


「チャンミナが幸せなら、俺もすごい嬉しい!」

「え?」

「いや本当。今はまだ信じてもらえないかもしれないけど……、チャンミナが結婚する時は、俺泣いて喜ぶ自信あるぞっ」

「…は……」


さっきまで、運転中でさえ僕の方を何度も見てきたユノヒョンの視線が、前方に向けられたまま動かなくなって、声だけはやけに明るくなって。僕は反対に、ヒョンを見つめ続けた。図々しくも、まるで空元気みたいだって思ってしまう。


「だから、チャンミナもメンバーのヒョンとして頼って」

「あの、、実は…っ、」

「へ?」



「……っ」



















心臓が、飛び出そう











「実は僕……、」

「あ……」


欲が出る。積もりきった想いが一気に溶けだして残ったのは「貴方が欲しい」と駄々をこねる僕。
だけど何て言えばいい?僕は好きだなんて一言も言われてない。


「もう、そういう人いるのか…?」

「は!?いや、あのえっと……っ」

「……いいよ、全然。気にするな。な?」

「……っ、いやだから…っ」

「大丈夫だよ。俺は本当に大丈夫、チャンミナ」

「…………」


柔らかく前だけ向いて笑うユノヒョンは涙に滲む僕に気付かない。
こっちを向いてよ。
こっちを向けば何も言わなくても分かるはずなのに。それだけ僕は必死な顔になってるはず。だけどユノヒョンは、それから僕を見なかった。







宿舎に戻るまで



沈黙が訪れても




 


















ただの一度も


















ごめんなさい、タイムオーバー!毎日更新目指します!あと念願の企画もの参加予定です♡楽しみー!(←自分が一番浮かれてます)
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片割れ chap.9 番外編#15 チャンミンの平行世界











これまで数え切れないほどくれた連絡も、事務所からの会合指示さえ拒否してきた。後ろから突然腕を掴んできたユノヒョンの手を振り切ったこともある。

ほっとかれても当然なのに。綺麗な再出発をしてくれて良かったのに。今日だけじゃない、ずっと動かず僕の身の潔白を訴え続けてくれてたのを知ってる。もう十分すぎるものを貰ってきた。


「あの、」

「ん?」


だから言わなきゃと思って、最後に会う約束をした。僕は辞めるから気にせず自由に輝いて欲しい、そんな風なセリフを。できたらクールに。最後なら、会っても迷惑にならないよねって。


「……TOHOSINKIを、僕とまたやってみるって本気ですか?」


それが『チャンドル』の発生で、こんなにもおかしな質問してる。間抜けにも程がある。


「当然。そのためにずっと待ってたんだから。もうっ、いつからチャンミナに戻ってたんだよー本当に心配したんだぞ?」

「…っ、その……」


問い返されると答えにくい。『チャンドル』の振りをしてユノヒョンと笑い合ったこの数時間を、どう説明すればいいんだろう。


「……ちょっと前です」

「そっかぁ。あ、じゃあチャンドルは?ちゃんと戻れたのか!?向こう?で、もう一人の俺と会えたかな?」

「……さあ…」


僕の虚像を本気で心配するユノヒョン。


(そんな世界ない。全部僕が意識下で妄想した夢のストーリーなんです……)


「チャンミナ聞いてたか!?チャンドルのことは分かるんだよな?チャンドルの世界では、俺とお前のTOHOSINKIを活動させてて、2人で凄くうまくやってるらしいぞ!?たくさんの人達に愛されてるって!」

「……はい…」


ユノヒョンが興奮しながら運転してくれる車の中で、隣に並ぶ肩を僕は見れない。心で思うことを何も出せずに、それらをかき集めて胸の内に抱いた。

『チャンドル』の夢は解けたんだから。仕方ない。


「チャンドルはさ、俺たちも2人でやれるよっていうことを伝えるために来てくれたんじゃないかな?」

「……帰ります」

「え」

「僕の実家、覚えてます?」

「……当たり前だろ」

「……じゃあお願いします」


車窓から見えるソウルの街並を眺めるように覗きこんで、こっそり窓のガラスに反射されたヒョンの姿を見つめた。眉間に皺を寄せる横顔に、何もかも申し訳ない気持ちでいっぱいで。 


「……、、」


服の裾をくしゃりと握っても、それだけじゃ何も変わらないのに。所在なくてさらに強く握り締めた。


「俺のせいで、ごめん。ずっと直接会って謝りたくて…」

「は?」

「本当に……、何て言ったらいいか分からないんだけど、、っ……ごめんな」

「ちょっと……止めて下さいよ、なんで……」


誤りたいのはこっちなのに何で謝られなきゃならないんだろう。振り向いた先のヒョンの顔があまりにも苦しそうでまた目線を逸らした。


「チャンミナが俺を避ける理由を、誰にも言えなかった。……あんなに責められても何も言わないお前をずっと見てたのに、、でも俺しかいなくなってどうしてもグループを守りたくて…」



「…ぇ……、、」










バレてた……?


僕の気持ち











「いや……っ、、当然、ですよ…っ」


自分を異常な目で見るマンネのことなんて誰にも言いたくないし迷惑だよ。


「あの、」

「できたら……なかったことにして欲しい…。無理でも、、俺はそうするから大丈夫。だから……2人でやってみよう?チャンドルの世界だけじゃない、俺たちだって絶対できるよ」

「……」


なかったって、、この気持ちを?


「……」


気持ちなんてどうすることもできない。でもせめて迷惑はかけちゃいけないって。だからひっそり、隠して隠して。


「ユノヒョン……」

「うん……」


なぜ惹かれるのか。理由なんて、分からない。

ただただこの人の美しさがいけない。

ヒョンの横顔を溜め息混じりに感嘆しても。踊る姿に痺れても。万人に愛情を与える精神に激しく焦れてしまうことも。完璧ではない所を、誰も見てない小さな癖さえ愛しく感じることも。
全部全部、どうすることもできないからこそ、隠して。


「……何をです?」


勇気を振り絞って、聞いた。

お前の気持ちだよと言われることは分かっていたけど。もしかしたら何かの聞き間違えで僕は勘違いしてるのかもしれない。そう思いたい。


「だから、、そうすればTOHOSINKIを2人でまたやれるだろ?」

「いやだから…っ、……何をなかったことにしろと?」

「その……」

「……」


しんしんと、雪が降り積もるように。1人でひっそり。積み重ねて。重すぎて。身動きも取れない下手くそな気持ちだけど。

優しい慰めはいらない。「欲しい」なんて求めない。
だからせめて、なかったことにはしないで。


「キスしたこと。本当に悪かった。忘れて欲しい」

「わす……」

「あんなことしなければ、始めから2人でやっていけてたよな。。本当に、申し訳ない……」

「…………」


飄々と言葉を紡ぐユノヒョンの答えは、予想した最悪の答えを遙か越えた最悪なもので。


「よしっ、さっきも皆の前で宣言できたし。待ってくれてる人達は俺達にだって必ずいるよ。スマン会長とヨンミン代表に掛け合って、2人で……うん、できるよ俺たちなら」

「…………」


あの時のあの口付けは、僕の不毛な心を強い盾に変えてくれた。助け方なんて分からずにとにかく抱き締めて。そして応えるように抱き合って和らいでくれたユノヒョンを、そのまま何がなんでも守ると誓えた。

パーソナルスペースのないヒョンの勢いでも弾みでもいい。でも僕にとっては紛れもないプロポーズだった。思いこみでも思い出として2人の中にあれば、それだけで生きていけるって……。


「な?チャンミナ」

「………………」

「チャンミナ?」


傷だらけで、ついには息の根も止まる。


「……ここでいいです。おろして下さい」

「え、まだかなりあるだろ?」

「もう、いいんです……」

「……」


右手に流れる漢江の水はまだ冷たい。

なかなか停まってくれない車の歯痒さとなかなか信号に引っ掛からない運の悪さに、今はもう、何も言う気力がない。


「……やっぱり、キスなんて簡単には消せないよな……」

「すいません。ぶっちゃけもう忘れてました」

「……、はああ!?」


もう、いいや。


「今ヒョンに言われて思い出したくらいで…。そう言えばそんなこともありましたね」


寄り添った肩も

重ねた唇も

溶けた舌も


「え…だってお前、それで俺のこと信じられなくなって宿舎出て兵役行ったんだろ……?俺のせいでそうしたんだろ?」

「信じるも何も。何でユノヒョンのせいなんですか。あの時はとにかく疲れて…。グループを守りたいとは思いましたけど、何もかも嫌になって逃げたんです、卑怯者って言われても仕方ないんです」


河へ投げ捨ててあげる。

全部、消してあげる。

貴方が望むなら、それがいい。


「嘘だろ。絶対俺のせいだったろ」

「はあ?」

「だってキスだぞ!?忘れられるわけねーだろ!」

「……っ、言ってることめちゃくちゃじゃないすか。忘れろだの忘れられないだの…ヒョンにしたらただの勢いか何かでしょ、分かってますって!そんなのなかったも同然ですよ。何蒸し返してるんですか、女々しい」


あーくそ


「めめ…っ、俺はな!あのキスでお前を兵役行くくらい傷付けて、、本当は俺が責められないといけないのにチャンミナが責められて、、どれだけ苦しかったか分かるか!?」

「そんなの知りませんよ、僕のことなんか気にするな!っていうか本当にもうおろして下さいよ!」

「嫌だ」

「はあ!!?」


本当に最期まで


「このまま連れて帰る」

「嫌ですよ!」

「ダメ。チャンミナ辞める気なんだろ。やっと会えたのに逃がすかよ。どうしても俺とやりたくないなら……、俺が引くからお前がTOHOSINKIやれ……」

「あんた何言ってんだ!!!あんたが居ないとTOHOSINKIになんないだろ!!!」


ああ、なんて


「お前も居ないと駄目だろ!!!TOHOSINKI潰したいのか、お前は!!!」

「そんなわけねーだろ!!!僕が居た方が潰れるでしょ!!ヒョンなら少しは考えてよ!!!」


小さな箱の中で、やっと向き合えば睨み合って叫び合って息を切らせて。全然甘くない。そんな、恋。


「だから今度こそヒョンとして守るって言ってるだろ!!!俺の気持ちも少しは汲めよ!頼むから!!」

「あんたの気持ちって何なんだ!!僕の方が汲んで欲しいですよ!!!」

「だからっ!!!捧げたキスを取り消すから…!!気持ちも無くすよう努力する…し……」

「捧げ…っ、……。…………え?」


なんて、


「だからもう避けないで……。俺はきっちりチャンミナのこと諦めるから。またメンバーとしてやっていこう?」








僕たち、

なんて




下手くそな恋









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片割れ chap.9 番外編#14 チャンミンの平行世界










「もう一度お伺いします。
TOHOSINKIの、……チャンミンに何か?」





どきりとした。

泥を被った僕が、まだソレを背負っていいんだろうか。


「……」「……」「……」





そのグループ名はかつて


アジア史上、最も爆発的な人気を誇った名前で















今尚、絶頂の響き





「いえ…、それよりサイン下さいっ!」

「いつも応援してます!あ、握手して下さい!」


ユノヒョンの出現で場の雰囲気が僕を置き去りにするように色めき立って、正直胸を撫で下ろした。無意識に握りこんでた拳を開くと手汗が滴りそうなほど浮き出てる。こんな事はこれまで何度だってあったのに。

だけど、まだ。まだ、……慣れない。

ユノヒョンがサインなり握手なりしたらすぐ店を出たい。そう思うのに、ヒョンはそこから微動だもしない。ヒョンの肩越しに見える彼女達も不思議そうに首を傾けてる。


「?……ユノヒョ…」

「仰ることがあまりにも酷すぎませんか?」

「あ……」「え、と……」


ヒョンはどこから聞いてたんだろう。
その声は淀みなく澄んでいて、深い。


「すべて憶測ですよね?俺がずっと発言してきた通り、チャンミンは何もしてないし何も悪くないんです。どうかチャンミンに謝って下さい」

「ヒョン、いいですって」

「いいからお前は黙ってろ」

「…っ。……ちっ」


ほら。傍に居るとこの人は全力で守ろうとしてくれる。あんなに刺々しく接してきた僕にさえ。すべての人を真実で貫き通そうとする。迷惑をかけてしまう。


「ちょ、なんでユノに舌打ちできるの!?」

「本当ですか?チャンミンは本当に原因じゃないんですか?なんでそんな態度悪い人庇うんですか?」

「態度なんて人それぞれの受け取り方によって違いますよね?それに態度を悪く感じたからって、チャンミンが何かしたことにもなりませんよね?真実はいつかは必ず明らかになりますから、どうか信じて待っていて下さい」

「あのっ、……私たちは、ユノさんのためを思ってで。。だってチャンミン、さんは兵役に…」

「お気持ちは嬉しいですけど、なぜそれがチャンミンを責めることになるんでしょう?俺は悲しいですよ。あなたがもし俺で、何もしてない唯一のメンバーのせいだと責められたら辛いですよね?悔しいですよね!?」

「ヒョン…っ」


ユノヒョンの声がだんだん上擦ってきて、腕は身振り手振りで忙しない。僕はヒョンの黒いパーカーの後ろをぎゅっと掴み揺さぶって、ヒョンをたしなめた。向こうに見える、何の騒ぎかと覗く店員や客のためでもなく。ヒョンの気迫に完全に怯えきってる彼女達のためでもなく。

自分のために。











この気持ちを、名付けてしまいそうで





「ユノさんご、ごめんなさい……っ」

「だから、俺にじゃないんです!チャンミンに謝って下さい!」











もうやめて






「お騒がせして申し訳ありません!でも文書で何度お伝えしても分かって頂けないのでこの機会にもう一度皆さんに言わせて下さい!」





居酒屋の通路の一角で。野次馬まで捲き込んで。何してるんだ、この人は。




もう、本当にいいから









「お願いします!歌も、グループも、人権も。チャンミンが何も言わないことでどれだけ多くのものを奪われてきたか、想像してみて下さい!!」



「……っつ、うっ……、、」


























もう




これ以上の、「恋」はない

















「嘘……」

「……へ…、、チャンミン泣いて、る…?」

「……あの、、チャン、ミンさん……ごめんな、さい……」

「チャンミン、…っ、……ごめんなさい。。泣かないで……っ、、」

「ぐ、…っ、」


本当情けない。本当情けない。
本当に自分が嫌になる。
聖人にもヒーローにも悪者にもなりきれない。

思いっきり俯いて隠しても、ぽたぽた熱い滴が止まらない。周りからも何人かのすすり泣きが聞こえる。
こんな泣き落としみたいなの、本当にダサい。

だけど、ユノヒョンはまるで正反対なことを主張する。本当勘弁して欲しい。


「チャンミンは、すごく恰好いいんですよ。知ってますよね?だって何言われても、一度も言い訳したことなんてないんですよ。本当に凄いです。俺はこのコとなら、前よりさらに素敵なTOHOSINKIとして帰って来れると思います。少し時間は経ちましたが、できたら皆さん……その時は暖かい愛で迎えて下さい」

「うぅ……っ、、」


めちゃくちゃシャッター音も聞こえる。
これ絶対カメラ撮られてる。針のむしろなのに。
分かるのに涙腺が決壊してどうすることもできない。それを隠してくれるようにユノヒョンが背中を押しつけてくるから、そのパーカー越しの広い暖かさが堪らない。






格好良すぎるだろ、この人。





「大きな声を出して申し訳ありません。でも聴いて頂いてありがとうございます……チャンミナ、行こっか」

「だから…っ、チャ、ンドル…っで…」

「嘘つけ。チャンミナだろ?いいから行くぞ」

「……」


本当に適わない。


「……あっ!と!サインと握手忘れてた!君達君達っごめんねっ」

「……ユノって」「……抜けて…」



「……ぷ」




本当に、適わない。












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片割れ chap.9 番外編#13 チャンミンの平行世界

(注意)チャンミン責められます。ちょっとかわいそうです。でもダークヒーローなんです。ご容赦下さい。。


 









とりとめのない会話をして、

一緒にご飯を食べる。




なんでこんな簡単なことができなかったんだろう。


「お前、ビールおかわり?」

「もう焼酎に切り替えます。ヒョンは?何か追加しましょうか?」

「おー、チャンドルの好きなものでいいよ」

「え~っと、、『四川風激辛麻婆…」

「……辛いやつか……そっか」

「ぶっ…くくく、すいません冗談です。あ、パスタもある……ユノヒョン、カルボナーラはどうですか?」


『チャンドル』の着ぐるみを被っている、被り物をつけている。そう思うだけで心が軽くなって、ユノヒョンと自然に接しられる。


「いいよ。へえ、コジャレたもの好きなんだな……なんか、ズルい!俺も次からそういうの食べる!」

「いや、別に好きってわけじゃないんですけど。……あれ、何でだろ。なんか、気分で」


焼酎とパスタなんて合いそうにもない。ただユノヒョンもまだ食べ足りなそうだなと思ってメニュー表を広げると妙にカルボナーラが目についた。辛いのは苦手って知ってるけどカルボナーラはどちらの好みでもない。
何だろう、気になる。


「……今度作ってみようかな」

「え、カルボナーラ?食べたいっ。今日はいいから、作ってくれるの楽しみにしてるわ♪」

「ふふっ、僕チャンドルですよ?」

「……そうだよ?チャンドルに言ってるんだよ?」

「…………そう、ですか」


なんか、、なんか、、どうして……っ、

猛烈に腹が立つ。


上機嫌なユノヒョンとは対称的に腹の底に黒い靄がかかって、不確かな形が爆ぜる。暴れる。イライラする。


「……っ、」


だからダメなんだ、僕は。。


「……すいません、お手洗い行ってきます」


通された個室に入っても覚えも異変もなかった。だけどトイレへ行く足取りは迷わない、まるで来たことある店みたいに。


「……これも『チャンドル』の、人格設定か?」


よく分からない。でも今思うのはそこじゃない。


「『チャンドル』って……、なんか軽い……」


ヒョンにべたべた触るし。ヒョンにやれ食べ物だ、やれゲームだ強請る。この半日真似て行動したけど、そもそも自室に我が物顔で入るのってどうなの?恋人にしたって節度くらいあるだろ?
自分の理想像のくせに好感なんて到底持てない。それだけでももう勘弁して欲しいのに。

(キスしてた……、しかも、ヒョン、も……っ。僕だけの、大事な思い出だったのに……)


「……っふ…。僕ってやっぱり、おかしいんだな……」


異常過ぎる。自分で作り出した自分にまで嫉妬して。
こんなメンバー、絶対ヒョンの迷惑でしかない。

スペクトラムがTOHOSINKIとして活動することはもう随分前から社内の噂になってた。むしろなんですぐそうしないのか、抗議も要望もあからさまに僕は見てきた。
ミノもドンへヒョンもテミンも皆みんな好きだけど。


「……」


壊れてしまう。今度こそ。
目の前でユノヒョンもTOHOSINKIも取られたら。僕がもう、辞めるしかない。

自分で蒔いた種なのに、自分が促した未来なのに。ユノヒョンが輝くならそれでいい。なんて、心の底から願う模範解答の聖人になりきれない。


「チャ、チャンミン!待ってたの、お願い教えて」

「あ……」


トイレの前で2人組の女の子に声を掛けられた。
さっきのエントランスの騒ぎで、待ち伏せされてたのかもしれない。
会釈してそのまま中へ入ろうとすると、入り口を彼女達の体ごと塞がれた。悪意のある空気。一気に冷や汗が噴き出して、暗い過去が掠める。1番苦しかったのは、薄暗い雨の日の嵐。


「なんでチャンミンがユノと食事してるの?」

「……」


諦めて踵を返そうとした。だけど個室にはユノヒョンが居る。ついてきそうな彼女達の雰囲気に動くことができない。


「ちゃんと答えて」

「……」


人間は、沈黙する対象に対して残酷だ。
真意を聞き出すためならと、凶悪な言葉で煽る。


「まさか、ユノとまたTOHOSINKIやるつもりないよね?」

「逃げた人がのこのこ戻ってこれるわけないよね?」

「……」


それも駄目ならと、今度は妄想を仮定にすり替える。


「ユノは優しいから。もう連絡とかして会わないであげて?ね?」

「スペクトラムって本当恰好いいよね。もしやチャンミンも入ろうとしてる?」


喉奥で笑って相手の神経を逆撫でれば、仮定は真実に確定される。


「……何笑ってんの?全然反省してないじゃん」

「ニヤニヤして超ムカつく……」

「人をバカにしたみたいに笑って。頭おかしいんじゃないの!?」

「……」


「グループが分裂したの自体あんたのせいなんでしょ!?ネットに書いてあった!」

「…………」


普通は、メンバーなら、あの時どうしたら良かったんだろう。








僕たちはなんだか徹底的に不利だった。
だから考えてみた。僕1人が「逃げた」ら、徹底的にヒールになれるんじゃないかって。

活動休止後すぐに入隊すれば、関心は断然僕に集まる。

なぜ分裂したのか。なぜ僕は入隊するのか。
何も言わなくても憶測は始まって膨らんで、すでに熟してた。

ざん降りの雨の中で。傘も意味がない。邪魔で外すと、坊主頭にしたばかりの頭皮から青い雨に打たれて、体温は急速に奪われた。周りにはカメラと、記者と、荒波のようにもみ合う人だかり。とにかくたくさんの、人。


『お前のせいだ!』

『あんたのせいよ!卑怯もの!』

『ユノがかわいそうだわ!』


投げ込まれた生卵が膝小僧に直撃して臭い。下着までずぶ濡れに染み込んだ雨がそれを消してくれるけど酷く寒い。
人の憎悪が集まると、恐怖はこんなにも暗闇の嵐になる。


痛い
怖い
冷たい
怖い
暗い
暗い
怖い


どうしてもぶるぶる震えてしまう体を、食いしばって抑えて。めきりとしきむ歯が暴動の中でやけに響いて分かった。
でも、さも何でもないように。



この矛先がユノヒョンに向かないように
この暗闇がユノヒョンを苦しめないように



「……くくっ、」


周りをぐるりと見渡して、笑った。


「ひぃひっ」


一世一代の名演技だなっ、て。心の中だけでなら格好つけたっていいよね。僕の好きな映画のジョーカーみたいな笑い方で。イカれてるくらいが調度いい。反感を買うには調度いい。

信じられないものを見るような視線が身体中に突き刺さる。肩に、足に、腹の真ん中に、こめかみに、容赦なく当たってくる。

勝手に休止を決めた奔放な僕に事務所は愛想をつかすだろうし、ユノだけはと必ず守ってくれるはず。
ヒョンは1人でも必ずグループを守る。できれば他のメンバーを入れて、新しい夢へ再始動して欲しい。


「…………ふう、」


そう思い切れなくても、そうなって欲しい。

真実なんて誰も信じない。誰も分からない。でも誰もが「戦犯」を探してる。
策なんてない。守るには白を際だたせる黒が必要。

何も言わないからこそ、悪者になれる。


ほの暗いリビングのソファーで
震えながら祈ってた

あのユノヒョンをこれで守れる。















その信念は、今も変わってないよ。


「言っとくけど私たちは忘れてないから」

「どの面下げてユノと会ったの?信じられない……」

「……」

「自分が何したか忘れた!?ユノもTOHOSINKIも捨てて兵役に逃げたんだよ?人のやること!?さぞ優雅に過ごしたんでしょうね!?」

「…………」


ウルサい。五月蝿い。
そうだ、今は五月だ。五月の蝿(はえ)が耳をつんざく。これからもずっと、僕の周りを飛び回り苛める蝿たち。


「ユノがかわいそう……、チャンミンのせいで。たった1人で、」

「全部チャンミンのせいよ!」


別に悪者になりたかったわけじゃない。
誰だってヒーローに憧れる。




例えばそう、




ピンチの時にはすっとこんな正体不明の逞しい背中が僕の前に現れて。


「ちょっとごめんね?」


その男が深く被った黒いフードをゆっくり外すと、鬼の形相をしていた彼女達は一気に花の咲くような笑顔に成る。

歓声が黄色く色づく。




「ユノ!」「ユノ!」




そのヒーローは誰からも知られる正義の味方で、放たれる微笑は痺れるほどに格好いい。




「うちの可愛いチャンミンに何か?」


「え……」

「や、いえ…っ」




そういう人を好きになった。

僕はまったく間違えてない。












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片割れ chap.9 番外編#12 チャンミンの平行世界







〈初めて〉来たユノヒョンの宿舎に昔の宿舎の面影はなくて、当たり前だけど〈直に〉見ると新鮮で。間近に居るヒョンの存在に神経が集中してしまうから、リビングのあちこちを見て凌いだ。左手にあるクッションの布地を触ってみたり、右手にあるダイニングテーブルの硬質を確かめたり。


「何か汚れてるか?」

「あ、いえ……昔の家具とかは、もう捨てたんですか?」

「事務所が入れ替えてくれた。さすがにこの宿舎には大きすぎるから」

「そうですか……」


まだ残ってるかもと期待してた、デビュー当時から使ってたあの広いソファーを懐かしく思う。
ずっと覚えてる。きっと、これからも。
ユノヒョンと口付けを交わして決意できた。僕もひっそり誓った記憶の場所だから。


「もう……あれだけで生きていけます……ヒョン、ありがとう」


キッチンに入ったヒョンに聞こえないようにそっと声に出して、届かないからこそ届けたい言葉を発した。冷蔵庫を物色する背中をまた昔のように目へ焼き付けながら。


「お♪チェさん鍋作ってくれてる。これ食べちゃおうかー」


肩幅の広いがっしりとしたこの背中にだけ、語りかけてきた。
素直に。本心を。


「水いるか?」

「…だからっ!別に自分でしますから!」


ひょこっと白い歯を覗かせて微笑みかけてくれるこの正面には憎まれ口ばかり叩いてきた、自分でも認められなくて。その度がっかりした顔ばかりさせて、それを見る度辛かった。


「……今のはチャンミナっぽいな」

「あ、だって…、さっきいらないって言ったのに聞くから……。すいません、先に一眠りしてきます。ベット借りまーす♪」

「昨日ソファーで寝ちゃったもんな。いいよ、着替え持っていってやるから先行ってな?」

「は、い」


でも今は、下手くそで、捻りきった僕じゃなくて、まだ他の星からきたチャンドルでいたい。チャンドルなら、ユノヒョンの優しさを素直に受け取ったっておかしくない。

キュヒョンと打ち合わせするために事務所へ出向いた僕は、猛烈な吐き気に襲われて意識が飛んだ。次に意識が戻ると、僕の体は『チャンドル』に支配されてた。パニックになって、ここは自分の世界じゃないって慌てふためく体。流れこんでくる『チャンドル』の思考。『チャンドル』の世界。ユノヒョンと並んで愛し合って夢を追いかける理想郷。

僕は意識だけの中で悟った。


(ああ、この『チャンドル』は僕が作り出した夢なんだ……)


別に異世界の自分が迷いこんだわけじゃない。僕が勝手に作り出した単なる別人格。現実に抗いたくて、理想の自分を作っただけ。
現実の僕は、もうすぐ事務所を辞める。ギュライン名義で曲を作って、終わる。


「……初めから2人でやっていこうって、そういう選択もできたのかな……」


あの時はできなかった。
もう、後戻りはできない。

『チャンドル』の時にはズカズカ入れたヒョンの自室。でも僕は、ゆっくり、丁寧に扉を開けて。少し緊張してる。
中は相変わらずユノヒョンらしくて、好きなものとどうでもいいもの、一緒くたになって主張しあってる。昔からある可愛いらしいぬいぐるみが隅で鎮座していたり、新しい上品な置物が傾いて忘れられていたり。


「……あ、」


CDジャケットの一部分に覚えがあって手を伸ばした。ヒョンの買ったものを盗み見みてダウンロードした歌の1つ。

ユノヒョンの好きなものを好きになりたかった。
好きになりたかったものが本当に好きになった。
密やかに、胸いっぱいの喜びを感じられた。


「お、それチャンドルも好き?チャンミナも好きで聴いてたな」


後ろから、さっきチャンドルと家政夫さんで洗いあげたルームウェアを持ってきたであろうユノヒョンの声。


「……へー。うん、僕も好きです。ヒョンも?」

「そう。何度かチャンミナの聴いてるヘッドフォン取って聴いたことあるんだけど、けっこう趣味が一緒でさ。一緒に聴こうとしたら嫌がられたけど、一緒に聴いて盛り上がりたかったなあ」

「……突然ヘッドフォン奪われて聴かれたら、嫌な人だっているでしょう?」


後ろめたい盗み見から口ずさむ程好きになった。そんな曲なら、尚更。


「でもそうですね、僕はサビもいいけどイントロの高音部分が好きです」

「俺も!あと間奏部分も飽きないで聴けるんだよな♪」

「そうそう!そこもマジでいいですっ。これでギターに興味持ちました♪」

「そうなんだっ。一緒に聴く?今」


だけど今僕はチャンドルだから。気に咎めることなんてない。素直に。表して。


「はい、聴きたいです♪」


短い夢の続きをみよう。
















「えっと、、」

「どの個室かまでは覚えてない?」

「うーん……、キュヒョナに初めて連れてきてもらったお店なので……」


という設定らしい『チャンドル』が意識を飛ばした店が僕も来たことない居酒屋なのに、知らない店の名前も雰囲気も『チャンドル』の記憶には残ってて、ちょっと気味が悪い。


「え、ウソ…っ、、」

「ユノ!!…と、、……チャ、チャンミン…!?えええ!!?」


エントランスで店内地図を睨んでいたのが悪かった。サングラスをかけてもフードを被っても、気付く人は気付く。そもそも居酒屋の個室をあーでもないこーでもないって選ぶ人間自体目立つ。
完全にミスった。折角、、だけど……。


「ユノヒョン、やっぱり今日は辞めときましょう。片っ端から個室の予約して来れば、いつか当たるかも」

「えー、折角来たんだからいいじゃん。片っ端から探してくなら今日とりあえずどこかに入ってみろよ。店員さんすいません、じゃあここの個室で」

「いや、でも。周りが気付きだして…」


紙面を適当に指指して、案内してくれる店員さんより先に歩きだすユノヒョンは軽やかで、格好良く。そして、ドジっ子。


「……ヒョン、そっち逆方向です!」

「……あれぇ~?」

「ぶふっ」


本当に敵わない。笑って店の中に進むしかない。
頭をぽりぽり掻きながら、今度は大人しく店員さんの後についていくユノヒョン。僕はそのヒョンの背中について歩く。

とても、好きだった。
特にこういうところが。

友情や憧れという枠だけでは囲みきれない域だった。キュヒョンだけには何度も「僕、おかしい?」って相談した。本気で悩んだ。

そうして、やっぱり今も。


「チャンミナと2人きりでご飯なんて何年ぶりかな?昼からすごい楽しみにしてたから嬉しい!!」

「…っ」


とてもとても、好き。
毛細血管が膨張する。赤くなるのが自分でも分かる。


気付いたんだ、なぜ認めたくなかったのか。

同性だからじゃない。
報われないからじゃない。

この人に迷惑をかけたくなかったから。


「……チャンミナは、ここのチャンミンですよね?今の僕はチャンドルですよ」



嘘をついても



「……そっか。そうだよな?」



傷付けても



「どうせチャンドルですけど、いいです?お腹も空きましたし♪」

「もちろんっ」



世界中を敵に回しても












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片割れ chap.9 番外編#11 チャンミンの平行世界











「……それも、記憶のある『僕』宛てですか?」

「そうです♪」


屈託なくウインクされて最後までにこやかにチェさんは帰って行った。


「……お茶目なおじいさんだな、、ってあれ……」


あんな風に年を重ねられたら素敵かもしれない。そう呑気なことを考えていた自分にはっとした。


「……慣れてきてる…?」


さっきこなした家事で青色のシャワーを流したのに違和感がなかった。空の色を気にしなくなった。

っていうか、空の色って緑色だよね?


「え、、違う……えっと、何だっけ……青!そうそう青色!青い空!」


動悸が早くなるのを押し込めて、手当たり次第声に出して確認してみる。


「TOHOSINKIを、2人で再始動して。ユノとずっと2人でやってきた。…うん、で。ユノはパートナーで。恋人で……雨やシャワーに色はない。透明だ透明……」


戻れるよね?
戻れない時はここが僕の現実になるのか?


「……い、嫌だ嫌だ嫌だ…」


そんなの絶対嫌だ。どれだけユノに並ぼう思って頑張ってきたんだ。
なかったことになんて絶対させない。

スマホを取り出すと、キュヒョンから連絡が来てた。だけどそれどころじゃない。
文字の入力ができないだろうと検索ワードを音声入力して、発音よくキーワードを語りかける。


「ぱられるわーるど、たいけん」


スクリーン上の検索結果をスクロールして。自分と同じような体験をした人はいないか、その人はどうやって戻ったのか知りたい。


「へ……、?」


何となく。何となく、気のせいかもしれない、けど。

『オカルト としゅくう パラレルワルード / ほかの じうくを たいけんてしきました』

『へいうこせかいに いってたき なにか しつもん ある?』


「……」


文が、読みやすくなってる気がする。


「……。…ふっ!!」


押し潰されそうな気持ちを断ち切るように、短く息を吐き出して。広い宿舎で1人、小さなスマホを握りしめて。

読むのが怖い。読めるのが怖い。でも読まなきゃ情報が掴めない。

単に慣れただけか。
それとも僕が『僕』に同化してきたのか。

ぞっと悪寒が背筋を駆け抜けた僕の耳に玄関を開錠する音が届いて、何も考えずに迎え出た。まるでヒーローに助けを乞う、てんで無力な負傷者みたいに。


「ユノ!僕早く戻る方法を見つけたい!なんだか感覚がおかしくなってきてるんですよ…っ。どうしよう、どうしたら戻れるだろう!?」

「お前、辞めるつもりなの?」

「へ?」

「マネヒョンから聞いた。それからスペクトラムがTOHOSINKIとしてやっていくことになるだろうって。この前やっと会う約束できたのは、それを俺に言うためだったの?」

「……待って待って、僕はチャンド…」

「TOHOSINKIは?」

「だから…」

「やれよ!!!スペクトラムの奴らに任せてチャンミナ本当に平気なのか!!?」


『ユノ』は感情を高ぶらせて、僕と『僕』の区別がついてない。
急速に頭が冷静になって、ユノを宥めるために、だから僕はここのチャンミナじゃない!って、言ったつもりなのに声が出なかった。口が動いてない。

……。おかしい……。



経験したことのある

この不気味な感覚は……




「そんなに代わってほしい奴がいるなら、案外代わった方がうまくいくんじゃないですか?僕にはそこまでの情熱はありませんから」

「…………チャ、ミ…」









デタ







ユノの固まった顔と、僕は向かい合ってた。
まっすぐで前向きで、いつもストレートなユノが息を飲んで言葉を失ってる。

あのユノが……


「…………。。……本気?」

「……っ、……」


なんでこんな事言えるんだろう。
なんでこんなにユノを傷付けるんだろう。

全部『こいつ』のせい。


全部、こいつの……





目の奥の脳を引き摺り出して叩き付けてやりたい。言ってはいけないことを言ってしまった『こいつ』を。
ユノの前で言った瞬間に本当に終わりなんだよ!
情熱がない、なんて。


「……吐、く…っ」

「え?」


『こいつ』をぶん殴ってやりたい。
腹わたが煮えくりかって逆流して込み上げてきて。


「チャンミナ!!」


視界が霞がかって黒く染まる寸前、

ユノの僕を呼ぶ声だけが、光った。



















暗闇に突き落とされた。


他には何もない。

身を捩って辺りを見渡すと、後ろに振り向き様の僕を映した姿見が背後にそそり立ってる。迫るように近い。

光の屈折率を目が認識して、鏡という物体を大脳皮質が認識する。そこでようやく暗闇の空間だと色覚識別した錐体細胞が錯覚を起こしていることに気付いた。

ここは、真っ白な場所だ。

僕と鏡だけが在る。

反射された僕を見ていないと黒なのか白なのかすら忘れてしまいそうで、僕ははやる気持ちで鏡の中の自分と向かい合った。

目の前の僕はやっぱり僕で、


「……お前……っ、、」


『僕』だった。
坊主頭でジャージに袖を通してる。ずぶ濡れの体は青く染まりきってる。膝小僧には潰れた生卵らしき黄身と殻がこびりついているのに、払い落とす気配もない。異様な姿の僕は何が面白いのかくすくす笑ってるだけ。


「……お前何がしたいの?」


神経を逆撫でする僕の薄ら笑いはそのままに。
俯いて視線を斜めに走らせ、目線の合わない僕。何も言わない。全てから逃げて、それでもユノに守られている僕。


「……お前なんかに、ユノは勿体無い」


何も言わないくせに、笑いを堪えるように嘲笑う僕。こんな自分のくせに、皆から支えられて迷惑をかけて。


「あり得ねぇ……っ、」


こんな僕なら、無くなってしまえばいい。
こんな自分いらない。
お前なんかいらない。


「全部お前のせいだ!!!」


絶叫は割れてしまって、掠れた。喉を痛めたのかもしれない。でも止まらなかった。止めたくもない。


「お前のせいだ!!!お前のせいで全部おかしくなってんだ!!!」


鏡台を拳で叩いても感覚はない。痛いと感じないから何度もぶち当ててヒビを入れて、そして亀裂は広がっていって。


『そうだ!お前のせいだ!』

『あんたのせいよ!卑怯もの!』

『ユノがかわいそうだわ!』


鏡を傷付ける度に、どこからか不特定多数の声が僕の叫びに火勢してくれる。やがて煩いほどの騒ぎが巻き起こった。
暴動のような呪いのような訴えが、どうか僕に届いて欲しい。憎しみが伝わればいい。
振り下ろす腕を止めて相手を見た。


「あまりにも未熟で、こうすることでしか守れなかった」

「え……」




ひび割れた僕の顔が歪んでたのは、ガラスのせいか、本心か。





















「チャンミナ…!おい、大丈夫か!?」

「……は、い…」


僕の頭はユノヒョンの腕にすっぽり支えられて、横たわってる僕の体はヒョンの膝に支えられてる。


「水いるか!?救急車呼ぼうか!?」

「……いや、、ちょっと立ち眩み、みたいで」


この腕を振り払ってはいけない。
僕は成りすまさないといけないから。

跳ね上がる胸の鼓動をしっかりしっかり抑えつけて、ユノヒョンとこうして居ることを何でもないことのように振る舞えてますように。

夢の続きを見れていますように


「……ユ、ノヒョン…、よく聞いて下さい…」

「……いいよ」


貴方を呼ぶ声が、震えてませんように


「僕の今の意識は、この世界の僕じゃないんです。他の場所から飛ばされてきたチャンミンなんです。だから今までユノヒョンから離れてた僕の意図は、今の僕には分からないし、ここでやっていく気持ちはないんです。なんせ僕はユノヒョンと一緒にやっていこうって選択した人間だから」

「……あれ!?あ、…そうだったよな?悪い……なんか、混乱して帰ってきたから俺……チャン、ドルに聞いても、分かんないよな」

「……」








最後の少しだけ、


『チャンドル』になれますように





「……でも、もしかしたらもうすぐ戻れるかもしれません。夢…いや、この世界に迷いこんだ時もこうやって吐き気がして倒れたので」

「あ、そうだったな?じゃあ、、」

「案外気ままに待てばいいんじゃないですかね?はははっ」

「お前なぁ…。でも目の前で見てたけど、突然倒れるから本当心配した。大丈夫か?もう辛くはない?」

「……っ、」


夢を見た。

僕が僕じゃなくなる夢。
他の世界からやってきた僕は、怖くて不安で現れたユノヒョンに思わず飛び付いて助けを求める。その僕は実は他の世界のユノヒョンと2人でTOHOSINKIをやっていて、なんと愛し合ってもいて。
このユノヒョンからは甘えん坊のチャンドルと呼ばれることになって。

だから今、心配そうに僕の髪をすくユノヒョンの手に、思いっきり甘えたっていい。いや、甘えることが自然なんだ、大丈夫。これが最後だから。頑張れ、僕。


「?顔赤いよ?」

「えっ……と、、」





たった一瞬、目が合うだけで






「その……、」










熱くなる






「……苦しくて、、」

「へ!?どこだ!?」







たった一箇所、触れるだけで



胸に










「……いや、大丈夫です。ちょっと休めば」










甘い痛みが、走る






「そっか…。もし夜動けそうになったら、チャンドルが倒れたっていう店に行かないか?同じ場所で同じ状況になれば戻れるかもしれないだろ?ダメでも2人でご飯食べて帰ってくればいいよ」

「……2人で…」

「うん」


何年も誤魔化そうとして、誤魔化せなくて。
触れると確信してしまいそうで、触れたい衝動を憎んで。

羨望と嫉妬
最愛と憎悪

この気持ちに名前はつけちゃいけない。

間違っても、


「お願いします!やっぱりユノヒョンだと安心するので助かります」

「良かった。チャンドルの世界のユノじゃないけど、安心してヒョンに任せて」


恋だなんて、名付けちゃいけない。

やっぱり伝えられない。


「じゃあ……、ビールも焼酎も飲んでいいですか!?すんごく飲みたいです♪」

「分かった!何でも奢ってあげる♪でもあんまり飲み過ぎないようにな?」


この人に明るい未来がくるならそれでいい。
だから今だけ、夢の夢へ。


「あ~今もお腹が空いたし眠いです!ヒョンの、…部屋で寝てていいです?」

「ぷっ。チャンドルいいよ♪」


久しぶりに向かい合って見るヒョンはやっぱり輝いていて。くしゃっと猫みたいに目を細めて笑うと、艶やかな煌めきが散らばっていく。

自由な可能性。この人は僕じゃない他の誰かと力を合わせれば、新しい巨大な成功が待ってる。


「……今度生まれ変わったら、ちゃんと『チャンドル』になりますから……」

「ん?じゃあテプンと一緒に飼ってやるからな♪」

「……あははっ!あざーっす!」


今度生まれ変わったら、泥を被ったヒールなんかじゃなく、ちゃんと『チャンドル』になりますから。


















僕も貴方の隣に居たかった















明けましておめでとうございます!!!
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