はじめまして

東方のお二人が大好き!りょう(ゆのっぽん)と申します。

好き過ぎて、いろんな妄想させてもらおうと思っとります。

お二人の絆はどんなリアル、時代、背景でも繋がっている。そんな気持ちが表現できればと強く思います。

ただの私の勝手な妄想です、実在の方々や会社様、イベント等には一切関係ありません。時系列もバラバラです。このブログでのみ楽しんで頂くことを心よりお願い申し上げます。


当ブログはホミンホのお話になります。(主にホミン)
BL表現出てきます。18歳未満の方、気をつけて下さい。
昔のメンバーの方々には、一切興味がありません。
なるべく気をつけていきますが、気分を害されるという方がいらっしゃないように、閲覧は自己責任でお願いします。

どうか、一瞬でも誰か様のお二人の帰りを待つ暇潰しになりますように。
私も楽しみます!


りょう(ゆのっぽん)





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片割れ chap.12 #10









______Y.side______






呪文をかけたんだ、自分に








気が狂わないように


夢を追いかけ続けられるように







強く


















二度と解けないように




















「……。チャンミナ?」


自室を出てリビングにざっと目を走らせてもチャンミンはいない。人の気配はあるような、ないような。よく分からない。潜んでる。しんとしてる。窓の外を眺めると、今日の日本は平和な青空が広がっている。


「おい、どこだ?」


チャンミンの寝室を覗く前に誰もいない空間に向かって問い掛けると、キッチンから望み通りの声と姿が返ってきた。


「はい、ヒョン……」

「お。ちょっとおいで」


チャンミンはグレーのパーカーとスウェットの格好で、水を注いだグラスを持ったまま言い付け通りにやってくる。短い金色の髪の毛にぼわっと、寝癖をとばした幼い印象の目元に日に日に濃くなるくまが可哀想。人からしたらメイクスタッフでもない限り僅かな影だと感じるかもしれないけど、俺だからよく見える。


「また寝れなかったのか?」

「…さあ……自分でも。。寝てるのか寝てないのか分からなくて……」


その顔に手を近付けても何の抵抗もしなくて、スキンシップが苦手なチャンミンにしては珍しい。くまの刻まれた涙袋を人差し指でそっと押すと、柔らかなチャンミンの皮膚は負荷なく変形した。でも斜め下を見つめる眼球は反応しない。彩りのない光だけを吸収して単純に反射する、大きなガラス玉みたい。


「おい……しっかりしろよ。…どうした?」


俺の声だけがやけに室内で響く。
何か悩みがあるの?だったら相談してほしい。
俺はチャンミンが心配で呼びかけたのに、チャンミンは憐れむように黒目を持ち上げて俺に焦点を合わせた。
違うよ、ソウじゃないだろ。チャンミンが何を考えてるか見ただけで分かるから、先回りして答える。


「俺は大丈夫だよ。言ったろ?寝れないって言っても、これからの活動にワクワクして寝れないだけだし。微熱が続いてたり食欲ないのもそれと同じ原因なんだと思う。なんか、じっとしてられなくて。遠足の前の日の子供みたいだな、俺。笑」


ずっと昔から一緒に居たんだ。
チャンミンの気持ちは、見ただけで……


「ソウじゃなくて…ほんとに僕たち…何もなかったですっけ?」

「は?何が?」

「…………いいえ、…キモチワルイコトイッテスイマセン……ヒョンが楽しそうで、良かった……」

「……」


薄く微笑むチャンミンの気持ちが、分かるようで分からない。目の前に居るのに分からない。危険な。違和感。胸がざわつく。ソウじゃないと。音のない静寂が警鐘を鳴らす。


「なぁ……俺たち……」


でも、

























呪文をかけたんだ、自分に。











「……。そうだっ、午前中は久しぶりに俺たち二人だけでカムバックの相談しよう!マネヒョンも打ち合わせでいないし」


何もなかった。俺たちは今まで通りだ。


「僕は、、帰国する前にもう一回ジム行ってきます…」

「今日も?今日はもう昼過ぎに出発するんだから。帰ったらすぐ忙しくなってゆっくり話もできなくなるぞ」

「でも…」

「ワールドツアーのリハも始まるだろ?舞台監督から色々参考になりそうなライブDVD借りてるから一緒に観よう?良いところは取り入れたいし、チャンミナの意見も聞きたいし。な?」

「……はい」


いつも眠たいって、十分な睡眠が取れないと体調に不安を訴えるチャンミンだから。今はかなりテンションが下がってるはず。俺が上げてやらなきゃ。だって俺は事実絶好調だし。弟を純粋に守りたい。


「大丈夫だよ。大丈夫、チャンミナ。うまくいく。お前はすごく頑張ってるから。ヒョンが保証する。何かあっても必ず良くなる」


そう言いながらDVDプレイヤーを起動させてテレビをつけた。日本の爽やかで賑やかな朝の情報番組が始まってリビングは急に活気を取り戻した。振り返って何気なくチャンミンに聞く。


「悩みがあるなら言ってみな?」


すると大きな瞳はみるみる涙に濡れてきらり、それはとても綺麗な光彩を放ったけど。チャンミンがまるで俺をあやすように見当違いなことをまた言い出すから、そこで輝きは霞んでまた消えた。


「ヒョンも苦しまないで良かった……」


良かったって何だろう。
俺は何も苦しんでない。底なしのやる気に燃え上がっているっていうのに。よく分からない。
最近ずっとこうだ。チャンミンのことが分からなくなって、だから苦手意識が芽生えてしまってたんだ。
もっと分かり合わないと、俺たち。


「そんな風には感じてないけど、俺は…今、正直怖い。今回の活動は去年の再始動のブランドイメージをもう一度直球でアピールしていくしかないし、もしそれが抵評価されたらって考えると、、怖い…。でもその時は真摯に受け止めて、さらに練習してまた新しいアプローチの仕方を見つけなきゃって思ってる。俺に他のことを考えてる暇はない」

「あんたは本当…そればっかりだ。…でもだから。だから僕は……」


チャンミンがついに溢れてしまった涙を笑いながら流すから、急いで駆け寄って掬い取った。とてつもなく胸が締め付けられて。見てられなくて。


「……何?『だから僕は』……?」




今まさに、苦しくて。







「“今のユノヒョン”についていきます」

「…」


そんなこと言われたら、もう苦しいなんて言えない。なんで苦しいのかも、うまく説明できないのに。格好悪い。兄として。


「…おう!信じて。チャンミナと二人で名前だけだけど、それでも一応俺はリーダーだから」


これが正解。迷いを拭い去るように少し強引にチャンミンの手を引いてDVD観賞を勧める。


「TOHOSINKIをより輝かせようっ」

「ですよね」


反動のせいか。


グラスの水がボダッと、溢れた。





























______C.side______







これが













僕の罰か








「チャンミン。ユ…、ユノの様子……」

「……分かってます」

「…っ。あいつ絶対おかしいぞ…っ…危ない、アレは……」


金浦空港から帰る車の中で、マネヒョンは困り果ててた。でも何が困るっていうんだろう。


「記憶喪失、の一種、なのか…?」

「……知りませんよ。でも僕とのことは綺麗さっぱり抜けてるみたいでしたね……」

「とにかく、、ユノにはうまく言っておくから日本の宿舎は別にしよう。お前が辛いだろ!?次に来日するまで時間もあるから用意させておく…!」

「…。いえ、このままで。ユノヒョンがそうしろと言うなら僕はヒョンに従います。変に刺激してユノヒョンの夢の邪魔になることまで思い出すような変化をつけないで下さい。僕も活動に集中します。どうせ彼女もいませんし」


これが最良だ。全ての都合が良い。


「やっぱりお前……。はぁ、っ、、……しかし、、ユノも、いつまで経っても食べないし寝ないし……顔つきはどんどん悪くなってるし……、、でも…っ………お前達を…」

「元サヤに戻ろうなんて思ってません、安心して下さい。マネヒョン、大丈夫です。どんなコンディションでもユノヒョンは魅せてくれます。何があっても必ずステージに真摯に向き合います。それは僕も同じです。このまま突き進みます」


もうちょっと。

もうちょっと頑張れ、僕。


「っ、大丈夫なのか本当に…!?」

「ユノヒョン、疲れてそうだけど楽しそうですよ。ただ連絡を取って欲しい方々がいます。その方達に何気ないサポートをお願いして下さい。いいですか、あくまで然り気無くと念押しして。ユノヒョンは心配されるのを嫌がります。力を抜いてと言っても抜かない人です。いつも全力投球で夢追う姿が格好良くて、だから僕は男だけど恋しました」


矢継ぎ早に言えることを言い切る。



また、





過呼吸になりそう





「チャンミン、すまん…っ!!」

「謝って欲しいんじゃないんです。ユノヒョンが俺を信じてって言ってました。だから僕たち信じましょう、そういう事です」


呼吸が浅い。うまく息できない。ヤバい。
夕焼けの空はこんなにも清々しいのに。闇の気配。ぐんぐんと。視界が狭くなる。
足掻かなければ。今度こそ溺れ死ぬ。
死ぬ訳にはいかない。TOHOSINKIがある。


「、っ、僕もさらに頑張ります…!すいません、家帰る前にジム寄っていきたいです、、。体動かしたい…!」






































そこからどう到着して、しっかりウェアに着替えて運動してたのか。





「……ミン、おい!チャンミン!!」

「………ん…」

「何時間バイク乗るつもりだ?物凄い汗だぞ、せめて水は飲んで。俺が心配だから」


額に冷たくて気持ちいいキラキラしたものが当たってた。ペットボトルだった。透明な。青いキャップの。


「チャンミン、色々大変だったみたいだな?」

「…………シウォニ…ヒョン……」


ミネラルウォーターを差し出して傍らに立っているのはシウォニヒョンだった。笑顔で満ちた穏やかな、ユノヒョンによく似た優しさの灯るその慈愛で。


「でも大丈夫。俺が居るよ」

「シウォ…、っ、、、」




僕はもういっぱいいっぱいで。






一人ではもうとても立てなくて。







もう無理。







もう駄目。誰か居ないと、












「おいで、チャンミン」






誰か居ないと、
 

ユノヒョンと同じ夢をみれない。













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片割れ chap.12 #9









______C.side______






僕は今、





どこに立っているんだろう。










「チャンミン……ごめんなっ…、、」


マネヒョンがさっきから僕のために一頻り謝ってむせび泣いてくれてる。マネヒョンは何も悪くないのに。


「俺が……俺は本当……何も…っ、分かってやれなくて……チャンミンを一人で苦しめたな……、、」

「そんなこと、ないですよ…」

「…っ、お前って奴は本当に…っ、」


ユノを諦められない僕が悪いのに。
僕の想いがこんなにも周りの大切な人達を悩ませ怒らせ泣かせてしまう。きっと僕が未熟だから。


「……マネヒョンはいつも……」


僕たちのことでもう誰も苦しまないで。


人の痛みが分かる、大人に早くなりたい。


「僕たちのことを一番に考えてくれていて…僕たちのこともお互いのためだと思って尽力してくれたんですよね……こんな格好いいマネヒョン、滅多にいません。自慢のマネージャーです」


幻想は所詮幻想で、捨てなければいけない。
ユノとはもう戻れない。認めなければいけない。
果てしない闇の中だとしても。


「俺のことなんかに気を使うな!もっと自分を労って…っ、俺は結局何もしてやれない木偶の坊なんだから怨み言でも悪態でも…何でも吐き出せ!頼むから…!これ以上自分を追い詰めるなっ」


大丈夫。思い出さえあれば立ってられる。
立ってさえいれば夢をみれる。
ユノ“ヒョン”とTOHOSINKIを続けていける。

ただ闇のおかげで、


「木偶の坊なんて…。僕はマネヒョンを頼りにしてます。だから頼んだじゃないですか。僕の言動がおかしい時は今みたいに教えて下さい、助かりました。自分じゃもう分かんないんです、本当に」

「チャンミン…!」










逆さに立ってるのか
真横に立ってるのか
正常に立ってるのか、
どこにどう立ってるのか、分からないけれど。

















「何してんの…?」





「!ユノ…っ、」

「ユノヒョン……」


声のした扉を振り向くとユノヒョンがこちらを覗きこみながら中へ入ってくるところだった。迷いなく僕に近付いてくる。僕は距離感が掴めなくて後退り。それなのに構わず手を取られて動けない。


「チャンミナ、大丈夫か?体調悪いだろ?今日はもう食べに行かずにすぐ宿舎に帰ろう?」

「や、でも、鍋…」

「また明日にでも行けばいいだろ。マネヒョン、今日は帰ろう。支度頼む」


無遠慮に僕の顔へ触れてくる掌を避けようと横に向いても追ってくる。掴まれて引き戻された目の前に心配そうなユノヒョンの鋭い瞳。頬にユノヒョンの体温。手首にユノヒョンの力強さ。睫毛がユノヒョンの指先に当たってしなる。近い。感じる。ユノそのもの。恋しくて。


「っ、マネヒョン!」


恋しくて。


認めなければいけない。
もう終わったことなんだ。


「こっちの、日本の宿舎もユノヒョンと別々にしてもらえませんかっ」

 


血の涙が溢れても闇ならどうせ分からない。




「はあ…?なんで。そんな必要ないだろ」


苦虫を噛み潰したような顔のまま僕を見つめるマネヒョンより先に、ユノヒョンが少し怒って問い返してきた。いや、本気で苛立ったのを抑えて対応した。そんな感じ。そういうエネルギーの流れが僕には見えて、ますます怯みそうになるのを堪える。


「…、、必要あるでしょ。何がどうあれ僕たち付き合ってたんですよ。別れても同じ宿舎にいたら、お互いの情に流されてすぐヤっちゃいますって。そんな微妙な関係、ユノヒョンも嫌でしょう?」

「…………、は、あ…っ?」


ユノヒョンにそうならない自信があると言われても、僕は自信ない。そういう目で見ないと誓われても、僕は誓えない。ユノヒョンが正しい幸せへと向かう時、僕は絶対誘惑する。行かないでと縋りついてしまう。
身体だけでも繋ぎ直せないか。もう一度、もう一度。その内また求める。一瞬だけ。この時間だけ。一日だけ。時間までも。心までも。幸福までも。不甲斐ない僕はまた繋ぎ止めようとするから。全部水の泡になる。


「な…何言ってんの、お前……俺たち男同士だぞ…っ」

「、、、え…?」







初めは聞き間違えかなって、






思ったほど。




次に芝居かとも思った。


まともに見捉えたユノヒョンは目線を逸らして狼狽えながら、でもはっきり言った。捕らわれてた手も頬も顎もすでに自由になってる。


「ヤるなんてできるわけないだろ。それにチャンドリは大事なメンバーで弟なんだから、今までもこれからもそんな事絶対俺はしない」

「……は、」



思い出だけそっと。





二人の奥深い所で大事に





大事に持って……あれば立て…








「そもそも好きになったことも付き合ったこともないだろ?俺たちソッチじゃないんだから。ずっと本当の兄弟みたいに暮らしてきたのに、今さら心配する意味が分からない」

「…………」


闇は闇でも











白い闇だった





真っ白い、白紙の闇





二人の思い出はどこ?見えない。
ユノがいなければ僕もいない。
誰もいない空っぽの思い出。




「ユ……、…ユノ…?俺は、、そういう仕返しみたいなこと言う奴は好きじゃない…っ。お前らしくない、どうした…?なあ?」

「マネヒョンは黙ってて。チャンミナはモテるし年頃だし、韓国ではプライベートな時間を楽しみたいのは分かるけど。でも日本にいる時は目標に向かって無駄は省けよ。俺と別居するのは賛成できない。ヒョンは許可できない」



どうしよう














立てない






















______Y.side______






突然チャンミンが俺の見た夢そのままを言うから心臓が飛び出るくらいビックリした。俺がチャンミンを好きになってチャンミンがそれを許して……あんなとんでもない内容を俺はもしかしたら寝ぼけてる間にでも誰かに、もしくはチャンミン本人に喋ってしまったんだろうか。だから不安がってるのかもしれない。


ナンデモシテアゲタイ


この妙な感情は違う。現実じゃない。
俺がしっかりしなくちゃいけない。
日本でも別々に暮らすのは逆にチャンミンの不安を煽るだけだ。今のギクシャクした距離も解消されない。


「チャンミナ、宿舎に帰ろう」


そう思い直して、ぼおーっと焦点の合ってないチャンミンの肩を揺すりながらなるべく笑顔で話し掛けた。マネヒョンには聞こえないように。人前で堂々とは、やっぱり男同士だし照れくさい。


「お前がイヤならさ、やっぱりキスも止めよう?な?」

「……キ…?」

「『二人で前を向いて歩いていける方法』。済洲島で昔、二人で決めたろ?」


そういえば何年もしてない決意表明のような男同士のキス。何でだっけ。確か。。
もう決心はできたから必要ないってチャンミンに言われてからか。懐かしい。
そして俺と同じこと呟くチャンミンにホッとした。


「…ぁ……懐かしぃ………ところで最後のキスは…いつでしたっけ……」

「えーと、、、うーん、、忘れたっ!あははっ」

「覚えてない…です……?」

「あ!二人で初めてステージに立てた時?か?」

「……」

「もうわざわざあんな事しなくても、俺たちはしっかりした信頼関係があるんだから。これからもヒョンを信じて、ついてきて、チャンミナ」

「はい……」

「マネヒョンより俺に頼れ。絶対守るから」

「はい……」

「これからも一緒に住むよな?」

「はい……」

「良かった」

「はい……」


良かった。
チャンミンの素直さに自然と笑みが漏れた。






良かった。



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【後編】貴方の居場所。(貴方のために。2)

50000拍手
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(注意書)こちらは「貴方のために。」の続編です。カテゴリー[しょーとしょーとすとーりー]にございますので、宜しかったらそちらを先にお読みになってからお楽しみ下さい♪

※BL表現です。苦手な方はご注意下さい。ホミンちゃんです。















______C.side______






「こんばんは!シム・チャンミンさんへお届けものです」


それが溌剌なピザ屋の第一声。僕は顔をしかめてしまった。いきなり名前を呼ばれて、怪しいことこの上ないから。それに廊下には他にも何人かいる気配。
さすがに警戒した。でも男は笑顔を消さない。


「シーフードピザとスペシャルピザになりますっ。あとパスタに唐揚げに、ポテトもごさいます」


男の持つ大中小の箱からは確かに食欲をそそる香り。それらに気をとられていると、男と入れ替わるように今度は厨房白衣を来た男性も現れた。


「こんばんは。餃子と酢豚と野菜炒め、チャーハンにラーメンをお持ちしました」

「え、あ、ちょっと待って下さい。じゃあ順番に運びますから…」

「食事のセッティングは私達でさせて頂きますので。チャンミンさんはただ、チョン・ユノの隣に居てあげて下さい」

「……はい」


さっきユノの部屋で見てしまったのと同じ、パールレッドのバルーンの束を掴んだピザ屋のまた別の小柄な女性が登場してようやく気付いた。これもユノのサプライズなんだと。
次に思ったのは今日が何の日かということ。何かの記念日を僕はうっかり忘れてるのかもしれない。

ぐるぐる。ぐるぐる。あれでもないこれでもないと思い浮かべながら宅配業者??を引き連れてリビングに戻ると、神妙な面持ちでソファーに浅く腰掛けてるユノの姿。前にはシャンパングラスもすでに用意されてる。


「ユノ……」

「チャンミン。こっちおいで」


ユノは僕に気付くと柔らかく微笑んで手招きした。あっという間に料理が並べられていくローテーブルの上や、次々運ばれる大振りのリボン紐を垂らし浮いているバルーン束の配置場所をあちこちに指示しながらにこにこ楽しそうに見てる。僕は大人しくユノの横に座って半ば呆然としてた。
シャンパンが静かに開けられグラスに注がれる。料理の邪魔にならない程度の小さなキャンドルが机に点在して灯った。部屋の蛍光灯はそっと消され、「それでは素敵な夜をお過ごし下さい。失礼致しました」と、彼らの気配は去って行った。オートロックの玄関の向こうで何かはしゃいでいるような声と共に。


「あいつらな?実はみんな友達。飾り付けとか宅配とか全部手伝ってくれたんだ。だから誰にもバレないよ」

「あ…あー、そうなんだ……」


秘密の香り。仄かに照らされたユノの横顔。


「どう?ビックリした?風船の飾りもかわいいだろ?」

「…凄いっすね……ちょっと今ビックリし過ぎて言葉にならない、けど」

「あはっ。良かった♪乾杯して食べよう?」


促されてグラスを持ちながら、ここは正直に聞かなければと思った。


「ねえ。……今日、何か記念日でした…?実は僕……何も思い、つかなくて……」

「いいや。何も記念日でもない。何の日でもないし、照れくさくて普段言えないけど。チャンミナには毎日感謝してるから。それを伝えたくて」


それからユノは、「いつもステージの上でしか伝えられなくてごめん」とグラスをちんと合わせて飲み始めた。


「……。頂きます」


僕以上の




幸福者はいるだろうか





カメラや皆の前で散々感謝してると伝えられて、それこそ一番だと宣言されて。このように好きな食べ物に囲まれて豪華で大好きなお酒も用意されてどっぷり甘やかされる。後にはユノが1人頑張って膨らませたのであろうパールレッドに染まる部屋も待ってる。飾られたバルーン束とは違う、ベッドの下でばらばらと揺れる何十個の宝玉たち。僕に隠れて一生懸命肺を広げて息を吹き続けたユノの姿を想像すると、ちょっと泣けた。


「……。じゃあ…まずはラーメン!伸びちゃうっ」

「あ、俺もちょっと欲しいっ」

「んん~♡これ美味しいよ~♡食べて、ユノ食べて」

「おいし!」

「それとぉー、次はピザっ。ユノどっちから食べる?」

「お前の好きな方でいいよ」


いつも通りの賑やかな会話なのに、微かな光の中の食事はどこか淫靡な色気を孕ませる。秘密じみていて。満腹になる頃には、どんなに明るく喋ろうと。


「あぁー、もうっお腹いっぱいっ!幸せえ~っ」

「チャンミナ、幸せ…?」

「ええ、これ以上の幸福は…もう…ないくらい……」


お互いの声は、内緒話をしてるような囁きになってゆく。出すというより漏らす音がいやらしい。誘っているようで。誘ってるんだけど。

僕誘ってるよ、ユノ

目を合わせたユノはたぶんそれに気付いた。でも抑え込むように目線を外してソファーの下を何やら探りだした。再び振り向いたユノが一言。


「できればこれも、受け取って」


この部屋の中で一つだけ。紫色の野球ボール程度の小さなバルーンを手渡された。


「紫♪ね?」

「ふふっ。はいはい。笑」


それは僕の好きな色。僕を祭り上げるようにユノのこだわりが炸裂して嬉しい。紫の球体は質量がやけにある、中に一回り小さな立方体を覆ってる。ような。奇妙な。


「ハサミで。ちょっと開けてみて」


バックを引き寄せて裁縫セットの中からミニハサミを取り出す。


「そっと。そっとな?」


中身を知ってるはずのユノなのに、宝箱を開けるみたいに覗くから邪魔になって笑える。笑いを噛み殺したら僕に優しさが溢れた。言われた通り、そっとそっと。
刃を入れたゴムはそれでも弾けて小箱を飛び出させた。
最近どこかで見た大きさのそれ。


「この前ホテルで、チャンミナずっと見てたろ?それで…やっぱりコレかなって。ブランド立ち上げた友達夫婦に頼んで色々見せてもらったんだけど、結局オーダーメイドで作ってもらっちゃった」


ぱこっと開けると銀色のリングがクッションに半分埋め込まれてた。手にとってみるものも模様は一切ない。裏に刻印もない。ただ一センチほどある幅広なリング。それだけ。僕の好きな感じ。
シンプルで。でもセンスある、長く使えそうな。


「へぇ、いいじゃないですか。僕に?」

「うん。これは、俺の魂だから」

「え……」


ユノは、


「チャンミナが持ってて。どこにいても何をしてても俺の魂はここにあるから。だからこれは絶対大事にしなきゃいけない。無くなったら俺、大変な事になっちゃうぞ。笑」


身に付けるアクセサリーにいつも自分なりの意味を持たせる。でもなんてことはない。『応援してくれてありがとう』とか『あの日の思い出』とか『もっと頑張ろう』とか。大抵はそういう、時々の気持ちを忘れない意気込みのようなものくらい。でもこれは、


「………魂………」

「お前にあげる」


ユノノタマシイ


「感謝して、愛してるんだ。チャンミナ」

「……」


何故そうしたのか分からない。考える前に僕はぱくっと指輪を口に入れてた。舌にプラチナの滑らかさと魂の重さを感じた。


「は!?な…っ、出せ出せ!危ないっ、飲んだら窒息するぞ!」


眉間に皺を寄せて叱りながら躊躇いもなく掌を差し出してくるユノに免じて、僕はクスクス笑って素直にリングをそこへ吐き出した。冗談ぽく。そしたらユノは呆れながらも連られて笑ってくれるから助かった。


「笑。あーもう、お前ってほんとに…。何、どした?」

「さあ…?ふっ……飲み込んでやろうと思って。笑」


本気で飲み込みたいと想ったなんて、洒落にならないから。でもユノは真面目に答えた。僕の本気を見抜いてた。


「……そんなことしなくていいから。ただ…これをはめたチャンミナと……愛し合いたい…」


熱の籠った囁き声で、


俺のもの


僕の左手の薬指に指輪を通した。





























______Y.side______






チャンミンは俺のことを『ユノは感情表現がストレートで直球。とても男らしいけど、……若干ドジ…(笑)』って評する。


「……。あれ???」

「……」


確かにそうだと、自分でも思う。


「え、ちょっと……緩い?」

「……あー、ちょっとだけー…」


ぶかぶかじゃない。
ぶかぶかじゃないんだけど、チャンミンの指にはめた渾身のプラチナリングは薬指の関節を難なく行き来した。気を付けなければ何かの拍子にすぐ落ちてしまいそう。


「…。いや、そんな訳ないだろ。ちゃんと測って、俺の薬指にはぴったりだったし」

「それはユノの指で僕の指じゃないっ。笑」

「だって男だからだいたい一緒だろ?」

「僕の手小さいだろっ。笑」

「あ、そうだ」


笑顔で掌を合わせてきたチャンミンの指は確かに俺より短いけど、太さまで違うなんて思ってもみなかった。改めて感じるチャンミンの儚さ。背は高いのに可愛くて、突飛な行動には面白さ半面、やっぱり肝が冷えて守りたくなる危うさと。


「ええ……ごめんな?じゃあ、直してもらってくるな?一旦返してくる」

「嫌だ。これでいい。っていうか、これがいいです」

「いや、で…」

「これがいい。こんな大事なものは外になんて着けていけないし、誰にも見せたくない。家で着けるか、それ以外は大切に保管しとくから直してもらっても意味ない」

「……」


我の強さと芯の強さ。


ユノの魂…でしょ?


ガキみたいだって言われる俺の情熱を全力で受け止めてくれる器の大きさ。こんなチャンミンを独り占めしてる奇跡。


「そう。しっかり握ってて」

「ん」


俺以上の




幸福者はいるだろうか






唇を近付けると当然のように寄って重ねられる唇は甘い。電流が走る。もっと愛して欲しいと思えばすぐに舌が入ってきた。咥内をクチュクチュ懸命に舐め回す生き物が、あったかくて気持ちいい。


「はぁ、もぅ……」


チャンミンをどうにかしちゃいたい。
艶かしい痺れがざぶざぶ。波があっという間に押し寄せて溺れた。脳に下半身に回ってツラい。欲情と興奮。


「ユノ…ね、」


完全に突っ張ったズボンとパンツに手をかけられて誘導される。そのまま下を脱ぎ捨てて再び座り直すと、チャンミンはソファーを下りて俺の前にひざまずいた。
勃起したモノをすぐに包みこんくれる小さな右手と大きな厚い唇は異常なほど俺を悦ばせる。上から見るとチャンミンの長い睫毛が一層よく見える。


「あ、…っ、はあっ、チャンミ、っ」


よすぎて身震いする。
腰が動く。勝手に咥内の奥を目指してしまう。
髪をすくように頭を撫でて、辛くないかチャンミンの表情を見ていると、チャンミンはフェラチオを続けながら
おもむろにもう片方の手で自分のチャックを開けた。取り出したモノは勃ってた。その自身をしごきだした左手に存在感のある指輪が光った。


「ぁ……ん、ん、っ、ユ…っ、んんっ」


呼吸を忘れた。ほど興奮した。目の奥がかっと熱くなって痛い。欲が暴走しだす。


「もっと。胸もいじって。自分の、ちゃんとしごいて」


俺に添えられた右手を取って乳首に当ててやると、薄く開いたチャンミンの瞳は苦しそうなのにモノはびくんと跳ねて。思わず笑みが漏れた。男なら分かる。それは感じてる証拠だから。俺を離すまいと締めた咥内からスタッカートみたいに漏れる声は上擦ってきて、どうしようもない色気を放つ。


「あ、んあ、ぁっ、ぅっ、く…っ、」


指輪を擦りつけるような淫らな自慰が愛らしい。奉仕してくれる口は依然離れない。


「チャンミナ……っ、ちょっと…風呂入ろう。一緒にっ。限界…っ、早く、愛し合いたい」

「僕も」


切羽詰まった性急な顔が下から抱きついてきて。何だろう。胸が焼き焦げるこの感覚を、うまく表現できない。勢いのままチャンミンを抱き上げて洗面所まで急いだ。なのにお互い裸になったらまた絡みつくようにゆうるり身体を抱き締め合った。お互いを味わうように。浸るように。そんな感じ。


「スゴ!泡!?薔薇!?」


エスコートしてバスルームを開けるとチャンミンは手放しで喜んでくれた。耳はとても赤い。嬉しいが咲く。
軽く洗って一緒に浸かるとどうしたって狭いのに、その窮屈感さえ何かを満たす要素な気がした。チャンミンを俺の上に重ねて。落ち着くポジションを探して微妙に位置を変えながら後ろから愛撫していると、視界の端に見える泡にまみれたチャンミンの手がグーの手になってた。なんか可愛いなって。指をさして。


「これ、可愛い♪」


素直に。


「リング、しっかり握ってるから。絶対無くさないようにしないと」

「、」


ここ。
チャンミンの、こういうところ。


「泡で滑りやすいし、気持ち良くて今もう訳分かんなくなりそうで……ユノもう…」


堪らない。無理。我慢できない。


「ここで。お湯の中で、シてみたい…かも、なんて。笑」


起き上がって向かい合うと泡飛沫が跳ねた。


「ローション取ってくる」


“お願い”は勇気を振り絞って言っている。BoAの教訓が浮かんでは消える。独り善がりにならないように。
信頼してくれる君を、最高に気持ち良くさせたい。毎回。いつだって。


「あ、たぶん。これだけぬるぬるしてたからたぶん。大丈夫かも。ちょっと試して…」

「挿いる?足上げてみて」


チャンミンの頭をバスタブの縁に寝かせたまま肩にかけた両足を抱えると、浮力のせいでとんでもなく軽く感じる。飛んでいけそうなくらい軽い。支配欲が頭をもたげる。

どこも行かせない。絶対に離してなんかやらない。
 
水中の蕾をまさぐって、完勃ちした先端だけ刺すように挿れた。俺のものだって釘を刺すように。


「、ぐ…っ、く、、」

「ゆっくり…挿れるから、っ、」


コクコク上下させる頬に泡が滑る。赤い花びらがその上を舞う。
ゆっくり。激しくすればいいってもんじゃない。演技なんかさせないように。

だんだん深く。浅い挿入を何度も繰り返しながら。


「どう?ちょっと、苦しい?体位変えるか?」

「ん…っ、はあっ、お湯入って…でもなんか、キツイのがいい…このままゆっくり…」

「うん」


二人で同じ場所を感じて。


「っ、チャンミナ……」

「ん、ん…?っ、ふ?」


顔に添えられた小さな拳に口づけを。
俺の魂をはめた指にキスを。
湯はさざ波を起こしてバスタブから溢れる。
俺だけのチャンミン。


「誰のとこにも、行くなよ。俺のなんだからっ」

「…見りゃ分かるで…しょ。僕にはユノしかいないって」


飽くなき欲望を慈悲深い微笑みで包容してくれる。神々しささえ感じるほど美しい。


「チャンミナ綺麗……」


ピストンを強めて釘を刺す。チャンミンを留めておきたい。いつまでも。もっと揺さぶるから、ここに居て。


「あっ!、、は、あ。いい…っ、ユノ、前も触ってっ」

「風呂の中でイってみたい?」

「ぅん、うん……っ」


快楽に溺れだした腰は弾んで、魅力的な矯声が浴室を反響した。俺とは反対に柔くなったモノを揉んでやるとそれでも気持ち良さそうに啼いた。


「あ、あ、あ、っあ、」


チャンミンは俺の手中に居て、俺はチャンミンの手中に居る。確かに自分のものだと確かめ合える。その愛し合う行為に頂点が迫る。指輪にキスして、自分の居場所をもう一度確認。
俺の居場所はいつだって、ここ。


「っ、一回…一緒にイこうか」

「あイく…!」

「俺も…っ、、」


心地好く、安らげる。羽を休めてまた一緒に飛べる。
チャンミンっていう、俺の居場所。






















______C.side______






逆上せたせいもあるのか、ぼおーっとして働かない頭のままユノの部屋に引き摺り込まれて、正直バルーンサプライズのことはよく覚えてない。行為の最中ナカに入ってた水が途中ベッドを濡らして猛烈に恥ずかしかったイヤな記憶だけはあるけど。あとそれを、愛しそうに笑ってシーツを拭きもせず俺を揺さぶり続けたユノのふやけた顔くらい。
翌日起こされて、まだそんな顔で僕を見つめる無精髭のユノをからかった。理由は静かに教えてくれた。


「僕ってそんなに魅力的?笑」

「もちろん、一番に。それに今夜は一晩中、チャンミナがずっと指輪を握ってくれてたから」


午前の日光がさして。素肌がユノと触れていて。ベッドでまったり。周りにパールレッドの海が煌めく。

とても清らかな朝だった。


「お前ほんとに、外ではそれ着けないの?」

「……ええ。ダメっすか?」

「いいや。俺の魂がここにあるのは、俺たちだけの秘密にしよう」

「そうですよ。他人にひけらかすものではない。…あ、でも……」

「ん?」


いつかもし、こんな日が来たら


「もし……、有り得ないけどもし、、気を悪くしないで聞いて欲しいんですけど」

「うん、いいよ」

「もし、何かの理由で…例えばユノに最悪の事態が発生して、TOHOSINKIとしてのステージに僕が一人で立たなくちゃいけなくなった時…。その時には着けます」

「そんな日は来ない。絶対一人にはさせない」

「そう願いたいけど…。まあ、ふと思いついただけ。薬指には合わないけど、人差し指か中指のサイズにはピッタリだし。ライブで着けても格好いいかなって」


そんな日は来ない。
そんな日は来ないけどもし、そんな有り得ない日が来たら。


「さあ、……そろそろ支度しましょうか、“ヒョン”」

「…だなっ。今日も一日気合い入れるぞ。お互いファイティンしよう。宜しくな?」

「もちろん、僕なりにできる限り」


絶対このリングをはめる。
誰が何と言おうと。必ず。

























ユノの魂を僕が持って行く。




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mi※mi※yuu様
長らくお待たせして申し訳ありませんでした。
ご期待通りのものではなかったかもしれませんが、一生懸命あなた様への気持ちを込めて編ませて頂きました。見えないところにこそ、二人だけのストーリーがあるかと。
時は何年前かのどこか。幅広のリングはチャンミンが2015年のSMTで着け何度もステージ上で口づけし続けたと言われる指輪。その秘密の物語。かも、しれません。笑
mi※mi※yuu様がどうか楽しんで読んで頂けますように願います。

りょう(ゆのっぽん)

Fc2

ホミンバースデー、おめでとう❤
二人が二人で居てくれてありがとう❤
ユノとチャンミンが大好きです。


【中編】貴方の居場所。(貴方のために。2)

50000拍手
mi※mi※yuu様へ




(注意書)こちらは「貴方のために。」の続編です。カテゴリー[しょーとしょーとすとーりー]にございますので、宜しかったらそちらを先にお読みになってからお楽しみ下さい♪

※ちょぴっとBL表現です。苦手な方はご注意下さい。ホミンちゃんです。
















何でもない日の、特に代わり映えしない夜。










「ぅわ……なんか緊張してきた……、」





「あはははははっ。お前でもビビる事あるんだな。笑」

「大丈夫だって。あれだけ皆で話し合って準備してきたんだから。絶対喜んでくれるって~」

「急ごう!時間ないよ!」

「そっち終わった!?こっちまだ空気入ってないのあるから手伝ってくれ!」

「ガス足りる??オッケ、じゃあ私そっち行くっ」

「皆ユニフォーム着たな?一応中華屋の制服も用意してるから。こいつの電話次第では即ダッシュして着替えて。注文は僕取りに行くからさ」

「そうだ!はい、これ。泡ぶろのもと♪今日は思いっきりロマンチックにいきなよ~♡帰ったらすぐバスタブに入れるんだよ!」

「見えない場所はもう自分で準備してあるんですよね!?」





「…うん。皆、ありがとう」





「いいから手を動かそう!時間かかるとオジャンになっちゃうよっ」

「合図の電話で30分後ぐらいに行けばいいか?」

「うわあ~、なんか私が幸せな気分になってきたあ♪なんて素敵なんだろう…」

「お前、関係ないだろ。笑」

「うるさいわね。笑」

「ユノ!ここはもういいから戻って!自然にな!」























Ready……?













































______C.side______






何でもない日の、特に代わり映えしない夜だった。

やっぱり今日もユノは仕事終わりと同時にどこかへ出かけてしまったけど、僕も僕でゲームしたいし。二人で居たからって別に何かすることもないし。うん、別に気してない。


「ふぅ~、疲れたあ~~」


帰って早々、手洗いとうがいをしたついでに、まずビールを冷蔵庫から取り出した。プルタブを開けて中身を喉へ流し込むと、あまりの美味しさに一気に半分くらいまで無くなった。


「っっ、あああ~~、うまあぁーっ…!」


一日で、最高に幸せな瞬間。弾けるアルコールの感覚が堪らない。ぐいっと調子が良くなる。
ユノはユノで自由にやってる。僕も僕で自由にやってる。それでいいじゃないか。


「さっ、ゲームゲーム♪」


最近やり始めたスマホゲームのアプリボタンをタップする。起動中にリビングのソファーへ移動して。腰を下ろす寸前で思い付いた。


「あ、先にスキンケアしとこう」


お酒を好きなだけ飲みながらゲームに集中したい。よく飲むといつの間にか寝ちゃうから、今のうちに肌を整えようと思った。できれば今日はそうして眠りたい。
ゲームに集中して、思いっきり酔って、僕の中のワガママをやり過ごしたい。
拭い取るように強く洗顔を終えると、幾分気分がすっきりした。さっきの上機嫌がいつの間にかまた落ちてたんだってことに軽いショック。自分にしっかりしろと言い聞かすために痛いほど顔を叩きながら保湿する。だけど額や頬は液体に緩和されて、ぺん、ぺん、ぺん、ぺんと緩くしか鳴らない。腰抜けた音が歯痒い。肌はもうじんじん熱いのに。


「美容液に、パック…は今日いいや。乳液と、エクストラクリーム…」


今は慢性的な発作を起こしてるだけ。落ち着けば治る。
いつも隣に居るんだから、今さら持ち上げてもらう必要なんてない。気恥ずかしいし、むしろ迷惑だ。



「チャンミナ?」



「、ぅえあ!!!!」

「……なんか、大丈夫か?すんごい痛そうだけど」


いるはずのないユノが振り返ってもちゃんと居たからって、別に驚くことじゃない。昔からずっと一緒に居るんだから。別に大したことない。


「…………ユノ、なんで居るの…」






だけどやっぱり。






「いや、帰ってきた」

「……だよね……いや、ついさっきどこか行ったじゃん」

「そうなんだけど、いきなり皆都合悪くなっちゃってさ。今だったらチャンミナとご飯食べれるかなって、急いで帰ってきた」

「……そう」


ふいにドキッとさせる男前な言葉も、

無意識に触れてくる掌も、


「晩ご飯もう食べた?」

「いや、コンビニで買ったけど。そう言えばまだ……」


すぐ差し伸べられる純粋な優しさも、


「『そう言えば』?あはっ!じゃあ良かった。折角だから…ピザでもとろう?好きだろ?中華でもいいよ。ヒョンのおごりぃ♪いくらでも食べな♪」



尊敬して、






大好きだから




「じゃあ、、、両方っ!」

「…へ!?」

「両方食べたいっ。食べたい食べたい~~腹ペコでぇ~ユノかっこいい~お願いしますぅ~~」


すんと鼻を鳴らして泣き真似して、シッポ振るように上目遣いで抱きついて。庇護を受けなければ立つこともできない。小鹿のように。身を縮めて。わざとらしく。
甘えたい。たまには。思いっきり。

ユノを独占したい。


「おねがい、おねがいぃ~格好いいユノぉ~」

「なんか、、かわいいチャンドル♪ほっぺ真っ赤だし。笑」


ユノはよしよしとしっかり僕を抱き締めて、鎖骨の窪みに埋まった僕に、わざわざ首を捩って口づけを落としてくれた。ワガママを笑って、とてもとても甘やかしてくれる、僕のユノ。
僕はどこまでも許されたくて、あざとさ加減に拍車がかかる。人差し指の先端を唇に押し当てておねだりアピール。自慢の上目遣いも忘れずに。


「両方でもいい?食べたい…♡」

「…。よしっ、分かった!いいよ♪」

「イエースっ♡じゃあ~僕が注文するね?どぉれ頼もっかなあ~♪」

「いやっ、電話は俺がするからっ。もしかしたら値切れば安くしてくれるかもしれないからっ」

「…そんなんあるわけねーっすよ、今まで一度もなかったじゃん」

「いや今まではやった事なかったからっ。こういうのはやってみないと分かんないからっ、俺がする!」

「……。分かった!お願いしまあーす!!笑」


突拍子もないユノの思いつきが見てみたくなって、結局楽しくなっちゃって。抱きついた格好のままでユノの注文を聴いてやろうと思ったら、「これは男の挑戦だから秘密!」とか言って会話を聞かせないように洗面所から追い出された。普段使わないバスタブを起動させたようで水音まで立てる始末。向こうの電話口の人もビックリするだろう。ユノって本当に面白い。


「ぐふふふふ…くっくっくっ…っ、ぶっ!笑」


腹が捩れるほど面白い。僕の食べたいものなんてユノはもう知ってるから。ありがたくお任せすることにする。
役目の無くなった僕は食器やグラスの準備をした。残ってた生ぬるいビールも飲み干して。ただ楽しい。最高に。


「ふふふっ♪おごってもらうし、久しぶりにちょっと片付けもしといてあげるかっ」


今はもう諦めてほったらかしにしてしまってるユノの部屋。何度言っても片付けないユノに見切りをつけて、最近は踏み入れることもなかったその扉をひっさしぶりに開けてやった。せめて洗い物だけでも救出してあげようと思って。


「は…………」










尊敬もしてるし














僕も大好きなんだよ、ユノ


































______Y.side______






喜んでくれるかな?

期待と心配でドキドキする。チャンミンの欲しいものを見極めて、でもプレゼントするだけじゃ足りないような気がして一生懸命準備してきたけど、チャンミンは派手な演出とか嫌がるかもしれない。そう考えて家で渡すことにしたんだけど、いまいち自信が持てない。ロマンチックにいきたいけど恥ずかしくて俺も居たたまれない。呆れられたり笑われたら、どうしよう。

未だに大好きだから怖い。
愛してるから、怖い。


「あー…、こんなのいらないって言われたら……ショックだな……」


大事な時はきちんと真剣に受け止めてくれるチャンミンだから、そんなの言わないって分かってるけど。もし心の中でそう思われたらどうしよう。
俺の中の一番大切な、一番深い心を委ねてる人だから。


怖い。


『大丈夫だよ。こっちは人数も多いし両方すぐ用意するから。ファイティン!!』

「……おっけ、じゃあ後で!」

『了解!』


スマホの通話ボタンを切って一呼吸。


「よし……」


湯気の立ち始めた風呂の自動ボタンを確認して、女友達から譲り受けた『おふろのもと』を入れる。ポッケに忍ばせてた薔薇の花びらをバスタブの縁に並べて……。


「やり過ぎかもしれない……っ、」


顔が赤くなるのが分かる。思わず手で頬を冷やした。




でも俺にとって、本当に意味のあるプレゼントだから




十字を切って祈る。喜んでくれますように。
胸を拳で二回叩いて風呂場から出た。


「っ、チャンミナ~、値切るの成功したぞー♪やっぱ言ってみるもんだな♪」

「ユノ、ユノ」

「ん…?」


リビングに戻ると、てっきりまたゲームでもしてるだろうと思ってたチャンミンが寄ってきて焦る。
顔が赤くなってるの、バレやしないか。
チャンミンの頬もまだ赤いまま。


「スゴいね…やっぱりユノは格好いい」

「あははっ!ありがと、チャンミン!」


シャツの袖を掴んできた手を握り返して。
嬉しい。


「本当に格好いい。本当にそう思ってます」

「、、」


眉毛を八の字に下げて真面目に言うから、なんだか嬉しいが過ぎてすぐには言葉が出てこなかった。

チャンミンの言葉は魔法。
チャンミンは嘘をつかないから。
チャンミンの言葉は真実。心の底から俺にとてつもない自信を与えてくれる魔法。


「…お前なあー!まだ他に食べたいもの、あるんだろう!?何だよ、言ってみろよっ。笑」


何でも買ってあげる。全部買ってあげる。
チャンミンが喜んでくれるなら。何もかも。

本気でそう思えてしまう自分が危ない奴だってことは分かる。でもチャンミンのあの、大きくて綺麗な瞳に見つめられたら、つい。盲目になる。

気持ちとは裏腹に、冗談っぽく押し倒して、二人でソファーに沈んだ。じゃれてくすぐるとチャンミンは声を上げて笑って。両腕と両足は縮めて抵抗するだけで反撃しない。内股気味に閉じられた腿の間を強引に割って腰を滑り込ませた。手首を捕らえて喉もとに噛み付くキスをしたら俺の勝ち。抵抗を諦めて今度は全身でしがみついてくる可愛いのかたまり、俺のチャンミン。可愛い。守ってやりたい。


「他に何が欲しい?いいよ、何でも」


強烈に溺れてる。
腕は勝手にチャンミンを包み返してた。
耳元には大胆な要求が響いてきて。


「ユノが欲しい…っ」


こんなの、


愛さずにはいられない


「…。いいよ」


自分でも驚くほど甘ったるい声の返事が出た。触れるだけのキスを繰り返し交わす。微かなビールの香り。肌をなぞって、また唇に戻る。目の前の幸せそうに瞳を閉じた顔。こっちが嬉しくて、自然と笑みが漏れる。そのチャンミンの鼻先にも瞼にも頬にも口づけを落としていると、焦れた舌が俺の咥内に入ってきて、下半身が疼いた。食むように深いキスを繋ぎ続ければ、どんどん興奮が膨らんでいく。スウェット越しにチャンミンのモノを探すと俺と同じように勃起してた。


「んっ…、…ュ、ん…、」

「はぁ、チャンミナ…っ」


ヤバい。これはもう、我慢きかないかも。ヤバい。

そう思った瞬間やっと待ちかねたインターフォンのチャイムが鳴った。落胆と安堵。精一杯、理性を引っ張り戻して。


「まずご飯食べようか。な?」

「ええ~~」


残念がるチャンミンに財布を渡した。「もう…どうしよ、コレ」なんて言いながら膨らみを押さえて、しゅんとあからさまに拗ねる姿が珍しくて俺は図に乗っちゃうよ。さっきまでの不安はどこへやら。盛大に演技する。サプライズへの助走付け。


「行ってきて。値切りまくったから恥ずかしくて俺はもう出れないっ!涙」

「あっはっはっはっは♪」


チャンミンは俺に指をさしてはしゃぎながらインターフォンを見る。カメラの映りこみには気を付けてくれと散々言ったから大丈夫なはず。


「くくっ…、はい♪」

『ご注文頂いたピザ屋です』

「はーい。今開けます。まずはピザか♪」


特に気にすることもなく施錠を外しに玄関へ向かうチャンミンに一安心。もう少し。テーブルに用意されてるお茶のグラスをそっと納めて、代わりにシャンパングラスを二脚取り出した。料理と合わないかもしれないけど、男だから好きなものを食べたいだろうし、ラインナップだけはこの際気にしないことにした。

インターフォンが鳴る。チャンミンの、扉を開ける音が聞こえた。俺はソファーに座ってスタンバイ。膝に肘をついて、指を組んでその上に顎を乗せた。自分なりの格好いいポーズで決めて。


全てをくれたチャンミンに、


「こんばんは!シム・チャンミンさんへお届けものです」


俺の魂をあげる。









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ユノ、お誕生日おめでとう!

「本当に格好いい。毎瞬間見惚れる。ユノの隣に居れるだけでいい」
そう言って貴方の情熱を生涯かけて受け止めてくれる人がいます。癒しと自信とさらなるパワーに満たされて、どうかいつまでも自由に羽ばたいて下さい。