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はじめまして

東方のお二人が大好き!りょう(ゆのっぽん)と申します。

好き過ぎて、いろんな妄想させてもらおうと思っとります。

お二人の絆はどんなリアル、時代、背景でも繋がっている。そんな気持ちが表現できればと強く思います。

ただの私の勝手な妄想です、実在の方々や会社様、イベント等には一切関係ありません。時系列もバラバラです。このブログでのみ楽しんで頂くことを心よりお願い申し上げます。


当ブログはホミンホのお話になります。(主にホミン)
BL表現出てきます。18歳未満の方、気をつけて下さい。
昔のメンバーの方々には、一切興味がありません。
なるべく気をつけていきますが、気分を害されるという方がいらっしゃないように、閲覧は自己責任でお願いします。

どうか、一瞬でも誰か様のお二人の帰りを待つ暇潰しになりますように。
私も楽しみます!


りょう(ゆのっぽん)





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抱き締めて、ユノ。








これ以上はないと


思うほど努力して、自分のできる限りの誠心誠意を尽くしてると思うのに。


「チャンミン君、衣装違うって!何してくれてんの!?」

「え……」


世の中には、
僕がまだ理解しがたい人がかなりいる。


「なんで指定したコーディネート通りに着てこなかったの!?今夜のパーティーの服装は協賛会社のブランドで揃えようって話だっただろ!?」

「…。あ、はい。だと思ってたんですけど送られてきたのがこの装いで、うちのスタイリスト達と変だねって…」

「僕はそんなの送ってません。嘘を言うのは止めてくれる?」

「……」


溜め息を盛大に吐いてキッと僕を睨むパーティーディレクターに唖然。彼の話が本当なら、僕の方にミスがあったかも。


「、そうでしたか。だったら僕の思い違いかもしれません。本当に申し訳ありませんでした。ただ無礼を承知で言わせて頂くと、僕も直前まで再度の確認をしようと努力しました」


予め用意されてるはずの衣装が今日の午後ぎりぎりで到着した。送られてきたセット内容は指定とは違うブランドのもので、皆で首を傾げてた。確認の電話を何度も入れたのに連絡はつかなかった。かと言ってセレモニーに遅れるわけにはいかない。とにかく送られたものを着て予定時刻直前で会場へ着いたのに。


「そんなの知らないよ、どうでもいい。とりあえず事務所に替えのタキシードでもないか連絡するから。もう時間ないけど控え室入ってそれ脱いで」

「…。ご迷惑かけて本当にすいません。宜しくお願いします…」


でもそんなこと今は関係ない。下手したらうちのスタッフ達まで何か言われてしまう。
気持ちを持ち直して前を向く。
なのに。


「本当はそう思ってないでしょ。服なんてまあいっかって思ってるからこういう事が起こるんだよ。こっちは真剣に仕事してるんだからすぐバレるよ」

「やっぱあれだよね。初めからスターになっちゃうと…、ふふっ。スタッフとか周りの大変さ考えることないか。分かんないよね。でもそれじゃ駄目なんだよ」

「僕実はけっこう前からチャンミン君見てて思ってたんだよねぇ。ああ、もうちょっと本気で仕事しないとこの子マズイんじゃないかなぁって。周りはちやほやして何も言わないかもしれないけどさ、僕は気付いてたんだよね」


道順を把握している控え室まで無駄に案内されながらずっとそんな事言われ続けた。連絡してくれると言った事務所への電話も鳴らさず。部屋に着いてようやく携帯を手に取ってくれた時、「チャンミンさん、急いで!」と挨拶もそこそこに僕を招き入れるスタッフさんとその後ろに並ぶ数着の衣装を指差して彼は言った。


「あれ、あ。ここにあった?」

「え?」

「あ、チャンミン君の衣装ここにあったわ。そう言えば現地で着替えてって僕言ったか」

「、は!?」


そんなの聞いてない。マネージャーも把握してなかった。
事前に送られたものを美容院で着用してスタイリング。そのまま会場入りの予定だった、絶対。
現に違う衣装も送られてきたわけで。


「あははっ。勘違いしてたわ、僕。笑」


それでも連絡ミスだって謝ってくれるのかと思った。おこがましいかもしれないけど。


「じゃあ、やっぱりチャンミン君が悪いじゃない。困るよ、もっと前もって早く来てくれないと。ギリギリに来られたらスタッフの子達が大変なんだから」

「……」




何が何だか分からなかった。






























スマホの目覚まし音が鳴り響いてる。頬に冷たい室温が触れて寒い。
しまった、昨日エアコンを入れ忘れたか。毛布から出たくない。


「うう……。……くそ……」


出たくない。出たくない。
毛布から腕すら出したくないし、


部屋からも出たくない。
外に出たくない。


頭をさらに毛布の真ん中まで押し込んですっぽり体を丸めてもアラーム音は聞こえてくる。
うるさい、マジで。


「ぅるせー、ホント勘弁しろ…くそっ!」


消さないとイライラが増すんだけど、昨日帰ってきて不貞腐れて呑みまくった頭にガンガン響くんだけど、とにかく外に出たくない。外は嫌だ。


世の中は、良いものばかりじゃないから。





「チャンミン?アラーム消しちゃうよ」

「、、、」



そんな最悪の朝、この世で最も良い声を聞く。


「え、は、ユノ?え、なんで?」


目が覚める。腕をぶんぶん左右に振ると、左に男の胸筋がクリーンヒット。布越しに「ぐえっ!」って聞こえて、慌てて毛布から顔を出した。
隣に寝そべる彼が、この世で最もふやけた寝ぼけまなこで僕の額を小突く。


「…。お前が呼び出したんだろおっ、こら。笑」



僕のこと、大好きで仕方ないって


顔に書いてある笑顔で。



「……そうだっけ?笑」

「そうだろっ。昨日酔っ払って俺に電話かけてきたじゃん。それで来て早々、…押し倒してきたろ…」

「ぶっ!僕がそんな事するわけないっ」

「したから!突然、『ユノが羨ましい。うー、ごめんねー!』って電話きたと思ったらそのままブツっと切るから、」

「それ呼んでないじゃん」

「何かな?と思って来てみたら、めっちゃ可愛く『ユ~ノにマッサージしゅるる~』なんてものすごい愛嬌言って、」

「(スルーされた。笑)くくっ♪それで?」

「思わずベットまで付いていって、そのまま、チャンミンの誘うまま…」

「あー。酔っ払いの言うこと、断らなかったの?それってユノもしたかったってこと?ユノは僕の虜なの?笑」

「お前ねっ。そうだよ!笑」


毛布やら、ずり落ちそうになってるシーツやらタオルやら、をめくったら。
真っ裸だね、確かに。笑える。ウケる。

ユノの「そうだよ」が、すっごい嬉しくて。

ガハガハ笑ったら、ユノが仕方ないなって笑いながら、布団を掛け直してくれた。寒いから気を付けてって。自分も裸のくせに。僕のために。


「ユノも布団に入って」

「俺は大丈夫。暖房つけてくるな?」


「良いコ」と言われながらユノの左手に頭を撫でられて、くすぐったい。
せめてパンツくらい履けばいいのに、本当にフルチンの裸足でぺたぺた移動するから、大雑把が過ぎてこっちが申し訳ない。だってユノが寒いでしょう?でも目で追ったボサボサ頭は、ただ可愛い。空調管理のタッチパネルを一つ押すだけなのに、適当に何でもピコピコ押しちゃってたじろぐ姿がまた可愛い。めちゃくちゃ格好良い人なのに可愛い。でも覗き見るユノの横顔は、やはり世界で一番格好良い。

その、この世で最も良い男はベットへ戻ってくるだけでも騒がしい。細く差し込んだ朝日さえ見事に背負うんだから。まったく。

眩しくて、お世辞じゃなく神々しくて。
綺麗。

僕と目が合うと、ニヤリと口角を上げて感嘆の呼吸をつくから、(しまった、見惚れてるのがバレた…!)と思ったのに、


「ああ…今日も格好良いね、チャンミン」






この人には、敵わない






「ユノの方がめっちゃカッケー!」

「ええ…ははっ!ありがとう。笑」





世界最高





「もうちょっと寝よう?ユノも入って」

「チャンミン今日オフだっけ?」

「いいや、でもユノはオフでしょ。もう少しだけ」


布団に招いた体はとても冷たくなっていた。
足を絡ませて、ふざける振りして摩ってもとてもとても冷たくて。ユノの鳥肌に胸がいっぱい。

とてもとても、あたたかさを感じる。


「ああ~僕もう、部屋が暖まらないと布団から出れない~。仕事行けない~まだ寒い~。ユノ、湯たんぽ代わりになって~あっためて下さ~い~」

「まだかあ?」

「…まあ、いいじゃないっすか」


そう言えばユノはギューっと抱き締めてくれるから。冷えたユノの身体が、せめて僕の身体であったまってくれたらいいと思う。


「ほら、やっぱチャンミンの方があったかいぞ?」

「いいえ、ユノの方があったかい……」



ユノの心のあたたかさは、

僕に色んな事を気付かせてくれる。



「実は昨日……ちょっとミスをなすりつけられて…嫌だなって人がいたんだけど、」

「うん」


優しい相槌が、僕を抱き締めてくれる。


「彼は彼なりの理由が何かあって、もしかしたら昨日…彼にとってはとても辛い一日だったのかもしれない」

「ふう~ん」


理由なく僕を嫌う人は確かにいるけれど、もしかしたら僕の努力や誠心誠意がその人達にとってはとても腹立たしい、傷付けてしまう姿なのかもしれない。でもだからって、僕も引けない。僕は僕の信じる最善で生きてゆきたいから。


「例えば最愛の婚約者にフラれた直後で、何もかも投げ出したい日だったのに。歯を食いしばって仕事してたのかもしれない」

「それは辛いな……」

「いや、僕の空想だけど」

「ほお」

「だから…つまり、僕が感じた彼の嫌な態度も、彼の単なる断面に過ぎない。それだけで彼のことを判断するべきじゃない。そう思いやれば良かったなあと。彼の背景も考えて、どんな可能性も視野も広げて…もっと丁寧な対応で僕が応えていれば、良かったあって…今日は反省してる」



抱き締めて



抱き締めて



「チャンミン、スゴい。ほんと大人になった。本当に格好良い」


貴方の腕と言葉に包まれて、


「腹筋もバキバキでヤバいね。格好いい♡」

「さーわーるーなー。笑」

「え~いいだろっ、今は二人きりだしっ」


掌と香りに包まれて、


「よく鍛えてて、一生懸命やる事やってて、偉い。何事にも努力家で、凄い。チャンミン見てたら、俺もさらに頑張るぞー!って気持ちになる」

「あー、僕はユノのこれ以上の情熱に当てられて、僕が燃え尽きやしないか不安です…笑」

「あはーはー!ほら、すっごい面白いし!笑」


笑顔とやる気に包まれる。


「ビジュアルも最高に格好良いじゃん♡メイクしてないのに本当に格好良い。言うのはちょっと恥ずかしいけど…見てて、俺ドキッとする事たくさんあるよ。それにチャンミンの目は、世界一綺麗……」



ユノに身も心も抱き締められると、



「チャンミンは、良いもの全部持って生まれてきたんだね」


























なんかね、無性に泣きなくなるの






優しい気持ちになるの、すごく














首を振ってこれは参りましたって仕草で、


「……。っ、んん~~♪」


誤魔化すけどね。


「ああ!その愛嬌も可愛いっ♡」

「ぶぉふおっ!」


ピッチャー返しで爆発しちゃうけどね。


「…っ、どうも……。でも、ユノが凄く凄く格好良いから、僕はとても羨ましくなる時があるんですよ。よく頼ることもあるし、…昨日は電話してごめんね?」

「全然。めったにないから、嬉しかったって」


チュッてやって、チュッてやられて。
額をこつんと合わせてまたチューとキスを交わした。ここはもう、幸福の渦の中。
目まぐるしく、僕を駆り立てる。
外へ。世の中へ。今日という一日へ。


「今日は?ユノは?友達と遊ぶの?」

「そう。今日はちょっと遠出しようかって皆で言ってる」


僕はまずはシャワーを浴びよう。
睦み合った感覚の残る身体をリセットしよう。


「最近急に寒くなってきたから、風邪引かないように厚着して。気を付けてね。明日は朝一でスタジオ入りですよ」


毛布から抜け出す。もう寒くない。
二日酔いもなし。よし。
さあ、進め。


「おう、ありがと。チャンミンもな?」

「ん」


最後にもう一度ユノに飛びついて力いっぱい唇を重ねたら、ユノは痛がりながらも大笑い。顔赤くして。これは参ったわって仕草で、苦笑してた。


「チャンミン、今日もファイテン!」

「イエスっ」




さあ、行くぞ






SSおはようございます。ちょっぴり二の足を踏んでしまいそうな朝に。
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片割れ chap.12 #20








______C.side______






一生貴方が、思い出しませんように










僕と愛し合った時間を消して


どうか苦しむ事なく


どうか違う誰かと幸せに


笑って生きて








貴方が幸せなら、僕は本当に嬉しい


























そう確かに願っているはずなのに、


心の底から思えない自分が、憎い。









僕ばかり苦しくて、

僕ばかり悩んで、

僕ばかりが離れられずにもがいてる。


いっそ僕も忘れようと努力してみても、気付くと貴方が捨てた思い出を必死で拾い集めて抱きかかえてる自分がすごく嫌だ。


未練がましくて、惨めったらしくて、情けない。






ねえ、



















戻ってきてよ






お願いだからまた戻ってきて欲しい



くだらない事で笑い合ったり、些細な事で大喧嘩したり。自分より大切に思った瞬間も、本気で憎くなった日も。身体で感じ合えた感情も、あの不可思議なノスタルジーも、全部。


恋しくて堪らない。忘れられるわけがない。



僕を甘やかす三日月形の目だって、握った綺麗な指先だって。抱き締められた腕の強さと、夜の汗。僕を最後まで守ってくれてた、大きな背中。





男同士だから何なの?
メンバーだから何なの?




僕は絶対離れられない。

僕はどうしても離れない。




自分が引き裂かれたみたいに痛くて、辛い。





















もう一度振り向いて


今度こそちゃんと言うから










ねえ、お願いします




僕のところに戻ってきて






戻ってきてよ、ユノ


























…………なんてね。









































______Manager.side______






やっぱり二人でも





いや、このTOHOSINKIこそ











最高











「お疲れ様!!!」


ソウル公演の二日目もようやく終わった。ライブ中、ライティングのセットミスやステージ移動時のセキュリティの不安定さ、さらには曲が止まってしまうなんてトラブルもあって冷や汗が絶えなかったが何とか乗り切った。ロゴ入りの黒いTシャツをぐっしょり滴るほど濡らしたユノとチャンミンが舞台裏の連絡通路へ帰ってきた。裏方のスタッフが総出の拍手で迎える。


「良かったよ!」「お疲れ様です」「本当に良かった!最高!」「カッコよかった!!」「お疲れい!」「最高に素敵なステージでした!」「We are T!笑」「お疲れ様!」


二人は汗と水で張り付いた髪の毛を振るいながら、ハイタッチで列に応えて行く。俺も労いの言葉を掛けずにはいられない。


「お疲れ様!良かった!本っ当にカッコよかった!!」


ユノが満天の笑顔で、ホッと息を吐くようにハイタッチを求めてきた。受け止めた掌の重さに、胸が熱くなる。「歌も踊りも物足りないと思われたくない。やるなら前のTOHOSINKI以上に、良いものにしたい」と、リハーサル中ずっと言い続けてたユノの厳しい顔が、こんな時に限って鮮明に思い出される。感動。胸にグッとするものがある。勢いに任せてユノを抱き締めた。


「良かった…っ。TOHOSINKIがお前達二人で、本当に良かった…!」


観客やダンサーと心から楽しんで、はしゃいで、イタズラっ子で、誠実で、力強くて、格好良い。

TOHOSINKIが


U-KnowとMAXで、本当に良かった。


「マネヒョン、ありがとう」


ユノの優しい声が耳元に広がって、今までの緊張が雪解けを起こす。

公演チケットは販売開始三分でソールドアウトした。去年の再始動カムバックもヒットチャート入りの予想以上の応援を貰った。日本ツアーも大成功した。秋に出した第六集のアルバムも上々。フェスも歌謡祭も事務所イベントもテレビ番組もばんばん出て知名度も上げた。
でも、本拠地韓国で過去曲と日本語曲を網羅しながらの二人きりの初単独公演。もちろん演出も構成も気が狂いそうなほど考えに考え抜いたものだけど。


不安がないわけじゃ、なかったから。


「よし…よし……!もう二人でTOHOSINKIだ!」

「うん、二人が慣れてきた。今はチャンミナと二人でやるのが当たり前。にゃはは♪」


その『当たり前』にするために、

二人がどれほどの努力と苦労をしてきたと?


たぶんきっと、これからも戦い続けることになるだろうユノとチャンミンを力いっぱい全力でサポートしていく。そんな熱い思いを噛み締めながらもう一度ユノと抱きあおうとしたのに、ユノはするりと応援に駆けつけてくれた後輩のエクソのメンバー達の所へ嬉しそうに歩みを変えて行く。俺との熱量の違いに肩透かしを食らったようで、少し寂しい。

「おいっ。明日のスケジュールと、それと新しくドラマ決まったからな、来年の!ドラマの内容、後で確認するからな?分かったか、ユノー?」


ユノに急かされて入れたミュージカルの移動時間確認と厳選したドラマ出演の仕事。こっちを振り向かせたくて、別に今伝えなくても差し支えない案件をユノの背に呼び掛けたが、今はもう後輩達しか見えてないようで、全く聞こえてない様子だった。どこか抜けてて、実にユノらしい。笑える。


「ったく。笑」

「マネヒョ~ン」

「お!チャンミン、お疲れ様!!良くやった!凄く良かった!お前は最高で最強だ!」

「しゃ!!」


マンネの“ 構って欲しい”とでも言うような舌っ足らずな呼び声にも、当然最高の褒め言葉で応える。すると途端に男らしさ全開の発声をしてハイタッチを交わしながら喜ぶ。そこへ総合振付師のジェウォンもやって来た。


「こら、チャンミン!一人用トロッコで移動する時バーに乗り上げて座ってたでしょ。あんなの止めてよ。人力だし強度もないし、こっちは落ちるんじゃないかってヒヤヒヤもんだったんだよ?」

「そんなあ。また怒られたあ、あはははははは♪」


気になった点をやんわり注意されるとまたニカニカ、音が出そうな笑顔のチャンミンに戻るから、俺もジェウォンも可愛くて仕方ない。自然とこちらも笑顔になる。


「でも僕、やっぱりソロ曲変えたいです」

「……は」「……え」


突然。あの血と汗と涙で作られたセットリストをまた変更しなければならない恐怖の気配を感じて、緩んだ顔のまま、俺たちは不自然に止まってしまった。


「だって、昨日今日とステージの上から見てて、やっぱりユノヒョンのソロ曲と比べたら反応薄いんですよね」

「…」「…」


そりゃユノの『Honey Funny Bunny』は今年の日本ツアーで熱狂的な盛り上がりを見せていたから、今回のワールドツアーでの期待値もかなり高い。甘美で可愛く、お茶目な所を入れながらも全体は妖艶でセクシーな歌詞と振り付けだから、まさにユノのための名曲だ。誇張じゃなく世界中のペンが今か今かと楽しみにしている。


「……。いや、でも、良かったぞ…?声も綺麗に通ってたし……」


真面目な顔で適切な意見をライブ直後に言わないで欲しい。それはまたミーティングの時にでも……とにかく少しくらい余韻に浸らせて欲しいのにチャンミンは止まらない。


「主役をやったドラマの挿入歌だし再始動時の発表曲だからこのツアーで歌うのが妥当だっていうのは分かるんですけど。正直インパクトがないんだと思います」

「はあ、、でも…直前の映像から繋がる恋愛要素のある曲じゃないと…またミーティングで検討し直してどうするか、かな…」


もごもご言葉の端が濁っていくジェウォンも同じ意見だと察して、すかさず俺も加勢する。


「いや、それにお前。自分が作詞したソロ曲なのにそんなあっさり変えられないだろ?だからこそ聴きたいペンがいるってことも考えないと。とりあえず今日は無事終わ…」

「なんかあの曲は、精一杯後悔ないように歌えはするんですけど…。結局初恋の実体験から想像して書いたものだから、今の自分だと全然気持ちが入らないんですよ」

「……まあ、、」「チャンミン……」


ユノのことで頭がいっぱいなんだって、別の『告白』をしてるってこと。

この子は分かってるんだろうか?


「プロ失格かもしれませんが、プロだからこそ、その都度自分のコンディションを見極めて、その中でベストの状態で表現できる歌を提供しないと、聴いてくれる人達に対して申し訳ない気がします。だからって、このツアーでもう歌わないってことじゃなくて。気持ちが安定して入れられると思えば歌いたいし、あくまで選択肢の一つというポジションにしたいんです」

「………」


歌手として成長が窺える反面、どん底に重い提案。俺はついに何も言えなくなってしまった。代わりにジェウォンが糸口を見つけてくれた。


「じゃあ…せっかくワールドツアーなんだし、……。うん、国ごとに選曲してみる?チャンミンは英語は歌ならいけるし。中国語も少しは勉強してたし発音も悪くない、時間が許される限りチャレンジしてみてもいいかも」

「やってみたいです。ちょうどビクトリアもエンバも今日来てくれてるんで、中国アメリカで親しまれてる曲でツアーに嵌りそうなものがあるか聞いてみましょうか」

「それいいね。あと事務所の音楽チームにも聞いてみよう」


そう言い残してチャンミンとジェウォンは、アラも含めた女子三人とスタッフ達の輪へ近付いて行った。


「……」


技術や声域の振り幅は確かに大事だけども。どうしようもない想いを抱えてる時ほどそれを曲に乗せることができれば、より多くの人々が感銘を受けてくれる。そういう経験が歌手として大成する道筋だと思えば、チャンミンにとって唯一の救いになるかもしれない。


「そうだよ…前から興味は人一倍あったしな……。間に合うようなら、選考にチャンミンも入れてもらえるか聞いてみようか……」


後輩グループのアルバム制作が思うように進んでないと頭を悩ませていたレコーディングプロデューサーの姿がふと思いついた。今のチャンミンならコンセプトにも十分沿えるものができるかも。


「……。ふっ、俺は本当に仕事人間だな…」


ゆっくり休ませてやりたい。そうは考えているのに、どうして結局は二人を休養させられないのか。自分でも辟易するほどユノとチャンミンを働かせているのは分かってる。詰まるところ、TOHOSINKIというブランドを支えたい。俺にはその信念しか、もう揺るぎないものがない。



打ち上げに行く者を募る明るい声、舞台セットを撤去する騒がしい足音。ピン切りの関係者がごった返す廊下を進み、非常口付近の片隅で待機されているユノのご両親を見つけて挨拶を交わす。あまり時間がないことだけ伝えて、小さなミーティングスペースへご案内した。ステージを観て、夫と話しあって光州に帰る前に改めて話したい事があると言われていたから。


「…。お母様、今までサポート頂いてありがとうございました。今日のライブ、いかがでしたか?」

「素晴らしかったです。招待される度、ユノが素晴らしいスタッフの方達に支えられてこそあのように輝けるのだと実感します」

「ありがとうございます。私も、これからもずっと全力でユノ君を支えていきたいと思っておりますので、宜しくお願い致します」


さらに丁重な挨拶を重ねて、お父様が辛酸をなめるように話を切り出した。


「今更、遅過ぎるお願いなんですが……」

「はい」





『異常』とか、『間違ってる』とか、


愛し合ってるだけなのに常に周りのこと考えて悩んで、行動して。開き直るわけでもなく、それでも否定されれば誰も恨まず、自分達で全部、苦しんで苦しんで、泣き病んで、責任を負って、記憶を消して、


そういうユノとチャンミンの姿を見てから言ってくれ。


『正常』とか、『正しい』とか、





根本から揺らいで、吹き飛ぶから







そう、思うようになってしまった。



「もし……その……、二人がこれからまた、、ユノが今までの事をバッと思い出して、チャンミン君と前のような仲に戻るようなことがあったら……その時はそっと、……そっと静かに、放っておいてやりませんか?過ちかどうかは……二人のことは二人に…決めさせてやりませんか?」



俺も、


そう願ってしまいました。



「そうですね……不道徳だとか気の迷いだとか、色んな原因で否定して、時が過ぎれば笑い話にすらなるとか説得し続けて………でも結局これらは自分の価値観なんですね、他人に押し付けられるものじゃない。そんな事さえ、ユノ君があんな状態になって初めて気付いたんです、私。……私は酷いマネージャーです……」


そんな事はないと、むしろご心労かけて申し訳ないとお父様もお母様も涙ながらに謝って下さる。そうすると私も自分の管理不足だと謝りたくなる。常識や秩序に流れそうになる。謝るべき相手を見失う。

本当に頭を下げなければいけない相手は、


「やっと後悔して、もっと始めから受け入れてやれば良かったとか、クビが飛んででも盾になって守る覚悟はなかったのかとか。今度は自分を責めて、後悔ばかりです。後悔しても、もう遅いのに……」


もういないユノだ。


「ユノ君がチャンミンを愛した記憶は、恐らく彼らがTOHOSINKIで居続ける以上、戻ることはないでしょう」

「そんな……っ、、どうにか、いつかは…もど、戻りますよね……?」


安堵されると思った予想に反して、ユノのお母様はよほどショックなのか、チャンミンならと腹を括っていたのか、腰を抜かされてしまった。お父様とすぐ側の椅子へ座るよう促したが、顔を歪めて泣きじゃくる。


「ユノは、チャンミン君じゃないと…っ、ユノにとってチャンミン君は、きっとユ、ユノの魂みたいな存在なんです…!絶対思い出します…っ。あん、あんなに私達へ敬意を払ってくれる息子はいません、っ、ユノの幸せを私はっ、祈ります…っ、」


俺も涙が滲む。


本当に大切なものは、目には見えない。
何の固定概念にも捕らわれず自分の心のみで見れば、真理はこんなにも明解に見えたのに。


「ユノ君にとって、今が一番心地よい状態なんだそうです。これを心理学で、防衛機制というそうです。自我を守るための脳の働きらしいんですが。真面目で情熱的、あとストイックな人間の脳に起こりやすいと、私の知人の心理学研究員が教えてくれました」


でも見えたところでイバラミチ。


絶望しか、足場がない。



「チャンミンには初めから変な刺激をするなと言われてましたが、私は無理にでも思い出させた方がいいのかと思ってました。でもそれは本人にとって、とても危険なことなんだそうです。チャンミンは本当に、ユノ君のことをよく分かってるんです」







まるで自分の半身みたいに




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片割れ chap.12 #19








新しい朝が来る。

初冬の寒さを空調で制御したこの部屋にも。一日が始まる、清潔な雰囲気の前兆が頬と聴覚に触れて目を覚ました。時計の針を確認すると、さっき見た時間から四十分経過している。チャンミンが眠りに落ちてから目を休めるつもりで横になっていたけど、ちょうど良い仮眠が取れた。
隣の当人へ振り返ると、いつバスローブを脱いだのか素っ裸で片足を曲げ、両手は万歳の格好でピクリとも動かない。熟睡してる。


「……ぷ。丸見え。笑」


最小限に落ち着いて垂れてる男性器を悪戯心で握って振ってみたけど何の反応もしない。布団をかけて寝顔をまじまじと見てみた。

開けっぴろげな格好、低い音程のイビキ、口周りに浮いた髭。そういった生気の証がチャンミンにあって良かった。でなければ人形と勘違いしてしまいそう。「先月日本で初出演した映画の完成披露舞台挨拶で、共演したベテラン俳優さんに変な褒め方をされて逆に恥ずかしくなった」とチャンミンは照れ笑いしてたけど、俺はその俳優の方の言う通りだと思う。

『完璧な顔だね。神様は凄い造形をしたな』


「……チャンミン、どこまで格好良くなるの?」


豪快な眠り姫に独りごちる。

昔は本当に幼さのある少年で。目立たない、宿舎の一番静かな部屋を見つけては眼鏡をかけて勉強してた。話しかけると喋るけど、俺の記憶の中ではほぼ教科書を読んでる姿とたまのゲームに熱中してる姿しかない。

可愛いなとは思ってた。それが年を重ねる度、男だけどいい子で綺麗だなと思うようになった。もしチャンミンから俺を好きになってくれたら喜んで受け入れるくらいの気持ちはあったけど、実際どうこうあるはずがない。もちろん恋愛対象だと意識しないように過ごした。ある日ユノが一目惚れしたっていう彼女を紹介されて仰天。彼女の目と笑い方が、あまりにもチャンミンにそっくりだったから。ユノは無意識でも、俺と同じようにチャンミンを見てるんだと確信した。
そこで小さな闘争心が芽生えたんだと思う。
だからそれから数年後、二人が付き合うことになったと聞かされた途端に、気持ちがぶり返した。俺もチャンミンへ告白したくなった。
ユノと同じフィールドに立って、改めてチャンミンの選択を受けたかった。俺を選んでくれたら今度こそその手を取る。もしかしたら思春期の頃の密かな願望を、自分なりに成就させたかったのかもしれない。
そう考えると、青春っぽくて、照れくさい。


「諦めない限り俺にも可能性は一応あるからな。『諦めたら、そこで試合終了だよ』ってね」


その名台詞が載ってる漫画『スラムダンク』の全巻は、三十二坪の宿舎で皆のバイブルと化していた。


「でもな?ユノは、俺の恩人なんだ…」


デビュー前から、TOHOSINKIとスジュとそれぞれのマネヒョン達で合宿生活をスタートした。といっても俺は始めの十何日かだけ。あまりの大人数に、実家が江南区の俺は自宅から通うようにと清潭洞の宿舎から閉め出された。仲間外れになりそうな状況に焦って何度も泊まりに行って、よくマネヒョン達から窘められてた。
大人のマネヒョンには逆らえない十代のメンバー達の中、ユノだけが始めから俺を歓迎してくれた。「シウォンがいると楽しい」って、「いつも宿舎来てないか、帰ると探してるんだ」って。ユノと話してると皆なんだかんだ集まってきて、気付いたら宿舎にいるのが当然の如くマネヒョン達とまでリビングで談笑するようになった。それから憑き物が落ちたように、素直に実家通いできる恩恵を感謝した。


「決して劇的なストーリーじゃないけど…ユノがいてくれて、本当に救われたんだよ」


いつも本気で気にかけてくれた。誰に対してもそうだった。他人を蹴落とすのが当たり前の芸能界で、自分だって出し抜かれたり裏切られたり、たくさんあったはずなのに、一緒に頑張っていこうって常に皆を励まして。誰よりも負けず嫌いなのに、勢いのある後輩全員に真剣にアドバイスなんかしたりして。本当馬鹿みたいに一生懸命で、真面目で、変わらない。




「すいません、早い時間に。チェ・シウォンです。ご無沙汰しております。実は私の友人のことで、先生にご相談したい事がありまして。先生の空いているお時間はありますか?はい、できるだけ早いところで」


寝室にチャンミンを残してキッチンで珈琲を入れた。飲みながら電話受信者のスケジュール調整を待つ。出窓から見える空は快晴で、気持ち良さそう。木枯らしがイチョウの葉を踊らせてる。


「はい、本人の診察は難しいんです。ゆくゆくは可能かもしれませんが、まずは私だけでお話しを伺いに行きます」


チャンミンにも同行してもらいたいところだが、自分を責め続けながらも現状維持を望むチャンミンに、それも難しい。


「ありがとうございます。はい。私の方は時間外で全く構いません。仕事の都合をつけて必ずお伺いしますので、宜しくお願いします」


電話を切る。珈琲が底をついていた。自分が思っているより、緊張していることに気付く。深呼吸しながらソファに腰を下ろして、組んだ指先に額を重ねた。視界を遮る。ただただ我が主に敬虔な念で願う。願いが、届きますように。


「何してるんですか……?」

「ああ、起きた?チャンミン。お祈りしてた」


寝室の方に目をやると、今はもうバスローブを着直したチャンミンが訝しげな表情で扉に寄り掛かっている。


「さっきの電話、……病院の予約ですか?」

「…。そうだよ、精神科で懇意にしてるウチのドクターがいてな。言ったろ?俺は冷静になるべき所はきちんと慎重に行動する。まず敵を知る。がむしゃらには動かないよ」


情熱は祈りに捧げた。
あとは医療学的な知識を備えておきたい。


「僕は……確かにサセンに悩まされた時軽くお世話になりましたけど、、結局カウンセリングを受けても僕の求めた安らぎは得られなかったです。自分で自己啓発本を読んだりその中で学んだことを実践したりして、自分で克服しました。自分のことは自分でどうにかします」

「うん。チャンミンは本当に偉いよ」

「……だから、心配してくれるのは有難いですけど、今の僕には苦しむくらいが丁度いいんです。シウォニヒョンもいてくれるし、僕は本当にこのままでいいんです。その方がTOHOSINKIの活動に集中できるんじゃないかとさえ思ってます」


コアクマめ。
チャンミンの肩からバスローブが滑る。剥き出しになったなで肩と乳首の色気を俺に晒しながらそんな風に汐らしく言って俺の気を引いて、喜ばせておいて。その実、


「それはユノのため?」

「だから……ユノヒョンにとって、今が一番幸せなんですって」


ユノの事しか想ってない。











完敗だよ


なあ?ユノ






「俺も。チャンミンには俺がいるから大丈夫♪俺は、どちらかと言うとユノのために何かしたいんだ」

「ちょっと…ちょっと待って下さい、まさかユノヒョンの方ですか?まさか記憶をとり戻すとか考えてないですか…っ、止めて下さい、思い出したところでどうにもなりません…!」

「昨日チャンミンを本当にもらうつもりでユノに連絡した時、おかしいとぼけ方をしてた。お前の彼女ができたって嘘もまずかったな。だいたいの話を聴いた今思えば、あれは完全に混同してたよ。これからどんどんそういう擦れ違いが起こったらどうする?」

「っ、それはだから僕の別れ方が悪くて……っ、でも忘れてるのは僕との事だけでっ、ユノヒョンは誰にも何も迷惑かけてませんよ!」


慌てて俺の隣へ回り込んで懇願するようにおれへ説得を開始したチャンミンは必死そのもの。
神の最高傑作が、朝っぱらから騒がしい。


「ご飯もやっと食べれるようになって、やっと回復してきたとこなんですよ…っ、ワールドツアーも始まる、色んな仕事も…。僕との後ろめたい思い出なんていらない!!」


頬が赤く染まって唇はわななき、眉間に皺を寄せて、大きな瞳には涙色の膜が煌めく。小刻みに揺すってくる小さな手は予想以上に力強い。

ああ、いいね。生気の証が、
ここにも見えるよ。


「……。大丈夫、チャンミンの嫌がる事はしない。お前に俺の気持ちを伝えさせてくれってユノに未練がましい頼みをした時、ユノとそう約束したんだ。それにユノの記憶を取り戻そうなんて、そもそも考えてない」

「、、シウォニヒョン、何する気ですか……」


『治してやろう』とか、『どうにかしてやろう』とか、そんな単純な問題じゃないんだ。

ユノとチャンミンの現実は。どう考えても。
解決策はない。






「救いたい、ユノを」


ただ俺は恩返しがしたい。
劇的なストーリーじゃなくても、ね。





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片割れ chap.12 #18










『チャンミン、もらうから』





「……ぁ」


スマホから聞こえるシウォンの声で我に帰った。気付くと目の前にとりどりの夜食が並べられている。でも、触れたどの器も冷めっきっている。俺はダイニングテーブルとセットだったチェアに座ってる。母さんを探すと、リビングのソファに腰を沈め俯いた後頭部が船を漕いでるところだった。


「……あーなんだ。今日シウォンと約束してたのか…。チャンミナは?そっち着いた?」


残念だった。母さんに会わせてびっくりさせて、喜んでもらえると思ってたのにチャンミンは玄関先でそそくさと帰ってしまって、がっかり。肩がどっしり重くて、スプーンに手をつける気力がなくて。どのくらいの時間が経ったんだろう。


『うん、とっくに。うちでゆっくり食事取って…。今、シャワー浴びてる……』


シャワー?
え、何で?何だろう。え、変な感じ。なに、このざわめき。泊まるのか?でも何で。
シウォンとそんなに仲良かったっけ?


「へ、え……あ、家なんだ……そか……」


胸騒ぎは、一瞬で現れた靄(もや)に掬い取られた。床から分厚い灰色のカーテンのような煙を翻し、目の前を覆われた。母さんの食事も見えない。そしたら全然何でもなかった。楽だ。そうだよ、別に深刻になることじゃない。
靄に助けられた。


『……。いいんだ?俺お前に半殺しにされる覚悟で電話したんだけど。そっか、本当に問題ないんだな。良かったよ、まだスジュの活動ができて』

「……」


何が問題なんだろう。だって約束はそっちが先なんだから。仕方ない。握った右手の爪が掌に食い込む。痛みなんて感じない。なんだか酷く叫びたいことがあるけど、ボヤけて言葉が出てこない。頭まですっぽり霞んでるから。誤魔化せてる。……誰を?


『おい、聞こえてるのか?電波悪いのか?』

「お、いや…ちゃんと聞こえてる…。てか、俺どれだけ恐いイメージなんだあ?さすがにそれはないだろっ。笑」

『チャンミンの事になると、目の色変えて威嚇されてきたんだから。それくらい覚悟するよ』


チャンミン。
そう、チャンミンは大事。唯一のメンバーなんだから。この気持ちは、イツマデタッテモカワラナイ。落ち着いてそう思う。


「チャンミナはマンネだし、確かに俺にも過保護な所があったかも。でもシウォンなら安心して任せられる。今日ずっとチャンミナの事待っててくれたんだって?お前が大丈夫なら、もう遅いしチャンミナ泊めてあげて。二人でゆっくりしたらいい」

『お前…………本当にユノか……?』

「ュ…」


誰だっけ。それ誰だっけ。
よく知ってるんだけど、ド忘れで。焦る。
右脳と左脳を引っ張り出すように眼球を思いきり彷徨わせたけどその知人は定まらない。なかなか答えられないところに、電話口からシウォンの盛大な溜息を受けた。


『チャンミン、ユノと別れてもう限界だよ…。これからは俺が守るから』


なんだ、ソウイウコトか。




「チャンミナ、彼女と別れたのか?」

『、……は?』




「なんだ………そうか……」




あんなに一人暮らしを準備して出て行ったチャンミン。俺との共同生活をやめてまで。きっとすごく好きだったんだろうな。なのに失恋して。可哀想なチャンミン。一人じゃいられなくて友人の家に泊まり回ってるの?寂しさを凌いで?可哀想な弟。ヒョンが励ましてあげる。俺がチャンミンを。


「なんだ…じゃあ宿舎戻ってくればいいのに。そうか……チャンミナ、別れたんだ……ふうん……」


ウレシイ。ワクワクスル。


「彼女と別れたんだ……」



コッチガイイ



『何とぼけてるんだよ。馬鹿野郎』


ソレハナカッタコトニシタ。

ツマリソレハナカッタ。



そっちは俺の夢を邪魔するんだってさ。だからきちんと消去したから、考えなくていいって、





靄(もや)が言ってる。

俺を抱き締めて、マモッテクレテイル。


「チャンミナは……シウォンじゃ駄目だ……俺じゃないと…同じグループの俺が慰めてやらないと……TOHOSINKIはTOHOSINKIなんだから……ライブも近い……団結しなきゃ………」

『他に言うことないのか?』

「俺は…夢を追いかけるためなら…何だってやってみせる……」


夢より大切なものなんてないから。
俺にはこれしかないから。間違いない。


『最低最悪。、、、、プー、プー、プー。。。。。。。』


一呼吸目ですぐに電子音が鳴って、その後は無音が響いてた。何もない。だから考えなくていい。スッキリ。キブンソウカイ。


「チャンミナ……」


失恋したチャンミンを、今日みたいに元気付けて、宿舎へ戻るよう説得して。またモトニモドレバタノシイヨ。そしたらライブの演出のことも話しやすいし。そう言えばまだ直したい箇所があって、あれだよあれ、あそこの。初日はBoAも応援に来てくれるっていうし。あとあの人、名前はえっと、、そうだ。指で額を擦っているとやっと思い出せた。


「チャンミ……チャンミン……」


ソウル公演が終わったら次の日にはすぐ大阪行かなきゃ。舞台のセリフ、練習しよう。始めのセリフから、、抑揚をしっかりつけて。


「チャンミン……チャンミン……」


ワールドツアー、ミュージカル。日本ドームツアー、日産スタジアム。もっと、もっと。駆け抜けるまでに、まだまだできる事はあるはず。マネヒョンにもっと相談しよう。考えられこともまだまだたくさん。アイデアを口ずさんで具体化してみる。


「チャ、ンミン……チャンミナ……チャンドリ……チャンミン……チャン…ミン……ふふふふ……チャンドリ…………チャン…チャンミン……」


立ったり座ったりを繰り返しながら、部屋の隅々をぐるぐる歩く。ジュースを飲もう。全然眠くない。このまま。楽なんだ。タノシクテオワリタクナイ。ズットコウシテタイ。壁の冷たさが心地いい。傷はない。


「チャンミン……チャンミン……」






今日も朝まで忙しい。




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